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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 117
管理番号 1068040 
審判番号 取消2000-30284 
総通号数 36 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-12-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2000-03-10 
確定日 2002-11-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第2107509号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第2107509号商標(以下「本件商標」という。)は、「アバークロンビーアンドフイッチ」の片仮名文字を横書きしてなり、昭和56年11月14日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊衣服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、平成元年1月23日に設定登録され、その後、同10年9月8日に商標権の存続期間の更新登録がなされたものである。

2 請求人の主張
請求人は、「本件商標は、その指定商品中『被服(運動用特殊被服を除く)』の登録はこれを取り消す、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び同第2号証を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は、その指定商品中、「被服(運動用特殊被服を除く)」について、商標権者、専用使用権者及び通常使用権者のいずれもが継続して3年以上日本国内において使用した事実がない。
したがって、本件は商標法第50条第1項の要件を充足し、本件商標の登録は、取消されるべきである。
(2)第1答弁に対する弁駁
(イ)被請求人は、「『Abercrombie & Fitch』の標章を付した被服が掲載されたカタログ、及びこれらの被服を日本の消費者に販売した。そして使用された同標章は、本件商標を単に英字表示に変更したものであって、同一の称呼及び及び観念を生じるものであるから、本件商標の使用と言えることが明らかである。」と主張している。
しかし、本件商標は、片仮名で「アバークロンビーアンドフイッチ」と記載されたものであるところ、「Abercrombie & Fitch」は、固有名詞であって、一般的に知られている商標ではない。さらにこれに加えて英語で記載されたものであり、必ずしも英語が理解できるわけではない一般の消費者にとっては、「Abercrombie & Fitch 」の標章を見ても、どのように発音するのか分からない。よって「Abercrombie & Fitch」の標章から必ずしも本件商標と同一の「アバークロンビーアンドフイッチ」と言う称呼だけが確実に生じるものではない。
さらに、「Abercrombie & Fitch」の標章及び本件商標から生じる観念についても、称呼と同様に、これらが一般的に知られている商標ではないので、例え「Abercrombie & Fitch」の商標をみても、また「アバークロンビーアンドフイッチ」と言う称呼を聞いても、特定のものを想起するわけではなく、何を表しているのか不明である。
この様に、「Abercrombie & Fitch」の標章と、本件商標は、同一の称呼及び観念を生じるものではないので、被請求人の主張する「Abercrombie & Fitch」の標章の使用は、本件商標の使用と言えるものではない。
ここで登録商標であって、片仮名と英語の表示で、一方の使用が他方の使用と認められる場合を述べると、ラブとLOVE「愛」、アップルとapple「林檎」、ライオンとlion「獅子」、ポストとpost「柱、郵便、地位」などと言うように英語であっても、日本語化しており、消費者全てと言っても過言ではない程度に、同一の称呼及び観念が確立している場合を言う(平成8年改正商標法等の概要第24頁ないし第26頁)。
(ロ)次に被請求人は、上記カタログ及び被服の販売の事実を証明するために乙第3号証ないし同第5証を提出している。しかし、これらの乙各号証は、例え上記被請求人の主張が適切であったとしても、被請求人の当該主張を客観的かつ具体的に立証したと言えるものではない。
個別にみると、乙第3号証はカタログであり、この乙第3号証からカタログの存在は分かる。また乙第4号証はセスジョンソンの宣誓供述書及び翻訳であり、ここに上記カタログ及び「Abercrombie & Fitch」の標章を付した商品を販売した数量が記載されている。乙第5号証は日本における購入者のりストである。しかし、これらは何れも被請求人が後日作成した書類であって、客観的かつ具体的に販売の事実を示したものではない。被請求人が販売したと主張されているカタログや被服は、被請求人にとって日常的に販売している商品である。日常的に販売している商品であるならば当該販売の事実を客観的かつ具体的に記録した伝票類の提出があってしかるべきものと思われる。しかし、これらの提出はない。
(ハ)この様に、「Abercrombie & Fitch」の標章は、本件商標と同一の称呼及び観念を生じるものではなく、「Abercrombie & Fitch」の標章の使用は、本件商標の使用ではなく、また乙号証も本件商標の使用を客観的かつ具体的に立証したものではない。
(3)第2答弁に対する弁駁
(イ)被請求人は、購入者リスト(乙第5号証)の中の二人が本件商標を付した商品を個人輸入したことにより、本件商標の使用を主張している。
そこで、購入者リスト(乙第5号証)の上記二人の行為を乙号証によってまとめ、被請求人の主張を確認する。
最初に(a)瀬尾氏についてみると、瀬尾氏はフィッチ社のカタログ(乙第15号証)から、購入したい商品を選び、このカタログに綴じ込まれている注文書(乙第16号証)に、それらの商品番号等を記入して注文書(乙第14号証の2)を作成し、ファクスで米国のフイッチ社に送信した。その後米国のフイッチ社から注文確認書(乙第14号証の1)が送られてきた。
次に(b)村田氏についてみると、フイッチ社のカタログ(乙第18号証)に基づいて米国のフイッチ社に注文した。その後米国のフイッチ社から納品書(乙第17号証の1)が送られてきた。またこの時の国際郵便物課税通知(乙第17号証の2)もある。
これらのことから、我国において、上記各カタログが配布されていること、及び我国において販売された上記各商品には「Abercrombie & Fitch」の標章を付したラベルが襟首に添付されていることが明らかである。また注文書や納品書の冒頭における「Abercrombie & Fitch」の表示も本件商標の使用である、というものである。
(ロ)しかし、彼ら二人は、日本でどのようにしてカタログを手に入れたのか具体的な記載がなく、不明である。また被請求人は、カタログを「配布」したと主張し、まるで無償で不特定多数の消費者に配ったような印象を受けるが、そうではなく、平成12年10月23日付被請求人提出の答弁書における乙第4号証に記載されている通り、年間(4刊)76ドルで注文により販売したものである。
上記二人のうち(a)瀬尾氏の場合、注文書及び注文確認書があるだけで、実際に我国に輸入されたことの証拠はなく、途中で注文をキャンセルした可能性もあり、実際に我国に輸入されたか否かは不明である。さらに(b)村田氏の場合、納品書及び国際郵便物課税通知があるだけで、同通知が同納品書の商品のものであることを特定することはできず、販売された商品のものである否かは確認できない。
また上記二人は、本件商標を付した商品を購入したとは、一言も証明しておいない。全て被請求人が、これらの二人の状況から、注文確認書、注文書、カタログ、納品書、国際郵便物課税通知などを、被請求人の思惑通りに組合わせて構成したものである。
この様に今回被請求人から提出された乙各号証では、本件商標を付した商品が我国に個人輸入されたことを立証するには何れも不十分で、被請求人が主張される、我国における本件商標の使用は確認できない。
(ハ)次に、これらの個人輸入が仮に立証できたとしても、本件商標の使用とは認められない。即ち、商標法第50条第2項には「日本国内における指定商品についての登録商標の使用」の立証を求めているのであって、ここで商標法上の(指定)商品とは、属地主義を前提として、我国における商品の流通経路に実際にのることが要求される。そうでなければ我国の競業秩序の維持に貢献し得ず、ひいては我国の産業の発達に寄与することができないからである。
ここで確認するフイッチ社の商品は、我国において小売店などでの販売は勿論、宣伝広告もされているものではない。それ故、上記二人は通信販売を利用したものと思われるが、通信販売の場合、商品の比較及び選択は、入手したカタログにおいて行なわれ、商品は消費者に直接送られる。つまりカタログ上で商品の比較選択が行なわれる以上、このカタログ上で商標の機能が発揮されることとなり、通信販売の場合、カタログの入手が我国の一般消費者が行なう日常の商品購入の範囲内にあるか否かが問題となる。
しかし、フィッチ社のカタログについては、この様な範囲内にあるものではなく、我国の消費者が、日常の商品購入行為において、目に触れたり耳に聞こえたりするものではなく、容易に接触し入手できるものではない。
この様に上記二人が商品を購入したとされる形態では、特殊な方法でカタログを入手し、我国の消費者から直接米国の会社に注文し、米国の会社から我国の消費者に直接送付されたもので、我国における商品流通経路を全く通らないもので、我国における競業秩序とは無関係の位置又は経路にあるものである。
したがって、この様な状態において、例え本件商標を付した商品を購入したとしても、これらでは、本件商標の使用は認めらない。
また上記二人が購入したとされる数量は、8枚と7枚であり、これらは各自の着用が目的で購入されたもので、第三者に販売する目的ではなく、輸入後我国における商品流通経路にのるものとも思われない。
よって、被請求人は、我国に本件商標を付した商品の個人輸入をもって、本件商標の使用を立証しようとされているが、これらでは本件商標の使用は立証できるものではない。

3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由及び弁駁に対する答弁を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし同第18号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)第1答弁
(イ)被請求人は、請求外アバー クロンビーアンド フイッチ インク(以下「フイッチ社」という。)に対して、商標保護契約(乙第1号証)に基づいて、本件商標を含む被請求人が有する標章の使用を許諾している。なお、請求人は、フィッチ社の商標管理を目的とするフィッチ社の100%子会社である。
本商標保護契約は、その第1条において、原告がフィッチ社に対して、「マーク」を「全世界において使用する」ことを許諾する旨定めているが、この「マーク」とは、添付書Aに規定するマーク(標章)と同一のマーク(標章)をいう旨が定められている(前文)とともに、合衆国以外の地域においても、請求人に対して、登録及び維持の義務が課されている。
したがって、本件商標が添付書Aに規定する「Abercrombie & Fitch」の標章を英字表示に変更しただけのものである以上、本商標保護契約によるフイッチ社への商標使用許諾は、日本における本件商標の使用を当然含むものである。
(ロ)フィッチ社は、米国ニューヨーク証券取引所に上場するアパレルメーカーであって、その製品は、若者を中心に大人気を博している(乙第2号証)。
(ハ)フィッチ社は、日本における購読者に対して、そのカタログ「A&FQuarterly」(例として乙第3号証)を送付しているが、その数は、1999年会計年度(1999年2月乃至2000年1月)において175,606冊、2000年会計年度(2000年2月乃至6月)において、92,487冊に及んでいる。そして、このカタログにおいては、「Abercrombie & Fitch」の標章が使用されている。
(ニ)また、この季刊カタログに基づく売上は、1999年会計年度(1999年2月乃至2000年1月)において786,350米ドル、2000年会計年度(2000年2月乃至6月)において345,329米ドルに達している(乙第4号証及び同第5号証)。
そして、この売上にかかる商品には、例えばティーシャツ等のシャツ類にあっては背裏に、また、ズボンにあっては尻ポケット等に、「Abercrombie & Fitch」の標章が付されている(乙第3号証)。
(ホ)「Abercrombie & Fitch」の標章は、本件商標を単に英字表示に変更したものであって、同一の称呼及び観念を生じるものであるから、商標法第50条の適用において、「Abercmmbie & Fitch」の標章の使用は、本件商標の使用といえることが明らかである。
(2)弁駁に対する第2答弁
(イ)請求人は、「Abercrombie & Fitch」の標章は、本件商標と同一の称呼及び観念を生じるものではなく、したがって、「Abercrombie & Fitch」の標章の使用は、本件商標の使用と言えないと主張する。
しかし、「Abercrombie & Fitch」を片仮名で表記すれば、「アバークロンビー アンド フィッチ」となるのであり、これらは称呼が同一であるから、両者は社会通念上同一の商標であることは明白である。
平成8年の商標法改正前においては、本件商標は、「Abercrombie & Fitch」の登録商標(商標登録第2107508号)の連合商標とされていたのであるが(乙第6号証「登録原簿」)、このことも、両者が称呼同一による類似商標であったことを裏づけるものである。なお、本件商標に関する平成10年(行ケ)第403号審決取消請求事件の東京高等裁判所平成12年3月2日判決(乙第7号証)も、「Abercrombie & Fitch」の商標の使用をもって、平成8年改正前ではあるが、商標法第50条にいう本件商標の使用と認められる旨判示している。
そもそも、「Abercrombie & Fitch」の標章は、米国において、アバークロンビー氏とフィッチ氏が1892年に創業した歴史のあるアパレル・ブランドであり、世界的に広く知られている標章である(乙第2号の2証、同8号証「織研新聞広告」、同第9号証「和英商品名辞典」、同第10号証「雑誌太陽掲載の記事」、同第11号証の1〜4「ウェブページ」)。
そして、この英文字のブランド名を片仮名表記したものが、本件商標である「アークロンビー アンド フイッチ」(「アバークロンビーアンドフイッチ」の誤記と認められる。)であるが、これらの証拠から明らかなように英文字表記「Abercrombie & Fitch」は、常に片仮名で「アバクロンビー アンド フイッチ」もしくは略して「アバークロンビー アンド フイッチ」もしくは「アバークロンビー」と表記されている。このように、「アバークロンビー アンド フィッチ」の商標は、オリジナルの「Abercrombie & Fitch」と同じく、米国の歴史のあるアパレル・ブランドを消費者に想起させるものである。
以上のとおり、本件商標である「アバークロンビー アンド フイッチ」は、「Abercrombie & Fitch」を単に片仮名表記に変更したものであって、全く同一の称呼を生じるものであり、消費者において想起するブランドも同一であるから、「Abercrombie & Fitch」の商標と社会通念上同一と認められる。したがって、「Abercrombie & Fitch」の商標の使用は、商標法第50条の適用において、本件商標の使用に該当する。
(ロ)さらに請求人は、乙第4号証の宣誓供述書や乙第5号証の購入者リストは、いずれも被請求人が後日作成した書類であって、客観的かつ具体的に販売の事実を立証したものではない旨主張する。
しかし、乙第5号証の購入者リストは、約6000件の購入について,性、名、住所、アカウントナンバー、最終購入日、購入回数、最終購入金額、クレジットカード使用の有無等を記載したものであるから、被請求人が作成したものであっても、虚偽の内容を記載することなどありえない。
なお、上記購入者リストが真正であることを立証するため、被請求人は、このリスト記載の者のうち、購入回数が複数で、最終購入金額が高額となっている者のうち、東京近郊在住者15名を適当に選択して乙第12号証の依頼状を送付した。この依頼状には、回答書及び返信用の封筒を同封した。
このうち、回答書が返送されてきたのは6名(乙第13号証の1ないし6)であった(1名は転居先不明でそのまま返送された)。
そして、この6名のうち、被請求人代理人が依頼した書類が同封されていたのは、3名であったが、うちの1名は、本件審判請求日以降の書類であったため、他の2名から送付されてきた書類を次のとおり証拠として提出する。
(a)瀬尾氏分(乙第14号証の1及び2)
(なお、乙第5号証の購入者リストは、アカウントナンバー(ACCT#)の順に列記されているところ瀬尾氏は169384である。)
乙第14号証の1は、「Abercrombie & Fitchinc」(以下、「フイッチ社」という。)の注文確認書であって、乙第14号証の2の注文書が添付されている。そして、この注文書には顧客名の記載とあわせて瀬尾氏のアカウントナンバー(顧客ナンバー)CUST#「169384」が印字されている。
しかして、この注文書は、カタログに綴じ込まれたフォーム(乙第16号証)を使用したもので、瀬尾氏は、これを用いて199年12月5日にファックスで注文したものである。
また、商品カタログとは、乙第15号証のものである。そして、上記注文書に記載されている瀬尾氏の注文にかかる商品と、このカタログとの関係を示すと、次のとおりとなる。
まず、乙第14号証の2の注文書における注文商品を列記した部分を見ると、その1段目には、PAGE N0(ページ番号)の欄に「75」、ITEM NUMBERの欄に「QI98」、COLORの欄に「C」、SIZE OR WAISTの欄に「S」、HOW MANYの欄に「1」、DESCRIPTIONの欄に「TECHTURTLNECK」、PRICE EACHの欄に「$79.50」の各記載がある。
これを、乙第15号証のカタログでみると、75頁には、TECH TURTLNECKの商品写真が4点掲載されているとともに、同頁の下部には、TECH TURTLNECKの商品名、QI98の商品番号、Aレッド、BネイビーCグレー、Dナチュラルの色、素材や性状等の表示、女性用S、M、Lのサイズ、$ 79.50の各記載がなされており、瀬尾氏は、グレーでSサイズのこの商品を購入したことが判明する。このように、この注文書の記載は、カタログの記載と対応している。
なお、この商品の写真では、「Abercrombie & Fitch」の商標を付した襟首のラベルは写っていない。
しかし、同様に、この注文書における注文商品を列記した部分の6段目をみると、PAGE N0(ページ番号)の欄に「104」、ITE MNUMBER(商品番号)の欄に「Q218」、COLOR(色)の欄に「A」、SIZE OR WAIST(サイズまたはウエスト)の欄に「×L」、HOW MANY(数量)の欄に「1」、DESCRIPTION(商品名)の欄に「TICONDEROGA PLAID」、PRICE EACH(価格)の欄に「$49.50」の各記載がある。
これを、乙第15号証のカタログでみると、104頁には、TICONDEROGA PLAIDの商品写真が6点掲載されているとともに、同頁下部に、TICONDEROGA PLAIDの商品名、Q218の商品番号、Aオリーブ、Bネイビー、Cブルガンディ、Dグリーン、Eブルー、Fレッドの色、素材や性状等の表示、S、M、L、Lサイズ、$49.50の各記載がなされており、瀬尾氏は、オリーブ色で×Lサイズのこの商品を購入したことが判明する。このように、この注文の記載も、カタログの記載と対応している。
そして、この商品の写真では、「Abercrombie & Fitch」の商標を付したラベルが襟首に添付されていることが認識できる。この注文書おける注文商品を列記した部分の7段目(最下段)の商品「ABERCROMBIE ATHLETIC CREW」においても、上記と同様に乙第15号証のカタログの118頁に掲載されているところ、このカタログの商品写真から、「Abercromble & Fitch」の商標を付したラベルが襟首に添付されていることが認識できる。
(b)村田氏分(乙第17号証の1及び2)
(なお、乙第5号証の購入者リストで村田氏のアカウントナンバー(ACCT#)は、136107である)
乙第17号証の1は、村田氏が購入した商品に同封されていた1998年8月10日付納品書であり、乙第17号証の2は、この商品の国際郵便物課税通知である。
この商品は、上記納品書のCAT.NBR(カタログにおける商品番号)から判明するところによれば、乙第18号証のカタログに基づいて村田氏が注文したものである。
すなわち、この納品書における商品のうち、1段目には、CAT.NBR(カタログにおける商品番号)の欄に「E167」.QTY(数量)の欄に「1」、SIZE COLOR(サイズ 色)の欄に「34×32MEDIUM」、DESCRIPTION(商品名)の欄に「LOOSE FIT JEAN MED STONEWASH」、UNIT PRISE(価格)の欄に「39.50」、TOTAL(合計)の欄に「39.50」の記載がある(STATUS及びITEMNO.の各欄は、フィッチ社の社内使用コードにつき省略する)。
そして、乙第18号証のカタログの126頁には、BOOT FITのジーンズの商品写真及びAないしFの色の写真が掲載され、同頁下部には、順次、BOOT FIT、CLASSIC FIT、LOOSE FIT、WIDE FIT、及びBAGGY FITの各タイプのジーンズの表示があり、LOOSE FITの段を見ると、LOOSE FITのジーンズには、C、D、Eの3色があることが分かる。そして、EのMediumStonewashの商品番号には、E167と記載されており、価格は、$39.50と記載されている(ちなみに、LOOSE FITのDは、Eと同価格であるが、Cは$49.50と記載されている)。このように、村田氏は、34×32サイズ(ズボンやジーンズのサイズは、注文書とともにカタログに綴じ込まれた一覧表による。乙第16参照)のMedium Stonewash色のLOOSEFITのジーンズを購入したことが判明する。
この商品写真では、ジーンズに添付されたラベルの記載が識別できないが、上記納品書における商品のうち、2段目のCAT.NBR(カタログにおける商品番号)「E147」の商品「FORAKER CHAMBRAY」は、乙第18号証のカタログ118頁に掲載されているところ、このカタログの商品写真においては、「Abercrombie & Fitch」の商標を付したラベルが襟首に添付されていることが認識できる。上記納品書における商品のうち、3段目のCAT.NBR(カタログにおける商品番号)「E133」の商品「RICKSECKER CHAMBMY」も、上記カタログの41頁に掲載されているところ、この商品写真からも、「Abercrombie & Fitch」の商標を付したラベルが襟首に添付されていることが認識できる。同じく4段日のCATNBR(カタログにおける商品番号)「EI91」の商品「MSCOT TEE」も、上記カタログ42頁に掲載されているところ、この商品写真(Bの商品写真)においても同様である。
(ハ)以上の事実から、我国において、上記各カタログが配布されていること、及び我国において販売された商品には、「Abercrombie & Fitch」の商標を付したラベルが襟首に添付されていることが明らかであるから、商品に標章を付する行為として、商標の使用に該当する。
また、注文書(乙第14号証の2)や納品書(乙第17号証の1)の冒頭における「Abercrombie & Fitch」の表示も、フイッチ社の社名が「Abercrombie & Fitch,l nc.」であるため、社名の表示を兼ねてはいるが、「Abercrombie & Fitch, Inc.」ではなく、「Abercrombie & Fitch」と表示していることからすれば、これらは、商品の取引書類に付されたものとして、「Abercrombie & Fitch」の商標の使用と認められる。
以上のとおり、「乙第4号証の宣誓供述書及び乙第5号証の購入者リストは、いずれも被請求人が後日作成した書類であって、客観的かつ具体的に販売の事実を立証したものではない」との請求人の主張は、何ら理由がない。

4 当審の判断
被請求人の提出の商標保護契約書(乙第1号証)によれば、被請求人は、1995年(平成7年)4月1日にフィッチ社との間で商標保護契約を締結し、同社に対し「ABERCROMBIE & FITCH」標章の全世界における使用権を付与したことが認められる。
したがって、フィッチ社は、被請求人から本件商標の使用を許諾された使用権者であって、本件商標に関する通常使用権者ということができる。
なお、このことは、東京高等裁判所平成11年(行ケ)第75号審決取消請求事件においてその旨判示しているところである。
そして、1999年(平成11年)11月27日付け夕刊読売新聞における「アバークロンビー アンド フイッチ」ブランドの紹介記事(乙第2号2証)、商品カタログ(乙第3号証)、季刊カタログの売上宣誓書(乙第4号証)、購入者リスト(乙第5号証)、平成8年5月21日付け繊維新聞広告(乙第8号証)、株式会社研究社発行「英和商品名辞典」(乙第9号証)、雑誌「太陽(2000年12月号)」(乙第10号証)、ウッブページ(乙第11号証)、購入者への依頼状(乙第12号証)、購入回答書(乙第13号証)、商品番号等を記入した注文書(乙第14号証の2)、米国のフイッチ社から注文確認書(乙第14号証の1)、フィッチ社のカタログ(乙第15号証及び同第18号証)、同カタログに綴じられている注文書(乙第16号証)、米国のフイッチ社からの納品書(乙第17号証の1)、国際郵便物課税通知(乙第17号証の2)を総合すれば、日本における消費者二人(瀬尾氏、村田氏)は、後記のように「Abercrombie & Fitch」標章が被服のブランドとして知られているところ、同ブランドに関する商品カタログを入手し、これにより「Abercrombie & Fitch」の標章が付された商品「被服」を、1998年8月10日及び1999年12月5日に、フィッチ社に対しファックスにより注文し、これを受けてフィッチ社は、注文確認書を発し、次いで商品を納品し、通信販売の取引がなされたことを認めることができる。また、購入者リスト(乙第5号証)に記載された約6000件の購入についても、同リストには氏名、住所、アカウントナンバー、最終購入日、購入回数、最終購入金額、クレジットカード使用の有無等を記載している事項からして、前記二人の消費者と同様に通信販売の商品取引がなされたことが推認できる。
そうすると、二人の消費者の購入数量はともかく、商品カタログにより被服が我が国に輸入、購入され、そこでは「Abercrombie & Fitch」標章が使用され、それが機能し商品取引がなされたものである。
また、同カタログの使用標章「Abercrombie & Fitch」と本件商標は社会通念上同一のものと認められる。
請求人は、上記二人が商品を購入したとされる形態では、特殊な方法でカタログを入手し、我国の消費者から直接米国の会社に注文し、米国の会社から我国の消費者に直接送付されたもので、我国における商品流通経路を全く通らないもので、我国における競業秩序とは無関係の位置又は経路にあるものであるから、本件商標の使用ではないと主張するが、商品カタログにより商取引が行われ、商標が機能したこと前記のとおりであるから、請求人の主張は採用できない。
請求人は、さらに「Abercrombie & Fitch」の標章の使用は、本件商標の使用ではないと主張する。
しかしながら、「Abercrombie & Fitch」の標章は、我が国の英語の普及度からみて、その構成文字に相応して「アバークロンビー アンド フイツチ」と自然に読まれるものであって、これ以外の読みは生じ難いこと、及び前記夕刊読売新聞、「織研新聞広告」、「英和商品名辞典」、雑誌「太陽」、「ウェブページ」によれば、該標章は、米国において、アバークロンビー氏とフィッチ氏が1892年に創業した歴史のあるアパレル・ブランドであり「アバークロンビー アンド フイツチ」と呼称され、これがある程度取引者、需要者に知られている標章と認められ、特定されるものであることから、本件商標の「アークロンビー アンド フイッチ」の片仮名表記したものと、使用に係る「Abercrombie & Fitch」標章とは、社会通念上同一のものでありローマ文字と片仮名の文字の表示を相互の変更使用として、登録商標の使用と認めることは差し支えなく、請求人の主張は採用できない。
以上のとおり、被請求人は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、請求に係る商品「被服(運動用特殊衣服を除く)」に使用していたものである。
したがって、本件商標は、その指定商品中、請求に係る商品についての登録は、商標法第50条により取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2002-02-18 
結審通知日 2002-02-21 
審決日 2002-03-05 
出願番号 商願昭56-94531 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (117)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川津 義人信太 明夫須藤 晟二郎鈴木 幸一 
特許庁審判長 三浦 芳夫
特許庁審判官 中嶋 容伸
滝沢 智夫
登録日 1989-01-23 
登録番号 商標登録第2107509号(T2107509) 
商標の称呼 アバークロンビーアンドフィッチ、アバークロンビー、フィッチ 
代理人 斎藤 三義 
代理人 松浦 康治 
代理人 浅村 皓 
代理人 藤沢 則昭 
代理人 藤沢 正則 

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