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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない 003
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない 003
審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない 003
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 003
管理番号 1072045 
審判番号 審判1999-35052 
総通号数 39 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2003-03-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-01-28 
確定日 2003-01-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第3223125号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第3223125号商標(以下「本件商標」という。)は、「ZAHRA」の文字を横書きしてなり、平成5年11月29日に登録出願(優先権主張、アメリカ合衆国 出願日1993年5月28日)、第3類「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き」を指定商品として、平成8年11月29日に設定登録されたものである。

第2 請求人の引用商標
請求人の引用する登録第2467891号商標(以下「引用A商標」という。)は、「ザラ」の片仮名文字と「ZARA」の欧文字とを二段に横書きしてなり、平成2年6月1日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、同4年10月30日に設定登録されたものである。同じく、登録第4108998号商標(以下「引用B商標」という。)は、「ZARA」の文字を横書きしてなり、平成5年3月31日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同10年1月30日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録は、無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第15号証を提出した。
1 請求の理由
(1)請求人は、創業以来、商品の感度、品質、価格等の特徴に人気を博し急激に成長したスペイン最大手のアパレルファッションメーカーであり、本件商標の出願時頃は当業界において既に世界的に良く知られた企業となっていたものであり、「ZARA」は請求人の重要な商標として著名となっていたものである(甲第6号証及び甲第7号証)。
すなわち、例えば日本のファッション雑誌においても、甲第11号証のように請求人の沿革が明らかにされている。
請求人は今や甲第8号証に示されるような大組織になっており、特に1986年頃からの売上高も莫大である(甲第8号証及び甲第9号証)。
また、請求人は1984年からヨーロッパ、アメリカ、アジア等の世界各国に商標「ZARA」を出願・登録しており、その総数は甲第10号証に示されるように夥しいものである。
のみならず、請求人及びその商標「ZARA」は、ヨーロッパやアメリカ等世界各国の新聞・雑誌等に取り上げられて紹介されており(甲第11号証)、日本についても例外ではない。
例えば、上記したファッション雑誌には、上記に続き、「…海外進出を開始した88年以降、7年間で売上高は約4.5倍に拡大し、95年末の総店舗数は531店にも達したインディテックス・グループ。うち、230店を占める“ZARA”の成功要因として以下の3点が挙げられる。(ア)トレンドを程良く押さえた間口の広い商品群(イ)手頃なプライスとショップイメージの高さ(ウ)最新技術を駆使したQRシステム」として各特徴が詳しく説明されている。
また、新聞でも、請求人に関し「スペインのファッションメーカーの草分け的存在で、1975年に創業、売上高3000億円の同国内のトップ企業であり、このうち、『ZARA』の売上は70%を占める。商標『ZARA』の商品を扱う総店舗数は530、このうち120店が海外店舗であり、パリ直営店が注目を集めその後ニューヨークなど世界8カ国に出店している」等と報道されている。
上記商品の世界一市場化に鑑みれば、本件商標の優先権主張による出願時である平成5年(1993年)5月28日には、請求人所有の引用A商標及び引用B商標が日本の取引者間においても著名であったことは明らかである。
(2)そこで、本件商標と引用A商標及び引用B商標を比べてみると、本件商標からは「ザーラ」の称呼が生ずるのに対し、引用A商標及び引用B商標からは「ザラ」の称呼が生ずるものであり、前者と後者は第1音目「ザ」に伴う長音の有無に差異があるに過ぎないものである。よって、本件商標は称呼上引用A商標及び引用B商標に類似する商標である。この点は、特許庁においても上記した商願平6-7684号及び商願平9-123120号の審査において同様の判断がなされていることから、争う余地はないものと考える。
さらに、本件商標の指定商品は第3類「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き」であるのに対し、上記引用A商標及び引用B商標の商品は「被服等」であるから、両者の商品は非類似であるとの反論が予想されるので、それについて言及する。
確かに、日本商標法の商品区分に従えば、本件商標の指定商品は第3類に属するものであり、引用A商標及び引用B商標の指定商品は第25類に属するものである。
しかし、第1に、商標法第6条第2項において、「…商品の区分は商品の類似の範囲を定めるものではない。」と規定されており、商品の属する区分が異なるからといって、それら商品が非類似であるとは限らないことは明白である。
第2に、請求人が著名にした商標「ZARA」の業界、すなわち、被服等のファッション業界においては、同時に香水等を販売することが多々ある。例えば、甲第12号証に示されるように、「Adidas」「Benetton」「Burberrys」「Calvin Klein」「Cristian Dior」「Chanel」「Givenchy」「Gucci」「Kenzo」「Nina Ricci」等、被服のブランドと著名な商標が同時に香水にも使用されているのである。また、現実の取引者、需要者層も同一であって、同一のファッション雑誌に宣伝広告されるものである。
現にスペインを含む他国の商標審査基準でも「香水」と「被服」を類似商品であると扱うものもある。ファッションの分野における世界一市場化を鑑みれば、杓子定規的な判断は取引の実情に反するものである。
したがって、本件商標の指定商品と引用A商標及び引用B商標の指定商品について、その類似性を完全に否定できるものではないと考える。
(3)上述したように、「香水」と「被服」が類似する商品であると考えると、本件商標は引用A商標及び引用B商標と類似する商標であって、類似する商品を指定するものであるから、商標法第4条第1項第10号及び第11号に該当し拒絶されるべきであるのに誤って登録されたものである。
また、仮に上記商品が非類似であるとしても、本件商標は著名な引用A商標及び引用B商標に類似する商標であって、需要者及び取引者において出所混同を生じさせるおそれがあることから商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
更には、本件商標は他人の外国商標を先取りして登録した、国際信義に反する商標として商標法第4条第1項第7号にも該当していたものである。
商標法第4条第1項第19号が新設され、外国商標の保護が厚くなった趣旨に鑑み、「ZARA」に化体した請求人の企業努力による信用は我が国においても保護されるべきであると考える。
(4)以上述べたように、本件商標は商標法第4条第1項第7号、第10号、第11号若しくは第15号の規定に違反して登録がなされたものであるから、商標法第46条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は「本件商標『ZAHRA』は1993年アメリカ合衆国において香水、化粧水、コロン、ボディーパウダー、ローション、クリーム、ミルクバス等の化粧品及び石けんに使用してこれらを販売して以来、その販路を世界各地に広げ…」と主張しているが、その証拠としてアメリカ合衆国商標公報しか提出されていない。1993年から上記のような多種商品に使用しており、しかも世界各地に販路を広げているのであれば、現実に使用していることを証明する証拠が一つも提出できない筈はないものと思われる。
したがって、被請求人の上記主張は証明することのできない単なる主張に過ぎないものと考える。
(2)次に、被請求人は、「本件商標は、被請求人がアメリカ合衆国において使用を開始して以来、多数の国々において使用されて著名となっている…」と主張しているが、被請求人が提出した乙第2号証ないし乙第23号証は全て各国登録証の写であってこれにより本件商標が使用されて著名となっていることの証拠にはならない。
なぜなら、当然のことながら、日本を始め多くの国においては、その商標が現実に使用されているか否かを問わず登録され得るからである。
これに対し、請求人は審判請求時に提出した各国登録例の他、現実に甲第13号証に示すとおりの「ZARA SHOP(ZARAの店)」を展開しており、必要であればこれら夫々について売上等を証明する証拠を提出することができる。
さらに、被請求人は「商標『ZAHRA』と商標『ZARA』は異なるものであり、先取りという主張は錯覚によるもの以外のなにものでもなかろう。」と主張しているが、請求人が出願人である、商標「ZARA」(商願平6-7684号)及び「ザラ/ZARA」(商願平9-123120号)は、いずれも本件商標を引例として拒絶理由を受けており、「ZAHRA」と「ZARA」が類似の商標であるという判断がなされていることは明白な事実である。また、その故に請求人の上記出願商標は未だに登録を得られていないのである。
したがって、同一の商標ではなくとも、被請求人が請求人の著名商標に類似する商標を先取りしたとする非難を免れ得る筈はないものである。
(3)次に、被請求人は、「…被請求人の商標は海外において著名であり、我が国においても既に少しづつ商品が流通し、また、雑誌「Ebony」の頒布もあり知られている。」と主張しているが、これについても何らの証拠も提出されていない。即ち、被請求人の商標がどのような商品に使用されて、どのような国に流通し、どの程度著名であるのか、また、雑誌「Ebony」と本件商標がどのような関係にあるのか、全く不明であり、確認の仕様がないものである。
これに対し、被請求人は続けて「請求人の引用商標は、我が国において化粧品、石けん類については無論、被服についても何ら使用された事実を聞かない。」としているが、現在、日本の「ZARA SHOPS」は、東京に3店舗、大阪1店舗、福岡に1店舗あり、夫々人気を博しているものである。
また、日本のファッション雑誌や新聞においても大々的に取り上げられ、1993年には既に当業界において「ZARA」が周知著名であったことは明白である(甲第11号証)。したがって、被請求人の上記認識は、当業界にあっては誤ったものである。
ちなみに、請求人は、本国スペインでも販売しているように、化粧品、石けん類についても(甲第14号証)、ベルト、靴、眼鏡等についても(甲第15号証)、日本における販売計画を有しているものである。
(4)最後に、被請求人は「請求人が提出した証拠は、いずれも外国における出版物であり、しかも、化粧品に関する出版物は請求人の引用商標とは全く関係のない他人の著名商標を表示したものである。」と述べているが、甲第11号証には日本において出版された雑誌や新聞の記事も含まれている。また、化粧品に関する他人の著名商標の出版物を提出したのは、被服を取り扱う会社が同時に化粧品を取り扱うことが多く、同一又は類似の商標が使用された場合に商品の出所混同が生じ得ることを証明したに過ぎないものである。
以上に述べたように、被請求人の主張はいずれも理由のないものである。
3 第二答弁に対する弁駁
(1)第4条第1項第11号
被請求人は、本件商標にかかる指定商品が商品区分第3類に属するせっけん類、香料類、化粧品、歯磨きであるのに対し、引用商標の指定商品は旧第17類及び第25類に属するものであるから全く同一でも類似でもなく、商標法第4条第1項第11号に該当しない旨を主張している。
しかし、我が商標法によれば、商品の区分は商品の類似の範囲を定めるものではないことから、異なる区分に属するものであっても互いに類似する商品は存在する筈である。
また、被服等のファッション業界において、被服に使用する商標の下に香水等が宣伝広告、製造販売されることは全世界に亘り周知の事実で、その事実に鑑みスペインを始めとする他国においては、被服と香水を類似商品として扱っているものである。
さらに、昭和36年6月27日付最高裁判決においても「…それらの商品が通常同一営業主により製造販売されている等の事情により、それらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売にかかる商品と誤認される虞があると認められる関係にある場合には、たとえ商品自体が互に誤認混同を生ずる虞がないものであっても…類似の商品にあたると解するのが相当である」(昭(オ)1104・取347)としており、類似の商品であるか否かの判断にあたっては、需要者層が同一であるかどうか、同一製造業者・販売業者によって製造・販売されるものであるか否か、が重要な基準となるとされている。
またさらに、商品類似の判断基準時について言えば、商品の類否は経済事情や社会通念の変化にともない変遷するものであって、時と処を異にすることによって類否の範囲も変化するものであり、登録時に非類似の商品とされたものも数年後には類似商品とせざるを得ない場合があることは、商標法の趣旨を鑑みれば当然のことである。
したがって、商品区分が異なれば非類似商品であるとする被請求人の杓子定規的な主張は、それ自体が論理性のない誤ったものである。
(2)第4条第1項第10号及び第15号
被請求人は、甲第11号証中の日本における頒布印刷物はいずれも1998(平成10)年の頒布物であり、本件商標の基準日である1993(平成5)年5月28日において引用商標「ZARA」が日本において周知著名であったことが証明されていない旨を主張している。
しかし、頒布の日付が1998(平成10)年であっても、記事の内容からすれば1993(平成5)年には引用商標「ZARA」が日本において周知著名であったことは容易に理解できるものである。
すなわち、上記記事によれば請求人は「スペインのファッションメーカーの草分け的存在で1975年に創業、売上高は約3000億円の同国内トップ企業、このうちザラの売り上げは70%を占める。ザラの総店舗数は530、このうち120店が海外店舗、パリ直営店が注目を集め、その後ニューヨークなど世界8カ国に出店している。」ものであり、海外旅行が盛んでファッションに敏感な日本の若い女性などが1993年当時に知らない筈はないことは容易に想像できるものである。
また、他の記事によれば、「この3年間の輸出額は、93年775億800万ペソ、94年958億2200万ペソ、95年1267億8600ペソと毎年30%前後の高い伸びを示している。輸出の相手国は第1位がフランス…日本は14位」とされ、日本に店舗がなくても多くの商品が販売されている事実が記載されている。
世界的な「ZARA」の著名性に鑑みて常識的に判断すれば、1993(平成5)年当時であっても「ZARA」が日本において周知著名であったことは重ねて言うまでもないことである。
なお、被請求人は、「『ZARA』は、……いわゆる安売り店である。」「安売りを営業の競争力とする企業は、かかる事業では商標に価値を求めず、単に地域の顧客に店名と商品を宣伝するのが常套である。」などと主張しているが、これら主張には何らの根拠も証拠もない。
(3)商標法第4条第1項第7号
被請求人は、本件商標「ZAHRA」が世界の各国において第38類の役務を指定して商標登録されていることを理由として「当然営業活動をしている」と主張している。
しかし、第38類の指定役務は「通信、放送、ニュースの供給、通信機器の貸与」などであって、これらと本件商標の指定商品に関する営業活動とは全く関係のないものである。したがって、上記登録は被請求人の本件商標に関する営業活動を何ら証明するものではない。
また、被請求人は1993(平成5)年にイギリスのデパートにおいて「ZAHRA」を付した香水、化粧品を発表した旨を主張しているが、既に繰り返し述べているとおり、この当時には既に引用商標「ZARA」は世界各国において周知著名であったものであり、周知商標は保護されるべきことを規定するパリ条約の見地よりすれば、被請求人の上記使用は違法であったとも言えるものである。
さらに、「請求人が日本に店舗を置くより前の1997年における広告の一部を乙第26号証として提出する。」と述べているが、昨今の世界一市場化や通信技術の発達を鑑みれば、店舗の有無は周知性判断基準の全てではないことは明らかである。
なお、被請求人提出の乙第27号証については、第二審判答弁書に記載がなく提出の趣旨が不明である。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由及び弁駁に対する答弁を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第27号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)被請求人は、本来は出版を業とするアメリカ合衆国の企業である。その主要な出版物である雑誌「Ebony」が掲載するファッションや商品が人気なことから、これらのファッションを具現した被服、靴等の商品や化粧品を販売するに至り、現在は出版業のみならず、ファッショングッズの企画、製造、販売を手掛けている。
本件商標「ZAHRA」は、1993年にアメリカ合衆国において香水、化粧水、コロン、ボディーパウダー、ローション、クリーム、ミルクバス等の化粧品及び石けんに使用してこれらを販売(乙第1号証)して以来、その販路を世界各地に拡げ、また、商標の登録をなしてきた。現在、アメリカ合衆国、日本の他23ヶ国において商標登録をなしている(乙第2号証ないし乙第23号証)。
(2)請求人は、本件商標を、他人の外国商標の先取りであって商標法第4条第1項第7号に該当すると主張するが、先述のとおり、本件商標は、被請求人がアメリカ合衆国において使用を開始して以来、多数の国々において使用され著名となっている商標である。
請求人の商標は、主としてスペイン国及びフランス国において、被服に使用されている商標であり、これに比し被請求人の商標は前述のとおり多くの国において著名となっているものである。
したがって、被請求人の商標は請求人の商標を先取りしたというようなものでは全くない。そればかりはでなく、商標「ZAHRA」と商標「ZARA」は異なるものであり、先取りという主張は錯覚によるもの以外のなにものでもない。
いずれにしても、本件商標が、商標法第4条第1項第7号に該当するようなものでないことは明らかである。
(3)つぎに、請求人は本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当すると主張する。
しかし、前述のとおり、被請求人の商標は海外において著名であり、我が国においても既に少しづつ商品が流通し、また、雑誌「Ebony」の頒布もあり、知られている。これに対し、請求人の引用A商標及び引用B商標は、我が国において全く知られていない。請求人の引用A商標及び引用B商標は、我が国において化粧品、石けん類については無論、被服についても何ら使用された事実を聞かない。請求人が提出した証拠は、いずれも外国における出版物であり、しかも、化粧品に関する出版物は請求人の引用A商標及び引用B商標とは全く関係のない他人の著名商標を表示したものである。
したがって、請求人の引用A商標及び引用B商標は、我が国において化粧品や石けん類については言うまでもなく、被服についてすら著名ではないのであるから、商標法第4条第1項第10号の主張は成り立たない。
(4)請求人は、自らの登録商標(引用A商標及び引用B商標)を引用し、商標法第4条第1項第11号に該当すると主張する。
しかし、いずれの引用商標も本件商標と同一でも類似でもなく、また、その指定商品も全く異なるものである。
よって、商標法第4条第1項第11号に該当するとの主張も成り立たない。
(5)さらに請求人は、本件商標が出所混同を生じさせるから商標法第4条第1項第15号に該当すると主張する。しかし、本件商標をその指定商品に使用した場合に他の商品を指定商品として商標登録を受けているだけの著名でもない引用A商標及び引用B商標の商標権者の請求人の業務と誤認混同を生ずる筈もないものである。
したがって、請求人の主張は、ここでも全く誤っていると言わざるを得ない。
2 弁駁に対する答弁
(1)第4条第1項第11号
本件商標にかかる指定商品は、商品区分第3類に属する「せっけん類、香料類、化粧品、歯磨き」である。
これに対し、請求人の引用する二つの商標登録は、旧第17類に及び第25類に属するものであるから、全く同一でも類似でもない商品に係る商標登録である。
したがって、本件商標は、引用A商標及び引用B商標とは全く同一でも類似でもないと言わざるを得ず、商標法第4条第1項第11号に該当することはありえない。
(2)第4条第1項第10号及び第15号
本件商標は、甲第1号証に示されるとおり、1993(平成5)年5月28日を最初の出願日とする優先期間内である、平成5年11月29日付の商標登録願(商願平5-120248)につき商標登録を受けたものである。
したがって、第10号及び第15号の該当性は、審査時のみならず、平成5年5月28日(以下に基準日という)における該当性も吟味されなければならない。
これにつき請求人は、外国における印刷物を証拠として提出するほか、日本における印刷物を甲第11号証として提出し、「ZARA」は請求人の著名な商標であった、と主張する。しかし、請求人の提出した甲第11号証中の日本における頒布印刷物は、いずれも1998(平成10)年の頒布物であり、基準日における我が国における「ZARA」の使用を証明するものではない。
いいかえれば、請求人は、基準日に「ZARA」が我が国において使用されていたこと、あるいはこれが、周知著名であったということを証する何らの証拠も提出していない。
そもそも「ZARA」は、基準日において、我が国に知られていたと考えることに無理があるものである。
甲第11号証のAPPENDIX2・9の日本文の記事からは、「ZARA」は、レディースジャケット15,000円〜20,000円、スカート4,900円〜6,800円、メンズスーツ27,000〜31,000円等々、いわゆる安売り店である(繊研新聞)。安売りを営業の競争力とする企業は、かかる事業では商標に価値を求めず、単に地域の顧客に店名と商品を宣伝するのが常套である。その結果、顧客は店名と商品を結びつけて認識しているから、「ZARA」の場合には、顧客は「衣服」の「ZARA」とのみ認識するのが常である。また、商品は自社店舗でのみ販売されるため、店舗の置かれた地域の顧客には店舗名が知られるが、他地域に「ZARA」が知られることはない。そのため、それまでに店舗の置かれていなかった地域において、名称あるいは商標として「ZARA」が知られてたものとなっていたと考えることは出来ない。
我が国においては「ZARA」との名称をもつ請求人の店舗は平成10年が第1号店であるから基準日前に存在しなかったことが明らかである。
また、請求人の提出するほかのいかなる証拠によっても、「ZARA」が店舗名として、あるいは、衣服についての商標として我が国において知られていたと認めることは不可能である。
したがって、請求人の引用する「ZARA」、または「ザラ」が我が国において、知る者がいなかったと言うことから、第3類に属する指定商品をカバーする本件商標が基準日に商標法第4条第1項第10号ないし第15号に該当することはありえない。
(3)商標法第4条第1項第7号
被請求人は、既に乙第2号証ないし乙第24号証を提出し、被請求人が、世界の各国において、商標「ZAHRA」を本件商標と同じく商品区分第3類に商標登録をしていることを証明した。
当然、これだけの登録をしていることは、営業活動をしていることでもある。
商標「ZAHRA」の使用を証するものとして1998年にイギリスにおいて使用した供述書を乙第25号証として提出する。これによるとイギリスのデパートにおいて「ZAHRA」を付した香水、化粧品が発表されたのは1993(平成5)年である。また、添付の広告コピーから広告活動も積極的におこなったことが明らかである。
さらに請求人が日本に店舗を置くより前の1997年における広告の一部を乙第26号証として提出する。これによっても、被請求人が昨日今日に本件商標を使用しはじめたものでないことが明らかである。
さらに、被請求人が、請求人の名称あるいは商標「ZARA」を先取りしたものでないことは明らかであり、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当しないことは明白である。

第5 当審の判断
(1)引用A商標及び引用B商標の著名性について
請求人の提出に係る甲第8号証(請求人の組織、各国の売上高、取引書類に関する証明書)及び甲第9号証(甲第8号証の第1頁ないし第3頁の和訳文)をみるに、各国の売上高の一部について本件商標の登録出願日前の売上高が記載されていることは認められるが、引用A商標及び引用B商標が商品「被服」について使用されたとする具体的な裏付けが示されていない。甲第11号証(各国新聞・雑誌等の記事・広告宣伝例)によれば、本件商標の登録出願日前のものは外国で発行された新聞、雑誌の僅かな例にすぎない、また、我が国で発行された新聞、雑誌はいずれも本件商標の登録出願日後のものであるが、その記事等の内容について本件商標の登録出願日前のものと認められるのは僅かなものである。そして、上記以外の証拠は、本件商標の登録出願日後のものか、発行日が確認できないものである。
そうとすると、請求人の提出に係る証拠によれば、請求人に関して新聞、雑誌等に紹介されていることから、引用A商標及び引用B商標は、我が国においてもある程度知られていることが窺えるとしても、その証拠については上記のとおりであるから、本件商標の登録出願日前においては、我が国はもとより外国においても取引者、需要者間に広く認識されていたということはできない。
また、請求人が挙げる各国の商標登録例は、元来、ある商標が各国に登録されたことのみによってその商標が著名になるものではないから、上記登録例をもって引用A商標及び引用B商標が取引者、需要者間に広く認識されていたと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第7号について
請求人は、引用A商標及び引用B商標が著名であることを前提として、本件商標は他人の外国商標を先取りして登録した、国際信義に反する商標である旨主張している。
しかしながら、(1)で述べたように、引用A商標及び引用B商標は本件商標の登録出願日前には取引者、需要者間に広く認識されていたものではなく、また、本件商標を構成する「ZAHRA」の文字と引用A商標及び引用B商標を構成する「ザラ/ZARA」「ZARA」の各文字とがその構成を異にすることからすれば、被請求人が引用A商標及び引用B商標の存在を知った上で、これを先取りする意図をもって本件商標の登録出願をしたとはいい難いものである。
そして、本件商標は、その構成上記のとおりであって、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるようなものではなく、その指定商品に使用することが、国際信義に反し、社会公共の利益又は一般的な道徳観念に反するようなものともいえない。また、他の法律によって使用が禁止されているものでもない。
してみれば、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標とはいえないから、商標法第4条第1項第7号に該当するものではない。
(3)商標法第4条第1項第10号及び同第11号について
請求人は、「香水」と「被服」が類似する商品であると考えると、本件商標は引用A商標及び引用B商標と類似する商標であって、類似する商品を指定するものである旨主張している。
しかしながら、本件商標の指定商品「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き」は、引用A商標の指定商品「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」及び引用B商標の指定商品「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」とは、その生産部門、品質及び用途等が一致していないものであるから、両者は非類似の商品といわざるを得ない。
請求人は、現にスペインを含む他国の商標審査基準でも「香水」と「被服」を類似商品であると扱うものもある旨主張しているが、我が国において出願された商標は、我が国の商標法及び商品の取引の実情に基づいて登録されるか否かが判断されるものであり、他の国における取り扱いと異なる点があったとしても、その点をもって本件審判請求における判断が左右されるものではない。
してみれば、本件商標と引用A商標及び引用B商標とは、指定商品において類似しないものであるから、商標の類否について検討するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第11号に該当するものであるとすることはできない。
(4)商標法第4条第1項第15号について
請求人は、引用A商標及び引用B商標が著名であることを前提として、本件商標は引用A商標及び引用B商標に類似する商標であって、需要者及び取引者において出所混同を生じさせるおそれがある旨主張している。
しかしながら、(1)で述べたように、引用A商標及び引用B商標は本件商標の登録出願日前には取引者、需要者間に広く認識されていたものではないから、本件商標は、これをその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が引用A商標及び引用B商標を連想、想起するようなことはなく、その商品が請求人又は同人と組織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれはないものとみるのが相当である。
してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものであるとすることはできない。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第11号及び同第15号のいずれの規定にも違反して登録されたものではなく、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2002-08-08 
結審通知日 2002-08-13 
審決日 2002-09-02 
出願番号 商願平5-120248 
審決分類 T 1 11・ 25- Y (003)
T 1 11・ 271- Y (003)
T 1 11・ 26- Y (003)
T 1 11・ 22- Y (003)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 俊男柴田 昭夫 
特許庁審判長 三浦 芳夫
特許庁審判官 茂木 静代
野本 登美男
登録日 1996-11-29 
登録番号 商標登録第3223125号(T3223125) 
商標の称呼 ザーラ 
代理人 石川 義雄 
代理人 関根 秀太 
代理人 小出 俊實 
代理人 鈴江 武彦 

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