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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない 025
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない 025
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない 025
管理番号 1063348 
審判番号 審判1999-35740 
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-09-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-12-10 
確定日 2002-08-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第4145017号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4145017号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に示すとおりの構成よりなり、平成8年11月6日に登録出願、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ショール,スカーフ,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,帽子,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具」を除く。),げた,草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品として、同10年5月15日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第165号証(枝番を含む。)を提出した。
1.「インディアン」は、1901年、ジョージ・エム・ヘンディーが、設計者のオスカー・ヘドストロムを迎えて、マサチューセッツ州スプリングフィールドに設立したオートバイのメーカーであり、その設立は、ハーレー・ダヴィッドソンの設立の1903年に2年先立つ。
「インディアン」は、マン島のレースや、デイトナビーチ(DAYTONA BEACH)でのレースで優勝したりして、その品質とデザインにより、米国はもとよりヨーロッパや日本でも極めて有名であった。
同社の商号は、当初は、「ヘンディー・マニュファクチュアリング・カンパニー」であったが、1923年に「インディアン・モトサイクル・カンパニー」に変更された。
インディアン・モトサイクル・カンパニーのオートバイには、特徴ある書体の筆記体の「Indian」(以下「インディアンロゴ」という。)、羽根飾りを冠した右向きのインディアンの図形(以下「インディアン図形」という。)、「左向きのインディアンの図形」、本件商標と同一態様の「笑うインディアンの図形」(甲第2号証の2)、及び活字体の「INDIAN」等が商標として使用された。「インディアンロゴ」及び「インディアン図形」並びに「左向きのインディアンの図形」及び「笑うインディアンの図形」や活字体の「INDIAN」等は、インディアン・モトサイクル・カンパニーの製造販売するオートバイの商標として米国はもとよりヨーロッパや日本でも周知であり、「INDIAN MOTOCYCLE」(「インディアンモトサイクル」)は、インディアン・モトサイクル・カンパニーの略称として、米国はもとより、ヨーロッパや日本においても周知であった。インディアンモトサイクル・カンパニーの「インディアン」のオートバイの車種は多数あるが、1908年より発売の「INDIAN RACER」、1920年より発売の「INDIAN SCOUT」、1935年より発売の「INDIAN CHIEF」等が代表的である(甲第2号証の2ないし同第5号証)。
インディアン・モトサイクル・カンパニーは、1953年操業を停止し、後に解散した。
しかしながら、「インディアン」のオートバイの愛好者は多数おり、同好者向の雑誌が発行されている程であり、「インディアン」は、米国を象徴するトロフィーブランドであった(甲第6号証及び同第20号証)。
2.1990年6月26日、フィリップ・ザンギ氏は、かつてインディアン・モトサイクル・カンパニーが存在したマサチューセッツ州スプリングフィールドに、「インディアン・モトサイクル・カンパニー・インク」を設立し、前記のインディアン・モトサイクル・カンパニーを復活し、「インディアン」のオートバイの復活製造及び「インディアンロゴ」や「インディアン図形」等を使用した「インディアン」ブランドのアパレルやアクセサリー等のマーチャンダイジングビジネスを開始した。
被請求人による「インディアンモーターサイクル」の出願は平成3年(1991年)11月5日である(甲第9及び同第10号証)。
被請求人は、米国のインディアン・モトサイクル・カンパニー・インクと何らの関連もなく、単に、日本における「インディアン」のブランドビジネスの展開を予測して、片仮名の「インディアンモーターサイクル」を登録し、これを一切使用せず、「インディアンロゴ」等を無断で使用している。
3.請求人はライセンサーとして、サンライズ社はマスターライセンシーとして、「インディアン」ブランドの広告宣伝、輸入販売及びライセンスビジネスを展開した。
1993年7月24日、繊研新聞(甲第18号証)及び日経流通新聞(甲第19号証)等で、請求人の設立、「インディアン」ブランドの輸入、ライセンスビジネスの展開の開始が報じられた。
また、請求人及びサンライズ社は、米国製の「インディアン」商品の輸入販売を行い、「インディアン」ブランドの市場への浸透をはかったが、1993年11月の時点で、既に、米国ではブームであり、日本でも、「インディアン」ブランドのマーチャンダイジングは、「ブーム着火は時間の問題」という程であった(甲第20及び同第21号証)。
「インディアン」ブランドは1994年(平成6年)前半には市場に充分浸透し、1994年(平成6年)初め、サンライズ社はマルヨシとバッグについてサブライセンス契約を締結し、マルヨシは、1994年5月展示会を開催し、販売を開始した(甲第25ないし同第30号証)。「インディアン」ブランド即ち、「インディアンロゴ」、「インディアン図形」、インディアン図形にインディアンロゴを表記した図形(甲第67号証、以下「ヘッドドレスロゴ」という。)、「左向きのインディアンの図形」、「笑うインディアンの図形」(甲第30号証の2及び同第30号証の3)及び筆記体の「Indian Motocycle Co.,Inc.」(以下「モトサイクルロゴ」という。)等は、衣類、帽子、バッグ等について、請求人が輸入販売し、又は、ライセンスに使用する商標として、1994年(平成6年)前半(本件商標の出願前)には、既に周知であった。
マルヨシのバッグ及びサンライズの輸入にかかるTシャツ、トレーナー等及びサンライズの製造に係るTシャツ等は、1994年更に雑誌等で広告され(甲第33及び同第34号証)、「インディアン」ブランドは、衣類、バッグ、身飾品の分野において更に周知となった。
4.本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。
本件商標は、被請求人において、請求人が本件商標を含む「インディアン」商標の日本における正当な出所であること、かつ、請求人がライセンスビジネスに使用する商標であることを知り、請求人の「インディアン」商標に関するブランドマーチャンダイジングビジネスの成果に只乗りし、かつ、請求人による同ビジネスの展開を妨害せんとして出願登録されたものである。
本件商標と類似する「笑うインディアンの図形」からなる商標は、本件商標の出願当時、既に請求人のウェアに使用する商標として周知であったものであり、被請求人において本件商標を使用することは、健全な業界の秩序を紊乱するものであるから、本件商標は、公序良俗に反するものである。
5.本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(1)本件商標と類似する「笑うインディアンの図形」を含む商標は、本件商標の出願当時、請求人の登録に係る商標として、特に、ウェア類に使用する商標として周知であった。
(2)そして、請求人が「インディアン」商標の日本における正当な出所であり、「インディアン」ブランドビジネスを展開する主体であることは、本件商標の出願当時、既に周知であった。
(3)よって、被請求人が、本件商標をその指定商品に使用するときは、本件商標が請求人又はライセンシーその他請求人と何らかの経済的関係に立つ者により製造販売されるものであるとの誤認を需要者に生ぜしめるおそれのあるものである。
6.本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(1)本件商標は、「笑うインディアンの図形」と類似するものであるが、同図形は、請求人が日本における正当な出所である「インディアン」商標の1つである。
(2)よって、「笑うインディアンの図形」を含む商標が請求人の業務に係る商標であり、かつ、請求人が「笑うインディアンの図形」の商標の日本における正当な出所であることは、本件商標の出願当時、既に周知であった。
(3)被請求人は、請求人による日本における「インディアン」ビジネスの円満な展開を阻害し、これを妨害せんとし、かつ、請求人の 「インディアン」ビジネスの発展のための企業努力の成果に便乗せんとして、本件商標の出願、登録、使用をするものである。
7.結論
本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号及び同第19号に該当するから、その登録は、商標法第46条第1項により、無効とすべきものである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論と同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第37号証を提出した。
1.1901年に設立され、1953年に解散消滅した米国法人「INDIAN MOTO(R)CYCLE CO.,INC.」(以下「インディアン社」と称する。)の歴史的経緯、並びに該インディアン社が存続時使用していた商標に付いては、大凡請求人主張の通りであり、被請求人にあっても特に異論の存するところではない。
しかしながら、請求人等が関係したのは当該インディアン社ではなく、フィリップ・ザンギ氏が設立した同名の米国法人であって、1901年設立の「インディアン社」とは法的には勿論のこと、経済的にも社会的にも一切の関係がない米国法人である。
2.請求人は、請求人所有商標等の著名性を頻りに主張するが、「如何なる商標が、何時、如何なる者の、如何なる商品に付いて」著名商標となっているのか、具体的且つ個別的に特定されておらず、請求人主張は認められない。
仮に、請求人主張が、フィリップ・ザンギ氏或いは同人設立のインディアン社の商標として著名であるとの主張であるならば、同人/同社の周知著名に至る使用事実を明らかにすべきであるのに、周知著名に至った程の使用事実はもとより、事業活動そのものの存在すら立証していないものである。同人/同社は米国においてすら企業本来の事業活動を一切行っていないのが真実であり、かかる請求人主張は認められない。
また、請求人主張が、1901年に設立されたインディアン社のオートバイの商標として同社が過去において使用していた商標の全てが著名であるとの主張と善解するならば、同社は1953年に消滅した以降現在に至るまで、一切の営業活動を行っていないのであるから、本件商標の出願時、査定時にあって、同社の著名商標ということはできない。
このことは、請求人が被請求人所有の登録商標(インディアンモーターサイクル:旧第17類)に対して起こした無効審判事件(平成6年審判第13787号)において、インディアン社のハウスマーク的商標(羽飾り図十Indianロゴ十Indian Motoryicle Co.,Inc.)ですら、その著名性を否定されていることからも明白である(乙第9号証)。
請求人の登録商標(乙第27号証・同第28号証)が、1901年設立の「インディアン社」の社章的標章と同一であることは認めるが、これは請求人等自らの創作に係る標章ではなく、単に請求人等が消滅した「インディアン社」の社章的標章をデッドコピーしたものを、自らの商標として採択したにすぎず、標章態様が同一であるからといって、全く関係のない「インディアン社」の過去の実績や名声を根拠に、請求人等が他の者の商標選択や使用を排する何等かの権利や特権を有することにはならないのは当然である。
即ち、1953年に解散消滅したインディアン社、又はその関係会社や関係者が何等かの形で存在しており、同社のインディアン商標の著名性が、現在においてもなお維持されているという事実が存在しないことは世界的に周知の事実である。
3.本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものではない。
(1)請求人は「請求人がインディアン商標の日本における正当な出所である」とか、「本件商標は、請求人のブランドビジネスの成果に只乗り、これを妨害せんとして出願登録したものである」とか主張しているが、請求人が「正当な出所」と主張するからには、少なくとも1953年に消滅した「インディアン社との関係」を立証すべきであるのに、関係を示す一片の証拠も提出していない。
(2)過去に存在した事実をイメージしての商品企画(レプリカ商品、復刻商品、等々)は、当業界(衣料品業界)に限らず、多くの業界で日常的に行われていることで、その際には当該事実によって存在する他人の法的権利や既得権益を侵害しないことが前提とされるのであるが、既に「インディアン社」はその関係者を含めて存在せず、インディアンバイクのイメージ及びそれに纏わるマーク等は、特定の者が法的根拠もなく独占し得る訳ではなく、その意味でこれらは社会的共有物となっているものというべきである。
(3)このことは、歴史上の人や物から商品企画上のヒントを得、或いはそれらを商標として採択することに何等違法性がないことと同義で、インディアン社のバイクイメージ及びそれに纏わるマークに関しても、米国はもとより多くの国で採択されており(乙第16号証ないし同第21号証)、その際、請求人のように「インディアン社」の過去の名声や実績を根拠にして自らの正当性や独占性を主張する採択者は一切存在しないのである。被請求人にあっても、特に「インディアン社」との関係を強調するものではなく、他の採択者と同等の立場で本件商標を採択したものである。
(4)本件商標の図柄と同一の図柄は、「インディアン社」存続時に一部使用していたマークであり、該図柄を商標として採択したのは被請求人が最先である。
(5)「インディアン社」に縁の商標については、請求人や被請求人以外にも既に多くの者が自己の商標として採択していることは前記のとおりで、我が国被服類について例示すれば、インディアン社の代表的なバイク名である「INDIAN SCOUT」が登録され(乙第31号証)、また「Indian」の欧文字書体にあっても乙第13号証の1の登録商標で明らかなように、請求人が採択する前に我が国において商標として採択されている書体である。
(6)被請求人による本件商標の採択動機は、乙第24号証より明らかなように、1990年にヴィンテージバイクのコレクターとして著名な米国人(ジェリー氏)と被請求人会社常務(小林亨一氏)との出会いに始まり、彼の所属する米国で最大のヴィンテージバイク愛好家団体からの依頼により、ライダージャケットを製作したことに起因する。
そして、彼らの提案により商標名を「インディアンモーターサイクル」とすることとして、該商標を1991年11月5日に出願したものである(乙第25号証)。
(7)被請求人は、「一貫してアメリカンカジュアルを扱い続け、完成度の高いモノ作りで世界に知られるメーカーで、フライトジャケット、ハワイアンシャツ、デニム衣料と制覇し、最後に残った分野がモーターサイクルジャケットだった」のである(乙第24号証)。
このように、被請求人会社は当該分野の商品において世界的に信頼されているものである。
(8)請求人が商標使用の事実として提出した甲号証の多くは、「本件商標とは非類似の商標の使用事実」、「本件商標の出願日以後の事実」若しくは「本審判事件の審理とは無関係な事実」を示したものであり、その採用を認めることはできない。
関係する資料といえば、甲第30号証の2・同3のみであるが、何れも、本件商標に類似する図柄がプリントされた商品が存在することを窺わせる程度の写真にすぎず、商標としての使用であるか否かは別としても、その使用時期や販売数量等、周知若しくは著名であることを判断する上で必要不可欠な事項の立証がされていない。
また、甲第2号証の2は、単にインディアンバイクに関するコレクターの為の関連グッズが販売されていたこと、そして、そこで本件商標に類似する図柄が用いられていたことの歴史的事実を示す資料にすぎず、この図柄を使用していたインディアン社は47年前に消滅しており、これらの資料だけでは当時ですら該図柄が周知若しくは著名であったか否か不明であるのに、ましてや、本件商標出願時の周知化証拠として、また、請求人等の商標使用事実を示すものとしてと採用することはできない。
被請求人による本件商標の採択は、先に記述したように1990年に起因し、商標「インディアンモーターサイクル」の採択出願は請求人等の如何なる事実行為よりも先行しているのであり、その後のー連の商標採択経過(乙第26号証)や商品展開(乙第32号証ないし同第37号証)等からして、請求人商品(甲第30号証の2・同3)に付された図柄から、本件商標を模倣したものでないことは明白である。
4.本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものではない。
(1)甲第30号証の2・同3に示されている図柄が本件商標に類似するものであることは認めるが、該証拠からは「商標の使用であること」、「出願前の使用であること」、「周知化の根拠となる程の使用実績であること」の全てを認めることはできない。
(2)請求人は、本件商標とインディアン図形外からなる登録第2710099号商標及び筆記体で「Indian」の文字を横書きしてなる登録第4022987号商標とは類似すると主張をするが、本件商標の如き図形商標にあっては、その類否判断において観念・称呼を検疑すべきでないことは過去の登録例(乙第12号証ないし同第14号証)から明白であり、両商標は非類似である。
5.本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものではない。
(1)本件商標は、如何なる者の周知商標でもなく、不正な目的をもって採択したものでないことは、前記した採択の経緯並びに本件商標のルーツからして明白である。
(2)請求人は、「本件商標は請求人使用の周知商標と類似する」と主張するが、先に詳述したとおり、甲第30号証の2・同3に示されている程度の事柄をもって、当該使用商標が周知化したとの主張は到底認められない。
(3)また、請求人は頻りに「当該インディアン図形商標の日本に於ける正当な出所である。」と主張するが、如何なる根拠によってかかる主張を繰り返しているのか全く不明であり、その立証はおろか、インディアン社との関係についての言及すら避けている。
(4)被請求人による本件商標の採択起源は1990年に遡ること先に示したとおりであり、「インディアン社」のバイクイメージを転化させた商品の開発や、同社に纏わるマークを商標として採択した衣料品の企画は、被請求人が独自に且つ最先に行ってきたことであり、その証拠に商標「インディアンモーターサイクル」の出願日は請求人等の如何なる事実行為よりも先行しているものである。
(5)さらに、本件商標の図柄は、請求人等の使用図柄(商標)にヒントを得たものではないことは、請求人自ら認めるところであり(甲第2号証の2)、本件商標の基となった該図柄の使用者(インディアン社)は既に47年前に解散消滅しており、請求人を含め当該インディアン社の関係者は一切存在しない。
6.結論
叙上のとおり、請求人主張には理由も根拠もなく、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号及び同第19号のいずれにも該当しないことは明白である。

第4 当審の判断
本件商標は、別掲に示すとおり「左右に垂らした髪に羽根飾りを付けた笑顔のインディアンの頭部の図形」を描いてなるものである。
請求人は、「『インディアン』ブランドは1994年(平成6年)前半には市場に充分浸透し、1994年(平成6年)初め、サンライズ社はマルヨシとバッグについてサブライセンス契約を締結し、マルヨシは、1994年5月展示会を開催し、販売を開始した(甲第25ないし30号証)。『インディアン』ブランド即ち、『インディアンロゴ』、『インディアン図形』、『ヘッドドレスロゴ』、『左向きのインディアンの図形』、「笑うインディアンの図形」(甲第30号証の2、同3)及び『モトサイクルロゴ』等は、衣類、帽子、バッグ等について、請求人が輸入販売し、又は、ライセンスに使用する商標として、1994年(平成6年)前半(本件登録商標の出願前)には、既に周知であった。マルヨシのバッグ及びサンライズ社の輸入にかかるTシャツ、トレーナー等及びサンライズ社の製造に係るTシャツ等は、1994年更に雑誌等で広告され(甲第33及び34号証)、『インディアン』ブランドは、衣類、バッグ、身飾品の分野において更に周知となった」、また、「本件商標と類似する『笑うインディアンの図形』からなる商標は、本件商標の出願当時、既に請求人のウェアに使用する商標として周知であった」旨主張している。
上記「インディアン」ブランドの中で、本件商標と「左右に垂らした髪に羽根飾りを付けた笑顔のインディアンの頭部の図形」部分において極めて酷似している、請求人の言うところの「笑うインディアンの図形」は、請求人の提出に係る証拠の甲第2号証の2、甲第30号証の2及び同第30号証の3に示されていることが認められる。
しかして、審判請求書における「証拠方法」によれば、甲第2号証の2は「Leila Dunbar著『Motorcycle collectibles With Values』」であると記載されており、この記載からすると該表題の著作物と推認できるが、「笑うインディアンの図形」がいかなる商品に、いかなる目的で付されているものか判断し得ないものである。
甲第30号証の2は「請求人の販売に係るトレーナーの写真」、甲第30号証の3は「請求人の販売に係るジャンパーの写真」であるところ、請求人の提出に係る証拠には商品の取引状態を示す証拠が含まれておらず、該商品の取引数量・取引地域等が不明であり、また、商品の宣伝広告の事実を示す証拠もないから、これらの証拠をもってしては、「笑うインディアンの図形」が、「トレーナー、ジャンパー」に使用されていたものと推認し得るとしても、本件商標の出願時において、取引者・需要者の間に広く認識されていたとまでは認め得ないところである。
また、本件商標は、「左右に垂らした髪に羽根飾りを付けた笑顔のインディアンの頭部の図形」よりなるところ、インディアンには多種の種族がおり、「インディアン」を描いた図形よりなるからといって、直ちにこれが全て「インディアン」の称呼・観念をもって取引に資されるとは限らないものというべきである。そして、本件商標は、笑顔の表情に固有の特徴をもって描かれているものということができるから、その固有の特徴を有する「左右に垂らした髪に羽根飾りを付けた笑顔のインディアンの頭部の図形」よりなるものとして把握・認識されるというのが相当であって、単に「インディアン」の称呼・観念をもって取引に資されるものとは言い難いものである。
そうとすれば、前記「笑ったインディアンの図形」以外で、請求人が衣服、帽子等についてその使用を主張する「インディアンロゴ」、「インディアン図形」、「ヘッドドレスロゴ」、「左向きのインディアンの図形」及び「モトサイクルロゴ」と本件商標とは、外観及び称呼・観念において十分に区別し得る非類似の商標であるといわざるを得ず、また他に両者を関連づけてみるべき理由も見出せない。
してみれば、商標権者が本件商標をその指定商品に使用しても、請求人又は請求人と関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあるとは認められない。
さらに、本件商標は、その構成自体が矯激、卑猥、若しくは差別的な印象を与えるような文字又は図形からなるものでなく、また、本件商標をその指定商品について使用することが社会公共の利益・一般道徳観念に反するものとはいえず、さらに、他の法律によってその使用が禁止されている等、公序良俗を害するおそれのある商標に該当するものとは認められない。
また、商標権者が本件商標を採択し商標登録を得た行為に不正の目的があったものと認め得る証拠は、見出すことができない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号及び同第19号に違反して登録されたものとはいえないから、同法第46条第1項の規定によりその登録を無効とすべきではない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本件商標

審理終結日 2002-06-07 
結審通知日 2002-06-12 
審決日 2002-06-26 
出願番号 商願平8-124802 
審決分類 T 1 11・ 222- Y (025)
T 1 11・ 22- Y (025)
T 1 11・ 25- Y (025)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 根岸 克弘 
特許庁審判長 涌井 幸一
特許庁審判官 中嶋 容伸
滝沢 智夫
登録日 1998-05-15 
登録番号 商標登録第4145017号(T4145017) 
代理人 佐藤 雅巳 
代理人 古木 睦美 
代理人 野原 利雄 

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