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審決分類 |
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 129 |
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管理番号 | 1086904 |
審判番号 | 取消2002-30672 |
総通号数 | 48 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2003-12-26 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2002-06-11 |
確定日 | 2003-11-05 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1603902号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第1603902号商標の指定商品中、「コーヒー,ココア,ウーロン茶,紅茶,コーヒーシロップ」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録1603902号商標(以下「本件商標」という。)は、「KYOWA」の欧文字を横書きしてなり、昭和55年5月21日に登録出願、第29類「茶,コーヒー,ココア,清涼飲料,果実飲料,氷」を指定商品として、同58年7月28日に設定登録され、その後平成5年12月22日に商標権の存続期間の更新登録がされているものである。 第2 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第5号証を提出している。 1.請求の理由 本件商標は、その指定商品中「コーヒー,ココア,ウーロン茶,紅茶,コーヒーシロップ」について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用された事実がないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。 2.答弁に対する弁駁 (1)被請求人は、乙第2ないし第9号証によって本件登録商標を「プーアル茶」について使用していることを証明しようとしている。しかしながら、「プーアル茶」は、本件商標登録の取消対象としている指定商品「コーヒー,ココア,ウーロン茶,紅茶,コーヒーシロップ」の、いずれでもない。 したがって、取消対象に係る上記のいずれかの商品について本件商標を使用した事実は、いまだ証明されていない。乙第2号証にて、本件商標が使用されている時期は、パンフレット中に表示されておらず、客観的に証明されていない。 (2)中国茶は、緑茶、青茶、紅茶、黒茶、黄茶及び白茶の六大茶に分類され、これに花茶を加える分類方法もある(甲第1ないし第3号証参照)。 ウーロン茶は青茶の代表格、プーアル茶は黒茶の代表格として位置づけられいてるから、いずれも中国茶の範疇に属している。「青茶」に属するウーロン茶は、半醗酵(弱醗酵から完全醗酵手前までの間の醗酵状態)のお茶であり、茶葉の水分を蒸発させた後軽く揺り動かして醗酵させ、その後釜妙りして酸化酵素の働きを止め、茶葉を操んで乾燥して製造される。緑茶と紅茶の性質を備えており、醗酵の程度に応じて香りや味が、花・果実・ミルク・蜜・シナモンなどに変化する性質を有している(甲第1ないし第5号証参照)。 他方、「黒茶」に属するプーアル茶は、いわゆる「後醗酵」のお茶であり、最初に新鮮な茶葉を釜で妙り、醗酵しない内に茶葉を操み、これに水分を与えて積み上げることによって醗酵させ、再度操んだ後乾燥させて製造されており、薬や木に似た香りと味を呈するものである(甲第1ないし第3、及び第5号証参照)。 (3)このようにウーロン茶とプーアル茶とは、その製造方法、品質、香り、味において完全に相違しているから、全く別のお茶と言わなければならない。しかも、正式なお茶の入れ方も相違しており(甲第2号証26、27、60及び67頁参照)、一方が他方に属する関係ではないし、同一視できる関係にもないのである。 (4)したがって、被請求人が本件商標を「プーアル茶」について使用していることを証明したとしても、本件審判請求において取消対象としている指定商品のいずれかについて本件商標を使用したことを証明したことにはならない。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨次のように述べ乙第2ないし第16号証(枝番を含む)を提出している。 (1)上記乙第2ないし第9号証は、その製造年月日、発行日、出荷年月日等により、いずれも本件審判請求の登録前3年以内のものであることが明らかである。 (2)乙第2号証は被請求人が本件商標を使用している缶入りの「プーアル茶」の写真であり、乙第3号証は同商品の包装用箱の写真である。 乙第2及び第3号証から明らかなように、被請求人は本件商標をプーアル茶缶飲料及び同商品包装用箱に使用している。 乙第3号証記載中、包装用箱側面に印字された「030513」は賞味期限を表しており、同数字は「2003年5月13日」を意味するので、ここから本件商標が本件審判請求の登録前3年以内に使用されていることが立証される。なお、プーアル茶缶飲料の賞味期限は1年であるので、当該商品は2002年5月13日に製造されたものである。 乙第4号証は、乙第2号証に示したプーアル茶缶飲料の包装用缶を製造する「大和製罐株式会社」の証明書、乙第5号証は、プーアル茶缶飲料にプーアル茶を充填し、被請求人へ出荷する「三和罐詰株式会社」の証明書、乙第6号証は、プーアル茶缶飲料を販売する「千代田開発株式会社」の証明書である。 乙第7号証は、被請求人の「三和罐詰株式会社」宛の発注書の写しである。交付日に「2年7月5日」と表示されていることから、これが「2002年7月5日」に交付されたことが立証される。また、「品名・荷姿」の欄に記載された「プーアル茶 30本 190GM×30」との表示は、乙第3号証中・包装用箱側面に印刷された「190g30缶入」と符合している。 乙第8号証は、「三和罐詰株式会社」の納品書の写しである。同書中、商品名の欄に「協和発酵 プーアル茶」と記載されていることから、これが乙第2号証に示したプーアル茶に関する納品書であることが明らかである。また、摘要の欄に「02/05/13製造」と記載されていることから、プーアル茶缶飲料が2002年5月13日に製造されていることが立証される。 乙第9号証は、平成13年におけるプーアル茶缶飲料の納入実績一覧表である。 以上の乙各号証により、本件商標が日本国内において、本件審判請求の登録前3年以内に「中国茶(プーアル茶)」について実際に使用されていることが証明されるものである。 (3)次に、指定商品に関する類似商品審査基準における「ウーロン茶」とは「中国茶」の意味と認められるので、「プーアル茶(中国茶)」について使用されている本件商標は本件審判において取消対象とされ指定商品について実際に使用されているものであるから、その登録を取り消されるべきでないことは明らかである。 (4)本件商標は、昭和55年(1980年)5月21日出願、昭和58年(1983年)7月28日付にて登録となったものである。 しかして、本件商標の出願時である1980年当時、日本人にとってウーロン茶以外の中国茶は馴染みのない商品であった。したがって、当時はウーロン茶は中国茶と同義で用いられており、類似商品・役務審査基準における商品分けも当時の規定ぶりのまま見直されることなく現在まで踏襲されているものである。 (5)乙第16号証は、特許庁電子図書館中の「商品・役務名リスト」であって、これを見ると、ウーロン茶の英語表記は「oolong tea[Chinese tea]」と記載されている。これも同審査基準における「ウーロン茶」は中国茶の意味として、あるいは中国茶の例示として規定されていることを示す一証左である。 (6)乙第10及び第11号証では、ウーロン茶は1970年前後から少しずつ輸入され始め、1970年に大阪で開催された万国博覧会の中国パビリオンでもウーロン茶が紹介された。同パビリオンではウーロン茶の試飲に長い行列ができたが、これは、現在の日本においては中国茶の代名詞と言えるウーロン茶ですら、当時の日本人にとっては馴染みのない飲料であったことを示す一証左である。その後、1979年に国民的アイドル歌手だった「ピンクレディー」が、テレビの歌番組の中でウーロン茶を飲んで痩せたことを披露すると、ダイエットブームと相俟ってウーロン茶は大ブームとなり、1970年にはたった2トンだった輸入量も280トンにまで拡大した。さらに、1981年に缶入りウーロン茶が発売されると同商品はあっという間に全国へ広がった。以来、ウーロン茶は我が国における中国茶の代名詞として定着したものである。 (7)乙第11号証の「中国茶 風雅の裏側」(平野久美子著)において、ピンクレディーが火付け役となったウーロン茶のブームを中国茶の「第一次ブーム」と、缶入りウーロン茶が発売された後のブームを中国茶の「第二次ブーム」と位置づけている。このことは、我が国において上述のウーロン茶ブーム以前には中国茶ブームは無かったこと、換言すれば当時は中国茶と言えばウーロン茶を意味したことを示唆するものといえる。 乙第12号証は、中国茶に関する書籍「おいしい中国茶」(林 聖泰著)であって、その記載中、第10頁には「日本では中国茶の代名詞のようになった烏龍茶」との記載が、請求人提出に係る甲第2号証中には「日本人が中国茶と聞くと、烏龍茶を思い浮かべる方が多いと思います」との記載があるが、これも被請求人の主張を裏付ける証左である。 (8)乙第13号証は、「茶」に関する専門書「日本茶/紅茶/中国茶」(南麗子著)の題号であって、これからも明らかなように、大きく「日本茶」「紅茶」「中国茶」に分類される。ウーロン茶はこのうちの中国茶に属し、極めて多種類に及ぶうちの一種にすぎないものであることは、請求人が提出した甲第2号証等からも明らかなところである。 また、乙第14号証はインターネット上のオンラインショップサイト「楽天市場 いつぷく茶屋」の打ち出しであるが、同ショップでは「日本茶・コーヒー・中国茶・紅茶」を扱っており、特に中国茶をウーロン茶とそれ以外の中国茶に区分けしていることはない。ウーロン茶を販売する店であれば、当然他の中国茶も販売しているのである。そして、お中元ギフト用の商品としては「日本茶・中国茶・紅茶」の詰め合わせ商品が実際に販売されている。これらのことは、中国茶のうちウーロン茶のみを紅茶と同列に扱う上記審査基準は現実の取引市場にそぐわないものであることを示す証拠である。 (9)以上のとおり、指定商品に関する類似商品審査基準における「ウーロン茶」とは「中国茶」の意味と認められ、「プーアル茶(中国茶)」について使用されている本件商標は本件審判において取消対象とされた指定商品について実際に使用されているものである。 第4 当審の判断 被請求人は、本件商標を本件取消請求に係る商品に本件審判請求の予告登録前3年以内に日本国内において使用している旨主張し、それを証する書面として乙第2ないし第16号証を提出しているので、提出に係る各乙号証について検討する。 乙第2及び第3号証は、商品「プーアール茶」の包装用缶容器及びその外装用箱等を撮影した写真であること並びにそのいずれにも本件商標と社会通念上同一といい得る商標が付されていることが認められる。 また、乙第4ないし第6号証の証明書に掲げられた写真にも、乙第2号証に示された商品と同一の商品が撮影されていることが認められる。 さらに、乙第7ないし第9号証は、商品「プーアール茶」に係る取引書類と認められるところ、これらには、本件商標が表示されていない。 ところで、請求人の提出に係る甲第1ないし第5号証によれば、「ウーロン茶」と「プーアール茶」はいずれも中国茶の範疇に属する商品ではあっても、その成分、性質、製造方法等を異にする別種の商品であることが明らかであり、この種業界においても両者は区別して取り引きされているものといえる。 しかして、上記乙第2ないし第9号証に示された商品は、いずれも「プーアール茶」と明記されており、「ウーロン茶」とは明らかに異なるものといわざるを得ない。 そうすると、被請求人が本件商標を使用しているとする商品「プーアール茶」は、本件取消請求に係る商品「コーヒー,ココア,ウーロン茶,紅茶,コーヒーシロップ」のいずれにも含まれない商品と言うべきである。 被請求人は、乙第10ないし第16号証を提示して、「プーアル茶」は「中国茶」であり、「中国茶」は、「ウーロン茶」の意味である旨述べているが、上記のとおり、「プーアール茶」及び「ウーロン茶」がいずれも中国茶の範疇に属する商品であることがいえるとしても両者は明らかに異なる商品であるから、これらの証拠によって、直ちに「中国茶」が「ウーロン茶」と同義であり「ウーロン茶」と「プーアル茶」が同種同品であるということはできない。 してみれば、被請求人は、本件商標を本件取消請求に係る商品に本件審判請求の予告登録前3年以内に日本国内において使用していたことを証明したものということができない。また、請求人は、使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。 したがって、本件商標は、その指定商品中の「コーヒー,ココア,ウーロン茶,紅茶,コーヒーシロップ」についての登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-09-02 |
結審通知日 | 2003-09-05 |
審決日 | 2003-09-24 |
出願番号 | 商願昭55-41088 |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Z
(129)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 柴田 良一 |
特許庁審判長 |
大橋 良三 |
特許庁審判官 |
松本 はるみ 富田 領一郎 |
登録日 | 1983-07-28 |
登録番号 | 商標登録第1603902号(T1603902) |
商標の称呼 | キョーワ |
代理人 | 岸田 正行 |