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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 132
管理番号 1088664 
審判番号 取消2001-31035 
総通号数 49 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-01-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2001-09-20 
確定日 2003-11-25 
事件の表示 上記当事者間の登録第2549288号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第2549288号商標の指定商品中「豆腐,及びその類似商品」については、その登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2549288号商標(以下「本件商標」という。)は、「π ウォーター」と横書きしてなり、第32類「食肉、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和62年5月29日登録出願、平成5年6月30日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
1.請求の理由
本件商標は、その指定商品中、「豆腐,及びその類似商品」について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実が存在しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2.答弁に対する弁駁
(1)乙第4号証及び乙第5号証について
ア.乙第4号証によれば、佐野商店(代表者、佐野孝平)は、「豆腐の製造」について営業の許可を受けていることは認められる。しかし、乙第5号証が上記佐野商店で撮影されたものであるという事実については上記両証拠により証明されるものではない。
イ.乙第5号証の下部には浄水器の写真が掲載され、この写真の商品には「πウォーター」の文字を表示したラベルが貼付されている。しかし、この文字よりなる商標は商品「浄水器」に使用されている商標であり、本件審判の取消対象の商品「豆腐,及びその類似商品」についての本件商標の使用の事実を証明する証拠として適格性を欠くものである。
ウ.乙第5号証の上部には、商品「豆腐」をプラスチック製の容器本体に収容し、容器本体の上端開ロ部をプラスチックフィルムによって、ヒートシール法により密閉した豆腐のパッケージ商品の写真が掲載されている。前記商品の上記密閉用のプラスチックフィルムには「手造り/ソフトとうふ」の文字、及び「佐野商店」のように見える文字等が印刷により表示されている。そして、前記密閉用のプラスチックフィルム上の左下側に「πウォーター」の文字よりなる商標を表示したラベルが貼付されている。
しかし、上記豆腐のパッケージには製造年月日等の表示は記載されてなく、かつ、前記ラベルは前記商品をシールパックした後、その上から単に貼付したものである。
したがって、前記上部の写真により、佐野商店が本件商標を請求人主張の期間内に前記商品に使用しているとの被請求人の主張は容認することができない。
(2)乙第6号証の1及び2並びに乙第7号証について
乙第7号証の上段にはポスターの写真が掲載され、このポスターには「πウォーターシステム」の文字よりなる商標が表示されている。また、乙第7号証の下段には客席テーブルの上に器に入れた豆腐料理及び三角柱状の卓上広告紙等を置いた写真が掲載され、該広告紙に「πWATER」の文字よりなる商標が印刷により表示されている。
しかし、上記両商標はいずれも「水」について使用している商標であり、豆腐料理についての使用ではない。このことは、上記ポスターに表示されている「いい水飲んでいますか!?」等の記載等から見ても明白である。
また、仮に、上記文字よりなる商標をテーブル上の「豆腐」に使用していたとしても、この「豆腐」は豆腐料理であり、商標法における「商品」には当らない。
(3)乙第8号証について
乙第8号証は、被請求人と「薫楓亭」(三州足助屋敷;代表者河合廣美)との間で締結した本件商標の使用許諾についての契約書であるが、この証拠によって上記「薫楓亭」が本件商標を本件審判の請求に係る商品について使用している事実を証明するものではない。
また、乙第8号証は「豆腐等飲食物の提供」についての使用許諾を内容とするものである。しかし、被請求人は、本件商標に基づいて上記を内容とする使用権を許諾する権利を有していないものである。
(4)乙第9号証ないし乙第11号証について
乙第9号証ないし乙第11号証によれば、アイ・ビー・イー販売株式会社(以下「アイ・ビー・イー販売」という。)と株式会社小林(以下「小林」という。)との間で代理店契約を締結し、小林が丸紅河合(三州足助屋敷)へ「浄水器」を販売した事実を窺い知ることができる。
しかし、これら証拠によって、被請求人ないし小林が本件商標を上記期間内に「豆腐,及びその類似商品」に使用している事実を証明するものではない。
(5)乙第12号証ないし乙第14号証について
乙第12号証及び乙第14号証は、被請求人と佐野商店、株式会社三河湾リゾート・リンクス(以下「三河湾リゾート・リンクス」という。)との間で締結した本件商標の使用許諾に関する契約書であり、乙第13号証は、三河湾リゾート・リンクスの登記簿謄本であるが、これら証拠によって、上記2社が本件商標を本件審判の請求に係る商品について使用している事実を証明するものではない。
また、乙第14号証は、「宿泊施設」についての使用許諾を内容とするものである。しかし、被請求人は、本件商標に基づいて上記を内容とする使用権を許諾する権利を有していないものである。
(6)乙第15号証について
被請求人は、乙第15号証により、三河湾リゾート・リンクスが本件商標に係る浄水器をホテル施設内で使用している事実を証明している旨主張する。しかし「浄水器」は、本件商標の指定商品には含まれておらず、また、本件審判の請求に係る商品でもない。
したがって、乙第15号証は、本件商標の使用事実を証明する証拠として適格性を欠くものである。
(7)以上のとおり、上記いずれの証拠によっても、商標権利者ないし通常使用権者が本件商標を「豆腐,及びその類似商品」について、本件審判請求の登録前3年以内に使用された事実は立証されていない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由及び審尋に対する回答を要旨次のとおり述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第19号証(枝番を含む。)を提出した。(なお、被請求人は、平成15年2月28日付け答弁書に本件商標の登録原簿を乙第1号証として添付したが、これを「乙第16号証」とし、また、同日付け回答書に添付の乙第1号証ないし乙第3号証を「乙第17号証ないし乙第19号証」とした。)
1.被請求人は、IBEグループに属し、昭和50年(1975年)12月、πウォーター技術の実用化のために設立され、農業、工業、水産業をはじめとする幅広い産業分野において、πウォーターの研究開発と実用化に取り組んでいる企業である(乙第1号証;同グループのアイビーイー・テクノ株式会社のホームページ)。
2.本件商標の使用の事実について
(1)豆腐の製造、販売を行う佐野商店における使用
ア.乙第5号証は、豆腐の製造、販売を行う佐野商店(乙第4号証)において撮影されたもので、豆腐のパッケージと、同店が使用している浄水器の写真であり、いずれにも本件商標「πウォーター」の文字が確認できる。
イ.被請求人と佐野商店とは、本件商標に関する使用権許諾に関する契約を締結し、佐野商店は、以来現在に至るまで、本件商標を使用している(乙第12号証)。
ウ.請求人は、乙第5号証が佐野商店で撮影されたものであるか疑問である旨主張するが、ここでは本件商標を商品「豆腐」について使用しているかが重要であり、例えば、豆腐の写真が佐野商店で撮影されたものでないとしても、問題はないはずであり、請求人の指摘は失当である。
エ.請求人は、浄水器に本件商標を付していることは、「豆腐,及びその類似商品」について該商標の使用の事実を証明する証拠として適格性を欠くと主張する。
しかしながら、豆腐に商標「πウォーター」を付すということは、「πウォーター」という水を使用して豆腐を作ったからこそできることであって、それを示すためには当然水を生成する浄水器を示さなければならないはずである。
これについては、後述する、被請求人と小林との契約について示した乙第9号証及び乙第10号証に関する指摘及び乙第15号証の三河湾リゾート・リンクスについての指摘に対しても同様のことがいえる。レストランで提供される豆腐に「πウォーター」なる商標を付すためには、その豆腐を製造する上で使用した水(浄水器)が何であるかを示さなければ、意味がないものとなる。そこで、被請求人は、薫楓亭が確かに「πウォーター」を生成する浄水器を使用して豆腐を製造していることを示すために、同レストランが請求人と代理店契約を結んでいる小林から、その浄水器を購入した事実を示した訳であるから、これを適切でないとする請求人の主張は的を得ない。
オ.佐野商店では、豆腐は製造したその日のうちにすべて売り切る方針で、万一売れ残りが出た場合には処分する方法をとっている。よって、ラベル上に製造年月日を付すことはしていない。シールについては、まだ本件商標を表示したラベルを作っていないため、シールを貼って対応しているまでである。
(2)豆腐料理を主とする飲食店「薫楓亭」(三州足助屋敷)における使用
ア.乙第7号証は、豆腐料理を主とする飲食店「薫楓亭」(三州足助屋敷;乙第6号証の1及び2)の店内で撮影されたものであり、壁面のポスターにおいて、同店が本件商標を付した商品「πウォーター」を使用している旨を表示していることが確認できる。さらに、同店内の客席テーブルの上にも、本件商標を付した三角柱状の卓上広告紙が配されてる。
イ.被請求人と三州足助屋敷は、平成11年に本件商標の使用権許諾を締結した(乙第8号証)。
ウ.被請求人と小林は、平成6年に代理店契約を締結(乙第9号証)した。そして、平成11年8月9日付の小林から三州足助屋敷宛の請求書(乙第10号証)、及び同日付の商品保証書(乙第11号証)により、被請求人が小林を通して三州足助屋敷に商品を販売したことが分かる。すなわち、被請求人が小林に本件商標に係る商品(浄水器)を販売、小林が三州足助屋敷にそれを販売し、三州足助屋敷がそれを豆腐等の食品製造に使用しているという関係が明らかになるものと思料する。
エ.請求人は、薫楓亭における「豆腐」は、料理であって商品ではないと主張するが、商標法第2条第5項には、「商品に類似するものの範囲には役務が含まれることがある」とあり、レストランにおいて客に提供される「豆腐」は、商品であると考えるのが自然であり、商標法第2条第5項に該当するものであるから、請求人の指摘は間違いである。
(3)上記(1)及び(2)以外の使用
ア.被請求人は、三河湾リゾート・リンクスにも本件商標の使用権を許諾しており、三河湾リゾート・リンクス契約以来現在に至るまで、本件商標を使用している(乙第13号証及び乙第14号証)。三河湾リゾート・リンクスは、平成13年発行の情報誌内で、本件商標に係る浄水器をホテル施設内で使用している(乙第15号証)。
イ.被請求人は、河合廣美(薫楓亭)及び三河湾リゾート・リンクスとの間で、本件商標について、平成14年11月29日を受付日とする通常使用権の設定の申請をし、その登録が同14年12月18日にされたものであるから、被請求人が上記両名との間に使用権の許諾をする権利がないする請求人の主張は、もはや当てはまらないものとなった(乙第16号証)。
3.審尋に対する回答
(1)営業許可書について
佐野商店と被請求人が契約した当時(平成5年4月から平成9年4月まで)の佐野商店の営業許可の証明書によって明らかにする(乙第17号証)。
(2)被請求人と佐野商店との間の「商標の使用権許諾に関する契約書」(乙第12号証)第4条において、「乙は、毎年3月31日及び9月30日から1ヶ月以内にその前6ヶ月間におけるラベル,印刷物,パンフレット,リーフレット,広告用ちらし又はその他『商標』が使用されている一切の資料を甲に報告する。」と定められているパンフレット等の報告書類について
佐野商店は、豆腐の製造販売を行う店で、地元に住む住民を顧客とした規模の小さい店であるから、ちらしやパンフレットによる広告活動は特にしていない。また、本件審判請求の登録前3年以内に使用されたラベル等も、現在は残っていないためその提出は不可能である。しかしながら、そのような小規模な豆腐店であれば、特別広告媒体を用いての積極的な宣伝活動などしないのが普通であるから、被請求人は佐野商店から広告に関する報告がないことは了承していた。
(3)豆腐の写真について
先に提出した写真の他に以前の豆腐の写真がなかったことから、被請求人は現在の豆腐の写真を再度提出する(乙第18号証)。写真の豆腐のラベル上に日付を確認できるものがないのは、答弁の理由2.(1)オ.に同じである。
(4)佐野商店と顧客との間における取引書類等について
乙第19号証は、佐野商店が株式会社博多に豆腐を納入していたことを証明する書面である。
4.むすび
以上のように、本件商標権者ないし通常使用権者が本件商標を「豆腐,及びその類似商品」について、本件審判請求の登録前3年以内に使用された事実は立証されないとした、請求人の主張は失当である。

第4 当審の判断
1.乙第1号証、乙第4号証ないし乙第19号証によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第1号証は、アイビーイー・テクノ株式会社のホームページであり、アイビーイー・テクノ株式会社(1997年6月にアイ・ビー・イー販売より社名変更。)は、被請求人を含む関連会社とIBEグループを形成し、「BCSウォーターシステム商品の製造・販売」を事業内容とするものである。
(2)乙第4号証は、平成13年3月30日に、佐野孝平が名古屋市千種保健所長にした豆腐製造業の許可申請に対する平成13年4月20日付け営業許可書であり、その内容は、「営業所の在地 名古屋市千種区今池三丁目4番26号」、「営業の名称、屋号又は商号 佐野商店」、「許可の条件 有効期間 平成13年4月21日から平成19年4月20日まで」とするものである。
(3)乙第5号証は、プラスチック製包装容器に入った豆腐の写真及びひもで括り付けられ、固定されている状態の浄水器の写真であり、豆腐を収納したプラスチック製包装容器の上面には、「おいしい 手造り/ソフトとうふ」、「πウォーター」、「佐野商店」などの文字が表示されている(乙第18号証)。また、浄水器の側面には、「LIFEENARGY/ライフエナジー」、「πウォーター」などの文字が表示されている。
(4)乙第6号証の1は、有効期間を「平成11年9月22日から平成16年11月15日まで」とし、営業の所在地を「東加茂郡足助町大字足助字飯盛36番地」、営業者の氏名(名称)を「河合廣美(薫楓亭)」とする食品衛生法による「飲食店営業許可」であり、乙第6号証の2は、「手造り豆腐の店 薫楓亭/三州足助屋敷」の手書きによる広告ちらしである。
(5)乙第7号証は、飲食店内の写真2枚と認められるところ、上段の写真は、店内の壁に「ICE coffee 始めました。 330円」と書された紙、「いい水飲んでいますか!?/当店では『水』にこだわりをもち環境と体にやさしいπウォーターシステムを利用しています。」などと書かれた紙が貼られたものであり、下段の写真は、テーブル上に豆腐の料理と認められる料理が並べられているものである。
(6)乙第8号証は、被請求人と河合廣美(薫楓亭)との間で締結した平成11年7月1日付け「商標の使用権許諾に関する契約書」であり、その内容は、被請求人は河合廣美に対し、本件商標についての通常使用権を許諾する(第1条)もので、使用の範囲(内容)は、「豆腐等飲食物の提供」であり(第2条)、使用料は無償である(第3条)。
(7)乙第9号証は、アイ・ビー・イー販売と小林との間で締結した平成6年10月3日付け「代理店契約書」であり、その内容は、代理店とは、アイ・ビー・イー販売の製造、販売に係る商品を販売する第一次の取次ぎ販売店を意味し、該取次ぎ販売店を小林がするというものであって、代理店の資格要件としては、アイ・ビー・イー販売の出荷額で年間2000万円を超える取引を基本とするものである。
(8)乙第10号証は、小林が丸紅河合(三州足助屋敷)に宛てた平成11年8月9日付け請求書(控)であり、「合計金額¥ 819,000」、「現場名 足助屋敷」の記載があり、さらに、「摘要」欄等には「浄水器 MI-220 No.100722」、「1台」などの記載がある。
(9)乙第11号証は、発売元である「IBE販売株式会社」が発行したと認められる「MI-220 保証書」であり、「製造番号 100722」、「保証期間 平成11年8月9日から2年間を目安」、「お客様 薫楓亭」、「販売店 株式会社小林」などの記載がある。
(10)乙第12号証は、被請求人と佐野孝平(佐野商店)との間で締結した平成7年2月1日付け「商標の使用権許諾に関する契約書」であり、その内容は、被請求人は佐野孝平に対し、本件商標についての通常使用権を許諾する(第1条)もので、使用の範囲として、「使用期間 本契約締結日から8年間」であり、「内容 豆腐類の製造」である(第2条)。そして、使用料は無償である(第3条)。
(11)乙第13号証は、三河湾リゾート・リンクスの登記簿謄本であり、その設立目的は、ホテルの経営、浴場及びホテル内の売店の経営、料理店・レストラン・喫茶店等飲食店の経営、スポーツ施設・ヘルスクラブの経営、ゴルフ練習場の経営、運動用品の販売及びこれらに付帯する一切の事業である。また、乙第14号証は、被請求人と三河湾リゾート・リンクスとの間で締結した平成8年7月1日付け「商標の使用権許諾に関する契約書」であり、その内容は、被請求人は三河湾リゾート・リンクスに対し、本件商標についての通常使用権を許諾する(第1条)もので、使用の範囲(内容)は、「宿泊施設」であり(第2条)、使用料は無償である(第3条)。さらに、乙第15号証は、2001年11月20日、生体エネルギーシステム研究普及協会発行の「π TECH・FORUM/パイテック・フォーラム」であり、その中で、三河湾リゾート・リンクスは、調理、生け簀、風呂にパイウォーターを利用した水を使用しているといった記事が掲載されている。
(12)乙第16号証によれば、被請求人は、本件商標について、佐野孝平及び三河湾リゾート・リンクスに対し、前者は指定商品中の「豆腐」について、また、後者は指定商品全部について、通常使用権を設定したことが認められる。
(13)乙第17号証によれば、佐野商店は、平成5年4月21日から同9年4月20日までの間も、豆腐製造業を営業することを許可されていた。
(14)乙第19号証は、佐野商店に対し、名古屋市千種区今池に所在の株式会社博多が、株式会社博多は、昭和39年から平成15年2月10日に至るまで佐野商店から豆腐を購入し、その代金は東海銀行今池支店に支払ったということを証明した一枚刷りである。
2.(1)前記1.で認定した事実及び答弁の理由を総合すると、被請求人及びその関連会社であるIBEグループは、浄水器「BCSπウォーターシステム」の製造、販売を行う会社であり、「πウォーター」は、被請求人等が取り扱う浄水器について使用される商標であって、アイ・ビー・イー販売の代理店である小林を通じて河合廣美(薫楓亭)等本件商標の通常使用権者に上記浄水器を販売したと認めることができる。
そして、各「商標の使用権許諾に関する契約書」の内容からみると、被請求人は、被請求人等が取り扱う浄水器を購入した顧客に対し、これら顧客が取り扱う「豆腐」、「飲食物の提供」、「宿泊施設の提供」などに、上記「πウォーター」商標の浄水器を利用して得た水を、生産物若しくは提供する飲食物又は提供の用に供する物等に使用したことを表示するために、本件商標を無償で使用許諾したと推認することができる。
この点に関しては、被請求人の「豆腐に商標『πウォーター』を付すということは、『πウォーター』という水を使用して豆腐を作ったからこそできることであって、それを示すためには当然水を生成する浄水器を示さなければならない。」、「レストランで提供される豆腐に『πウォーター』なる商標を付すためには、その豆腐を製造する上で使用した水(浄水器)が何であるかを示さなければ、意味がないものとなる。そこで、被請求人は、薫楓亭が確かに『πウォーター』を生成する浄水器を使用して豆腐を製造していることを示すために、同レストランが請求人と代理店契約を結んでいる小林から、その浄水器を購入した事実を示した。」旨の答弁からも窺い知れるところである。
(2)ところで、商標法第50条による商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、被請求人において、その請求に係る商品について登録商標を当該審判の請求の登録前3年以内に日本国内で使用していることを証明し、または使用していないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その登録の取消を免れない。
そして、商標は、自他商品を識別することをその本質的機能としているから、現実の使用においても、自他商品の識別標識としての機能が発揮される態様で使用されるべきであり、登録商標と形式的に同一の表示が商品に使用されていても、当該表示が、その商品について自他商品の識別標識として機能していると認められない場合は、すなわち商品の品質表示あるいは商品の原材料表示等として認識されるような場合には、当該登録商標を使用しているものということはできないと解すべきである。
しかるところ、本件請求に係る商品中に属する「豆腐」の包装用容器には、「πウォーター」の文字が表示されているが、該「πウォーター」の表示は、前記認定のとおり、佐野孝平が営業する豆腐店である佐野商店では、豆腐を製造する際に「πウォーター」商標の浄水器から得た水を使用しているということを示したものであり、豆腐についての商標というより、「πウォーター」なる商標を使用した浄水器から得た水を原材料に使用した商品を意味するものということができ、豆腐について自他商品の識別標識としての機能を発揮する態様で使用されるということはできない。
また、飲食物の提供(薫楓亭)、宿泊施設の提供(三河湾リゾート・リンクス)は、役務区分第42類に属する役務であって、本件請求に係る商品「豆腐,及びその類似商品」には属しないものである。したがって、飲食物の提供(薫楓亭)、宿泊施設の提供(三河湾リゾート・リンクス)についての「πウォーター」の表示の使用は、本件請求に係る商品「豆腐,及びその類似商品」について使用したということはできない。(もっとも、三河湾リゾート・リンクスは、本件商標についての通常使用権者であることは乙第16号証より認め得るが、本件商標を請求に係る商品「豆腐,及びその類似商品」について使用したという事実は何ら証明していない。)
加えて、「πウォーター」ないし「πウォーターシステム」に関し、「いい水飲んでいますか!?/当店では『水』にこだわりをもち環境と体にやさしいπウォーターシステムを利用しています。」、「調理に・・生け簀に・・お風呂に・・“π”のある風景 三河湾リゾートリンクス」、「やっぱりパイウォーターという水はすごい!・・」(乙第7号証及び乙第15号証)などと記載して宣伝広告している事実からしても、「πウォーター」なる語は、需要者の間でも、通常の水道水より健康によい水を指称するものと理解される場合が多いというのが相当であって、これを商品「豆腐」、「豆腐料理の提供」等について使用しても、自他商品又は自他役務の識別機能を有するものであると認識し得ないものといえる。
3.以上のとおりであるから、被請求人(商標権者)は、その通常使用権者が本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標を本件請求に係る商品「豆腐,及びその類似商品」のいずれについても使用していたことを証明したものということができない。また、被請求人は、使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標は、その指定商品中の「豆腐,及びその類似商品」についての登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2003-04-01 
結審通知日 2003-04-04 
審決日 2003-04-15 
出願番号 商願昭62-63547 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (132)
最終処分 成立  
前審関与審査官 川津 義人柴田 良一小池 隆 
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 井岡 賢一
茂木 静代
登録日 1993-06-30 
登録番号 商標登録第2549288号(T2549288) 
商標の称呼 パイウオーター、ウオーター 
代理人 志村 正和 
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所 

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