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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 016
審判 全部無効 称呼類似 無効としない 016
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない 016
管理番号 1066254 
審判番号 無効2000-35342 
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-11-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-06-23 
確定日 2002-09-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第4219259号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4219259号商標(以下「本件商標」という。)は、平成9年1月7日に登録出願され、別掲(1)に示すとおりの構成よりなり、第16類「カード,その他の文房具類(「昆虫採集用具」を除く。),昆虫採集用具,紙類,紙製包装用容器,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,型紙,裁縫用チャコ,紙製テーブルクロス,紙製ブラインド,紙製のぼり,紙製旗,紙製幼児用おしめ,荷札,印刷物,書画,写真,写真立て,かるた,歌がるた,トランプ,花札,事務用又は家庭用ののり及び接着剤,青写真複写機,あて名印刷機,印字用インクリボン,こんにゃく版複写機,自動印紙はり付け機,事務用電動式ホッチキス,事務用封かん機,消印機,製図用具,タイプライター,チェックライター,謄写版,凸版複写機,文書細断機,郵便料金計器,輪転謄写機,印刷用インテル,活字,装飾塗工用ブラシ,封ろう,マーキング用孔開型板,観賞魚用水槽及びその附属品」を指定商品として、同10年12月11日に設定登録されたものである。

2 請求人の引用する登録商標
請求人は、本件商標の登録無効の理由として下記の登録商標を引用している(以下、これらの商標をまとめて「引用商標」という。)。
(a)昭和53年5月22日に登録出願され、「ベネトーン」の文字を横書きしてなり、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品として、同60年5月30日に設定登録された登録第1775735号商標
(b)昭和58年5月2日に登録出願され、別掲(2)に示すとおりの構成よりなり、第25類「紙類、文房具類」を指定商品として、同60年9月27日に設定登録された登録第1809424号商標
(c)昭和58年6月3日に登録出願され、「012 BENETTON」の文字を横書きしてなり、第25類「紙類、文房具類」を指定商品として、同61年6月27日に設定登録された登録第1870356号商標
(d)昭和55年5月9日に登録出願され、「benetton」の文字と「ベネトン」の文字とを二段に横書きしてなり、第13類「手動利器、手動工具、金具」を指定商品として、同62年7月23日に設定登録された登録第1971899号商標
(e)昭和62年12月7日に登録出願され、別掲(3)に示すとおりの構成よりなり、第19類「台所用品、日用品」を指定商品として、平成2年2月23日に設定登録された登録第2213057号商標
(f)出願日、商標の構成を(e)と同じくし、第18類「ひも、綱類、網類、包装用容器」を指定商品として、平成2年6月28日に設定登録された登録第2240253号商標
(g)出願日、商標の構成を(e)と同じくし、第20類「家具、畳類、建具、屋内装置品、屋外装置品、記念カツプ類、葬祭用具」を指定商品として、平成2年6月28日に設定登録された登録第2240254号商標
(h)昭和54年12月26日に登録出願され、商標の構成を(e)と同じくし、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、平成3年8月30日に設定登録された登録第2329606号商標
(i)出願日、指定商品、設定登録日を(h)と同じくし、「012 BENETTON」の文字を横書きしてなる登録第2329607号商標
(j)昭和63年3月24日に登録出願され、商標の構成を(e)と同じくし、第26類「印刷物、書画、彫刻、写真、これらの附属品」を指定商品として、平成3年10月30日に設定登録された登録第2345413号商標
(k)昭和59年4月25日に登録出願され、「ベネトン」の文字を横書きしてなり、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品として、平成5年2月26日に設定登録された登録第2502740号商標
(l)昭和63年4月5日に登録出願され、別掲(4)に示すとおりの構成よりなり、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品として、平成6年5月31日に設定登録された登録第2666698号商標
(m)平成3年9月20日に登録出願され、別掲(5)に示すとおりの構成よりなり、第19類「台所用品、日用品」を指定商品として、同6年7月29日に設定登録された登録第2688287号商標
(n)平成8年12月16日に登録出願され、「BENETTON」の文字を横書きしてなり、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同10年4月24日に設定登録された登録第4140330号商標
(o)平成9年4月28日に登録出願され、「012 BENETTON」の文字を標準文字とし、第9類「家庭用テレビゲームおもちゃ,電気通信機械器具,自動販売機,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,手動計算機,電気計算機,眼鏡,金銭登録機,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子応用機械器具及びその部品,測定機械器具,消火器,消火栓,消火ホース用ノズル,タイムレコーダー,救命用」を指定商品として、同10年8月21日に設定登録された登録第4180646号商標
(p)出願日、商標の構成を(o)と同じくし、第27類「敷物,畳類,洗い場用マット,人工芝,体操用マット,壁掛け(織物製のものを除く。),壁紙」を指定商品として、同10年12月4日に設定登録された登録第4218295号商標
(q)出願日、商標の構成を(o)と同じくし、第28類「遊戯用器具,囲碁用具,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,マージャン用具,ビリヤード用具,おもちゃ,人形,愛玩動物用おもちゃ,運動用具,スキーワックス,釣り具」を指定商品として、同10年12月4日に設定登録された登録第4218296号商標
(r)出願日、商標の構成を(o)と同じくし、第20類「家具,額縁,木製又はプラスチック製の包装用容器」を指定商品として、同11年1月8日に設定登録された登録第4228264号商標
(s)出願日、商標の構成を(o)と同じくし、第21類「ガラス基礎製品(建築用のものを除く。),なべ類,コーヒー沸かし(電気式又は貴金属製のものを除く。),鉄瓶,やかん,食器類(貴金属製のものを除く。),アイスペール,泡立て器,魚ぐし,携帯用アイスボックス,こし器,こしょう入れ・砂糖入れ及び塩振り出し容器(貴金属製のものを除く。),卵立て(貴金属製のものを除く。),ナプキンホルダー及びナプキンリング(貴金属製のものを除く。),盆(貴金属製のものを除く。),ようじ入れ(貴金属製のものを除く。),米びつ,ざる,シェーカー,しゃもじ,手動式のコーヒー豆ひき器及びこしょうひき,じょうご,食品保存用ガラス瓶,水筒,すりこぎ,すりばち,ぜん,栓抜き,大根卸し,タルト取り分け用へら,なべ敷き,はし,はし箱,ひしゃく,ふるい,まな板,魔法瓶,麺棒,焼き網,ようじ,れもん絞り器,ワッフル焼き型(電気式のものを除く。),清掃用具及び洗濯用具,家事用手袋,化粧用具,おけ用ブラシ,金ブラシ,管用ブラシ,工業用はけ,船舶ブラシ,ブラシ用豚毛,洋服ブラシ,靴ブラシ,靴べら,靴磨き布,軽便靴クリーナー,シューツリー,ガラス製又は陶磁製の包装用容器,アイロン台,愛玩動物用食器,愛玩動物用ブラシ,犬のおしゃぶり,植木鉢,家庭園芸用の水耕式植物栽培器,家庭用燃え殻ふるい,紙タオル取り出し用金属製箱,霧吹き,靴脱ぎ器,こて台,小鳥かご,小鳥用水盤,じょうろ,寝室用簡易便器,石炭入れ,せっけん用ディスペンサー,貯金箱(金属製のものを除く。),トイレットペーパーホルダー,ねずみ取り器,はえたたき,へら台,湯かき棒,浴室用腰掛け,浴室用手おけ,ろうそく消し及びろうそく立て(貴金属製のものを除く。)」を指定商品として、同11年1月8日に設定登録された登録第4228265号商標
(t)平成9年5月13日に登録出願され、商標の構成を(o)と同じくし、第16類「紙類,印刷物,文房具類,写真,写真立て,事務用又は家庭用ののり及び接着剤,タイプライター,遊戯用カード,印刷用インテル,活字,紙製包装用容器,紙製テーブルクロス,紙製タオル,紙製幼児用おしめ,紙製ナプキン」を指定商品として、同11年4月2日に設定登録された登録第4258226号商標

3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように主張し、証拠方法として甲第1号証ないし同第50号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、欧文字部分から「ベネトン」の称呼を生ずるものである。何故なら、本件商標の欧文字の後半文字「Graveur」は、フランス語で「グラビア、グラビア製版者」を意味する語であり(甲第39号証)、文房具類等の指定商品との関係から識別力のない語である。英語で「Gravure」は、フランス語「Graveur」と同様に「グラビア、グラビア製版者」を意味する語であり(甲第40号証)、「Graveur」と「Gravure」は構成上極めて近似した語であるから、英語に馴染みのあるわが国需要者及び取引者は、「Graveur」が「グラビア、グラビア製版者」を意味する語であることを容易に理解でき、これを識別力のない語と認識するものと考えられる。
また、本件商標は、「Benneton」と「Graveur」の間にスペースがあり、商標全体を一連一気に称呼するには比較的長すぎる商標である。更に、引用商標「Benetton」は日本においてもよく知られた商標であるため、本件商標は、「Benneton」の部分にのみ注目して、認識、称呼され得ると思料する。
したがって、本件商標は、識別力のない「Graveur」の語を省略して、「Benneton」の部分のみで、認識、称呼されるものである。
ところで、本件商標の構成中、片仮名文字「ベンヌトン グラベール」は、上段の欧文字をフランス語読みにしたものと推測されるが、わが国需要者及び取引者の間では、フランス語は未だあまり普及していない。被服や化粧品のように、フランス語の商標が頻繁に採択されている商品であればまだしも、本件商標の指定商品「文房具類,昆虫採集用具,紙類」等の分野のように、かかる特殊事情のない分野では、欧文字からなる商標は、これに接する需要者・取引者の語学の知識の程度に応じて、英語読み又はローマ字読みするのが一般的であり自然である。また、本件商標の指定商品は、成人や児童、主婦などの幅広い需要者層が見込まれることから、本件商標が英語読み又はローマ字読みされることは十分に考えられる。
また、商標から生じる称呼を検討する際には、併記された片仮名文字に拘束されず、商標全体を観察し、諸事情を考慮して、自然に生じる称呼を特定すべきである(平成3年審判第4651号、平成1年審判第14036号参照)。
そして、本件商標中の「Benneton」と引用商標の「Benetton」は、2つ重なる文字が「n」であるか「t」であるかの点のみで構成を異にするため、外観上極めて近似した印象を与える。
したがって、本件商標に接した需要者は、著名商標「Benetton」から生じる「ベネトン」の称呼の印象に強く影響されて、「Benneton」を「ベネトン」と称呼する可能性が極めて大きい。
他方、引用商標は、その構成から「ベネトン」と自然称呼されるものである。
したがって、本件商標と引用商標とは、「ベネトン」の称呼において称呼上相紛らわしい類似の商標であり、その指定商品も同一又は類似のものである。
(2)商標法第4条第1項第10号及び同第15号について
請求人は、「BENETTON」「ベネトン」ブランドの下で、ニットウェアメーカーから出発し、「若い人は原色に魅かれる」との商品開発コンセプトの下に比較的廉価な商品を提供して、1978年より世界を市場とする戦略を展開して成功した世界的な有名企業である。現在では、2500店以上のチェーン店を持ち、衣料品のほか、バッグや小物、文房具、塗料等幅広い商品を取り揃えるようになっており、総合有名ブランドメーカーとしての地位を獲得している。さらに、F1レーサーのチームスポンサーとしてもよく知られている(甲第3号証)。
また、請求人は、丸紅株式会社と提携してベネトンスタイルの浴衣を発表し(甲第4号証)、富士写真フィルム株式会社とは同社のヒット商品である使い捨てカメラ「写ルンです」のデザイン協力を行い(甲第5号証)、また、P&Gとの事業提携により「紙おむつ、化粧品、医薬品、食品」等へとその事業活動を広げ(甲第6号証)、総合有名ブランドメーカーとしての確固たる地位を確立している。FI界でも、ベネトンが発表した新ブレーキシステムが注目を集めており(甲第7号証)、また、大きなレースでベネトンチームのドライバーが好成績を残し、その名を世界に広めている(甲第8号証)。
そして、「ベネトン」が著名であることは、「日本国周知・著名商標リスト」にも掲載されている(甲第9号証)。
よって、請求人が有する商標「BENETTON」「ベネトン」が本件商標登録の出願時である平成9年1月7日に、すでにわが国で広く知られていたことは争う余地もない。
そして、本件商標と引用商標とが相紛らわしいものであることは、上記のとおりであり、現実の取引においても、請求人の著名商標「BENETTON」を「BENNETON」と表示する誤記が多発している(甲第11号証ないし甲第18号証)。
したがって、本件商標は、実質的に、請求人の著名商標をその一部に含んでいるということができ、請求人の著名商標と類似し、その商品又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当し、又、本件商標は、これをその指定商品に使用した場合には、請求人の業務にかかる商品と出所の混同を生ずるおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)答弁に対する弁駁
(ア)被請求人は、本件商標の著名性を主張しているが、我国はおろか世界各国で著名性を獲得していることを理解できる事実は何ら見当らない。答弁書においても、本件商標の著名性の獲得等についての資料を必要に応じて追加提出する用意があることを述べるにとどまっている。
インターネットにより、「BENNETON GRAVEUR」及び「ベンヌトングラベール」、「BENNETON」、「ベンヌトン」をキーワードに2種類の検索エンジンで検索を行ったが、該当するサイトは全くヒットしなかった(甲第43号証ないし同第48号証)。そして、「BENNETON」をキーワードにした結果は、甲第49号証及び同第50号証に見られる通り、引用商標「BENETTON」を「BENNETON」と誤記したページばかりであった。
かかる事実に照らせば、本件商標が我国で著名であるという被請求人の主張は到底首肯できるものではない。
(イ)被請求人は、本件商標は一連とのみ考えられ、引用商標と混同を生ずることはないと主張している。
しかしながら、片仮名が併記されているからといって、欧文字部分からその片仮名の読みしか称呼が生じないと言うのはあまりにも取引の実情を無視した主張である。商標から生じる称呼は、取引の実情や需要者の視点から判断されるべきであり、商標自体の構成に加え、その各構成要素の意味や、その周知度、需要者に与える印象等を総合的に検討すべきである。
引用商標は、被請求人も認める通り、我国及び世界中で周知・著名な商標である。そして、引用商標と本件商標中の欧文字の相違は、重なる文字が「T」であるか「N」であるかの違いに過ぎない。
よって、取引の場で本件商標に接した需要者等が、著名商標である引用商標の印象に大きく影響され、本件商標を請求人所有の引用商標であると混同するおそれがあることは容易に理解できる。
(ウ)被請求人は、請求人が示した誤記の事例に関し、通常の注意力を有する需要者等を基準にして判断すべきであると主張している。
しかしながら、極めて多数の需要者等が実際に混同していることに鑑みれば、かかる事実は、これらの需要者等を不注意な取引者と断言して無視できるような事実ではないと思料する。
また、被請求人は、引用商標は周知であるがゆえに、そのスペリングまで周知されており、需要者がこれを誤認する可能性は極めて低いと考えられると述べている。
しかしながら、引用商標と本件商標中の「Benneton」は、ともに欧文字の文字列からなり、構成要素たる欧文字の種類及び並びが同一であり、重なるアルファベットが「T」であるか「N」であるかの相違しかない。実際の取引の場においては、需要者等は、目で見て認識することの方が圧倒的に多いものと考えられ、需要者等は商標全体のイメージを視覚で認識するものである。しかも、「BENETTON(Benetton)」と「Benneton」は、母国語である平仮名や片仮名、漢字ほど馴染みのない欧文字によって構成されている。
かかる点を考慮すれば、たとえ「BENETTON(Benetton)」が周知・著名な商標と言えど、イメージで捉えた「BENETTON(Benetton)」と「Benneton」を混同することは十分あり得ることである。
なお、被請求人の提出によるパンフレット抜粋(乙第1号証)においては、本件商標中の「BENNETON」と「Graveur」が別々に使用されており、片仮名文字「ベンヌトングラベール」はどこにも見られない。
上記商標の使用は、引用商標と明らかに類似しており、かかる使用によって、需要者等に出所の混同が生じることは必至である。
(エ)請求書において述べた通り、「Graveur」は「グラビア、グラビア製版者」を意味し、本件商標の指定商品である文房具類等との関係から、識別力のない又は識別力の弱い語である。「Graveur」が「グラビア製版者」を意味する場合、文房具類や印刷物、写真、書画等について、グラビア製版者がその製造等に携わることは十分考えられる。被請求人が主張する「彫版者」を意味する場合も同様である。したがって、本件商標中「Graveur」の部分は、識別力のない又は弱い語であるといえる。
一般の取引において、各構成要素の識別力に大きな差がある結合商標の場合、需要者等は識別力の強い語のみに注目して、その商標を認識し、称呼することが多い。商標全体が長いものであればなおさらである。
被請求人が主張する通り、商標権者が「彫版者ベンヌトン」として認識されているのであればなおさら、商標権者自身の職種を示す「彫版者(Graveur)」の部分は識別性に欠け、省略されやすく、「Benneton」の部分のみで認識される可能性が高くなるものと思料する。
(オ)被請求人は、フランス本国において、引用商標と共存し、混同を生じていないことを示す資料を必要に応じて追加提出する用意がある旨述べている。
しかしながら、1999年11月に、フランスにて、被請求人所有の先行商標を理由に請求人が「BENETTON」商標を断念したことを申し添える。

4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第10号及び同第15号について
被請求人も、「BENETTON」及び「ベネトン」商標が衣料品について周知性を得ていることを認めることについては吝かではない。
しかしながら、本件商標は、引用商標と外観・称呼において、相紛らわしい文字含んでいるとの主張は認容できない。
第一に、本件商標は、ローマ字と片仮名文字を上下2段に表したものであり、不可分一体となった商標として判断されるべきものである。
本件商標は、被請求人の創設者エミール・ベンヌトンの氏名に由来する「ベンヌトン」と、銅版画の彫版者であることを示す「グラベール」を結合した商標である。被請求人は、請求人が営業活動を始める遥か以前の1880年にベンヌトン社を設立し営業を開始して以来、営業を継続しているものであり、120年を超える歴史を有するものである。
被請求人は、凹版、凸版画の技術に優れ、彫版製品を製作する技術の高さと製品の品質により名声を博し、欧州の宮廷から注文を受けるまでに至ったものであり、彫版・印刷者として極めて長い歴史を持ち、その名称については既に著名性を獲得しているものであり、文房具類においてはフランス国内を初めとし世界各国で著名性を獲得しているものである。
第二に、本件商標中の「Benneton」の文字は、「ベンヌトン」の文字と併記されていることから、「ベンヌトン」とだけ称呼されるものであり、これを引用商標の称呼である「ベネトン」と混同することは考えられない。
請求人は、本件商標中のローマ字と引用商標のローマ字だけを対比して類否及び出所混同の可能性を論じているが、本件商標は一連のローマ字とその音訳である一連の片仮名文字を上下2段に併記した商標であるので、外観上も、称呼上も一連とのみ考えられ、引用商標と混同を生ずることは考えられない。
更に、請求人は、請求人の商標が誤記された例を挙げているが、商標の類否に関しては、不注意な取引者を判断の基準にすべきものではなく、通常の注意力を有する需要者・取引者を基準にして判断すべきである。
したがって、本件商標は、引用商標を含む商標ではなく、本件商標の一部に引用商標と類似する部分があるという請求人の主張も認められないものであって、本件商標に接する需要者・取引者は、一連一体の商標として本件商標を見るだけでなく、直ちに本件商標権者を認識するものである。
(2)商標法第4条第1項第11号について
請求人は、本件商標の後半部分を識別性のない部分であると主張しているが、「Graveur/グラベール」はフランス語であり、一般の需要者・取引者は、容易にその意味を理解するものではないので、識別性のない言葉ということはできない。又、請求人は、「Graveur/グラベール」を「グラビア、グラビア製版者」を意味すると述べているが、請求人の提出した辞書においても、「グラビア」を意味するとの記載は全くない(甲第39号証)。被請求人は、これを「彫版者」の意味で使用しているものであり、「彫版者」が本件の指定商品との関係で商品の品質等を表示する言葉ではないことは明らかである。
被請求人は、そもそも彫版者として著名であり、「彫版者ベンヌトン」の名称を用いているもので、その語源は容易に理解できるものであり、「ベンヌトン」だけが分離して称呼されるものではない。
なお、被請求人は、被請求人の商標がフランス本国を初め各国において著名性を獲得していること及びフランス本国において、引用商標と共存し、混同を生じていないことを示す資料を必要に応じて追加提出する用意がある。

5 当審の判断
本件商標は、別掲(1)に示したとおり、「Benneton Graveur(筆記体で表されている)」の文字と「ベンヌトン グラベール」の文字とを二段に横書きしてなるところ、上段及び下段に書された各文字は、外観上まとまりよく一体的に表現されているものである。そして、その構成中の「Benneton」の文字部分は、我が国において、特定の語義及び読みをもって知られた語とはいえないものであり、又、「Graveur」の文字もフランス語の成語であるとしても、「グラビア」の意味を表すものとして直ちには認識し難いものであるから、本件商標は、その構成全体をもって不可分一体の造語を表したものと認識し把握されるとみるのが自然である。
そして、その称呼についても、一般に、欧文字と仮名文字を併記した構成の商標において、その仮名文字部分が欧文字部分の称呼を特定すべき役割を果たすものと無理なく認識し得るときは、仮名文字部分より生ずる称呼がその商標より生ずる自然の称呼とみるのが相当である。
以上、総合すれば、本件商標は、その欧文字部分から直ちに、一定の親しまれた称呼を生ずるものとは認められないから、むしろ、その読みを特定したものと認められる片仮名文字に相応して「ベンヌトングラベール」の一連の称呼のみを生ずるものとみるのが自然であり、この称呼も格別冗長に亘るものとはいえない。そして、他に、構成中の「Benneton」の文字部分のみが独立して認識されるとみるべき特段の事情は見い出せない。
そうとすれば、本件商標は、その読みを特定したものと無理なく認められる片仮名文字に相応して「ベンヌトングラベール」の称呼のみを生ずるものというべきである。
他方、引用商標は、前記あるいは別掲(2)ないし(5)に示したとおりの構成よりなるものであるから、その構成文字部分に相応して、「ベネトン」の称呼を生ずるものと認められる。
してみれば、本件商標から生ずる「ベンヌトングラベール」の称呼と引用商標から生ずる「ベネトン」の称呼とは、その音構成及び構成音数において顕著な差異が認められるから、称呼上十分区別し得るものであり、又、両商標は、外観においても明らかな差異を有し、観念においては比較すべくもないものである。
したがって、本件商標は、引用商標と外観、称呼及び観念のいずれの点においても類似することのない非類似の商標である。
また、引用商標が本件商標の登録出願時において、請求人の業務に係る「衣料品」等の商品を表示する商標として取引者・需要者の間に広く認識されていたものであることは認められるとしても、本件商標と引用商標とは、上記のとおり、十分に区別し得る別異の商標というべきものであるから、被請求人が、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者をして引用商標を連想又は想起させるものとは認められず、その商品が請求人又は同人と何らかの関係のある者の業務に係るものであるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第15号に違反してされたものではないから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件商標(登録第4219259号商標)

(2)引用商標(登録第1809424号商標)

(3)引用商標(登録第2213057号商標)

(4)引用商標(登録第2666698号商標)

(5)引用商標(登録第2688287号商標)

審理終結日 2002-04-02 
結審通知日 2002-04-05 
審決日 2002-05-07 
出願番号 商願平9-180 
審決分類 T 1 11・ 25- Y (016)
T 1 11・ 271- Y (016)
T 1 11・ 262- Y (016)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 飯山 茂 
特許庁審判長 涌井 幸一
特許庁審判官 滝沢 智夫
中嶋 容伸
登録日 1998-12-11 
登録番号 商標登録第4219259号(T4219259) 
商標の称呼 ベンヌトングラベール、ベネトングラベール 
代理人 深見 久郎 
代理人 広瀬 文彦 
代理人 竹内 耕三 
代理人 森田 俊雄 
代理人 高松 薫 

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