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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 025
管理番号 1064613 
審判番号 無効2001-35099 
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-10-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-03-09 
確定日 2002-08-21 
事件の表示 上記当事者間の登録第4090070号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4090070号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4090070号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成7年12月4日に登録出願され、別掲(1)に示すとおりの構成よりなり、第25類「靴類(「靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具」を除く。),げた,草履類,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品として、同9年12月12日に設定登録されたものである。

2 請求人の引用する登録商標
請求人は、本件商標の登録無効の理由として下記の登録商標を引用している。
(a)昭和55年12月26日に登録出願され、別掲(2)に示すとおりの構成よりなり、第22類「短ぐつ、長ぐつ、編上げぐつ、雨ぐつ、防寒ぐつ、運動ぐつ、作業ぐつ、木綿製くつ、メリヤス製くつ、サンダルぐつ、幼児ぐつ、婦人ぐつ、オーバーシユーズ、地下たび、釣り用ぐつ、乗用車ぐつ、極地用防寒ぐつ、地下たび底、くつ中敷き、くつのかかと、半張り底、内底、げた、ぞうり類、かさ」を指定商品として、平成1年12月25日に設定登録された登録第2193941号商標(以下、「引用商標1」という。)
(b)平成2年9月5日に登録出願され、別掲(3)に示すとおりの構成よりなり、第22類「はき物(運動特殊ぐつを除く)かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、同5年1月29日に設定登録された登録第2501233号商標(以下、「引用商標2」という。)
(c)昭和61年12月23日に登録出願され、別掲(4)に示すとおりの構成よりなり、第22類「フランス製のはき物、フランス製のかさ、フランス製のつえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、平成5年10月29日に設定登録された登録第2592772号商標(以下、「引用商標3」という。)
(d)平成2年6月8日に登録出願され、別掲(5)に示すとおりの構成よりなり、第22類「はき物(運動用特殊ぐつを除く)かさ、つえ、これらの部品及び付属品」を指定商品として、同6年10月31日に設定登録された登録第2697713号商標(以下、「引用商標4」という。)
(e)昭和60年2月4日に登録出願され、別掲(6)に示すとおりの構成よりなり、第22類「はき物(運動用特殊ぐつを除く)かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、平成8年1月31日に設定登録された登録第2712231号商標(以下、「引用商標5」という。)
(f)昭和60年2月4日に登録出願され、別掲(7)に示すとおりの構成よりなり、第22類「はき物(運動用特殊ぐつを除く)、かさ、つえ、これらの部品及び付属品」を指定商品として、平成9年5月23日に設定登録された登録第2721546号商標(以下、「引用商標6」という。)
(g)平成5年1月27日に登録出願され、別掲(8)に示すとおりの構成よりなり、第25類「被服,履物」を指定商品として、同8年3月29日に設定登録された登録第3135876号商標(以下、「引用商標7」という。)

3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証の1ないし同第45号証(枝番号を含む)を提出した。
(1)請求に至る経緯
被請求人は、商標登録第1874483号(以下、原商標権という)の商標権者でもある。
しかるに、被請求人は、後に述べる商標「ELLE」の著名性、顧客吸引力に便乗せんとして、原商標を変形して運動ぐつに使用するようになった。
そこで、請求人は、平成8年9月30日、商標法第51条及び第53条に基づき、原商標権の取消を求めて審判を請求した(平成8年審判第16486号)。平成12年7月17日、登録第1874483号商標の登録は取消すとの審決が下され、同審決は確定した(甲第40号証)。
さらに、請求人は、平成8年11月22日、被請求人を相手として、東京地方裁判所に上掲の変形商標の使用差止を求めて訴を提起した。同訴訟は、東京地方裁判所平成8年(ワ)第23034号商標権侵害差止請求事件として東京地方裁判所に係属したのち、平成11年9月30日変形商標使用差止の判決が下され、同判決は、東京高等裁判所及び最高裁判所においても維持された(甲第41号証、42号証及び43号証)。
なお、被請求人は、本件商標に類似する「ELLE MARINE」の文字を含む商標を商標登録していたが(登録第1874483号商標、登録第4119271号商標及び登録第4130031号商標)、異議決定または審決により、取消されている(甲第44号証及び45号証)。

(2)無効となるべき理由
(ア)本件商標構成中「E」の文字の上に花のデザインが描かれている上側の部分とは独立して、看者の目は下側の「ELLE MARINE」の部分に向くため、「ELLE MARINE」の部分は、本件商標にあって顕著な部分と言わなければならない。
また、このうち「ELLE」の部分は、のちに述べる著名商標「ELLE」とも類似しているため、著名商標「ELLE」を見慣れている多くの人々には、本件商標を「ELLE」として容易に認識することも事実である。
それ故、本件商標中の前半のELLE部分は、本件商標の要部と認められる。そして、「ELLE」は、著名商標と同じく「エル」と読まれるから、本件商標からは「エル」の称呼が生ずるものと考えるのが自然である。
これに対し、引用商標1は、著名商標「ELLE」の一つとして、ブランド事業に使用されており、現実には世界長株式会社が履物に使用している。世界長株式会社は、サブブランド「HOMME」「SPORTS」「PETITE」を付することもあるが、引用商標を中心にブランド事業の一翼をになっている。その活動は、例えば、甲第36号証ないし39号証のカタログに見られるとおりであり、引用商標1が「エル」の称呼をもって知られることは、いうまでもない。
それ故、本件商標と引用商標1とは、ともに「エル」の称呼を生ずるものであるから、称呼上類似するものである。
よって、本商標権は、商標法第4条第1項第11号に該当するので、その商標登録は無効とされるべきものである。
(イ)請求人の商標「ELLE」の著名性
(a)請求人の使用に係る著名商標は、別掲(9)示すとおりの構成よりなるものであり(以下、単に「引用商標」という。)、その使用実績は次のとおりである。
請求人は、フランスに所在する法人であり、女性向けファッション雑誌「ELLE」の出版を中心として、各種商品のファッションを創作、紹介しているものである(甲第8号証)。雑誌「ELLE」は、被服、身回品、化粧品、家具、食品等に関する記事を掲載する女性向けファッション週刊誌(甲第9号証)であり、フランスにおいては第2次大戦前から発行されていたが、1994年4月までに約2521号を数えており、発行部数は、フランス語版が毎週555000冊に達している。雑誌「ELLE」は、現在ライセンス契約をし、あるいは、合弁事業として活動している企業が各国において姉妹誌「ELLE」を発行しており、アメリカ合衆国においては82万冊、イギリスにおいては20万冊、スペインにおいては12万冊、アラブにおいては6万冊発行している。
これらのうち、フランス版、アメリカ版、イギリス版は日本国内においても販売されている。
その他、発行数は不明であるが、イタリア版、ホンコン版、スエーデン版、中国版、ギリシャ版、フインランド版、ドイツ版、オランダ版、ブラジル版、ポルトガル版、カナダ版、スペイン版、チェコ版、ポーランド版、トルコ版、チリ版、アルゼンチン版、メキシコ版、オーストラリア版、シンガポール版、台湾版、韓国版が発行されている(甲第10号証)。
さらに、我国でも、後述の株式会社マガジンハウスが昭和57年以来雑誌「ELLE」の日本語版を発行してきたが、現在は、株式会社タイム アシェット ジャパンがこれを承継し雑誌「ELLE」を発行している(甲第11号証)。
これらの雑誌に掲載されるファッションは現代感覚にあふれた「ELLE」誌独自の特徴を有し、「ELLE」ファッション、「ELLE」カラーと呼ばれて全世界の女性間に広く支持者を持っている。このように、雑誌「ELLE」は、ファッションの世界的中心地たるフランスにおいて発行され世界各国に輸出されており、日本においても「ELLE」誌及び「ELLE」ファッションは、古くから広く知られ、わが国のファッションに多大な影響を与えている(甲第12号証ないし14号証)。
(b)また、請求人が、株式会社マガジンハウスを通じて日本語版「ELLE」を発行する以前から、我国においては「ELLE」は良く知られたものであった。
昭和57年に、日本語版「ELLE」を発行する以前から、請求人は、日本における「ELLE」誌及び「ELLE」ファッションの紹介を積極的にしてきた。すなわち、株式会社マガジンハウスは、請求人の許諾の下に昭和45年3月に雑誌「アンアン(an.an)」を日本版「ELLE」誌と位置づけて創刊し、以来昭和57年に至るまで「アンアン」には毎号本国版「ELLE」誌の記事を一部そのまま掲載するなど「ELLE」ファッションの紹介、普及を図り、その表紙には必ず「ELLE JAPON」の商標を附してきた。なお、「アンアン」誌が若い女性間の爆発的な支持を受け、我が国で最も人気のある雑誌の一つであることは周知のとおりである。
また、株式会社マガジンハウスは「アンアン」誌のみに止まらず、その発行に係る「クロワッサン」誌等他の出版物にも、多数「ELLE」誌の記事を「ELLE」の名の下に記載したが、昭和57年4月に至り、株式会社マガジンハウスから雑誌「ELLE」を発刊し、さらに、株式会社タイムアシェット ジャパンがこれを承継し、現在に至るまで、日本における女性向け雑誌の中でも最も人気の高い雑誌となっていることは周知の事実である。ちなみに、我国における、雑誌「ELLE」は、昭和57年4月から昭和60年4月までは月に1回、以後は現在に至るまで月2回刊行しているが、毎号の発行部数は20万冊から24万冊に達している。
その内容は、被服、身回品、化粧品その他のファッションの紹介の記事、あるいは、これに関連する広告の掲載であり、いわゆる「ELLE」ブランド、「エル」ブランドの国内における源流となっている。それ故、我国における大多数の人々が雑誌「ELLE」、「ELLE」ファッションということを思い浮かべる場合、引用商標の特徴ある文字を想起していることは間違いのないところである。
(c)請求人は、雑誌「ELLE」の刊行を続けるのみではなく、「ELLE」ファッションの普及をはかるために、ライセンシーにこれらのファッションを商品化させる活動も行ってきた。
このために、請求人は、日本を含め世界各国において各種商品について商標「ELLE」の登録をなしている。各国において管理をしている著名商標「ELLE」の数はおよそ1700余りあるといわれている(甲第15号証)。
我が国においては、昭和39年以来、帝人株式会社(大阪市東区南本町1丁目11番地、以下「帝人」という。)に対し、引用商標の独占的使用を許諾するとともにかかる活動を推進してきた。帝人は、自ら「ELLE」ファッションに係る洋服を製造、販売する一方、その独占的使用権に基づき、婦人服につきイトキン株式会社、スカーフ・ハンカチ類につき川辺株式会社、水着につき株式会社岸田、エプロンにつき中西縫製株式会社、寝装寝具類につき西川産業株式会社、手袋につき株式会社三大の各社に引用商標の再使用権を許諾した。帝人とこれら各再使用権者は、共同して「ELLE」ファッションの宣伝、販売、普及に努め、その製造、販売に係る商品に引用商標を使用していた。
その後、昭和59年7月に至り、請求人は、前記帝人との関係を解約し、自ら東洋ファッション開発株式会社を設立し、「ELLE ファッション」の市場開発、市場調査、企画、利用をはかり、帝人の再使用権者を引つづき使用権者として引用商標の普及に努めている。また、その間、新たな再使用者として、甲第16号証ないし27号証の企業がELLEファッションの事業に加わり、その活動範囲は益々ひろがりを見せている。
これらの商品に付されている商標は、いずれも引用商標の構成からなるものである。それ故、これら商品を通しても、引用商標は我が国において良く知られるところとなっている。
(d)以上述べたところからも明らかなとおり、引用商標は、雑誌「ELLE」による著名性、「ELLE」ファッション、「ELLE」ファッション商品化により、我が国において著名な商標となっていることは疑う余地のないところである。
(ウ)混同のおそれ
請求人は、引用商標を中心にして、その商品ラインを示す表示を付加した結合商標、例えば、引用商標1ないし引用商標7のような商標も使用している。
これらの商標は、現実に前記ライセンス商品に使用されている。その結果、顧客は、著名な引用商標とともに引用商標に他の単語を結合して使用されることを熟知しているところとなっている。かかる状況の下に、本件商標がファッション性のあるその指定商品に使用されると、看者は、これを著名な引用商標の商品ラインの一つと認め、これを請求人あるいはそのライセンシーグループの商品と誤認混同することは目に見えている。
よって、本商標権は、商標法第4条第1項第15号に該当し、その商標登録は無効とされるべきものである。

4 被請求人の答弁
被請求人は、何ら答弁していない。

5 当審の判断
請求人の提出した「フランク チュノ作成の供述書」(甲第5号証)、「HACHETTE FILlPACCHI JAPAN発行のチラシ」(同第6号証)、「日英仏独対照服飾辞典」(1972年2月1日株式会社ダヴィッド社発行;同第26号証)、「服飾辞典」(文化出版局発行 54.4.21東京都立中央図書館受入;同第27号証)、「増補版服装大百科事典」(昭和54年7月20日文化出版局発行;同第28号証)及び請求人の主張を総合すれば、請求人は、1945年に、引用商標を附した「女性向けファッション雑誌」を創刊以来、世界各国において雑誌「ELLE」を発行し続けてきたものであること、我が国においても、昭和45年3月に雑誌「アンアン(an.an)」を日本語版「ELLE」誌と位置付けて創刊し、以来、昭和57年に至るまで、「アンアン」には毎号、本国版「ELLE」誌の記事を一部そのまま掲載するなど「ELLE」ファッションの紹介、普及を図り、その表紙には必ず「ELLE JAPON」の商標を付してきたものであること、そして、昭和57年に株式会社マガジンハウスが雑誌「ELLE」の日本語版を発行し、その後、株式会社タイムアシェトジャパンがこれを承継して現在に至っていることを認めることができる。
また、各社の商品カタログ(甲第8号証ないし同第22号証)、雑誌「LES GANTS ’89-’90AUTUMN&WINTER」(SUN-ACE CO.,LTD.同第23号証)、ファッション雑誌「フットウェア・プレス」(1987年7月号;同第24号証)及び雑誌「ELLE DECO」(1994年6月号;同第25号証)によれば、請求人は、引用商標を「女性向けファッション雑誌」の商標として使用しているばかりでなく、日本の各社に対して、引用商標について使用権を設定し、「洋服、スカーフ、ハンカチ類、エプロン、寝装寝具類、手袋、かさ、子供靴、婦人靴」等の各種商品についてライセンス事業を行ってきたものであることを認めることができる。
以上の事実に照らしてみれば、引用商標は、少なくとも、本件商標の登録出願時である平成7年12月4日以前には、「女性向けファッション雑誌」の商標として、我が国における取引者、需要者間に広く認識されていたものであり、また、本件商標の指定商品である「履物」をはじめ、「洋服、スカーフ、ハンカチ類、エプロン、寝装寝具類、手袋、かさ」等々の各種商品の商標としても、取引者、需要者間に相当程度知られていたものといわなければならない。
しかして、本件商標は、別掲(1)に示すとおりの構成よりなるところ、その構成中の「ELLE MARINE」の語が特定の意味を有するものとして一般に知られ親しまれているものとは認め難いから、これよりは「ELLE」の文字と「MARINE」の文字とを組み合わせてなるものと容易に把握されるものである。そして、該構成文字中の「ELLE」の文字部分は、看者の注意を惹く前半部分に位置し、視覚的にも「ELLE」の文字部分が分離して看取されるばかりでなく、引用商標とその綴り字を同じくするものである。
加えて、「ELLE MARINE」の文字の上部に大きく表されている「E」の文字は、引用商標における「E」の文字と同じく、縦長のアルファベットで表し、アルファベットの横線の右端部分に縦方向に拡大されたひげを配するという引用商標の文字と共通の特徴を有するものであるから、本件商標構成中の「ELLE」の文字自体には引用商標の文字と共通の特徴がないとしても、該「E」の文字の印象から、全体として、著名な引用商標「ELLE」を一層容易に想起させる構成になっているものというべきである。
してみれば、本件商標をその指定商品について使用した場合、これに接する取引者、需要者は、前記した事情よりして、その構成にあって強く印象づけられるというべき「ELLE」の文字部分に着目し、容易に引用商標を想起し、その商品が請求人又は請求人と事業上何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(1) 本件商標




別掲(2) 引用商標1



別掲(3) 引用商標2



別掲(4) 引用商標3



別掲(5) 引用商標4



別掲(6) 引用商標5



別掲(7) 引用商標6



別掲(8) 引用商標7



別掲(9)引用商標8



審理終結日 2002-06-19 
結審通知日 2002-06-24 
審決日 2002-07-10 
出願番号 商願平7-125429 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (025)
最終処分 成立  
前審関与審査官 根岸 克弘 
特許庁審判長 宮下 正之
特許庁審判官 高野 義三
山口 烈
登録日 1997-12-12 
登録番号 商標登録第4090070号(T4090070) 
商標の称呼 エルマリン、エル 
代理人 高橋 功一 
代理人 旦 範之 
代理人 旦 武尚 
代理人 関根 秀太 

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