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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
審判199935082 審決 商標
不服200620197 審決 商標
審判199720329 審決 商標
不服201226164 審決 商標
異議2015900318 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効としない Z25
管理番号 1072260 
審判番号 無効2001-35476 
総通号数 39 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2003-03-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-10-26 
確定日 2003-02-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第4419116号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4419116号商標(以下「本件商標」という。)は、「caprine」の文字を標準文字により書してなり、平成11年11月5日に登録出願、第25類「洋服、コート、セーター類、ワイシャツ類、寝巻き類、下着、水泳着、水泳帽」を指定商品として、同12年9月22日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第12号証を提出した。
1 無効事由
本件商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に該当するものであるから、その登録を無効にすべきものである。
2 具体的理由
(1)引用商標について
請求人が引用する登録第2032245号商標(以下「引用商標」という。)は、「CAPILENE」の欧文字を書してなり、昭和61年6月9日に登録出願、第17類「被服、その他本類に属する商品」を指定商品として、同63年3月30日に設定登録され、その後、平成10年4月7日に商標権存続期間の更新登録がなされているものである。
(2)本件商標と引用商標の外観と観念について
本件商標と引用商標は、それぞれ上記のような構成に係るものであるから外観において類似するものではない。
観念において比較すると、引用商標「CAPILENE」は造語であるが、本件商標「caprine」は、英和辞典によれば、「山羊のような」を意味する形容詞であるとのことである。しかしながら、我が国においては「caprine」なる語を知るものはほとんどなく、一般の取引者、需要者はこれを造語として認識把握するのが普通であるから、これより特定の観念を理解するものはいないと言うべきである。したがって、両商標は観念においても共通するものではない。
(3)本件商標と引用商標の称呼の多様性について
本件商標も引用商標も共に様々に発音される可能性がある。
本件商標について言えば、「Ca」は「キャ」とも「力」とも発音され得るものであり、また、語尾の「rine」は「リン」、「ライン」、「リーヌ」等と発音され得るため、これらの組み合わせた数の称呼が生ずる可能性があるからである。同様に、引用商標も語頭は「キャ」又は「力」のいずれも発音される可能性を持ち、語尾の「LENE」は「レン」、「リン」、「レーヌ」等の発音の方法があり、多くの称呼が生ずる可能性が否定できない。このように、両商標については、発音する人の知識や癖によって発音方法が様々に変化しうるものであり、したがって、多様な称呼が生ずると言うべきである。
(4)本件商標の称呼の特定
(ア)本件商標「caprine」は、多くの場合「キャプライン」と発音されるが、「キャプリン」と発音される場合もある。甲第5号証として提出する「ランダムハウス英語辞典(Windows版)」によれば、「キャプライン」の他「一リン」と発音すべき発音記号が併記されており、従って、本件商標から「キャプリン」の称呼が生ずるというべきである。
(イ)甲第2号証として提出した商標公報において「caprine」の称呼の欄には、「キャプライン、力プライン、キャプリン、力プリン」と表記されている。賢明にも、「caprine」の正しい発音を網羅しており、特許庁においても、本件商標から「キャプリン」「カプリン」の称呼が生じ得るとされていることを示している。
(ウ)需要者が、その発音を知らない商標について称呼を決定する場合、ローマ字を読む要領で発音を考えるか、既存の英単語の発音から発音を類推することが経験則として知られている。「一rine」の語尾部分について言えば、英語としては極めてなじみの深い「marine/マリーン(海の)」、「margarine/マーガリン(マーガリン)」、「submarine/サブマリーン(潜水艦)」、「doctrine/ドクトリン(教義)」、「Listerine/リステリン(口腔洗浄液の商標名)」等の類推から、本件商標「caprine」を「キャプリン」或いは「キャプリーン」、「カプリン」或いは「カプリーン」と発音することが考えられる。「rine」の語尾が「リン」或いは「リーン」と発音される既存語は、例えば(a)nectarine(ネクタリーン)(b)Catherine(キャサリン)、(c)aquamarine(アクアマリーン)(d)chlorine (クローリーン)等極めて多い。
なお、本件商標の称呼「キャプリン」と「キャプリーン」、「カプリン」と「カプリーン」は長音の有無の差であり、このような相違は話者の癖や話される環境によって変化するので、実質的に同一と見得る。
(エ)異議2000-91322の異議決定について
本件商標の登録に対して提出された異議事件の決定においては、「・・この語は、必ずしも一般に親しまれている語ではないとしても、語尾部分の綴りが『rine』あるいは『ine』で終わり、『caprine』と同様に『イン』と発音される英語の例として、例えば、『shrine(シュライン)』、『valentine(バレンタイン)』、『outline(アウトライン)』のように、親しまれた英語の中にもあることに照らしてみれば、当該綴字部分を『イン』と称呼することは自然な読みと言えるから、本件商標は、成語である英語の発音に従い『キャプライン』あるいは『カプライン』の称呼をもって取り引きに資されるものと判断するのが相当である。」とされている(甲第7号証)。
しかしながら、当該異議決定の内容は矛盾を含んでいる。ここでは、「rine」「ine」の語尾綴りは「イン」と発音されるとして、「shrine(シュライン)」、「valentine(バレンタイン)」、「outline(アウトライン)」を例に挙げているが一貫しない。何故ならば、「rine」、「ine」が「イン」と発音されるものであれば、「caprine」は当然「キャプリン」、「カプリン」と発音されることになるからである。この前提を裏付ける類例は多数あり、「tourmaline(トルマリン)」、「vaseline(ワセリン)」、「Adeline(女子の名)」等は「リン、リーン」の発音を有し、「routine(慣例、定石)」、「guillotine(ギロチン)」、「nicbtine(ニコチン)」、「Argentine(アルゼンチン)」等は「ティン、ティーン」と発音されるものである(甲第8号証及び甲第9号証)。
したがって、異議決定の理由は採用し得ないことが明らかである。
(オ)引用商標の称呼の特定について
造語である引用商標「CAPILENE」は、ローマ字読みでは「キャピレーネ」、「カピレーネ」であるが、既存の単語の類推から「キャピリーン」、「カピリーン」と発音されることがが考えられる。語尾の「lene」を「リーン」と発音する成語の英単語には(a)Abilene(アビリーン)(b)AIene(エイリーン)(c)scalene(スケイリーン)(d)ethylene(エシリーン)等多数ある。
その他、女性の名前のキャサリーンも「Kathelene」と綴る場合がある。したがって、「CAPILENE」を「キャピリーン」或いは「カピリーン」と発音する可能性は多いにあると言わなければならない。上記の異議事件においても、引用商標の称呼の特定については「キャピリーン」、「カピリーン」で争いがない。
(カ)本願商標と引用商標の称呼の比較
ここでは、本件商標の称呼「キャプリーン」、「カプリーン」と引用商標の称呼「キャピリーン」、「カピリーン」を比較する。
ここにおいて、相違するのは第2音目の「ピ」と「プ」のみである。「ピ」と「プ」は共にハ行の半濁音であり、「イ」母音と「ウ」母音は近似しているから、音質としては近似音である。また、語調としては、共に第3音目の「リー」が強音になるので、第2音目の「ピ」、「プ」は弱音となり、極めて聴別しにくいものである。したがって、両称呼は極めて相紛らわしい類似の称呼であると言うべきである。
比較する2称呼の相違が「ピ」と「プ」であって、それらが印象の弱いところに位置する場合、(a)昭和57年審判第17205号審決(無効審判事件)(b)昭和54年審判第3263号審決(拒絶査定に対する審判事件)(c)昭和53年審判第16257号(拒絶査定に対する審判事件)おいても、商標が互いに類似するとしている(甲第10号証ないし甲第12号証)。
また、本件商標と引用商標は商品「洋服、コート、セーター類、ワイシャツ類、寝巻き類、下着、水泳着、水泳帽」について抵触する。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、その登録を無効とさるべきである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第5号証の2を提出した。
1 称呼の認定
文字商標の称呼を認定するに際しては、当該商標と同一の構成文字から成る語が外国語において成語として存在する場合は、第一次的にはその成語の称呼が生じるとみるべきである。しかし、その商標と同一の構成文字から成る成語が日本の一般需要者にあまり知られていない場合は、本来の称呼の他に、第二次的には日本の一般需要者のほとんどが学校で学びその読み方を習得しているローマ字読みを参考にした称呼、あるいは欧文字の綴り及びその発音の双方が相互に結び付いた状態でよく知られている外国語の読みを参考にした称呼も生じる可能性がある。そして、商標が欧文字の綴りから成る造語の場合は、日本の一般需要者のほとんどが学校で学びその読み方を習得しているローマ字読みを参考にした称呼、あるいは欧文字の綴り及びその発音の双方が相互に結び付いた状態でよく知られている外国語の読みを参考にした称呼が生じ得る。
2 引用商標の称呼
(1)請求人が本件商標に対する引用商標として挙げている登録第2032245号商標をみてみる。引用商標は「CAPILENE」の欧文字を書して成るが、この引用商標の構成文字と同一の欧文字から成る語は、外国語には見当たらず、請求人が述べているとおり、造語とみるべきものである。したがって、引用商標の称呼を認定するに際しては、上述のとおり、ローマ字読みを参考にした称呼、あるいは欧文字の綴り及びその発音の双方が相互に結び付いた状態でよく知られている外国語の読みを参考にした称呼に沿うべきである。
そうすると、引用商標からは、ローマ字読みを参考にした場合は、「キャピレネ(カピレネ)」の称呼が生じるとみられる。外国語の読みを参考にしようとした場合は、「CAPI」部分は直ちに「キャピ(カピ)」と読まれるが、「LENE」部分はこの構成文字を有する外国語で日本においてよく知られている語は見当たらないので参考となる読みは直ちには思い浮かばず、その結果、全体の一連の称呼も直ちには思い浮かばないといえる。ただ、より広く類推すれば、日本人にも極めてよく知られている英単語、例えば「ONE」の「NE」部分が「ン」と発音されることからの類推から、「LENE」部分から「レン」の称呼が生じるともいえる。この場合には、全体からは「キャピレン(カピレン)」の称呼が生じ得る。
以上のように、日本の平均的な一般需要者の外国語の語学力からすれば、引用商標「CAPILENE」は「キャピレネ(カピレネ)」と称呼され、より広く類推された場合は「キャピレン(カピレン)」と称呼される、とみるのが自然である。
引用商標の称呼に関して、特許庁のホームページにおける公開データ一の引用商標部分の写しを、「乙第1号証」として提出する。乙第1号証では、引用商標の称呼としては、「キャピレネ(カピレネ)」、「キャピレン(カピレン)」、「キャピルン(カピルン)」が挙げられている。」では、種々推測して広目に複数の称呼が挙げられているが、請求人が主張している「キヤピリン(カピリン)」、「キャピリーン(カピリーン)」の称呼は挙げられていない。更に、欧文字「LENE」の称呼に関して、特許庁のホームページにおける公開データ一の登録第767821号及び登録第1487004号部分の各写しを、「乙第2号証ないし乙第3号証」として提出する。乙第2号証の商標は「LEAN/リーン」で、乙第3号証の商標は「Lene」(但し、rene」部分は「L」と同じ大きさである。以下同じ)である。
ここでは、片仮名「リーン」を有する商標と、明確に欧文字「Lene」と認識し得る商標とが、同じ指定商品で且つ本件商標及び引用商標と抵触する指定商品において併存している。ここでは、「Lene」は「リーン」とは読まれていない。
(2)請求人は、引用商標「CAPILENE」からは、ローマ字読みでは「キャピレーネ」あるいは「カピレーネ」の称呼が生じ、既存の英単語の類推からは「キャピリーン」あるいは「カピリーン」の称呼が生じることを主張し、後者の場合の類推の根拠となる英単語として「Abilene」、「AIene」、「scalene」、「ethylene」、「acetylene」、「naphthalene」等を挙げている。しかし、ここで請求人が挙げている英単語は、日本の平均的な一般需要者においてはほとんど知られていないか、あるいはその発音を日本語表記した語は知られていてもその日本語表記に対応する英単語の綴りはほとんど知られていないと考えられる。したがって、それら英単語が、既存の単語の類推から「LENE」部分からは「リーン」の称呼が生じるとする根拠にはならない。
殊に、請求人が挙げている英単語中、例えば「ethylene」、「acethylene」では、それら英単語自体が知られていると仮定した場合でも、それらに対応する日本語としては「エチレン」、「アセチレン」の語が知られているので、ここにおいては、「lene」と「リーン」とは結び付いていおらず、むしろ「lene」は「レン」と結び付いているのである。
請求人が主張する「既存の英単語の発音から商標の発音を類推する」ことは勿論あり得るが、それは既存の英単語の発音のみでなく、その英単語の欧文字の綴りの双方が一般需要者においてよく知られている場合のことであり、発音を表記した語が知られていてもその欧文字の綴りが知られていないときは、既存の英単語から当該商標の発音を類推することなどできないのである。そして、日本の平均的な一般需要者において、発音と共に欧文字の綴りがよく知られている単語で、その単語の「lene」部分が「リーン」ともされる外国語の単語は見当たらない。
以上の点において、請求人の主張は根拠を欠くものであり、引用商標「CAPILENE」は、上述のとおり、日本の平均的な一般需要者においてもその読み方の知識を備えているローマ字読みから類推して「キャピレネ(カピレネ)」、あるいはより広く類推して「キャピレン(カピレン)」と称呼されるとみるのが自然である。
(3)なお、請求人は、引用商標「CAPILENE」の称呼について、それが「キャピリーン(カピリーン)」と特定されることは本件商標に対する異議申立事件においても争いがない(即ち、当該異議申立事件を審理した審判官も、引用商標の称呼は「キャピリーン(カピリーン)」であると認めている)と述べている(審判請求書の第7頁の2〜4行)。しかし、請求人のこの主張は、事実に反する。前記異議申立事件の「異議の決定」においては、「本件商標は、成語である英語の発音に従い『キャプライン』あるいは『カプライン』の称呼をもって取引に資されるものと判断するのが相当である。」としたうえで、「本件商標から『キャプリーン』あるいは『カプリーン』の称呼をも生ずるものとし、そのうえで、『キャピリーン』あるいは『カピリーン』の称呼を生ずる引用商標と称呼において類似するものとする申立人の主張は採用できない。」と記されているのである(異議の決定書の「3当審の判断」の9〜15行目)。「争いがない」とするには、その前提として、特許庁において引用商標の称呼は「キャピリーン(カピリーン)」であるとの認定がなされ、その認定に基づいて引用商標の称呼についての特許庁の考えが示される必要があるが、この決定においては、引用商標の称呼の認定はなんら行われていない。この決定の前記下線部分は、単に請求人の主張を記載したものに過ぎず、そして、その主張は採用できないと決定されているのである。
(4)本件商標の称呼
他方、本件商標「caprine」と同一の構成文字から成る語は、請求人も認めているとおり、英語の成語として存在しているので、本件商標は、第一次的には「キャプライン」あるいは「カプライン」と称呼され、希には「キャプリン」あるいは「カプリン」と称呼されることもあり得る。また本件商標と同一の構成文字から成る英語の成語はあまり知られていないので、本件商標は、第二次的には、ローマ字読みから類推して「キャプリネ」あるいは「カプリネ」と称呼されることもあり得る。そして、既存の英単語の発音から類推される場合は、本件商標「caprine」の「rine」部分は、日本人に発音と共にその欧文字の綴りが極めてよく知られている英単語「FINE」(ファイン)、「LINE」(ライン)、「MINE」(マイン)、「NINE」(ナイン)、「WINE」(ワイン)等からの類推から「ライン」と発音される可能性が高く、この場合には、本件商標全体は「キャプライン(カプライン)」と発音される可能性が高いといえる。
(5)本件商標の称呼と引用商標の称呼との比較
上記のとおり、本件商標からは「キャプライン(カプライン)」、「キャプリン(力プリン)」、「キャプリネ(力プリネ)」の称呼が生じ、引用商標からは「キャピレネ(カピレネ)」、「キャピレン(カピレン)」の称呼が生じる。本件商標の称呼と引用商標の称呼のうち比較的近い「キャプリン」と「キャピレン」及び「キャプリネ」と「キャピレネ」、「カプリン」と「カピレン」及び「カプリネ」と「カピレネ」の各称呼を対比しても、充分に聴別し得る非類似の商標である。
(6)引用商標の登録の無効原因等
なお、商標中に「Caprine」の文字を有する、被請求人名義の登録第1608526号商標(以下「別件商標」という。)が存在する。そして、別件商標は、昭和50年12月18日に出願され、昭和58年8月30日に設定登録されたもので、現在も商標権が存続していて、その指定商品は旧第17類「被服(運動用特殊被服を除く)、布製身回品(他の類に属するものを除く)、寝具類(寝台を除く)」である(乙第4号証)。
この被請求人別件商標は「Caprine」の文字を有するものであるから、そこからは本件商標「caprine」の称呼と同一の称呼も生じ得る。仮に、本件商標「caprine」と引用商標「CAPILENE」とが称呼上類似するとするならば、その構成中に「Caprine」の文字を有する被請求人別件商標と引用商標とは称呼上類似することになる。そして、別件商標は引用商標より先出願の商標である。そうすると、引用商標は、別件商標の存在で、その登録が拒絶されていたはずである。
しかし、引用商標は登録された。この引用商標が登録された事実からして、引用商標は別件商標と称呼上非類似であると認定されたとみるべきである。 そして、引用商標が別件商標と称呼上非類似であるならば、引用商標は本件商標とも称呼上非類似であるとみるべきである。
それにもかかわらず、「引用商標は本件商標と称呼上類似する」とするならば、引用商標の登録は別件商標の存在で本来は無効とされるべきものであるから、この「引用商標は本件商標と称呼上類似する」との請求人の主張は、請求人自ら引用商標の登録の有効性を否定していることに他ならない。
請求人が引用商標の登録の有効性を肯定するのならば、引用商標は本件商標と称呼上類似しないというべきである。
(7)請求人の使用標章と本件商標から生じる称呼について
請求人は、同人のホームページ(英語版)及びその日本サイト(日本語版)の双方において、引用商標と大文字・小文字の違いはあるが同じ欧文字の構成文字から成る「Capilene」の語を、衣服に関して表示している。そして、請求人のホームページ(英語版)に表示されている「Capilene」の語に対応する日本語訳は、その日本サイト(日本語版)に「キャプリーン」と表示されている。
この点に関して、請求人のホームページ(英語版)の抜粋の写しを「乙第5号証の1」、同日本サイト(日本語版)の抜粋の写しを「乙第5号証の2」として提出する。
もし、「caprine」の文字から「キャプリーン」の称呼が生じるとするならば、前記請求人の「キャプリーン」の話を衣服に関する標章として使用している行為は、被請求人別件商標の称呼のうちの一つ「キャプリーン」の称呼と完全に同一の称呼の標章を使用していることとなり、別件商標の商標権を疑いなく侵害しているとみなされるものである。しかし、「caprine」の文字からは、少なくとも「キャプリーン」の称呼は生じないのである。
(8)結論
以上述べたとおり、本件商標は、引用商標とは、請求人のいう称呼上において、互いに明確に聴別できる非類似の商標であるので、本審判請求には理由がない。

第5 当審の判断
本件商標は、「caprine」の欧文字よりなり「やぎ、やぎのような」の意を有する英語(研究社 新英和大辞典 1960)であるが、例えば「小学館ランダムハウス英和大辞典 昭和60年」、「新コンサイス英和辞典三省堂 1980」には掲載されておらず、該語は我が国において親しまれている語とはいえないもので、これに接する取引者、需要者は、最も馴染まれている外国語である英語あるいは外来語の読みに倣って発音するとみられ、「cap」若しくは「rine」の綴字を有する語同様に称呼する場合も少なくないないものとみられるから、「capri」(イタリアのカプリ島)が「カプリ」、「capsule」(薬の、宇宙ロケット等の)が「カプセル」、「captain」(長、指導者)が「キャプテン」、「capital」(首位の、元金の)が「キャピタル」、「margarine」(人造バター)が「マーガリン」、「nectarine」(果実)が「ネクタリン」等と発音されている例に徴すれば、本件商標は「カプリン」、「キャプリン」の称呼を生ずるとみるのが相当である。
他方、引用商標は「CAPILENE」の欧文字よりなり、特定の意味合いを有しない造語を表したものとみられるから、「CAPI」の部分は「カピ」、「キャピ」と発音され、「LENE」の部分のうち「LE」は「レ」及び「ル」と発音されることが多く、また、「NE」は「ネ」及び「ン」と発音されることが多いものであるから、引用商標は全体としてはその称呼を特定しにくいものであるが、「カピレネ」、「カピレン」、「キャピレネ」、「キャピレン」のそれぞれの称呼を生ずるとみるのが相当である。
そこで、本件商標より生ずる「カプリン」、「キャプリン」と引用商標より生ずる「カピレネ」、「カピレン」、「キャピレネ」、「キャピレン」の称呼とを比較するに、本件商標と引用商標とは、語頭音「カ」と「キャ」を共通にし、本件商標の語尾音と引用商標の「カピレン」、「キャピレン」の称呼の語尾音「ン」を同じくするものの、中間にて本件商標は「プリ」、引用商標は「ピレ」と相違するものであるから、これら相違する各音が短い音構成よりなる両称呼に及ぼす影響は大きく、本件商標と引用商標とを一連に称呼しても全体の語調語感が異なり、称呼上十分聴別し得るものである。
また、本件商標と引用商標とは、外観上においては構成文字の差異により区別し得るものであり、観念上においては比較すべくもない。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観、称呼、観念のいずれの点においても区別できる非類似の商標といわざるを得ない。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項第1号の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2002-08-30 
結審通知日 2002-09-04 
審決日 2002-09-25 
出願番号 商願平11-101410 
審決分類 T 1 11・ 262- Y (Z25)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 田辺 秀三
特許庁審判官 小林 薫
岩崎 良子
登録日 2000-09-22 
登録番号 商標登録第4419116号(T4419116) 
商標の称呼 キャプライン、カプライン、キャプリン、カプリン 
代理人 黒川 弘朗 
代理人 山川 茂樹 
代理人 北村 修一郎 
代理人 西山 修 
代理人 紺野 正幸 
代理人 鈴木 二郎 
代理人 山川 政樹 

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