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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z09
管理番号 1086913 
審判番号 取消2002-30078 
総通号数 48 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2003-12-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2002-01-23 
確定日 2003-11-14 
事件の表示 上記当事者間の登録第4233536号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4233536号商標(以下「本件商標」という。)は、平成9年5月22日に登録出願、「NETMARKS」の欧文字を標準文字とし、第9類「測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,電線及びケーブル,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」を指定商品として、平成11年1月22日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品中「電子応用機械器具及びその部品」についての登録を取り消す、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べている。
1 請求の理由
本件商標は、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも、指定商品中「電子応用機械器具及びその部品」の指定商品について本件商標の使用をしていない。
2 答弁に対する弁駁
(1)請求人は、平成14年1月23日に、当時の商標権者である住友電気工業株式会社(以下「住友電工」という。)を被請求人として、不使用取消審判の請求を行った。
本件不使用取消審判を請求された住友電工は、平成14年2月21日に、本件商標権を株式会社ネットマークス(以下「被請求人」という。)に譲渡したものである。
住友電工が被請求人のために(被請求人に成り代わって)出願・登録したのであれば、なぜ、住友電工は不使用取消審判を請求されるに至るまで、商標権を譲渡しなかったのか、合理的な理由がない。
被請求人株式会社ネットマークスが、商標権の移転がなされるまで、商標権者でなかったことは明らかである。
また、被請求人の通常使用権は商標登録原簿に登録されていないばかりか、被請求人は使用許諾契約書を提出せず、あるいは、答弁書において使用許諾契約の契約条件についてもなんら開示するところはない。
請求人は、被請求人による本件商標の使用を認めるものではないが、仮に被請求人が本件商標を使用していたことがあったとしても、被請求人が通常使用権の存在、すなわち通常使用権の設定行為の存在を立証できない以上、商標権者の許諾無く当該商標を使用したものに過ぎないものである。
被請求人は、不使用取消審判に対する答弁書提出時において、通常使用権の存在を立証できなかったものであって、請求人は、被請求人が本件商標の通常使用権者であることを否認する。
(2)本件商標は、「ネットマークス」と一連の称呼が生じ、「ネット」「マークス」と称呼が分断されるものでも、「ネット」と「マークス」の二つの称呼が生じるものではない。
本件商標は、辞書に掲載されていない「NETMARKS」からなるものであって「造語」と考えられ、特段の観念を生じさせない。
本件商標は、被請求人が提出した乙第1号証ないし乙第30号証のいずれにも使用されていないことは明らかである。乙第1号証から乙第30号証のいずれの証拠も、本件商標を使用したという事実を証明するものではない。
(3)使用商標1について
乙第1号証の第1頁と第3頁の左上には赤字で白抜きの「ネットマークス」の表示がある。これは、商標としての使用ではない。むしろ、被請求人の商号である「株式会社ネットマークス」の標章として表示したものと解すべきものである。この「ネットマークス」の使用は、商標の使用の行為(商標法2条3項)のいずれにも該当しないことは明らかである。その他に、被請求人が「ネットマークス」を商標として使用したという証拠はない。したがって、乙第1号証から乙第30号証のいずれの証拠も、請求人が「ネットマークス」を使用したという事実を証明するものではない。
(4)使用商標2について
使用商標2の図形部分からは、特段の称呼は生じない。
使用商標の文字部分は、「NET」と、「M」を変形させた文字と「ARKS」とからなる文字部分とによって構成されている。「NET」からは「ネット」の称呼が生じる。
「M」を変形させた文字は「M」の中央部の「V」部を頂点において接続せず、頂点を突き抜けて交差しており、「M」と視認されるか、あるいは、Xの両端に縦方向に平行の2本を配置した「IXI」と視認される。
「M」を変形させた文字が「M」と視認される場合には、「M」を変形させた文字と「ARKS」とからなる文字部分からは、「マルクス」あるいは「マークス」の称呼が生じる。
「M」を変形させた文字が「IXI」と視認される場合には、「IXI」からは称呼が生じず、「アルクス」あるいは「アークス」の称呼が生じる。
したがって、使用商標2の文字部分全体から、「ネット」「マークス」、「ネット」「マルクス」、「ネット」「アークス」、「ネット」「アルクス」の称呼が生じる。
以上のとおり、いかなる場合においても、二段に記裁された「NET」と、「M」を変形させた文字と「ARKS」とからなる文字部分から、「ネットマークス」なる一連の称呼が生じる余地はない。
使用商標2の図形部分からは、「薄墨色の正三角形2個に挟まれたほぼ同大の赤地の一角が約二等辺三角形1個」あるいは、単純に「3個の三角形」という観念が生じる。
使用商標2の「NET」と「M」を変形させた文字と「ARKS」とからなる文字部分のうち、「NET」からは、「網」あるいは「正味の」といった観念が生じる。
「M」を変形させた文字と「ARKS」とからなる文字部分からは、「M」を変形させた文字が「M」と視認される場合には、「M」を変形させた文字と「ARKS」とからなる文字部分からは、全体として「MARKS」と視認される結果、「印」もしくは「記号」、あるいは、「ドイツ通貨であるマルク」もしくは人名の「マルクス」を想起させる。
「M」を変形させた文字が「IXI」と視認される場合には、全体として「IXI ARKS」と視認される結果、「IXI」を無視した場合には、英語の「ARK」の複数形、すなわち、ハリソン・フォードが主演した映画「失われたアーク」の「聖櫃」(せいひつ)を想起させ、「大きな箱」あるいは「聖なる箱」の観念を生じさせる。また、「M」を変形させた文字が「IXI」と認識される場合には、ローマ数字の「91」という観念が生じる余地もある。
(5)商標法第50条第1項括弧書きについて
使用商標2は、文字部分の約3倍の面積を締める図形部分について看者に強い印象を与えるものである。図形部分は、文字部分に比して3倍も面積が広いというだけでなく、この標章において唯一色彩が使われており、しかもそれが鮮明な赤色であるため、看者の注意は文字部分の「E」に突き刺さるように配置された赤地の二等辺三角形に注意が払われる。
したがって、使用標章3の識別力も、図形と文字の細み合わせ、なかんずく「E」に突き刺さるように配置された赤地の二等辺三角形と左右の正三角形から構成される図形部分が自他識別の重要な要素となっているものである。
使用商標2の文字部分は、二段に記載された「NET」と、「M」を変形させた文字と「ARKS」とからなる文字部分から「ネットマークス」なる一連の称呼が生じる余地はないものであり、本件商標と社会通念上同一と認められる商標に該当するものではない。
以上述べたとおり、使用標章3は、商標法50条1項括弧書きのいずれにも該当するものではない。
(6)乙各号証について
(ア)乙第1号証のパンフレットの第1頁と第3頁の左上には赤字で白抜きの「ネットマークス」の表示がある。これは、被請求人の商号である株式会社ネットマークスの標章として表示したものと解すべきものであり、商標の使用にはあたらない。
(イ)乙第2号証及び乙第9号証のカタログ、乙第3号証、乙第10号証及び乙第11号証の宣伝チラシ、乙第4号証、乙第12号証及び乙第13号証のCD‐ROM、乙第24号証ないし乙第28号証の展示会パンフレットに記載されているのは使用商標2である。この使用商標2は、商標法第50条第1項括弧書きのいずれにも該当するものではない。
(ウ)乙第5号証ないし乙第8号証及び乙第14号証ないし乙第23号証には、本件商標はもとより、使用商標2さえも使用されていない。
(エ)乙第5号証、乙第7号証及び乙第8号証の「BioNetri×スターターキット」あるいは「BioNetrixBAS4認証管理モジュール」、乙第6号証の「BioNetri×スターターキット」あるいは「BAS4スターターキツト年間保守費」、乙第14号証ないし乙第16号証の「SecurelD2000」「SecurelD Tokn...」「ACE/Server」、乙第18号証及び乙第19号証の「ISDNダイヤラWin95/98」、乙第20号証ないし乙第23号証の「ACE/SERVEライセンス」「easy link」「SecurelID トークンカード」等の記載は、本件取引の当事者間においては、これらの名称が商品を識別する標識として使用されていたことを推測させるものである。
(オ)乙第24号証の「Novell」、乙第25号証の「Computer Associates」の商標については、登録商標であることを示す「マルR」が明記されているのに対し、使用商標2については、登録商標であることを示す「マルR」は記載されていない。すなわち、被請求人自ら使用商標2が、登録商標の使用であることを認めていないことを示すものである。
(カ)乙第29号証の出展ブースの撮影写真は、商品の使用(商標法2条3項)に該当するものではない。
(7)結論
以上のとおり、本件商標は、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも、指定商品中「電子応用機械器具及びその部品」について登録商標の使用をしていないものである。
したがって、本件商標は商標法第50条第2項の規定により、本件商標の指定商品中、請求に係る商品についての登録を取り消されるべきである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第30号証を提出した。
1 本件審判の請求登録日である平成14年2月20日前3年以内において、被請求人は、当時の商標権者であった親会社の住友電気工業株式会社(以下「住友電工」という。)から、本件商標の独占的通常使用権を許諾され、通常使用権者として、本件商標を「コンピュータ周辺機器及びコンピュータソフトウェア」について継続して使用してきた(乙第1号証ないし乙第30号証)。
2 被請求人は、1997年4月1日、住友電工のシステムインテグレーション部門を母体に、株式会社野村総合研究所、日本電気株式会社、住友電設株式会社が参加して設立された会社である。
本件商標は、親会社である住友電工が、被請求人のために(被請求人に成り代わって)出願・登録し、管理してきたものであり、住友電工から被請求人に本件商標の譲渡が行われた(商標権の移転は、平成14年3月6日に登録がなされている。)
3 被請求人は、他社が製造した数多くのコンピュータ関連機器やコンピュータソフトウェアの中から、顧客(契約企業)に対し、最も適した製品を選択し、販売することを業としており、本件商標の他、乙第1号証に見られる「ネットマークス」の片仮名文字からなる使用商標1及び乙第2号証その他の乙各号証に見られる使用商標2とを並行して使用している。
本件商標と使用商標1とは、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標であり、使用商標2も、書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標であるから、いずれも、商標法第50条第1項括弧書きに規定する、社会通念上同一と認められる商標に該当する。
4 以下、使用商標1及び使用商標2が、本件審判請求登録日前3年以内に、当時、独占的通常使用権者であった被請求人により、本件審判請求に係る指定商品について使用されていた事実を乙第1号証ないし乙第30号証によって証明する。
(1)乙第1号証は、「NIKKEICOMMUNICATIONS」(1999年8月16日発行)に掲載された広告記事である。第1頁と第3頁の左上に、使用商標1が明示されている。
(2)乙第2号証は、被請求人が提供する「BioNetrix」商品及び関連役務についてのカタログである。「BioNetrix」とは、米国法人バイオネトリクス社のバイオメトリクス認証統合プラットフオームの総称であり、日本国内では、被請求人が正規代理店としてローカライズした日本語版を販売している。「BioNetrix」は、ユーザーが本人かどうかを認証する手段として、顔、指紋、声紋等の身体的特徴や特性を利用するバイオメトリクス認証に使用されるソフトウェアであり、コンピュータプログラムを記憶させたCD‐ROM、顔認証装置、手書きサイン認証装置、指紋認証装置等の商品一式がキットになって販売される。これらはすべて「電子応用機械器具及びその部品」の範疇に含まれる商品である。このカタログは、2001年4月に第2版として5000部印刷され、配布された。このことは、裏表紙の左下に記載された「S02-401B‐5.0BR」の表示から見て取れる。すなわち、「S02」は、セキュリティ関連のパンフレット、「401B」は、2001年の4月に第2版が印刷されたこと、そして、「5.0」は、計5000部製作されたこと、をそれぞれ示している。このカタログの表紙及び裏表紙には、使用商標2が付されている。
(3)乙第3号証は、乙第2号証で示した「BioNetrix」の商品宣伝用のチラシである。これは、2002年1月頃配布されたものであるが、右下に使用商標2が明示されている。また、被請求人の「BioNetrix」商品を導入している企業として、さくら情報システム株式会社が紹介されている。
(4)乙第4号証は、「BioNetrix」商品すなわち、コンピュータプログラムが記憶されたCD‐ROMの実物写真である。CD‐ROMの文字印刷面には、使用商標2が付されている。
(5)乙第5号証は、被請求人がさくら情報システム株式会社(以下「さくら情報システム」という。)に対して発行した2001年8月1日付の「BioNetrix」商品及び関連役務の見積書である。ここには、乙第2号証ないし乙第4号証に示した各商品名と、右上には「CTN03986」という見積番号が明記されている。
(6)乙第6号証は、さくら情報システムが被請求人に対して発行した平成13年8月9日付の「BioNetrix」商品及び関連役務の発注書である。左上に「NO.0108090ROI」という注文番号が記載され、備考欄には、乙第5号証で示された見積番号「CTN03986」が明記されている。
(7)乙第7号証は、被請求人がさくら情報システムに対して発行した2001年9月4日付の「BioNetrix」商品の出荷明細書である。これには、乙第6号証で示された「NO.0108090R01」という注文番号が明記されている。
(8)乙第8号証は、被請求人がさくら情報システム株式会社に対して発行した2001年9月20日付の「BioNetrix」商品及び関連役務の請求書である。これには、乙第6号証及び乙第7号証で示された「NO.0108090R01」という注文番号が明記されている。
(9)乙第9号証は、被請求人が提供する「SecurID」に関連する商品及び役務についてのカタログである。「SecurID」とは、米国法人RSA Security inc.社が開発したワンタイムパスワードカード方式の認証セキュリティシステムの名称であり、日本国内では、被請求人が代理店として販売している。「SecurID」用の商品であるサーバ管理用ソフトウェア「EasyLink」や、同じくダイアルアップ用ソフトウェア「ISDNダイアラ」は、単独でもセットでも販売できるようになっている。これらの商品が、「電子応用機械器具及びその部品」の範疇に含まれる商品であることは明らかである。
なお、このカタログの裏表紙の左下には、「2001 01 4,000」と明記されているから、2001年1月に4000部印刷され、配布されたことが読み取れる。このカタログの表紙及び裏表紙には、使用商標2が付されているから、2002年1月に、当時、独占的通常使用権者であった被請求人により、本件商標が、「電子応用機械器具及びその部品」について使用されていたことは明らかである。
(10)乙第10号証及び乙第11号証は、「SecurID」用のサ-バ管理ソフトウェア「EasyLink」と、同じくダイアルアップソフトウェア「lSDNダイアラ」の商品宣伝用のチラシである。これらは、1998年4月頃から1999年末にかけて配布されたものであるが、右上に使用商標2が明示されている。
(11)乙第12号証及び乙第13号証は、「SecurID」用のサーバ管理ソフトウェア「EasyLink」と、同じくダイアルアップソフトウェア「ISDNダイアラ」のCD‐ROM(コンピュータプログラムが記憶されたもの)の実物写真である。それぞれ、CD-ROMの文字印刷面に使用商標2が付されている。
(12)乙第14号証は、被請求人がキャノテック株式会社に対して発行した2001年5月11日付の「SecurID」商品及び関連役務の見積書、乙第15号証は、2001年5月16日付の注文書、乙第16号証は、2001年5月23日付発注シート(内部文書)である。これらには、同じ取引番号「E1500231」が記載されている。
(13)乙第17号証は、被請求人が、株式会社富士通ソーシアルサイエンスラボラトリに対して発行した2001年7月10日付「SecurID」用ダイアルアップソフトウェア「ISDNダイアラ」の請求書、乙第18号証は、2001年7月10日付の受領書、乙第19号証は、2001年8月3日付の注文書(買掛金の検収明細書)である。これらには、同じ取引番号「E2001072184」が記載されている。
(14)乙第20号証は、株式会社ユニシアコンピュータが、被請求人に対して発行した平成13年2月6日付の「SecurID」用サーバ管理ソフトウェア「EasyLink」他の商品と関連役務の注文書、乙第21号証は、2001年3月7日付の物品受領書、乙第23号証は、2001年3月27日付けの請求書である。これらには、同じ取引番号「00‐0538-00‐AHO‐1」が記載されている。
(15)乙第24号証ないし乙第28号証は、千葉の日本コンペンションセンター(幕張メッセ)で、毎年6月に開催されるネットワークソリューションの国際的な展示会「NETWORLD+INTEROP」の1997年から2001年までのパンフレットである。被請求人は、例年、この展示会にブースを出展しており、そこでは、本件商標を付した商品が譲渡目的のために数多く展示された。また、被請求人は、毎年スポンサーを務めているため、これらのパンフレットには、使用商標2が表示されている。
(16)乙第29号証は、乙第24号証ないし乙第28号証に示した1997年から2001年までの「NETWORLD+INTEROP」出展ブースでの撮影写真である。
(17)乙第30号証は、被請求人におけるカタログ製作の規則を表したものである。
5 以上のとおり、本件商標は、本件審判請求登録日前3年以内に、当時、独占的通常使用権者であった被請求人により、本件審判請求に係る指定商品について使用されていたことが明らかである。

第4 当審の判断
1 本件商標の使用者について
被請求人は、親会社の住友電工がネットワークに関する業務を取り扱う法人として設立された会社であることが認められる(乙第1号証)。
しかして、本件商標権は、請求人による不使用取消審判請求後に、前商標権者の住友電工から被請求人に譲渡され、平成14年3月6日に、その移転登録がなされていることが認められるが、それ以前において、専用使用権者、通常使用権者の設定登録がなされた記載はない(商標登録原簿)。
しかしながら、被請求人は、前商標権者が親会社の住友電工であったこと、本件商標権は請求人による不使用取消審判請求後であるが住友電工から被請求人に譲渡されたことよりすれば、被請求人より本件商標の使用許諾を立証する証左は提出されていないとしても、住友電工と被請求人株式会社ネットマークスとの間において、本件商標の使用許諾はなされていたものというのが社会通念に照らし相当である。
2 使用商標2について
被請求人の提出に係る乙各号証によれば、次の事実が認められる。
(1)被請求人の提出した乙第2号証及び乙第9号証のカタログ、乙第3号証、乙第10号証及び乙第11号証の宣伝チラシ、乙第4号証、乙第12号証及び乙第13号証のCD‐ROMによれば、被請求人は、これらに使用商標2を表示し使用していること。
(2)乙第2号証の「BioNetrix」商品及び関連役務についてのカタログによれば、「BioNetrix」は、米国法人バイオネトリクス社のバイオメトリクス認証統合プラットフオームの総称であり、日本国内では、被請求人が代理店としてローカライズした日本語版を販売している。「BioNetrix」は、ユーザーが本人かどうかを認証する手段として、顔、指紋、声紋等の身体的特徴や特性を利用するバイオメトリクス認証に使用されるソフトウェアであり、コンピュータプログラムを記憶させたCD-ROM、顔認証装置、手書きサイン認証装置、指紋認証装置等の商品一式がキットになって販売していること。これらの商品は、「電子応用機械器具及びその部品」の範疇に含まれる商品と認め得ること。
さらに、ここのタログは、2001年4月に第2版として5000部印刷され、配布されたこと。
(3)乙第3号証の商品宣伝用のチラシによれば、2002年1月頃配布されたものであるが、右下に使用商標2が明示されている。また、被請求人の「BioNetrix」商品を導入している企業として、さくら情報システム株式会社が紹介されていること。
(4)乙第4号証の「BioNetrix」商品である、コンピュータプログラムが記憶されたCD-ROMには、使用商標2が付されていること。
(5)乙第5号証の被請求人がさくら情報システム株式会社に対して発行した2001年8月1日付の見積書、乙第6号証の平成13年8月9日付の発注書、乙第7号証の2001年9月4日付けの出荷明細書、乙第8号証の2001年9月20日付けの請求書によれば、コンピュータプログラムを記憶させたCD-ROM、顔認証装置、手書きサイン認証装置、指紋認証装置等の商品一式がキットになって商品を販売していること。
(6)乙第9号証のカタログによれば、「SecurID」は、米国法人RSA Security inc.社が開発したワンタイムパスワードカード方式の認証セキュリティシステムの名称であり、日本国内では、被請求人が代理店として販売していること、「SecurID」用の商品であるサーバ管理用ソフトウェア、単独でもセットでも販売できるようになっていること、これらの商品が、「電子応用機械器具及びその部品」の範疇に含まれる商品であること。
そして、このカタログは、2001年1月に4000部印刷され、表紙及び裏表紙に使用商標2が付されていること。
(7)乙第10号証及び乙第11号証は、サ-バ管理ソフトウェア、ダイアルアップソフトウェアの商品宣伝用のチラシであり、これらは、1998年4月頃から1999年末にかけて配布されたものであること。これらに使用商標2が表示されていること。
(8)乙第12号証及び乙第13号証のCD-ROM(コンピュータプログラムが記憶されたもの)の実物写真は、サーバ管理ソフトウェア、ダイアルアップソフトウェアであり、このCD-ROMには使用商標2が付されていること。
(9)乙第14号証の被請求人がキャノテック株式会社に対して発行した2001(平成13)年5月11日付の見積書、乙第15号証の2001年5月16日付の注文書、乙第16号証の2001年5月23日付発注シート及び乙第17号証の被請求人が、株式会社富士通ソーシアルサイエンスラボラトリに対して発行した2001年7月10日付の請求書、乙第18号証の2001年7月10日付の受領書、乙第19号証の2001年8月3日付の注文書及び乙第20号証の株式会社ユニシアコンピュータが被請求人に対して発行した平成13年2月6日付の注文書、乙第21号証の2001年3月7日付の物品受領書、乙第22号証の2001年3月21日付の検収通知書、乙第23号証の2001年3月27付の請求書によれば、サーバ管理ソフトウェアが販売されていたこと。
上記事実よりすれば、被請求人は、使用商標2を本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商品「顔、指紋、声紋等の身体的特徴や特性を利用するバイオメトリクス認証に使用されるソフトウェア(コンピュータプログラムを記憶させたCD-ROM)、顔認証装置、手書きサイン認証装置、指紋認証装置等の商品」及び「サーバ管理ソフトウェア(CD-ROM」」について、使用していたものというべきである。
3 使用商標2は、本件商標の使用に該当するか否かについて
本件商標は、別掲に表示したとおり、「NETMARKS」の文字よりなるところ、「NETMARKS」の文字(語)は、全体として特定の意味を有するものとは認められない造語よりなるものであって、「ネットマークス」の称呼を生ずるものである。
これに対し、使用商標2は、別掲に表示したとおり、逆二等辺三角形の底辺に接したと左右の正三角形の図形の下部に「NET」と「MARKS」(「M」の文字はやや変形してなる。)の文字を上下二段に横書きした構成よりなるところ、図形部分と文字部分とは、常に一体のものとしてみなければならない特段の理由は認められないから、文字部分は独立して自他役務の識別標識としての機能を果たしているものというのが相当である。
しかして、「NET」と「MARKS」の文字を上下二段に横書きした構成は、一体不可分のものとして、看取、理解されるものであり、該文字部分よりは、全体として「ネットマークス」の称呼を生ずるものである。
してみれば、本件商標と使用商標2とは、共に「ネットマークス」の称呼を同じくし、「NET」と「MARKS」中「M」の文字はやや変形してなるとしても、両文字を上下二段に横書きし構成は、本件商標を構成する「NETMARKS」の文字と同一視し得るものであるから、使用商標2は、商標法第50条第1項括弧書きに規定する、社会通念上同一と認められる商標に該当するものというのが相当である。
4 まとめ
前記した事実よりすれば、本件商標の通常使用権者と認め得る被請求人は、本件商標を本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、請求に係る指定商品中「電子計算機用プログラムを記憶させた磁気ディスクその他の周辺機器)」について、使用していたものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、請求に係る商品について、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別 掲
使用商標1


使用商標2


審理終結日 2003-02-05 
結審通知日 2003-02-10 
審決日 2003-02-24 
出願番号 商願平9-119854 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Z09)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 滝沢 智夫
特許庁審判官 岩崎 良子
小林 薫
登録日 1999-01-22 
登録番号 商標登録第4233536号(T4233536) 
商標の称呼 ネットマークス 
代理人 松尾 和子 
代理人 日野 修男 
代理人 中村 稔 
代理人 大島 厚 
代理人 熊倉 禎男 
代理人 井滝 裕敬 
代理人 吉田 和彦 
代理人 加藤 ちあき 

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