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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 006 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 006 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 006 審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 006 |
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管理番号 | 1075457 |
審判番号 | 無効2001-35144 |
総通号数 | 41 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2003-05-30 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2001-04-01 |
確定日 | 2003-04-11 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4069296号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成14年7月9日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成14(行ケ)年第383号平成14年12月24日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第4069296号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第4069296号商標(以下「本件商標」という。)は、平成8年5月23日に登録出願、商標の構成を別掲に示すとおり「Marutex」の文字とし、指定商品を第6類「リベット,くぎ,ねじくぎ,ドリルネジ,ボルト,ナット,くさび,その他の金属製金具」として、平成9年10月17日に設定の登録がされたものである。 2 引用商標 請求人が本件商標の登録無効を述べる理由に引用する登録商標(以下「引用商標」という。)は、次の(1)及び(2)に示すとおりである。 (1)登録第673458号商標は、昭和39年1月14日に登録出願、商標の構成を「TEKS」の文字とし、指定商品を第13類「自動穿孔ネジ切りネジ、その他本類に属する商品」として、昭和40年4月14日に設定の登録がされ、その後、該商標権は、昭和51年6月17日、昭和60年4月26日及び平成8年6月27日の3度に亘って存続期間の更新登録がされているものである。 (2)登録第1987736号商標は、昭和59年11月29日に登録出願、商標の構成を「テクス」の文字とし、指定商品を第13類「自動穿孔ネジ切りネジ、その他の金具、その他本類に属する商品(但し、手動利器を除く)」として、昭和62年9月21日に設定の登録がされ、その後、該商標権は、平成9年8月26日に存続期間の更新登録がされているものである。 3 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第16号証(枝番を含む。)並びに参考資料1ないし参考資料7(枝番を含む。)を提出した。 本件商標は、出願時及び査定時において商標法第4条第1項第10号,同第11号、同第15号及び同第16号に該当するものであるから、同法第46条の規定により無効とされるべきである。 4 被請求人の答弁 被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。 本件商標は一連一体の造語商標であり、称呼、外観及び観念のいずれにおいても、引用商標とは共通する箇所はなく、両者は互いに非類似の商標である。 また、需要者等が本件商標を「Maru」と「tex」に分離抽出し、且つ「tex」から「TEKS」又は「テクス」を想起する具体的且つ客観的な理由は存在しない。一連一体である本件商標は、「TEKS」及び「テクス」とどのように比較しても請求人及びITW社の商品との間で誤認混同を生じるおそれはないといわざるを得ない商標なのである。 本件商標は一連一体の造語商標であり、被請求人がこれを指定商品中「金属製金具」について使用したとしても、請求人の商品との間で混同を生ずるおそれはなく、商品の品質について誤認を生じるおそれもない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第10号、同第15号及び同第16号に該当するものではない。 5 当審の判断 請求人が提出した甲第1号証ないし甲第16号証及び平成14年(行ケ)第383号審決取消請求事件の判決における認定事実によれば、次の事実が認められる。 (1)引用商標の商標権者であるITW社は、昭和38年(1963年)に、ねじの軸の先端部を切削加工しドリル部として形成することにより、鋼板などの硬い材料からなるワーク(相手材)であっても、ワークに下穴を空けてからタップ(工作品に雌ねじを切る工具。ねじタップ)によって下穴に雌ねじを切るという手間をかけることなく、上記ドリル部で直接下穴を穿孔することによって直接にねじをねじ込むことができるドリルねじを開発し、我が国を始めとする世界各国で特許権を取得し、引用商標の一つである「TEKS」の商標(我が国では、昭和39年に出願し、昭和40年に設定登録を受けた。)を使用して世界で販売を開始した。 (2)原告は、昭和39年(1964年)に、ITW社、日本発条株式会社及び新和工業株式会社の三社の出資に係る合弁会社として設立された、ねじ類を始めとする工業用ファスナーの製造、販売を主要事業とする、株式会社である。原告の名称は、設立当初は日本シェークプルーフ株式会社であり、昭和54年にニスコ株式会社に、平成4年10月に現在の日本パワーファスニング株式会社に、順次変更された。 原告は、昭和41年(1966年)に、ITW社から、同社の開発した上記ドリルねじ「TEKS」の製造技術を導入し、引用商標についても使用権の設定を受け、我が国において、「TEKS」の製造販売を開始した。 ドリルねじは、もともと我が国になかった製品であり、上記特許権の存在などにより、我が国においては、原告がほとんど独占的にドリルねじの製造・販売をする状態が昭和50年代半ばころまで、継続した。 ITW社は、昭和62年に、我が国において、引用商標の一つである「テクス」の商標(昭和59年出願)の設定登録を受けた。 (3)原告は、本件商標の出願日である平成8年5月23日よりも前の、遅くとも昭和54年ころから、本件商標の登録査定日(登録日である平成9年10月17日より少し前の日)を経て、現在に至るまで、継続して、引用商標(「TEKS」、「テクス」)を表示した原告製品であるドリルねじについてのカタログ類を、全国の支店・営業所・販売店を通じて、あるいは、建築金物展示会や工具類展示会などの各種の展示会において、取引者・需要者に配布し、各種業界紙類や便覧等に引用商標を表示して、原告製品であるドリルねじの広告を行ってきている。 上に認定した事実によれば、引用商標は、本件商標の出願時においても、登録査定時においても、我が国において、ドリルねじについて特定の出所を表示するものとして取引者・需要者の間で広く知られていたということができる。 (4)「テクス」の語と「テックス」の語とは、文字に着目するときは、3文字と4文字という短い語同士の関係にあることなどから、「ッ」の有無により相当に異なっているようにもみえる。しかし、音の面からみれば、両者は、促音の「ッ」の音において相違するのみで、全体の語感や語調が極めてよく似ており、実際に発音した場合にほとんど区別できないことも多いと考えられる。このことを本件商標に即して言い換えれば、本件商標からは、「マルテックス」の称呼のみならず、「マルテクス」との称呼も生じるということになる。 このような「テクス」と「テックス」との実質的同一性を前提に、上記で認定したように、引用商標である「TEKS」、「テクス」が特定の出所の表示として周知性を有していることを考慮すると、本件商標の指定商品に含まれるドリルねじに使用された「Marutex」の表示に接した取引者・需要者の中には、同表示に含まれる「tex」の部分に注目し、これが引用商標と同一であるものとして把握する者も少なくないものというべきである。 そして、引用商標「TEKS」、「テクス」が特定の出所として周知であることは前述のとおりであるから、「Marutex」に接する者の中には、「TEKS」、「テクス」を既存の概念として、これを前提に接する者も少なくないはずである。また、本件商標中の「tex」は、引用商標と実質的に同一である、あるいは極めて類似したものであるというべきものであることは、前述のとおりであるから、このような者にとって、「Marutex」に接したとき、まず「tex」に注意が向くことはごく自然なことであり、このような者が、「tex」とその前の「Maru」とを区切って把握することは、十分にあり得ることというべきである。このことは、本件商標中の「Maru」が原告の主張するように「マルテンサイト系ステンレス」又は「良くできた」又は「丸い」という意味を持つものとして把握されるか否か、ということとは関係なくいえることである。 以上で述べたところによれば、本件商標と引用商標との間には、少なくとも称呼において類似しているとみるべき余地があるというべきである。 (5)本件商標と引用商標との間に類似性が認められないとしても、その場合にも、前記のとおり引用商標がドリルねじについて特定の出所を表示するものとして周知であること、本件商標中の「tex」と引用商標とは、実質的に同一であるか極めて類似していると認められること等を考慮すると、本件商標は、これに接した取引者・需要者に対し引用商標を連想させて、引用商標を使用してきた特定の者又はその者と組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。 したがって、以上の認定事実によれば、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-06-24 |
結審通知日 | 2002-06-27 |
審決日 | 2002-07-09 |
出願番号 | 商願平8-56731 |
審決分類 |
T
1
11・
271-
Z
(006)
T 1 11・ 25- Z (006) T 1 11・ 272- Z (006) T 1 11・ 262- Z (006) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 中田 みよ子 |
特許庁審判長 |
滝沢 智夫 |
特許庁審判官 |
小林 薫 岩崎 良子 |
登録日 | 1997-10-17 |
登録番号 | 商標登録第4069296号(T4069296) |
商標の称呼 | マルテックス |
代理人 | 西 博幸 |
代理人 | 角田 嘉宏 |
代理人 | 東野 正 |
代理人 | 石井 暁夫 |