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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 111
管理番号 1063191 
審判番号 取消2001-30710 
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-09-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2001-06-27 
確定日 2002-07-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第1611119号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第1611119号商標(以下「本件商標」という。)は、「MORRIS」の欧文字を横書きしてなり、昭和55年1月31日登録出願、第11類「電気機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)」を指定商品として、昭和58年8月30日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証を提出している。
(1)本件商標は、その指定商品中、第11類「電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)」について継続して3年以上日本国内において使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
(2)乙第3号証ないし同第7号証の評価
(ア)納品書について
乙第3号証1、同第4号証1、同第5号証1、同第6号証1及び同第7号証1に示される納品書(控)には、本件商標「MORRIS」の記載もなくこれら納品書は、被請求人が、本件商標を本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において使用している事実があることを客観的に証明するものではない。
(イ)写真について
乙第3号証2、同第4号証2、同第5号証2、同第6号証2及び同第7号証2に示される写真は、いつ、どこで、誰が撮影したものであるか明確ではなく、これらの写真が直ちにそれぞれの納品書と結びつくとは到底考えられない。
(ウ)上記(ア)及び(イ)の証拠について
これらの証拠が、本件審判請求の登録前3年の期間内に本件商標が実際に使用されたことを示すとはいえない。これら納品書及び写真は故意に作ろうとすれば簡単に作ることができるものであり、信憑性にかけ、使用の事実を客観的に立証するものではない。
(3)被請求人による本件商標の使用について
仮に、これらの証拠が本件審判請求の登録前3年以内のものであったとしても、上記(イ)に示される包装箱は、需要者が商品を選択し終わった後で、最終的に需要者の手元に発送される際の包装箱と思われ、当該包装箱は流通過程におかれているものとは考えられない。このことは、被請求人自身、答弁書において「当然のことながら各納品書に記載の商品そのものの包装状態の再現は不可能」と述べていることからも明らかであり、流通過程に置かれているものであるなら「再現不可能」というようなことはあり得ない。
ところで、商標の自他商品識別機能等の諸機能は、商品が市場におかれた場合に発揮されるものであり、これらが発揮されることにより商標の保護対象たる業務上の信用が商標に化体するのである。とすると、当該「包装箱」は、商品が市場におかれ、需要者による商品の選択がすでに終わったあとに使用されるものであり、そのような「包装箱」に登録商標を付したとしてもそれは商標の自他商品識別機能等、商標の諸機能を発揮するとはいい難く、保護すべき業務上の信用も化体し得ない。
よって、そのような「包装箱」への「MORRIS」の使用が本件商標の使用といい得るのか否か甚だ疑問である。
(4)被請求人の使用に係る商品
被請求人提出の各証拠に示される「キセノン放電管」及び「石英ガラス管」等が、「電子応用機械器具」の範疇に含まれる「電子管」たる放電管にあたるのか疑問である。「キセノン」なる語を辞書でひくと、「キセノンランプ」なる語が示されているが(甲第1号証)、このことからすると「キセノン放電管」とは照明器具の範疇に属するもので、電子応用機械器具の範疇に属するとは思われない。
(5)まとめ
提出された証拠を総合的に見ても、被請求人は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者、通常使用権者のいずれかが、本件商標を、旧11類「電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)」について使用していることを証明していない。
被請求人は、例えばカタログ等の客観的な証拠により「電子応用機械器具」の範疇に属する商品についての本件商標の使用を立証すべきであって、提出された証拠は採用されるべきではない。

3 被請求人の答弁
請求人は、「審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする、」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第7号証(枝番号を含む。)を提出している。
(1)被請求人とその業務について
乙第2号証「会社経歴書」は、平成7年頃当時の被請求人によって作成されたものであり、同号証に示すように被請求人会社は、前記表示変更前の横浜市緑区に本社を持ち、埼玉県東松山市内に工場を持って営業しており、当時主として写真撮影用ストロボの他に電子管よりなる非常点滅誘導灯、センサー用照明灯の電子部品を製造販売していたが、それ以後徐々にキセノン管、石英ガラス管その他の単体の電子部品の製造販売のウエイトを高くしながら現在に至っているものである。
そしてこれらの電子部品には、既に述べたようにキセノン管、石英ガラス管及びこれらと制御用IC等を組み込んだ電子応用機器が含まれている。
(2)本件商標の使用事実
(ア)本件商標の使用態様
一般にICその他の業務用電子部品は印刷や刻印による作業能率の低下やコストアップを避けるために、各部品に直接メーカー名や商標を表示する事は少ないが、被請求人においても市場に流通して店頭販売される一部の商品を除いては同様に部品に直接商標を表示することは行わず、乙第3号証〜同第7号証2の写真に示すように、納品用の包装箱に「MORRIS」の商標と納品する個々の商品の型番を表示しており、この使用形態は被請求人の創業開始以降現在まで継続している。
(イ)商標が使用されている商品
被請求人は、本件商標の指定商品「電子応用機械器具(医療用機械器具に属するものを除く)」に含まれる商品を、上述した「MORRIS」の商標を付した包装箱に詰めて出荷、納品しており、乙第3号証〜同第7号証1は1998年7月22日〜2001年1月19日迄の間に被請求人会社が同社工場(埼玉県)より、注文主に電子部品を納品した事実を示している。また乙第3号証〜同第7号証2は納品した際の商品とその包装形態を被請求人において再現した状態の写真である。当然のことながら各納品書に記載の商品そのものの包装状態の再現は不可能であるため、同商品と同型の商品及び包装箱を用いて再現、撮影した。
(3)使用の事実について
(ア)乙第3号証について
同号証1に示す商品「胴衣灯LF22用点滅装置」は海中に放出された人が着用する救命胴衣に取り付けるキセノン放電管を供えた点滅表示用の装置で、その商品外観と包装箱及び包装状態は、本件商標及び商品の型番LF-32及びLF35の表示と共に同号証2の写真に示すとおりである。ちなみに乙第3号証1の納品書は、本件審判請求の登録日(平成13年8月1日)前3年の始期である1998年8月1日より10日前の1998年7月22日であるが、商品の販売は対価を得て商品を他の者に移転することであり、被請求人の日本船燈株式会社への販売の完了は、請求書が10日〆で支払いが翌月10日との取り決めにより、上記納品書による納品は、本件審判請求の登録前3年内の販売であると解されること及び同商品の製造販売が1998年8月1日以前より行われていることを示すために敢えて証拠提出したことを念のため申し添えるものである。
(イ)乙第4号証について
同号証1は、2000年6月28日付の納品書で、型番OS-12120Mとともにキセノン管放電管(Xe放電管)の記載があり、同号証2には上記形番及び本件商標が表示された包装箱に、キセノン放電管が収容された荷造り状態が示されている。
(ウ)乙第5号証について
同号証1は2000年7月22日付の納品書で、QS-1012DMの形番と共に本件指定商品に含まれる石英ガラス管の表示があり、同号証2には本件商標と上記形番が表示された包装箱に石英ガラス管が収容された荷造り状態が示されている。
(エ)乙第6号証について
同号証1は2000年9月29日付納品書で、型番6103-115Xで示され、キセノン管を装備しゴム印製造機(スタンパー)用の部品として使用される「フラッシュ工房」なる商品が記載され、同号証2は同型番及び本件商標が表示された包装箱に、電子部品である上記フラッシュ工房が収容された荷造り状態が示されている。
(オ)乙第7号証について
同号証1の納品書(2001年3月19日付)には、上記「フラッシュ工房」が小型かつ高性能に改良された「新小型フラッシュ工房B」の商品が「230V用電子部品」として示されており、同号証2には本件商標と型番6505とが表示された包装箱に上記「新小型フラッシュ工房B」が収容された荷造り状態が示されている。
(4)その他の証拠の補充の用意について
上記乙第3号証〜同第7号証によって、本件審判請求の登録前3年以内に被請求人が、本件商標をその指定商品について使用した事実があることが明らかであるが、被請求人は上記乙第3号証〜同第7号証に示される商品、包装箱、商品と型番その他の関連につき更に詳細に立証する必要があれば、会社創業以来被請求人会社の代表取締役である牛山栄治を証人として申請する用意がある。また同様に必要なら乙第3号証〜同第7号証の写真に示される各商品の現物を検証物として提出する用意があることを念のため申し添える。
(5)まとめ
以上要するに、本件商標はその指定商品である電子応用機械器具中の少なくとも電子管、電子回路につき本件審判請求の登録前3年の間に使用された事実が明らかであり、当該期間中の不使用を理由とした本件審判請求は理由がない。

4 当審の判断
被請求人の提出に係る乙第1号証ないし同第7号証から、以下の事実を認めることができる。
(1)乙第1号証は、「登録名義人の表示変更登録申請書」の平成13年8月30日付け提出の写しであり、これより商標権者の住所が「神奈川県横浜市緑区東方町131番地」より「神奈川県横浜市都筑区東方町131番地」に行政区画の変更がされていることが認められる。そして、本件商標の商標権者については、当庁備え付けの登録原簿において、平成13年9月26日に登録名義人の表示変更の登録がなされたことにより、本件商標の被請求人と住所が同一のものとなったことが認められる。
(2)乙第2号証は、被請求人の会社経歴書であり、本社の所在地を前記「神奈川県横浜市都筑区東方町131」、工場を「埼玉県東松山市田木字赤城149」とするものである。
(3)乙第3号証ないし同第7号証は、使用に係る商品の納品書(控)であり、被請求人の名称と前記工場の住所が記載され、該納品書(控)の日付は、本件審判請求の登録前3年以内の日付(但し、乙第3号証の納品書については、本件審判請求の登録前3年以前の日付である。)であることが認められる。また、使用に係る商品が包装箱に入った状態を撮影した写真であり、該包装箱の正面には、本件商標と同一の綴りよりなる「MORRIS」の文字及び納品書の品名欄に記載されている機種名(型番)が表示されている。
そして、この表示されている「MORRIS」の文字は、本件商標と社会通念上同一と認められるものである。
また、使用に係る商品として「胴衣灯LF22用点滅装置」(乙第3号証)、「キセノン放電管」(乙第4号証)、「石英ガラス管」(乙第5号証)、「キセノン管を装備しゴム印製造機用の部品であるフラッシュ工房」(乙第6号証)、「前記ゴム印製造機用の部品の改良型である新小型フラッシュ工房B」(乙第7号証)を挙げている。
(4)前記(1)ないし(3)で認定した事実によれば、被請求人は、本件取消請求に係る指定商品中の「電子応用機械器具」に属する「放電管」に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、日本国内において本件審判請求の登録前3年以内に使用していたと認め得るところである。
(5)請求人の主張
請求人は、納品書(控)には、本件商標「MORRIS」の記載もなくこれら納品書は、被請求人が本件商標を本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において使用している事実があることを客観的に証明するものではなく、写真は、いつ、どこで、誰が撮影したものであるか明確ではなく、これらの写真が直ちにそれぞれの納品書と結びつくとは到底考えられないから、これらの証拠が、本件審判請求の登録前3年の期間内に本件商標が実際に使用されたことを示すとはいえないと主張し、また、包装箱は、需要者が商品を選択し終わった後で、最終的に需要者の手元に発送される際の包装箱と思われ、当該包装箱は流通過程におかれているものとは考えられないから、本件商標の使用といい得るのか否か甚だ疑問であり、信憑性にかけ、使用の事実を客観的に立証するものではない旨主張している。
しかしながら、該納品書(控)に必ずしも、本件商標が表示されていなければならないものではなく、また、該納品書(控)を用いて取引に当たることは、格別珍しいことではなく、むしろ取引の実際においては普通に用いられているものといえるものである。そして、該納品書は、被請求人の作成に係るものであり、そこには被請求人の名称及び住所、注文主(購入者)の名称、本件商標の使用に係る商品名と機種名(型番)、数量、定価等が記載され、かつ、その機種名(型番)も使用に係る商品が包装箱に入った状態を撮影した写真の正面に表示されている機種名(型番)と符合するものであることを考慮すれば、少なくとも乙第4号証からは、電子応用機械器具の範疇に属する「放電管」に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を包装箱に付した状態で取引に資されていたものと推認し得るものである。
さらに、上記写真において、撮影年月日、撮影者等の記載がないとしても、これは、本件商標の使用商品について、実際に取引があったことを示す前記納品書に記載された機種名(型番)と同一の商品に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を表示した包装箱であることを証明するための、本件商標の使用状態の写真というべきものである。
そして、乙第3号証ないし同第7号証で示された取引書類全体を通じて、本件商標が本件審判請求の登録前3年以内に、被請求人により取消に係る指定商品「電子応用機械器具」中の「放電管」に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、日本国内において本件審判の請求の登録前3年以内に使用していたことについて、請求人の主張する不自然であるとするものは見出せない。
したがって、請求人の主張は失当といわざるを得ない。
(6)以上のとおりであるから、本件商標についての登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。
審理終結日 2002-05-28 
結審通知日 2002-05-31 
審決日 2002-06-18 
出願番号 商願昭55-6117 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (111)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川崎 義晴 
特許庁審判長 茂木 静代
特許庁審判官 瀧本 佐代子
小林 和男
登録日 1983-08-30 
登録番号 商標登録第1611119号(T1611119) 
商標の称呼 モリス、モーリス 
代理人 青山 葆 
代理人 樋口 豊治 
代理人 西津 千晶 
代理人 大西 育子 
代理人 河野 誠 

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