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審判番号(事件番号) データベース 権利
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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 201
管理番号 1072270 
審判番号 取消2000-30574 
総通号数 39 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2003-03-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2000-05-24 
確定日 2002-12-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第523472号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第523472号商標の指定商品中「化学品(膠を除く。)及びその類似商品」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
登録第523472号商標(以下「本件商標」という。)は、「シード」の文字を横書きしてなり、昭和32年10月11日に登録出願、指定商品を第1類「化学品、薬剤及び医療補助品」として、同33年7月10日に設定登録され、その後、3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ有効に存続しているものである。
第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求める。と申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨以下のとおり述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第5号証を提出している。
1 本件商標は、本審判請求に係るいずれの指定商品「化学品(膠を除く。)及びその類似商品」についても、商標権者、専用使用権者及び通常使用権者のいずれによっても、継続して3年以上日本国内において使用された事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
2 被請求人の答弁に対する弁駁
(1)被請求人による使用について
被請求人は、本件商標とこれと連合商標になっていた「シードスワブ」の文字からなる登録第1823748号商標(乙第2号証の1、以下「登録商標1」という。)及び「SEEDSWAB」の文字からなる登録第1860525号商標(乙第3号証の1、以下「登録商標2」という。)とは互いに類似する商標であり、また、本件商標に関する昭和63年2月6日付存続期間の更新登録出願の審査において採用された使用証拠と同一の使用商標「シードスワブ」が商品「薬剤」に属する「診断用培地」に使用されていたことを示す証拠書類によって、本件商標がその指定商品について使用されている旨を主張しているが、その更新登録出願時(昭和63年当時)において採用されていた連合商標制度は、平成8年商標法の改正により廃止され、これに伴い同改正において商標法第50条第2項の括弧書き(連合商標の使用の特則)の規定も削除されている。また、平成8年商標法附則第10条第2項による商標登録の取消審判についての経過措置の適用を受け得るのは、平成12年3月31日までに請求された商標法第50条第1項で規定する審判であるところ、本件審判の請求日は平成12年5月24日であるから、その適用を受けることもない。
したがって、本件商標と平成8年商標法改正前に連合商標とされていた商標の使用は、本件商標の登録の取消しを免れる理由とならない。
また、商標「シードスワブ」は、その商標の構成よりして、本件商標「シード」と同一ではなく、また、社会通念上の同一ともいえないことは、明らかなところである。
したがって、被請求人は、答弁書において、本件審判の請求登録前3年以内に、本件商標が使用されている事実を立証していない。
次に、被請求人は、商品「培地」には、「化学品」に属する「培地」が存在するところから、本件商標の指定商品中「診断用培地」における使用は、「薬剤」ばかりでなく「化学品」に属する「培地」も該当する旨主張しているが、「化学品」の範疇に属する「生物細胞の培養」又は「微生物の組織培養」のための「培地」は、その用途が「研究用」又は「化学分析用」であることから、「診断用」として取り扱われる「培地」とは、販売場所、流通経路、用途及び需要者の範囲等において著しく相違する非類似の商品である。このことは、甲第3号証として提出する特許庁特許電子図書館の商品・役務名リストの検索結果リスト(検索商品・役務名:「診断用培地」)において、該商品に付与されている類似群コードが「01B01」のみであることから明らかである。
したがって、商標「シードスワブ」が使用されている商品「診断用培地」は、「薬剤」の範疇に属するものであり、「化学品」(類似群コード「01A01」)とは類似しない商品である。
なお、仮に、被請求人が本件商標を使用している商品を「検体保存輸送用の容器」として捉えた場合であっても、そのような商品は、甲第4号証として提出する特許庁特許電子図書館の商品・役務名リストの検索結果リスト(検索商品・役務名:「検体」)が示すように、類似群コード「10D01」が与えられる商品であり、大正10年法時の第18類に属する商品であるから、本件商標の指定商品についての使用ではない。
(2)通常使用権者による使用について
被請求人は、本件商標は、「ソフトレンズ用洗浄液、消毒液、中和液及び保存液(剤)」における「洗浄液」についての使用は、「薬剤」ばかりでなく「化学品」に属する「洗浄液(剤)」も該当し、「精製水」については、「化学品」に属する商品であることが明らかなものである旨主張しているが、いわゆるコンタクトレンズのケア用品は、一般の化学品と販売場所、流通経路、用途及び需要者の範囲において顕著に相違する商品であることから、化学品(類似群コード「01A01」)とは異なる「薬剤」(類似群コード「01B01」)の範疇に属する商品として取り扱われているものである。
このことは、特許庁特許電子図書館の商品・役務名リストの検索結果リスト(検索商品・役務名「コンタクトレンズ」)において、コンタクトレンズ用の洗浄液(剤)、消毒剤、親水剤、すすぎ剤、保存液(剤)、溶液及び溶解水などのいわゆるコンタクトレンズのケア用品に関しては、すべて類似群コード「01B01」が付与されていることから明らかである。
ここで、被請求人が「化学品」に属する商品であると主張する「洗浄液」は、前記商品・役務名リストの検索結果リストにおいて「コンタクトレンズ用の洗浄液(剤)」に類似群コード「01B01」が付与されていることが示すように、「化学品」(類似群コード「01A01」)とは非類似の商品である。
また、被請求人が「化学品」に属する商品であると主張する「精製水」についても、該商品は、被請求人が提出した乙第19号証(使用権者の商品ソフトコンタクトレンズの取扱説明書の専用ケア用品の項抜粋)において「精製水」の製品説明として「『ソフリンス顆粒』の溶解等に使用します。」及び「ソフリンス」の製品説明として「『ソフリンス(保存液)』を真空乾燥させ、顆粒状にしたものです。精製水に溶かして使います。」との記載が示すように、コンタクトレンズのケア用品としてのみ販売され使用される「精製水」であるから、前記商品・役務名リストの検索結果リストにおいて類似群コード「01B01」が与えられている「コンタクトレンズ用のすすぎ剤、溶解水」等に類するものである。したがって、該商品は、「化学品」(類似群コード「01A01」)とは非類似の商品である。
よって、被請求人の提出した証拠(乙第15号証ないし同第23号証)は、本件通常使用権者によって、本件商標が「薬剤」について使用されている事実のみを示すものであって、本件商標が本件審判の請求に係る指定商品について使用されている事実を立証するものではない。
第3 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨以下のとおり述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第29号証(枝番を含む。)を提出している。
1 被請求人により使用されていることについて
(1)被請求人は、「シードスワブ」の文字からなる商標を、第1類に属する商品「診断用培地」に使用している(乙第11号証ないし同第14号証)。そして、該「シードスワブ」の文字は、登録第1823748号商標(乙第2号証の1及び2。登録商標1)と同じ構成態様であるところ、構成中「スワブ」が「綿棒」を意味する英語「swab」(乙第9号証)の読みを片仮名文字で表示し、使用する商品「診断用培地」が「滅菌キャップ付き綿棒」付きであるところから、商品の品質・用途を表示する自他商品を識別する機能を有しない部分のため、これを除いた「シード」の文字が商標としての主要部を形成しているものである。
また、該「診断用培地」は、「培地チューブ」と「滅菌キャップ付き綿棒」及び「チューブラベル」をセットとする検体保存輸送用に用いる「培地」である(乙第11号証ないし同第14号証)。
事実、「シードスワブ」については、これを「綿棒」付きの「診断用培地」に使用し、「スワブ」を省略して「シード」の称呼をもって商取引にあたることも少なくないのである。
このことは、「シードスワブ」の文字よりなる登録商標1(乙第2号証の1)及び「SEEDSWAB」の文字よりなる登録第1860525号商標(乙第3号証の2。登録商標2)について、この両商標が第1類についての登録出願に際し、「シード」の文字からなる本件商標が拒絶理由に引用されたため(乙第4号証及び同第5号証)、当時、本件商標の権利者から譲り受け、登録商標1及び登録商標2の連合商標として現在の権利者として登録した経緯に徴し明らかなところである(乙第2号証の2及び同第3号証の2)。
さらに、本件商標は、昭和63年2月6日の存続期間の更新登録出願(商願昭63-202680号)に際し、その使用説明書における使用事実を立証するために添付したのが、本件と同じ「シードスワブ」を使用したカタログ及びパンフレットをその証拠書類とするものであった(乙第6号証)。
これらの事実をみても、被請求人の立証にかかる乙第11号証ないし同第14号証により、指定商品中の「薬剤」に使用していることは明らかである。
その上、商品「培地」には、「薬剤」に属する「診断用」ばかりでなく、原材料のみならず、生産者又は取引者・需要者を同じくする類似の商品である「化学品」に属する「生物細胞の培養」又は「微生物の組織培養」のための「培地」が存在する(乙第7号証)ので、本件商標の指定商品中「診断用培地」における使用は、「薬剤」ばかりでなく「化学品」に属する「培地」も該当するのである。
(2)この点についての請求人の弁駁に対する答弁
被請求人が使用する「培地」(乙第11号証ないし同第14号証)は、薬剤に属する「診断用培地」と化学品に属する「培地」とがあり、例えば、大腸菌は環境中(河川水など)にも生体内(糞便など)にも存在する常在菌で、その試験に用いる「培地」は、環境も生体も共に「乳糖ブイヨン培地」や「マッコンキー寒天培地」であり、いずれに用いる「培地」も共通している(乙第24号証ないし同第26号証)。
その上、商標法における商品及び役務の区分において、「培地」はその使用目的や使用場所に基づき分類されている。つまり、衛生試験法や食品衛生法に基づく環境試験用の培地は「化学用試剤」に所属し、生体の病原菌試験に用いる培地は「診断用培地」としており、それぞれが上記使用目的により、「化学品」と「薬剤」に所属するものとして登録されているのである(乙第7号証)。
被請求人が本件商標の使用であるとして証明する商標「シードスワブ」及び同「SEEDSWAB」は、商品「綿棒つき培地」(乙第11号証ないし同第13号証)に使用して、生体の病原菌試験に用いると共に、衛生試験法や食品衛生法に基づく環境試験用の「培地」(乙第24号証ないし同第26号証)として用いるものである。
してみれば、本件商標は、生体の病原菌試験のほか、衛生試験法や食品衛生法に基づく環境試験用の「培地」に使用されているので、「化学品」に属する「化学用培地」に使用されている。
したがって、被請求人は、本件商標をその指定商品中の「薬剤」及び「化学品」について使用しているものである。
2 通常使用権者によって使用されていることについて
(1)被請求人は、平成3年1月1日に株式会社シード(東京都文京区二丁目40番2号)に対し、商品「コンタクトレンズ用保存用液、洗浄用液、コンタクトレンズに係わる化学品、薬剤及び医療補助品」についての通常使用権を許諾しており(乙第15号証)、爾来、通常使用権者によりソフトレンズのケア用品である「洗浄液、消毒液、中和液及び保存液(剤)」のほか、ハードレンズのケア用品である「精製水」について、「シード」の文字又は「シード」の称呼を生ずる「SEED」の文字を商標として継続して使用している(乙第16号証ないし同第23号証)。
しかして、使用する「シード」及び「SEED」の文字は、「種、種子」等を意味する英語「seed」(乙第10号証)を片仮名文字とローマ文字の大文字で表わしたもので、いずれも社会通念上同一の称呼及び観念を生ずるものである。
また、「ソフトレンズ用洗浄液、消毒液、中和液及び保存液(剤)」における「洗浄液」については、「化学品」に含まれる「洗浄剤」(乙第8号証)と同物質のものといえるばかりでなく、生産者又は取引者・需要者を同じくする類似の商品である。
そのため、本件商標の指定商品中「洗浄液」における使用は、「薬剤」ばかりでなく「化学品」に属する「洗浄液(剤)」も該当する。
(2)この点についての請求人の弁駁に対する答弁
(a)コンタクトレンズのケア用品中、コンタクトレンズ洗浄剤製造用の酵素は、「化学品」として扱われている(乙第28号証,甲第5号証)。
これについて、株式会社シードは、商標「SEED」を使用したコンタクトレンズのケア用品としての商品「コンセプトFアクセサリーキット」を製造・販売しており、これには洗浄液、保存液、洗浄剤等のほか蛋白除去剤(蛋白分解酵素)をセットにしているものである。
このことは、コンタクトレンズのケア用品であっても、「化学品」として扱われている「蛋白除去剤(蛋白分解酵素)」を含むキット商品は、「シード」の称呼を生ずる「SEED」の文字を表示しているのである。
したがって、本件商標は、化学品に属する「蛋白除去剤(蛋白分解酵素)」を含む「コンタクトレンズのケア用品」の使用であるので、これについても「化学品」の使用といえるのである。
(b)使用商品の「精製水」については、「化学品」に属する商品であること明らかである。「精製水」(乙第22号証)は、「コンタクトレンズ専用」及び「コンタクトレンズ用溶解水」の文字の記載があるとしても、これらの文字を記載した本件「精製水」は、薬事法に規定され、厚生省(現、厚生労働省)により承認された医薬品としての「精製水」とは異なるものであることを明示している。
このことは、医薬品としての「精製水」は、「日本薬局方解説書」(乙第27号証)に示す試験を経て厚生省(現、厚生労働省)の承認を受けたものであるのに対し、承認を受けていない本件「精製水」は、その本質が医薬品でなく、化学品に属する「精製水」であることは明らかである。
したがって、通常使用権者は、本件商標をその指定商品中の「薬剤」及び「化学品」の何れについても使用している。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、被請求人(商標権者)及び通常使用権者により、その指定商品中「薬剤」及び「化学品」について使用されているので、商標法第50条第1項の規定に該当しないものであるから、不使用の旨をもって、その登録を取り消される理由がないものである。
第4 当審の判断
1 被請求人は、本件商標を化学品に属する「化学用培地」について使用をしていると主張している点について検討する。
(1)使用商品の商品カタログである乙第11号証ないし同第13号証によると、いずれも「シードスワブ1号(2号、3号又はMRSA)は医療用具です。」及び「医療用具許可番号・・」の文字が表示され、「滅菌されたディスポーザブルの容器」と説明して培地の入ったチューブ、滅菌キャップ付綿棒の商品の外観、円輪郭内に羽を広げた鳥の図形と円輪郭に沿って「SEEDSWAB NO.1(NO.2、NO.3又はMRSA)」及び「栄研化学株式会社」が表示され、その他、それぞれ以下の表示がされている。
(a)乙第11号証(作成日不明)の1頁目には、「検体保存輸送用」、「シードスワブ1号‘栄研’(「ブ」の文字の右肩部分に「まるにR」のマークが付され、‘栄研’の文字は他の文字より半分程度小さく表示されている。)」及び「糞便などの検体採取および保存輸送用。」「腸内細菌・ビブリオ属など多くの菌種の保存が良好。」の文字等が表示され、その2頁目には、「検体保存輸送用(耳鼻咽喉科・泌尿器科用)」「シードスワブ2号‘栄研’」(「ブ」の文字の右肩部分に「まるにR」のマークが付され、‘栄研’の文字は他の文字より半分程度小さく表示されている。)及び「鼻腔粘液・耳漏・淋疾材料などの検体採取および保存輸送用。」「とくにヘモフィルス・レンサ球菌・リン菌の保存が良好。」の文字等が表示されている。
(b)乙第12号証(作成日不明)の1頁目には、「検体保存輸送用(耳鼻咽喉科・泌尿器科・産婦人科用)」「シードスワブ3号‘栄研’」(「ブ」の文字の右肩部分に「まるにR」のマークが付され、‘栄研’の文字は他の文字より半分程度小さく表示されている。)及び「咽頭粘液・淋疾材料・膣分泌物などの検体採取および保存輸送用。」、「とくにヘモフィルス・レンサ球菌・リン菌の保存が良好。」の文字等が表示され、その2頁目には、「シードスワブシステムの概要」の見出しの下にシードスワブ1号ないし3号のセット内容/本数、培地の種類、培地の量、綿棒の材質・長さ・太さ等が表示されている。
(c)乙第13号証(2000年7月作成)には、「MRSAスクリーニング用」「シードスワブMRSA‘栄研’」(「ブ」の文字の右肩部分に「まるにR」のマークが付され、‘栄研’の文字は他の文字より半分程度小さく表示されている。)及び「多剤耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のスクリーニング用培地です。」「サンプリング器具と確認培地が一体型になった医療用具です。」の文字等が表示されており、その続葉の最終頁には「MRSA検査関連商品」の見出しの下に、保存・輸送用として「シードスワブ2号‘栄研’」、「シードスワブ3号‘栄研’」等の製品名称、包装数量、製品コードが表示されている。
(2)「日本臨床微生物学雑誌」(日本臨床微生物学会平成12年3月25日発行)掲載の広告記事(写)である乙第14号証における広告内容は、乙第13号証の第1頁とほぼ同様のものが掲載されている。
(3)「(第十三改正)日本薬局方微生物検査マニュアル(9頁)」(写)(1996年9月栄研化学株式会社発行)の乙第24号証には、大腸菌の特定微生物試験の手順が説明され、「食品微生物検査マニュアル(72頁)」(平成8年8月栄研化学株式会社発行)の乙第25号証には、「1.病原大腸菌検査法」の説明において、「大腸菌は、・・人、動物の腸管内に常在し、土壌や水などの自然界に広く分布しています。その多くは病原性を示しませんが、一部の大腸菌は病原大腸菌といわれ、下痢原生大腸菌ともいわれています。」等の説明と共に、「使用培地」として「パールコアDHL‘栄研’、ポアメディアDHL寒天培地」、「パールコア マッコンキー寒天培地‘栄研’、ポアメディアマッコンキー寒天培地」等が紹介されている。
(4)これらの事実及び被請求人の主張を総合すると、被請求人が本件商標を使用していると主張する商品は、腸内細菌・ビブリオ属用、耳鼻咽喉科・泌尿器科用、産婦人科用として、又は、多剤耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のスクリーニング用として使用するもので、検体を取り込み保存輸送に適した構造にしたチューブ状の容器からなる培地と認められるものである。
これらの商品は、いずれも、人体における細菌を採取し、保存輸送に適した構造となっている培地であり、いずれも医療に関連して診断の際に使用されることを目的とした診断用薬剤の範疇に属する培地(診断用培地)と認められるものである。
そして、使用商標についてみると、上記使用商品について「シードスワブ1号‘栄研’」、「シードスワブ2号‘栄研’」「シードスワブ3号‘栄研’」及び「シードスワブMRSA‘栄研’」〔いずれも、「ブ」の文字の右肩部分に小さく「まるにR」のマークが付され、「‘栄研’」の文字は他の文字よりも半分程度小さく表示されている。〕の商標が使用されており、また、これらの商標を説明部分に使用する場合は「シードスワブ1号」、「シードスワブ2号」、「シードスワブ3号」及び「シードスワブMRSA」と表示されているものと認められる。
(5)しかして、それらの使用商標は「シードスワブ」の片仮名文字を同じ書体・同じ大きさ・同じ間隔に一連に外観上一体的に表され、そこに、「1号」、「2号」、「3号」又は「MRSA」の文字を連結し、更に、「‘栄研’」の文字を連結されているところであるが、その「1号」、「2号」、「3号」又は「MRSA」の文字部分は、商品の品番又は品質・用途を表す番号又は符号、記号として類型的に使用されているものと理解され、自他商品識別標識として機能し得ない部分であり、また、「‘栄研’」の部分は、他の商品にも同様の方法で連結し使用されていることからして、その商品の出所を表示する標識として機能している商標と把握され、かかる構成においては、「シードスワブ」の片仮名文字部分及び「‘栄研’」の部分がその商標の要部として認識されるとみるのが相当である。
してみれば、本件商標は、「シード」の文字よりなるところ、商標権者の使用している商標は「シードスワブ1号(2号、3号又はMRSA)‘栄研’」、「シードスワブ1号(2号、3号又はMRSA)」又は「シードスワブ」であって、本件商標とは、その構成文字を著しく異にするものであることから社会通念上同一の商標を使用しているものとみることはできないものである。
この点に関し、被請求人は、「スワブ」(swab)の文字は、「綿棒」を意味し、使用商品が「綿棒付き」であることから、この文字は商品の品質・用途を表わしている部分であること、また、出願商標「シードスワブ」(登録商標1)又は「SEEDSWAB」(登録商標2)と本件商標「シード」とが類似するものとして拒絶理由を受けた事実等(乙第2号証の1ないし同乙第6号証)を示し、本件商標を使用している旨主張しているが、不使用取消審判における登録商標の使用の判断に当たっては、自他商品の識別をその本質的機能としている商標の性格上、当該登録商標と構成態様が同じ商標であることにこだわらず、両商標の構成態様(外観・称呼・観念)における相違点、使用されている商品の具体的性状を考慮し、取引社会の通念に照らし総合的に判断されるべきものと解されるところ、乙第11号証ないし同第14号証において使用されている商標は上記認定のとおりであり、両商標の構成態様の差異を考慮すると、本件商標と上記使用商標とは、社会通念上同一のものとは認め難いものであり、この被請求人の主張は採用できない。
(6)次に、使用されている商品については、上記認定のとおり診断用薬剤の範疇に属する培地(診断用培地)と認められるところであるが、被請求人は、「培地」には、「薬剤」に属する診断用ばかりでなく、類似の商品である「化学品」に属する生物細胞の培養又は微生物の組織培養のための「培地」が存在するので、本件商標の指定商品中「診断用培地」における使用は「薬剤」ばかりでなく「化学品」に属する「培地」にも該当する旨主張するが、使用商品は、上記認定のとおり、診断用薬剤の範疇に属する培地(診断用培地)と認められるものであるが、その使用商品と化学用試剤として使用される「培地」とは、前者は診断用として医療機関が使用することを目的として製造販売されている商品であるのに対し、後者は工業用・化学用として使用することを目的として製造販売され、前者の商品とは需要者、使用場所を異にし又は特に用途が特定されない化学用試剤として取引されるものであることから、取引系統も相違するものといえ、両商品を直ちに類似するものとすることはできないものである。よって、この被請求人の主張は採用できない。
(7)したがって、本件商標を商標権者である栄研化学株式会社が「化学品」の範疇に含まれる化学用試剤として用いられる培地(化学用培地)又はその類似商品について使用しているものということはできない。
2 次に、被請求人は、本件商標を化学品に属する「蛋白除去剤(蛋白分解酵素)」及び「精製水」について使用をしていると主張している点について検討する。
(1)被請求人提出の乙第15号証ないし同第23号証、同第27号証及び同第29号証の1、2によると以下のとおりである。
(a)実施許諾契約書(写)である乙第15号証によると、平成3年1月1日付けで商標権者の栄研化学株式会社(甲)は、株式会社シード(乙)に本件商標(第523472号「シード」)における商品「コンタクトレンズ用保存液、洗浄用液等、コンタクトレンズに係わる化学品、薬剤及び医療補助品」について通常実施権(注、「通常使用権」と解される。)の許諾契約をしているものと認められる。
(b)商品カタログ又はコンタクトレンズの取扱説明書である乙第16号証ないし同第19号証(商品カタログの乙第16号証は1998年11月印刷。同第17号証は1998年7月印刷)によると、いずれも、その第1頁に表題とともに、右上部分に「SEED」の文字が表示され、その内容として、コンタクトレンズの品目(いずれのコンタクトレンズにも医療用具承認番号が記載されている。)とそのレンズ・費用の説明又はコンダクトレンズ専用ケア方法及び洗浄・消毒・中和用の剤や蛋白除去剤又はケース等ケア用品・附属品を掲載しその説明の記載がされている。
(c)前出乙第19号証(ソフトコンタクトレンズの取扱説明書、「専用ケア用品」部分抜粋)では、「専用ケア用品」として、「ソフリンス顆粒」の項に「『ソフリンス』を真空乾燥させ、顆粒状にしたものです。精製水に溶かして使用します。」と、「ソフリンス溶解ボトル」の項に「『ソフリンス顆粒』を溶かすときに使用する専用ボトルです。」と記載され、また、「精製水」の項には「『ソフリンス顆粒』の溶液等に使用します。」と記載されている。
(d)コンタクトレンズケア商品の写真である乙第22号証には、ボトル容器の胴部分に「コンタクトレンズ専用」、「精製水」及び「(コンタクトレンズ用溶解水)」の文字を三段に表示し、その容器の下部分に「SEED」の文字が表示されている。
(e)日本薬局方解説書(1996年廣川書店発行)の乙第27号証によると、精製水は、「常水を蒸留、イオン交換、超ろ過又はこれらの組合せにより精製した水である。精製法の最後にイオン交換法を用いる場合は細菌による汚染に注意し、必要ならば、適当な方法で細菌を殺滅又は除去する。」と説明されており、また解説中の「適用」の項には、「薬品の溶剤とし、製剤、試液、試薬の調製に用いる。・・」と記載されている。
(f)商品の写真である乙第20号証には、「O2ソリューション 洗浄・保存液」、「O2クリン」(乙第18号証によると洗浄液と解される。)及び「スーパープロツー」(乙第23号証によるとタンパク分解酵素液と解される。)の三種類の商品が写されており、また、同乙第21号証には、「ソフリンス 保存液」、「ソフパール 洗浄液」、「ソフリンス顆粒」と記載された商品の包装箱、ボトル容器等が写されており、いずれの商品も包装用の箱及び液剤のボトル容器にそれぞれ「SEED」の表示がされている。
(g)シードコンタクトケア商品とケア用品・付属品標準価格表である乙第23号証には、コンタクトレンズの品目、ケア用品とそれらの価格表が掲載されており、コンタクトレンズの消毒液、中和液のセットである「Consept」(コンセプト)の商品写真には、その商品が「医薬部外品」であることを表示している。
(h)コンタクトレンズのケア用品の商品セットの写真である乙第29号証の1及び2によると、その包装用の外箱の各面には「SEED」、「シード」の表示、その側面に「コンセプトF用アクセサリーキット(トレーB)」として「○専用洗浄液・・・」「○専用保存液・・・」「○専用レンズケース・・・」「○洗浄・消毒・中和用レンズケース・・・」「○コンセプトF消毒システム専用台・・・」「○過酸化水素消毒システム用蛋白除去剤・・・」「○シードソフトコンタクトレンズコンセプトF用説明書」の記載がある。
(2)これらの事実及び被請求人の主張を総合すると、通常使用権者である株式会社シードは、コンタクトレンズ用の洗浄液、消毒液、中和液、保存液、蛋白除去剤(蛋白分解酵素)及び固形状の洗浄剤(顆粒)を溶解する液として用いる精製水について「SEED」及び「シード」の商標を使用しているものと認めることができる。
しかしながら、これらの商品は、いずれも人体に直接使用するものではないが、人体に直接装着するコンタクトレンズ(医療用具として承認されている。)を洗浄、消毒、中和処理、保存、蛋白除去のためコンタクトレンズに直接使用するので、使用の際、これらの液がコンタクトレンズに残留するときは、人体に影響を与えるものである。甲第23号証によると、コンタクトレンズの洗浄剤、消毒液、中和液は医薬部外品であることが表示されており、それ以外の商品も、それらの商品と同様にコンタクトレンズに直接使用される商品であることからすると、いずれも「薬剤」の範疇の商品と認められるところである。
なお、被請求人は、コンタクトレンズのケア用品中「ソフトレンズ用洗浄液、消毒液、中和液及び保存液(剤)」における「洗浄液」は、「化学品」に含まれる「洗浄剤」と類似の商品であり、また、コンタクトレンズ洗浄剤製造用の酵素は「化学品」として扱われていることから、「蛋白除去剤(蛋白分解酵素)」は「化学品」の範疇の商品であり、本件商標は「化学品」にも使用している旨主張しているが、「化学品」に属する洗浄剤は、商品製造等工業用として用いられるものや特定の用途に限定されていないものとして取り引きされるものであり、これに対し、コンタクトレンズ用洗浄液、消毒液、中和液、保存液(剤)又は蛋白除去剤(蛋白分解酵素)は、コンタクトレンズのケアのための商品として製造販売されるものであるから、両商品の生産部門、販売部門及び需要者層を異にし取引系統も相違するものといえるので、原材料の一部に同一化学物質が使用されたとしても両商品は類似するものということはできない。よって、この被請求人の主張は採用できない。
さらに、被請求人は、使用商品である「精製水」は薬事法(日本薬局方)に基づき厚生労働省の承認を受けているものでないことを理由に「化学品」に属する商品である旨主張しているが、「精製水」は、常水の細菌を殺滅又は除去精製された水であるところ、乙第19号証及び同第22号証からすると、その精製水はコンタクトレンズ専用の顆粒状洗浄剤の溶解水として用いるためにその洗浄剤と共に販売されているものと認められることから、これが薬事法に基づく承認がされている精製水(医療用のもの)でないとしても、これを工業用又は用途が特定されていない水が含まれるところの化学品(「水」は「無機工業薬品」に含まれる。)の範疇の商品とみることはできないものである。また、使用商品であるコンタクトレンズ洗浄剤溶解用の「精製水」と化学品に属する水(精製された水)とは、その用途や販売部門を異にし流通系統も相違するので、類似する商品ということはできないものである。よって、この被請求人の主張は採用できない。
したがって、本件商標を通常使用権者である株式会社シードが「化学品」の範疇に含まれる商品(「洗浄剤」又は「水」)又はその類似商品について使用しているものということはできないものである。
その他、本件審判請求に係る商品について使用している証拠の提出はない。
3 してみると、本件商標を本件審判請求に係る指定商品について、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかの者が本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において使用していることを被請求人が証明し、又は、使用していないことについての正当な理由があることを明らかにしない限り、その登録は取消を免れないものであり、被請求人は、それらのいずれも立証をしていないものである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により、その指定商品中「化学品(膠を除く。)及びその類似商品」についての登録を取り消すものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2002-09-09 
結審通知日 2002-09-12 
審決日 2002-10-28 
出願番号 商願昭32-28349 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (201)
最終処分 成立  
特許庁審判長 宮下 正之
特許庁審判官 平山 啓子
高野 義三
登録日 1958-07-10 
登録番号 商標登録第523472号(T523472) 
商標の称呼 1=シード 
代理人 石田 昌彦 
代理人 村橋 史雄 
代理人 萼 経夫 
代理人 村越 祐輔 
代理人 館石 光雄 

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