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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 124
管理番号 1078459 
審判番号 審判1999-31356 
総通号数 43 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2003-07-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 1999-09-30 
確定日 2003-06-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第2583060号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第2583060号商標(以下「本件商標」という。)は、「TEMPEST」の欧文字を横書きしてなり、平成3年9月6日に登録出願、第24類「運動具、その他本類に属する商品」を指定商品として、同5年9月30日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品中「運動具(乗馬用具および乗馬ぐつを除く。)」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証を提出した。
(1)被請求人は、本件商標をその指定商品中「運動具(乗馬用具および乗馬ぐつを除く。)」について、日本国内において継続して3年以上使用していない。
また、本件商標は、その商標登録原簿(甲第2号証)で明らかなように、他人に専用使用権又は通常使用権が設定されていない。
したがって、被請求人は、日本国内において継続して3年以上、指定商品中「運動具(乗馬用具および乗馬ぐつを除く。)」について、本件商標を使用しておらず、しかも、その不使用について正当な理由があるとも認められない。
(2)被請求人の答弁に対する弁駁
(ア)被請求人は、台湾のプロ・ドライブ(ファーイースト)インコーポレイテッド(以下「プロドライブ社」という。)の商品「ゴルフクラブ」について、本件商標が付されているパンフレット(乙第1号証)を提示するとともに、当該商品をサンプルとして輸入したことを示すインボイス(乙第2号証)によって、本件商標の使用を主張しているが、当該証拠によっては、使用の事実を立証することはできない。
(イ)すなわち、被請求人提出のインボイス(乙第2号証)は、そもそも、これが真正か否かについて疑義がある。
なぜならば、普通のインボイスは、請求金額の振込先である銀行名や口座番号が指定されて記入されているのが一般的であるのに対し、被請求人の示す輸入インボイス(乙第2号証)には、それらの記載が全く無い。
(ウ)たとえ、それが真正なものであるとしても、当該インボイス(乙第2号証)をもってしては、本件商標が使用された事実を立証したものということはできない。
すなわち、当該インボイス(乙第2号証)は、本件商標と同一の商標を付したプロドライブ社の商品「ゴルフクラブ」を審判請求(の予告登録)前3年以内に、たった1度だけ、それも30個のみを株式会社酒井商会が購入したことに対するプロドライブ社からの請求書の体裁をなす書面に止まるものである。
ただし、請求しておきながら、振込先も記載されていない書面であることも明らかである。
まして、本件商標を付したゴルフクラブが販売されたとか、あるいは、販売のために展示されたというような事実は全く示されていない。
すなわち、仮に、販売されたとすれば、それを示す請求書や送り状などが提出される筈だからである。
さらに、上記のようなサンプルとしての商品「ゴルフクラブ」は、実質的な意味において商標法上の商品ということはできない。
有斐閣発行の「商標(第3版)」(網野誠著)(甲第3号証)によれば、商品とは「一般市場で交換することを目的として生産され、かつ、それ自身使用価値を有する有体動産をいう。」とされているが、サンプルとしての商品は転々流通することもなく、また、交換価値も有しないのであるから、商標法上の商品ということはできない。
したがって、被請求人提出の乙第2号証によっては、商品について使用したことを立証することができず、乙第2号証は、使用の事実を示す証拠にはなり得ない。
(エ)一方、被請求人提出の乙第2号証が実質的な使用を示しているか否かについても問題がある。
商標法第50条不使用取消審判の目的とするところは、実質的に不使用の商標の独占を排し、その使用を欲する第三者のために、これを開放するところにあるので、単に、不使用取消審判を免れる目的で商標の使用をするかのような外観を呈する行為があっただけでは、実質的な使用があったということはできない。
被請求人提出の乙第2号証は、仮に、それが真正なものであったとしても、単に、プロドライブ社の商標「TEMPEST」を付した商品「ゴルフクラブ」がサンプルとして30個、それもたった1度だけ、酒井商会によって購入されたという事実のみを示すものであって、商標法第50条第2項に定める使用の事実、すなわち、法目的に沿った実質的な使用の事実を立証するものではない。
(オ)被請求人提出の乙第3号証の件であるが、被請求人によれば、「本件審判請求は、商標法の趣旨に反するものであり、却下されるべき・・・。」とあるが、そもそも商標法の趣旨は、使用することによって、商標に蓄積された信用を保護するところにあり、不使用の登録商標に対して、排他独占的な権利を与えておくのは国民一般の利益を不当に侵害し、かつ、その存在により、権利者以外の商標使用希望者の商標の選択の余地を狭めることとなる。
そして、従来は、本審判の請求人適格を「利害関係人」に限るとされていたものを改めて、平成8年法改正で「何人」にも認めることとしたものである。その理由は発明協会発行の「特許庁編 工業所有権法逐条解説(第14版)」(甲第4号証)によれば、以下のようなものである。
すなわち、「不使用取消審判制度は、商標法の変遷の中では、公益的な観点から職権又は審査官の審判請求により不使用商標の取り消しがなされていたこともあり、公益的な要請はもともと高いといえるうえに、近年、不使用の登録商標の累積により、他人の商標選択の幅の狭小化、特許庁における審査負担増、審査遅延などの事態が生じており、これを抑制する手段として、当該審判の公益的重要性が一層高くなってきていることや平成8年の一部改正で更新時の使用状況の審査を廃止したため、特許庁が直接的に不使用商標の取り消しに関与することができなくなったこと等を背景として、不使用商標の整理についての一層の促進を図る」ために「何人」も不使用取消審判を請求できることとしたのである。
このような事情に即して考えるならば、法第50条の「何人」の中には、文理上からはもちろんのこと、公益上の理由からも弁理士が請求人適格として含まれるのは当然であると思料する。
(3)以上のように、被請求人提出の乙第1号証ないし乙第3号証によっては、本件商標を指定商品中「運動具(乗馬用具および乗馬ぐつを除く。)」について継続して3年以上、日本国内において使用した事実を立証できず、被請求人の主張は何ら妥当性がない。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、その指定商品中の「運動具(乗馬用具および乗馬ぐつを除く。)」についての登録を取り消されるべきである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、又は、本件審判の請求を却下する、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。
(1)被請求人は、取消請求に係る商品中「ゴルフクラブ」について、本件商標を使用している。
(ア)本件商標は、英文字「TEMPEST」よりなるが、被請求人提出の乙第1号証(ゴルフクラブのパンフレット)で示されているとおり、本件商標は、プロドライブ社の商標であり、被請求人は、同社の「ゴルフクラブ」を日本で販売するため、本件商標の登録を受けたものである。
(イ)被請求人提出の乙第2号証(輸入インボイス)で示されているとおり、被請求人は、ブロドライブ社の商品「ゴルフクラブ(ウッドドライバー)」を日本で販売するにあたり、予め同社の商品を取引先に示すサンプルとして30本を輸入した。
その輸入年月日は、乙第2号証に示すように、1998年(平成10年)6月10日であるので、本件審判請求(の登録)前3年以内の使用に該当する。
因みに、乙第2号証には、商品「TEMPEST」のほかに、「F―1 GUY」ブランドの「ゴルフクラブ」も同じく30本サンプル輸入されたことが示されているが、請求人が甲第1号証として提出した本件商標の商標公報に示すように、商標「F―1 GUY」も同時に被請求人が商標登録している。
(ウ)以上のように、被請求人は、本件商標を商品「ゴルフクラブ」について、本件審判請求(の登録)前3年以内に我が国において使用した事実がある。
(2)本件審判請求は、商標法の趣旨に反するものであり、却下されるべきである。
乙第3号証(弁理士名簿)に示すように、請求人吉田勝廣は、弁理士登録番号第7769号として弁理士会に所属する弁理士である。
商標法第50条は、商標登録取消審判の請求人適格を特には限定せず、「何人も」請求することができると規定しているが、商標登録制度は、そもそも自己の商品について使用する商標を登録制度を通じて保護することを目的としている。
したがって、商標法第50条が規定する取消審判もその前提として、自己の商標を保護するために必要な範囲において許されるものであり、単に、不使用という事実を理由に、あたかも制裁として取消審判制度を濫用することが許されるものではない。
この点は、改正前の規定が利害関係を必要としていたこととは異なるものであり、不使用取消審判に利害関係が必要でなくなったからといって、審判制度の濫用は許されるべきではない。
弁理士は、依頼人の商標を保護するため、その代理人として特許庁に対して手続きを行うことを法的に認められているが、自ら法の番人であるかのように振る舞い、正式に商標登録されている他人の商標登録の取り消しを求めることは、弁理士法が弁理士に与えた業務範囲を逸脱するものである。
事実として、本来の請求人名を韜晦するため、ダミーとして、他人の氏名を借りて不使用取消審判が請求されていることはあるが、一般人が、これを行うことと、弁理士が自ら行うこととでは、法の重みは自ずと異なる。
このような国家資格人たる弁理士が弁理士法に反するような行為をすることは公序良俗に違反するものであり、そもそも弁理士倫理に反する。
よって、弁理士を請求人とする本件審判請求は、不適法なものとして却下されるべきである。
(3)請求人は、乙第2号証の前記インボイスが、振込先の銀行名や口座番号の記載がないことのみをもって、真正か否かの疑義がある旨主張しているが、これは一般的な場合からの見解であって、長年続いている取引者間で様々な決済方法が行われていることを知らない者の反論である。
いうまでもなく、貿易代金の決済には、請求人がいうような商品代金の銀行振込という方法もあるが、むしろ、代金の回収が難しい海外貿易においては、商品を先に送って代金を後から送金してもらうという決済方法は嫌われており、銀行が支払いを保証した信用状(L/C)による決済のほうが一般的である。
ここに偶々、被請求人代理人の手元にある韓国企業から国内企業に向けて発行された輸出インボイスの写し(乙第4号証)があるが、この場合においても、支払条件はL/C決済であり、荷受人として、第一勧業銀行の名前は見られるものの、請求人がいうような振込銀行の口座番号など、どこにも書かれていない。
また、本件の場合、被請求人会社とインボイスの発行人である台湾のプロドライブ社とは非常に長年にわたる取引関係にあり、日常的に取引の決済が行われている関係上、取引銀行や信用度については、相互に熟知しており、今回提出のインボイス(乙第2号証)も、僅か30本程度のサンプルとして輸入したゴルフクラブの代金であり、金額も24万円程度のものであるので、他の商品代金とともに、電信送金している。
そのため、当該インボイスには、敢えて、先方の銀行口座名や口座番号が記載されていない。
(4)請求人は、今回、被請求人が使用証拠として提出した商品が、サンプルとして、1度だけ、しかも、30個のみ輸入したことをもって、サンプル商品の商品性を否定しようとしている。
商標法上の使用(に該当するか否か)の議論として、商標が付された商品自体や商標を表示した商品のパンフレットなどが日本にあったか否かが、まず重要であり、その前提として、商標法第2条第3項第2号では、「商品に標章を付したものを輸入する行為」も商標の使用と定義している。
つまり、輸入行為の場合には、海外の企業と国内の企業との間で商標の使用が行われたことを意味しており、商標法上は、それだけで、商標の使用を認めるに十分である。
請求人の主張のように、輸入された商品が現実問題として、さらに、取引業者間を転々流通したという事実は必要でない。
請求人が引用する論文(網野)は、商標法上の商品の性質を抽象的に論じているのであり、本件商品のゴルフクラブが当該論文にいう「一般市場で交換することを目的として生産され、かつ、それ自体、使用価値を有する有体動産」として、商標法上の商品であることは疑いがない。
請求人は、この定義のどの部分が被請求人の商品「ゴルフクラブ」に欠けているというのであろうか。
また、請求人は、輸入した商品の数も問題にしているが、請求人の主張では、何個以上が商品であり、何個以下が商品でないとしているのであろうか。
また、輸入回数が1回きりであることも請求人は問題にしているが、商品サンプルを何回にも分けて仕入れるような無駄なことを営利を目的とする者が行う筈はない。
本件において、30本という数は、被請求人の取引先である卸売業者や小売業者に提示し、販売活動を現実に行う数として、むしろ適正であり、その信憑性を窺わせる。
仮に、百歩譲って、請求人が言うように、サンプル商品についての使用が「実質的な意味での商標法上の商品」でないとされた場合を考えても、サンプル商品を取引先に提示することは、「実質的商品」の販売活動の一環であり、宣伝広告にあたる。
つまり、被請求人は、商品が付された現物の商品によって、宣伝広告活動を行ったことになるので、商標法第2条第3項第7号に規定する「商品に関する広告…に標章を付して展示し、頒布する行為」に該当する。
よって、本件商標が使用されたことは、いかなる観点からも疑いがない。

4 当審の判断
(1)当事者間に利害関係の有無について争いがあるので、先ず、この点について検討する。
被請求人は、請求人の利害関係について言及しているが、平成8年6月12日法律第68号によって、同9年4月1日(本件審判請求は、平成11年10月1日)から施行された商標法第50条第1項の規定によれば、同審判は、何人も請求することができるものであり、その立法趣旨(甲第4号証参照)からみて、弁理士といえども例外でないと判断するのが相当である。
そして、本件審判請求において、請求人による権利の濫用があったとする事実は認められない。
してみれば、この点に関する被請求人の主張は理由がないものというべきである。
(2)次に、本案に入って検討する。
(ア)本件商標を使用した事実を証明する証拠として、被請求人が提出した乙第1号証(商品「ゴルフクラブ」のパンフレット)及び乙第2号証(輸入インボイス)によれば、被請求人は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標を取消請求に係る指定商品中の「運動具」の範疇に属すると認められる「ゴルフクラブ」に使用していた事実を認めることができる。
しかして、請求人は、乙第2号証(輸入インボイス)には、請求金額の振込先の銀行名や口座番号が指定されていないから、正式なものではないと主張しているのに対して、被請求人は、請求金額の振込先の銀行名や口座番号が指定されていないインボイスもあると主張し、その事実を立証するものとして乙第4号証のインボイスを提出しており、この点に関する被請求人の主張は正しいものと判断される。
(イ)また、請求人は、乙第2号証の輸入インボイスに示されているのは、サンプルとしての商品「ゴルフクラブ」の取引であり、これは商標法上の商品とはいえないものであり、しかも、その数量は僅か30個であり、この程度の使用では、不使用取消を免れるに足る使用には該当しない旨主張している。
しかしながら、上記「ゴルフクラブ」がサンプルであるとしても、対価を払っている以上、商標法上の商品とみるのが相当であり、かつ、不使用取消を免れるに足る使用の判断が取引数量により左右されるとはいえないとみるのが相当であるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
そして、前記輸入インボイスは、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において使用されていたものである。
(3)以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第50条の規定により、指定商品中の「運動具(乗馬用具および乗馬ぐつを除く。)」についての登録を取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2003-04-08 
結審通知日 2003-04-11 
審決日 2003-04-23 
出願番号 商願平3-92679 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (124)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 半戸 俊夫 
特許庁審判長 滝沢 智夫
特許庁審判官 鈴木 新五
小池 隆
登録日 1993-09-30 
登録番号 商標登録第2583060号(T2583060) 
商標の称呼 テンペスト 
代理人 小谷 武 

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