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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z31
管理番号 1075390 
審判番号 無効2000-35397 
総通号数 41 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2003-05-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-07-21 
確定日 2003-01-14 
事件の表示 上記当事者間の登録第4359607号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4359607号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4359607号商標(以下「本件商標」という。)は、平成10年11月19日に登録出願、「マーシャル」の片仮名文字と「MARSHALL」の欧文字を上下二段に横書きしてなり、第31類「獣類,ペットフード」を指定商品として、平成12年2月4日に設定登録されたものである。

2 請求人らの主張
請求人らは、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第85号証(枝番を含む。なお、甲第16号証、甲第20号証ないし甲第25号証、甲第27号証、甲第58号証の2、甲第60号証の2、甲第63号証及び甲第72号証は欠番)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第10号について
(ア)請求人のマーシャル・ペット・プロダクツ・インコーポレーテッド(以下「マーシャル・ペット・プロダクツ」という。)は、米国において1939(昭和14)年から、フェレットの飼育を始め、フェレットの繁殖・改良を行っている親会社のマーシャル・ファームからフェレットを仕入れてフェレット及びフェレット関連商品の販売を行っている米国の会社である(甲第3号証)。マーシャル・ペット・プロダクツは1993(平成5)年に米国で設立され、現在、世界でも唯一のフェレット専門社となっている(甲第3号証、甲第7号証、甲第49号証ないし甲第51号証等)。
(イ)フェレットは、イタチ科に属している動物である。マーシャル・ペット・プロダクツは、このフェレットを愛玩動物用に改良し、フェレットの普及に努めた。現在、フェレットは、欧米では犬、猫に次ぐ第三のコンパニオン・アニマルとして人気があり、米国では700万匹以上のフェレットがペット用として飼われている。
(ウ)一方、請求人の有限会社ビジネス ベンチャーズ ジャパン(以下「ビジネス ベンチャーズ ジャパン」という。)は、平成7年に設立された会社である(甲第44号証)。ビジネス ベンチャーズ ジャパンは、その設立前の1993(平成5)年にマーシャル・ペット・プロダクツとフェレット及びフェレット関連商品の輸入を正式に開始し、それ以来、同商品を直接日本に仕入れることのできる唯一のディストリビューターである(甲第73号証、甲第74号証等)。
(エ)ビジネス ベンチャーズ ジャパンがフェレット及びフェレット関連商品の取引を開始した当時、日本においてフェレットはペットとしてはほとんど流通していなかった。そこで、ビジネス ベンチャーズ ジャパンは、フェレット及びフェレット関連商品の販売を行うとともに国際フェレット協会を設立(平成6年)し、フェレットの飼育相談等にあたるなどフェレットの普及に努めている(甲第47号証)。
(オ)親会社であるマーシャル・ファームは、1939(昭和14)年から、フェレットがペットとして一般家庭で飼いやすいようにペット用の動物として改良を重ねた。このため、マーシャル・ファームのフェレットは、米国において「MARSHALL FERRETS」又は「Marshall Ferrets」(以下、これらを総称して「マーシャルフェレット(英表記)」という。)として知られるようになった。マーシャル・ファームが1987(昭和62)年から1988(昭和63)年に広告会社にフェレットの販売について自社の広告を依頼した時に、その広告会社が作成した広告が示され、それらの多くにも記載されており、マーシャル・ファームのフェレットが「マーシャルフェレット(英表記)」として非常に良く知られていた(甲第4号証ないし甲第7号証等)。
(カ)このように、マーシャル・ファームのフェレットが一般家庭で非常に飼いやすいことからフェレットの需要が伸び、フェレットを取扱う市場が大きくなったことから、マーシャル・ペット・プロダクツが1993(平成5)年に設立され、フェレットのみならずフェレット関連商品を取扱うこととなった。このフェレット関連商品には、例えば、フェレット用フード、フェレット用シャンプー、フェレット用ハーネス、フェレット用おもちゃ、フェレット用かご、フェレット用ハンモック、フェレット用の洋服等がある。マーシャル・ペット・プロダクツは、米国においてフェレット及びフェレット関連商品を宣伝・広告するため、マーシャル・ペット・プロダクツのロゴマークである大文字のMの上に「MARSHALL」の文字を白い楕円で囲んだマーク(以下「マーシャルマーク」という。)を付した商品カタログや商品を説明したリ一フレットを多くの需要者及び取引者に配布・郵送している(甲第28号証ないし甲第42号証)。また、マーシャル・ペット・プロダクツは、その設立後から米国のフェレットに関連ある雑誌や新聞等に多数広告を出している(甲第8号証ないし甲第26号証)。
(キ)したがって、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、米国においてマーシャル・ペット・ブロダクツのフェレット及びフェレット関連商品について「マーシャルフェレット(英表記)」、「マーシャルマーク」商標が需要者及び取引者の間に広く認識されていた。そして、ビジネス ベンチャーズ ジャパンがマーシャル・ペット・ブロダクツのフェレット及びフェレット関連商品を我が国に紹介した結果、これら商標のほか、「MARSHALL」、「Marshall」、「マーシャル」、「マーシャルフェレット」の文字よりなる商標(以下、「マーシャルフェレット(英表記)」等も含めこれらすべてを総称して「マーシャル商標」という。)は、マーシャル・ペット・プロダクツの商品を表示するものとして日本において需要者の間に広く認識されていた。
(ク)ビジネス ベンチャーズ ジャパンは、本件商標の登録出願時前の1993(平成5)年からフェレット及びフェレット関連商品をマーシャル・ペット・プロダクツと取引を始め、日本にフェレットをペットとして紹介した。ビジネス ベンチャーズ ジャパンは本件商標登録出願時前である1995(平成7)年にはマーシャル・ペット・ブロダクツから350匹の「マーシャルフェレット」を輸入しており(甲第45号証)、その時点においてマーシャル・ペット・プロダクツの商品を示す周知・著名商標である「マーシャルフェレツト(英表記)」、「マーシャルマーク」ほか「マーシャル商標」は、日本の需要者・取引者において広く認識されていた。なお、現在では、ビジネス ベンチャーズ ジャパンが輸入するフェレットは問屋で3社、正規販売店で50店舗以上において取引がなされている。
(ケ)国際フェレット協会はフェレットがマーシャル・ペット・プロダクツの「マーシャルフェレット」であることを証明する証明書の発行を行っており(甲第49号証等)、国際フェレット協会とマーシャル・ペット・プロダクツとは利益を共通にする密接な関係にある。
(コ)ビジネス ベンチャーズ ジャパン及び国際フェレット協会は、本件商標の登録出願時前の1995(平成7)年から現在に至るまでマーシャル・ペット・プロダクツのフェレット及びフェレット関連商品の宣伝広告を行っている(甲第49号証ないし甲第61号証)。
(サ)インターネット上に開設されたペットショップ等のホームページにおいてもマーシャル・ペット・プロダクツの商品には「マーシャルフェレット(英表記)」、「マーシャルマーク」ほか「マーシャル商標」が掲載されている(甲第64号証ないし甲第69号証)。
(シ)したがって、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、我が国においてマーシャル・ペット・プロダクツのフェレット及びフェレット関連商品については「マーシャルフェレット(英表記)」、「マーシャルマーク」を始めとする「マーシャル商標」が需要者及び取引者の間に広く認識されており、周知・著名商標であった。
(ス)マーシャル・ペット・プロダクツの周知・著名商標「マーシャルフェレット(英表記)」、「マーシャルマーク」その他の「マーシャル商標」と本件商標とは称呼において明らかに類似する商標である。また、周知・著名商標に係る商品である「フェレット及びフェレット関連商品」と本件商標の指定商品である「獣類,ペットフード」は明らかに同一・類似の商品である。
(セ)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものである。
(2)商標法第4条第1項第8号について
「マーシャル商標」は、米国及び日本においてマーシャル・ペット・プロダクツのフェレット及びフェレット関連商品を示すものとして周知・著名な商標である。これらの周知・著名な商標「マーシャル」は米国法人であるマーシャル・ペット・プロダクツの著名な略称でもある。
そして、本件商標は、マーシャル・ペット・プロダクツの著名な略称を含むものであるが、本件商標の商標権者は本件商標を登録することについて、マーシャル・ペット・プロダクツの同意を得ていない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当するものである。
(3)商標法第4条第1項第7号について
被請求人は、米国及び我が国においてマーシャル・ペット・プロダクツ又はビジネス ベンチャーズ ジャパンが「マーシャル商標」を商標として使用していることを知りつつ、ビジネス ベンチャーズ ジャパンと直接取引を行うことを止め、米国のマーシャル・ペット・プロダクツ商品の取扱業者から直接日本への商品の輸入を行う、いわゆる並行輸入を考えると同時に、マーシャル・ペット・プロダクツ又はビジネス ベンチャーズ ジャパンのいずれもが「マーシャル商標」の出願及び登録をしていないことを奇貨として、これらの者に無断で本件商標の登録を取得した。このような被請求人の行為によって、日本における唯一のディストリビューターであるビジネス ベンチャーズ ジャパンはマーシャル・ペット・プロダクツのフェレット及びフェレット関連商品の輸入・販売等を行うことを妨げられ、ひいてはマーシャル・ペット・プロダクツの商品を日本において輸入・販売することができなくなるおそれが非常に大きい。
また、フェレット関連雑誌に掲載された被請求人の広告においても、被請求人がビジネス ベンチャーズ ジャパンやマーシャル・ペット・プロダクツと直接取引を行っていた時、即ち、マーシャル・ペット・プロダクツの商品を取扱っていることを明記して自社の広告を行っていたにもかかわらず(甲第50号証の3、甲第52号証の3及び甲第55号証の3)、本件商標の登録出願後には他社の商品を取り扱っていることを明記して自社の広告を行っており(甲第58号証の3、甲第59号証の3及び甲第60号証の3)、明らかに本件商標を使用する目的で取得したものではなく、マーシャル・ペット・プロダクツ及びビジネスベンチャーズ ジャパンの商品を日本で販売することを妨害するために取得したものであるから、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
(4)商標法第4条第1項第19号について
被請求人が本件商標にかかる出願を行ったのは、ビジネス ベンチャーズ ジャパンによるマーシャル・ペット・プロダクツのフェレット及びフェレット関連商品の輸入・販売等を妨害し、ひいてはマーシャル・ペット・プロダクツの商品を日本において輸入・販売することができなくなるようにすることを意図したものであり、不正の目的をもって使用するものである。
この、不正の目的は、マーシャル・ペット・プロダクツ及びビジネス ベンチャーズ ジャパンの「マーシャルフェレット」の広告の掲載中止の警告の事実からも明らかである(甲第76号証)。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものである。
(5)商標法第4条第1項第15号について
本件商標と同一又は類似の商標である「マーシャル商標」は、マーシャル・ペット・フロダクツのフェレット及びフェレット関連商品を表示するものとして、米国及び日本における需要者の間に広く認識されている商標であるから、本件商標がその指定商品に使用される場合は、マーシャル・ペット・フロダクツの業務にかかる商品と出所の混同が生ずる。現に、ビジネス ベンチャーズ ジャパンの名前の下で出したマーシャル・ペット・プロダクツの広告において出所の混同が生じている(甲第57号証、甲第58号証及び甲第59号証)。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
(6)答弁に対する弁駁
(ア)ビジネス ベンチャーズ ジャパンは、マーシャル・ペット・プロダクツのフェレットについて「マーシャル商標」を1993(平成5)年に日本で初めてマーシャル・ペット・プロダクツのフェレットを輸入した当時から使用し、全国的に頒布される専門誌にも「マーシャル商標」を用いて宣伝広告を行っている(甲第49号証)。このことからも、被請求人が西日本においてマーシャル・ペット・プロダクツのフェレットについて「マーシャルフェレット」という商標を初めて使用したという主張は誤りであり、根拠がない。
(イ)被請求人は、ビジネス ベンチャーズ ジャパンの販売代理店であった当時、マーシャル・ペット・プロダクツのフェレットについて「マーシャル商標」を付して広告を行っているが(甲第52号証の3及び甲第55号証の3)、このような宣伝広告は他の販売代理店も行っており、何も被請求人だけがマーシャル・ペット・プロダクツのフェレットに「マーシャル商標」を付して宣伝広告を行ったのではない。また、被請求人が「マーシャル商標」を付して広告を行っていたとしても、それはあくまでマーシャル・ペット・プロダクツの商品であるということを示していたにすぎず、「マーシャル商標」が被請求人の商標であるということにはならない。
(ウ)1994(平成6)年から2001(平成13)年5月までのマーシャル・ペット・プロダクツのフェレット及びフェレット関連商品に関するビジネス ベンチャーズ ジャパンの売上高を見ると売上高の年間合計額は、本件商標の出願時である1998(平成10)年度においては、816,100ドル(9,961万円)であり、登録査定時である2000(平成12)年度においては、1,003,027ドル(約1億1千万円)である(甲第78号証の1及び2)。
(エ)更に、ビジネス ベンチャーズ ジャパンの販売店は、直営店35店舗を含む全国で200以上の正規販売店及び取引のある動物病院で「マーシャル商標」を付したマーシャル・ペット・プロダクツのフェレット及びフェレット関連商品を本件商標の出願時及び登録査定時において販売している(甲第79号証)。
(オ)また、マーシャル・ペット・プロダクツのフェレット及びフェレット関連商品が紹介されている本が出版されており、その中でも「フェレット完全ブック」は、現在までの販売部数は約33,000部であり、9刷されている(甲第61号証)。更に、「ひと目でわかる!図解 フェレットバラダイス」も現在までの販売部数は約43,500部であり、15刷されている(甲第80号証)。「Dr.野村ペットBOOKS フェレット」も現在までの販売部数は約12,000部であり、2刷されている(甲第62号証)。これら3冊の本の販売部数の合計だけでも約10万部である。
(カ)ビジネス ベンチャーズ ジャパンは「Solomon」にマーシャル・ペット・プロダクツの商品の広告を掲載したのと同時期に他の雑誌、例えば「アニファ」にも同様の広告を掲載している。ちなみに、「アニファ」は、1995(平成7)年にビジネス ベンチャーズ ジャパンが同雑誌に広告を掲載した当時でも毎号約14万部の販売部数があり、当時年4回の季刊雑誌であったので年間合計約56万部の販売部数があった(甲第49号証、甲第50号証及び甲第52号証等)。

3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人らの負担とする、との審決を求める、と答弁し、その理由及び弁駁に対する答弁を要旨次のように述べ、証拠方法として、1.ないし6.を提出した。
(1)商標法第4条第1項第10号について
(ア)1995(平成7)年に被請求人がビジネス ベンチャーズ ジャパンと取引を開始するときに、書面にはしなかったが、西日本地区を販売のエリアとした。当時、ビジネス ベンチャーズ ジャパンは関東エリアだけでフェレットを「スーパーフェレット」という名称で販売していた。他方、被請求人は、販売量を上げるためにいろいろな販売促進策を試みた。その中で、「マーシャルフェレット」という商標で品質の良さを強調した広告を専門誌中心に展開したり、無料カタログやリ一フレットの配布などの販売促進策が効果をあげた。当時、西日本地区では全く普及していなかった「マーシャルフェレット」を普及させたのは被請求人の販売促進策の効果である。被請求人は、その当時から「マーシャルフェレット」の商標を使用している。
(イ)マーシャル・ペット・プロダクツのフェレット及びフェレット関連商品についての「マーシャル」商標は、米国内においては需要者の間に広く認識されていたと思われるが、日本においてはフェレット及びフェレット関連商品の需要者及び取引者に周知されている商標とはいえない。雑誌の広告についても「Solomon」はすでに2年以上前に廃刊になっており、フェレット及びフェレット関連商品の需要者のほとんどが購読するとは思われない。
(ウ)したがって、需要者及び取引者の間に広く認識されていたということはできない。
(2)商標法第4条第1項第8号について
マーシャル・ペット・プロダクツのフェレット及びフェレット関連商品についての「マーシャル」の商標は、米国内においては需要者の間に広く認識されていたと思われるが、周知商標を超えるものではなく、著名な商標とはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に違反していない。
(3)商標法第4条第1項第7号について
(ア)被請求人が日本において「マーシャルフェレット」のイメージを高めるのに大いに貢献したにもかかわらず、その後ビジネス ベンチャーズ ジャパンとの間で商品の在庫切れや仕入れ価格の一方的な変更などの問題をきっかけに、スムーズな商取引ができなくなった。ビジネス ベンチャーズ ジャパンは「マーシャルフェレット」を巡って、インターネット上で被請求人の誹謗まで掲載していた。また、ビジネス ベンチャーズ ジャパンは、小売店および購入者に対して、ビジネス ベンチャーズ ジャパンを流通経路に含まないフェレットは「マーシャルフェレット」の「偽者」であると説明している。また、国際フェレット協会は、購入者に対しては「偽者だから返品しなさい」と促した為、被請求人は取引の不当な妨害を受けた。さらにマーシャル・ペット・プロダクツは、「マーシャルフェレット」がマーシャル・ペット・プロダクツの輸入業者、販売店ネットワークを通じて購入されないフェレットは、偽造品又は模造品といい、「偽のマーシャルフェレット」ともいっており、この日本語の手紙を被請求人の取引先に配布した為に、被請求人は並行輸入の不当阻害も受けている。
(イ)被請求人は「産経新聞メディックス」が発行する「スモールペットのいる生活」という雑誌に1998(平成10)年、1999(平成11)年と2年間連続で広告を掲載している。しかし、2000(平成12)年の広告を申し込んだところ、ビジネス ベンチャーズ ジャパンが「産経新聞メデイックス」に対し、今回はビジネス ベンチャーズ ジャパンが「マーシャル」代理店として広告を掲載するので並行輸入の被請求人の「マーシャル」の広告は掲載しない旨の申し入れがあり、掲載を断られた。これも並行輸入の不当阻害である。被請求人は、自己防衛のために「マーシャル」商標の正当な使用を主張したものであり、妨害行為とはならない。また、ビジネス ベンチャーズ ジャパンからの警告書に対しても商標及びフェレットの販売について話し合う旨、通知書にて回答をしており、公の秩序又は善良の風俗を害する恐れがあるとはいえない。
(ウ)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反していない。
(4)商標法第4条第1項第19号について
被請求人は、ビジネス ベンチャーズ ジャパンからの取引の不当な妨害、並行輸入の不当阻害などから自己防衛するために「マーシャル」の商標を登録したものであり、不正の目的をもって使用するものではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反していない。
(5)商標法第4条第1項第15号について
「マーシャルフェレット」、「マーシャル」は、日本において周知された商標とはいえないから、出所の混同は生じない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反していない。
(6)弁駁に対する答弁
(ア)「Marshall」商標は、米国において請求人は登録していない。また、登録できない。
(イ)「Marshall」は、米国においては一般的な名称であり、マーシャル・ペット・プロダクツの略称である「マーシャル」、「Marshall」が広く世間一般的にマーシャル・ペット・プロダクツを連想させるような著名な略称であるとはいえない。

4 当審の判断
請求人らの提出に係る甲第3号証ないし甲第85号証(欠番を除く。)に徴すれば、以下の事実が認められる。
(1)フェレットは、イタチ科に属している動物であり、現在、欧米ではコンパニオン・アニマルとして人気があり、我が国においてもペット用として飼われていること。
(2)マーシャル・ペット・プロダクツは、親会社であるマーシャル・ファームからフェレットを仕入れてフェレット及びフェレット関連商品の販売を行っている会社(1993(平成5)年設立)であること。
(3)ビジネス ベンチャーズ ジャパン(平成7年に設立)は、マーシャル・ペット・プロダクツのフェレット及びフェレット関連商品を直接日本に仕入れることのできる唯一のディストリビューターであること(甲第44号証、甲第73号証及び甲第74号証等)。
(4)ビジネス ベンチャーズ ジャパンは、フェレット及びフェレット関連商品の販売を行うとともに国際フェレット協会を設立したこと(甲第47号証)。
(5)マーシャル・ファームは、1939(昭和14)年からフェレットの繁殖・販売を行い、フェレットがペットとして一般家庭で飼いやすいようにペット用の動物として改良し、マーシャル・ファームのフェレットは、米国において「マーシャルフェレット(英表記)」商標を付し宣伝、広告していること(甲第4号証ないし甲第7号証等)。
(6)マーシャル・ペット・プロダクツは、「マーシャルフェレット(英表記)」及び「マーシャルマーク」をフェレット及びフェレット関連商品(フェレット用フード、フェレット用シャンプー、フェレット用ハーネス、フェレット用おもちゃ、フェレット用かご、フェレット用ハンモック、フェレット用の洋服等)に使用し、フェレットの関連雑誌や新聞等に多数広告を出していること(甲第8号証ないし甲第26号証)。
(7)ビジネス ベンチャーズ ジャパンは、1993(平成5)年からフェレット及びフェレット関連商品をマーシャル・ペット・プロダクツと取引し、我が国にフェレットをペットとして紹介し、1995(平成7)年にはマーシャル・ペット・ブロダクツから、フェレットを輸入し(甲第45号証)、現在では、ビジネス ベンチャーズ ジャパンが取引するフェレットは問屋で3社、正規販売店で50店舗以上であること。
(8)国際フェレット協会はフェレットがマーシャル・ペット・プロダクツのフェレットであることを証明する証明書の発行を行っており(甲第49号証等)、国際フェレット協会とマーシャル・ペット・プロダクツとは利益を共通にする密接な関係にあること。
(9)ビジネス ベンチャーズ ジャパン及び国際フェレット協会は、1995(平成7)年から現在に至るまでマーシャル・ペット・プロダクツのフェレット及びフェレット関連商品の宣伝広告を行っていること(甲第49号証ないし甲第61号証)。
(10)被請求人は、ビジネスベンチャーズ ジャパンの販売代理店であった当時、マーシャル・ペット・プロダクツのフェレットについて「マーシャルフェレット」、「マーシャルマーク」又は「マーシャル」を付して広告を行っているが(甲第50号証の3、甲第52号証の3及び甲第55号証の3)、このような宣伝広告は他の販売代理店も行っていること(甲第50号証の2、甲第52号証の2、甲第53号証の2、甲第54号証の2、甲第55号証の2及び甲第56号証の2)。
(11)1994(平成6)年から2001(平成13)年5月までのマーシャル・ペット・プロダクツのフェレット及びフェレット関連商品に関するビジネス ベンチャーズ ジャバンの売上高の年間合計額は、本件商標の出願時である1998(平成10)年度において、816,100ドル(9,961万円)であり、本件商標の登録査定時である2000(平成12)年度において1,003,027ドル(約1億1千万円)であること(甲第78号証の1及び2)。
以上の事実を総合すれば、本件商標の登録出願時には、米国においてマーシャル・ペット・ブロダクツのフェレット及びフェレット用フード等のフェレット関連商品について「マーシャルフェレット(英表記)」及び「マーシャルマーク」商標が需要者、取引者の間に広く認識されていたばかりでなく、我が国においても、ビジネス ベンチャーズ ジャパン及びその取引者(被請求人も含む。)らが前記商標を始めとする「マーシャル商標」を前記の商品に使用した結果、これらはマーシャル・ペット・プロダクツの商品を表示する商標として、需要者、取引者の間に広く認識されていたものと認められ、その状況は登録査定時においても継続していたというのが相当である。
そして、本件商標と請求人らが使用する「マーシャル商標」とは、「マーシャル」の称呼を共通にする類似の商標であり、本件商標の指定商品と使用商標に係る商品とは同一又は類似するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものであるから、他の無効理由を判断するまでもなく、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2002-11-13 
結審通知日 2002-11-18 
審決日 2002-12-02 
出願番号 商願平10-99530 
審決分類 T 1 11・ 252- Z (Z31)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 茂久 
特許庁審判長 上村 勉
特許庁審判官 鈴木 新五
小池 隆
登録日 2000-02-04 
登録番号 商標登録第4359607号(T4359607) 
商標の称呼 マーシャル 
代理人 小泉 淑子 
代理人 山岸 和彦 
代理人 山岸 和彦 
代理人 小泉 淑子 
代理人 小林 ゆか 
代理人 小林 ゆか 

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