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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 001
管理番号 1069240 
審判番号 無効2001-35423 
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2003-01-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-09-28 
確定日 2002-11-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第3358197号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第3358197号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第3358197号商標(以下「本件商標」という。)は、「リケンパワー」の文字を横書きしてなり、平成7年10月24日に登録出願、第1類「化学品,のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く。),原料プラスチック」を指定商品として、平成9年11月14日に設定登録されたものである。

2 請求人の引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第2570778号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲に表示したとおりの構成よりなり、平成2年8月3日に登録出願、第34類「プラスチックス」を指定商品として、平成5年8月31日に設定登録されたものである。

3 請求人の主張
請求人は、結論と同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第14号証を提出している。
(1)商標法第4条第1項第8号
件外、東京都千代田区に本店を有する株式会社リケン(甲第1号証、旧理研ピストンリング株式会社)は、昭和2年に日本で初めて「ピストンリング」の実用化に成功した企業として日本において広く知られている。
株式会社リケンの名称の中、前半部の「株式会社」の部分は法人組織を現す部分として一般的なものであり、これを除外した「リケン」が同社の商号の要部である。
しかも、同社は取引先企業を始めとする外部企業やマスコミ各社から単に「リケン」と指称され認識されていたのであり、「リケン」は「株式会社リケン」の著名な略称でもある。
しかるに、本件商標「リケンパワー」は、株式会社リケンの名称ないしは著名な略称である「リケン」を含むものであり、その商標登録に当たり、同社の承諾を得てないものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当し、その登録は無効とされるべきである。
(2)商標法第4条第1項第11号
本件商標「リケンパワー」の中「パワー」は「力」を意味するので、本件商標は、全体として「リケンの力」を表現していることになる。
しかし、「リケン」自体が国語辞典に掲載されているような既成語としての日本語ではなく、それ自体特段の意味のない造語であるので、本件商標中において「リケン」の語は、日常語かつありふれた語である「パワー」に比べ、商標としてははるかに高い識別力を有している。
特に、引用商標の指定商品である「プラスチック」の当業界において、「リケン」の称呼に相当する商標「RIKEN」を商標登録することによりこれを長年にわたり独占的に使用し、かつ商号中に「リケン」ないしは「理研」の語を含む企業は、唯一請求人会社だけであるので、プラスチック業界において「リケン」の語に接した場合、需要者、取引者が想起するのは、塩ビコンパウンド専業メーカーとして世界最大の生産能力を誇る請求人会社以外にないのである。
このようなプラスチック業界における取引の実情に鑑みた場合、本件商標中の「リケン」は請求人会社を表示し、「リケンパワー」全体として「リケンの力」すなわち「理研ビニル工業株式会社の力」を観念させるものである。
商標としての識別性を考えた場合、前半の「リケン」の部分が本件商標の第一の要部として自他商品の識別に機能するのである。
よって、本件商標からは、「リケンパワー」の称呼のほか、「リケン」のみの称呼も生ずるものである。
一方、引用商標「RIKEN」からは「リケン」の称呼と請求人会社自身との観念を生ずるものであり、この「リケン」の称呼において共通する本件商標は、引用商標と称呼上類似するものである。
指定商品についても、本件商標の指定商品中「原料プラスチック」は、引用商標の「プラスチックス」に含まれるものであり、両商標は同一又は類似の商品に使用されるものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであり、その登録は無効とされるべきである。
(3)商標法第4条第1項第15号
甲第3号証(「大辞林」)に示すように、「理研」は「理化学研究所」の略称として広く知られている。同大辞林には「理化学研究所」についても解説されており、次の事実が理解される。
理化学研究所は、1917年(大正6年)、物理、化学の研究と応用、研究者養成を目的として設立された財団法人であり、研究成果を工業化・商品化して1940年に「理研コンツェルン」に発展したが、敗戦により解体された。一時「科学研究所」と称していたが、1958年(昭和33年)政府出資による特殊法人として再生され、「理研」と略称されている。
ちなみに、1939年(昭和14年)には「理研コンツェルン」を構成する企業は63社、工場数121にまで達した。
それら企業の中、現在も商号中に「理研」の文字を有する代表的な企業は、理研ビニル工業株式会社、株式会社リケン、理研ビタミン株式会社、理研精機株式会社、理研機器株式会社、理研製鋼株式会社である。
また、株式会社リケンの関係会社として、株式会社リケンキャステイック、理研機械株式会社、株式会社リケン精密、理研熊谷機械株式会社、株式会社リケン環境システム、理研商事株式会社、株式会社リケンエレテックなど、商号中に「理研」或いは「リケン」を含む企業が7社あることが理解される(甲第12号証)。
その中、本件商標の指定商品「化学品、原料プラスチック」との関係が最も深いのは理研、すなわち理化学研究所と請求人会社である。
理研の設立経緯や理研コンツェルンについては、上述のとおりであるが、甲第14号証(平成6年1月5日付日刊工業新聞)に示すように、「新時代の扉を開く理研産業団」として、請求人会社や株式会社リケンのほか、理研ビタミン株式会社、理研製鋼株式会社、理研計器株式会社、理研香料工業株式会社の名が掲載されており、今でも理研の精神が各企業に引き継がれていることが理解される。
次に、請求人会社であるが、請求人会社は、一貫して塩ビ樹脂の加工を主体に成長してきた企業である。
多くの塩ビ樹脂は、自動車の内外装部品、電気製品、事務用機器、建材、家具、文具、家庭用品などに成型加工され、我々の身近で広く利用されているが、請求人会社の製品の中では食品包装用フィルム「リケンラップ」がつとに知られている。
したがって、「RIKEN」の文字からなる引用商標は、請求人会社の代表的出所表示商標として日本において広く知られているのである。
以上のように、日本においては理化学研究所を淵源とし、「理研産業団」或いは「理研コンツェルン」と呼ばれる企業集団が存在し、商号中に「理研」或いは「リケン」の語を含む企業が多数あり、その中でも理化学研究所と理研ビニル工業株式会社は、本件商標の指定商品に関する研究を行い、実際に商品を製造販売し、広く知られているという社会的事実が存在するのである。
もちろん、わが国に存在する企業で「理研」ないし「リケン」の語を商号中に含む企業がすべて理化学研究所や理研コンツェルンに関係しているという訳ではないが、「理化学研究所」が「理研」の略称で有名であるのは事実であるし、請求人会社や株式会社リケンなど、多数の大企業が理研コンツェルンに由来しているという社会的事実がある以上、そのような理解をもつ取引者、需要者にとって「リケン」の語に接して想起連想するのはやはり理化学研究所であり、理研コンツェルンとの関係であるということになる。
このことは、三井三菱グループが企業名に「三井」「三菱」を冠し、住友グループが「住友」の語を、松下電器グループが「松下」の語を、日立グループが「日立」の語を商号中に冠するのと同じ理屈である。
だから、もし「三井さん」が「三井産業株式会社」を設立すれば他人は三井グループとの関係を想像するのと同じであり、もし無関係であればそこで誤認混同を生ずることになる。
同じように、理化学研究所が「理研」として広く知られており、理研コンツェルンと呼ばれる企業集団があり、請求人会社や株式会社リケンなどの有名企業が現に存在するという社会実情において、本件商標が理研コンツェルンとは全く関係のない者によってその指定商品について使用された場合、商標中に「リケン」の語を含んでいるため、理化学研究所と何らかの関係があるかのように、或いは理研コンツェルンの一員であるかのように、さらには請求人会社に係る商品であるかのような誤った印象を社会に与えるものであり、商品の出所において混同を生ずるものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであり、その登録は無効とされるべきである。

4 被請求人の対応
被請求人は、前記請求人の主張に対して、何ら主張、立証するところがない。

5 当審の判断
本件商標は、前記のとおり「リケンパワー」の文字よりなるところ、請求人の提出に係る1989年4月10日株式会社三省堂発行の「大辞林」(甲第3号証)によれば、「りけん[理研]」の項に「理化学研究所」と、また、「りかがくけんきゅうじょ[理化学研究所]」の項に「1917年(大正6)、物理、化学の研究と応用、研究者養成を目的として設立され、財団法人として発足。研究成果を工業化・商品化して40年に理研コンツェルンに発展したが、敗戦により解体。一時、科学研究所と称したが、58年政府出資による特殊法人として再生。理研」と記載されており、理化学研究所のウェブサイトのホームページ(甲第4号証)によれば、上記「理研コンツェルン」に属する企業の多くは、商号に「理研」の文字を冠していたことが認められる。
そして、「理研コンツェルン」の一員であった「理研ビニル株式会社」(請求人会社)は、コンパウンド部門では専業メーカーとして世界最大の生産能力を有しており(甲第6号証)、また、「株式会社リケン」は、エンジンのピストンリングのトップメーカーであって、各種自動車部品の総合部品メーカーである。(甲第7号証)
これらの会社のほか、「理研コンツェルン」いわゆる「理研産業団」に属していた会社で現在も「理研」或いは「リケン」の文字を名称に冠している会社には、理研ビタミン株式会社、理研精機株式会社、理研機器株式会社、理研製鋼株式会社が存在し(甲第8号証ないし同第11号証)、これらの会社の関連会社にも「理研」或いは「リケン」の文字を名称に冠している会社があり(甲第12号証)、これらの会社は、本件商標の指定商品に関連する産業分野をはじめ、機械、食品など多様な産業分野で事業を行っていることが認められる。
また、甲第14号証(平成6年1月5日付け日刊工業新聞)には「新時代の扉を開く理研産業団」として、請求人会社や株式会社リケンのほか、理研ビタミン株式会社、理研製鋼株式会社、理研計器株式会社、理研香料工業株式会社の名が掲載されており、これらの会社に「理研産業団」との認識のあることを認めることができる。
そして、これらの会社の設立の経緯、名称からすると、これらの会社の多くは、「理研」、「リケン」の文字或いはこれらをローマ字で表した文字を中核とする商標を使用しているものと容易に推認することができる。
以上のように、「理研」の文字が「理化学研究所」を示すことが辞書に記載され、また、請求人会社や株式会社リケンなど、多数の会社が理研コンツェルン(理研産業団)に由来しているという社会的事実があり、現に理研コンツェルン(理研産業団)に属すると認識し、その旨を新聞に掲載している事実があることからすれば、「理研」、「リケン」の文字に接した取引者、需要者は、これより「理研コンツェルン(理研産業団)」に関係する会社であろうと認識するというべきである。
そうとすれば、本件商標は、一連に「リケンパワー」と表されているものであっても、全体で特定の意味合いを看取させるものではないから、本件商標をその指定商品に使用した場合、取引者、需要者は、これを「リケン」の文字に「力」を意味する日常語の「パワー」を付したものと認識し、「リケン」の文字より「理研コンツェルン(理研産業団)」に関係する会社の業務に係る商品であると直ちに連想、想起するものと判断するのが相当である。
してみれば、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標といわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
引用商標

審理終結日 2002-07-23 
結審通知日 2002-07-26 
審決日 2002-08-26 
出願番号 商願平7-110527 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (001)
最終処分 成立  
前審関与審査官 信永 英孝 
特許庁審判長 涌井 幸一
特許庁審判官 高野 義三
滝沢 智夫
登録日 1997-11-14 
登録番号 商標登録第3358197号(T3358197) 
商標の称呼 リケンパワー 
代理人 小谷 武 
代理人 木村 吉宏 

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