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審決分類 審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効としない Z18
管理番号 1059804 
審判番号 審判1999-35524 
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-07-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-09-24 
確定日 2002-05-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第4213430号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4213430号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に表示したとおりの構成よりなり、平成9年4月1日に出願され、第18類「 かばん類,袋物,傘」、第22類「綿繊維,その他の原料繊維,衣服綿,布団袋,布団綿」、第23類「綿糸類,混紡綿糸,綿より糸,縫い糸,その他の糸」、第24類「綿織物類,混紡綿織物,毛綿文織物,その他の織物,メリヤス生地,タオル,手ぬぐい,ハンカチ,ふろしき,その他の布製身の回り品,ふきん,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製壁掛け,テーブル掛け」、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,マフラー,その他の被服」、第26類「衣服用き章(貴金属製のものを除く。),衣服用バッジ(貴金属製のものを除く。),ワッペン」、 第27類「敷物,壁掛け(織物製のものを除く。)」を指定商品として及び第35類「広告,経営の診断及び指導,市場調査,商品の販売に関する情報の提供」を指定役務として、同10年11月20日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第7号証を提出した。
1 請求の理由
(1)本件商標は、平成9年4月1日付で多区分出願されたもので、四角い二重枠線の上段に「WEST INDIAN SEA ISLAND」、また同枠線の右側には「COTTON」、同枠線の下段には「ASSOCIATION」の各文字を配置してなり、その構成中には「WEST INDIAN SEA ISLAND COTTON ASSOCIATION」なる名称を明瞭に含んでいるものである。
この「WEST INDIAN SEA ISLAND COTTON ASSOCIATION」は、甲第1号証ないし同第3号証にあるように、現存する法人であり、イギリス国における登録第772362号商標、同第772363号商標及び同第772364号商標の権利主体でもある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものである。
さらに、「WEST INDIAN SEA ISLAND COTTON ASSOCIATION」は、被請求人である「協同組合西印度諸島海島綿協会」に対し、本件商標に関する出願ないし登録について何の承諾もしていないため、商標法第4条第1項第8号のかっこ書にも該当しない。
(2)また、本件商標中には「海島綿」を意味する「INDIAN SEA ISLAND COTTON」の文字を有してなるので、その指定商品によっては、品質誤認等を生じさせるおそれがあるため、商標法第4条第1項第16号にも違反して登録されたものである。
したがって、本件商標の登録は、商標法46条第1項第1号の規定により、無効とされるべきものと確信する。
2 答弁に対する弁駁
(1)請求の理由(1)についての答弁に対して
(イ)請求の理由(1)の第2節の主張は争うとのことである。その理由は請求人が現存する法人であることが立証されていないというにある。
甲第1号証ないし同第3号証は、英国特許庁により1999年3月16日付けで発行された英国商標の登録原簿の抄録であって、当該商標が1957年12月18日付けをもって登録され、2006年12月18日まで有効に存続すること、商標権者が「ウエスト インディアン シー アイランド コットン アソシエーション」であること等々を証明するものである。
甲第1号証ないし同第3号証を補強するため、「ウエスト インディアン シー アイランド コットン アソシェーシヨン」が現存する法人であることを証明するアンティグア・バーブーダ国の2001年3月30日付け及び同年7月3日付け証明書(甲第4号証及び同第5号証)をここに補充する。
ここで、「ウエスト インディアン シー アイランド コットン アソシェーション」の設立地および住所は「アンティグア(現在のアンティグア・バーブーダ」であって、現在の登記上の住所及びアンティグアにおける送達住所は「アンティグア セント・ジヨンズ・ストリート ロング・ストリート 36 レイク・アンド・ケンティシュ内」である。また、バルバドスにも支店があり、そのあて名は「バルバドス クライスト・チヤーチ フェアリー・ヴァレー・プランテイシヨンザ・バルバドス・アグリカルチュラル・アンド・マーケティング・コーポレーション」である。なお、バルバドス国においても外国法人として登記してある(甲第6号証)。
(ロ)答弁書第1頁4項における、「英文字『WEST INDIAN SEA ISLAND COTTON ASSOCIATION』は…商標登録を得るに当たり請求人の承諾を得る必要のない単なる品質表示用語である」との被請求人の主張は首肯し難い。「西印度諸島海島綿協会(WEST INDIAN SEA ISLAND COTTON ASSOCIATION)」の名称であることは、被請求人目身が依拠する乙第3号証からも明らかである(同号証3頁目の右欄1〜11行目参照)。さらに、被請求人は、答弁書(1)6項において、甲第1号証ないし同第3号証に関し、「3件の英国商標登録の存在とそこに請求人と同一名義の表示が記載されている事実」を認めている。請求書記載の請求人住所と甲第1号証ないし同第3号証に示されている権利者住所との相違は、前者がバルバドスにおける住所であるのに対して後者はアンティグアにおける住所であるというに過ぎない。
被請求人は、本件商標が「WEST INDIAN SEA ISLAND COTTON ASSOCIATION」なる名称を明瞭に含んでいることを認めている(答弁書第1頁3行目)。一方、乙第3号証3頁目の右欄1〜11行目の記載より、「WISICA」すなわち「WEST INDIAN SEA ISLAND COTTON ASSOCIATION」が英王室直属の協会の下部組織としての西印度諸島海島綿協会(つまり、被請求人にとって他人)の名称であると知っていたことを被請求人が自ら認めている。
(ハ)被請求人は「WEST INDIAN SEA ISLAND COTTON ASSOCIATION」が被請求人の英文団体名称であると主張している。しかし、被請求人の名称は「協同組合西印度諸島海島綿協会」であるから、その英文名称は、「CO‐OPERATIVE WEST INDIAN SEA ISLAND COTTON ASSOCIATION」あるいは「CO‐OPERATIVE WEST INDIAN SEA lSLAND COTTON ASSOCIATION JAPAN PROJECT」とすべきところである(乙第4号証及び同第5号証参照)。結局のところ、自己の名称であると主張したいのかもしれないが、仮に自己の名称であったとしても、商標法第4条第1項第8号の規定の取扱い上、他人の名称と同一であるときはその他人の承諾を得なけれはならないことに変わりはない。
(2)請求の理由(2)の答弁に対して
答弁書第3頁の(2)6項における被請求人の主張「『西印度諸島海島綿』ないしは『WEST INDIAN SEA ISLAND COTTON』自体は単に商品の品質や産地を表示する表現に過ぎず、独占的保護法益を有しない」は、失当といわざるを得ない。海島綿あるいは「SEA lSLAND COTTON」は西印度諸島産の綿を意味するため(甲第7号証)、西印度諸島産の綿以外の商品について使用すると商品の品質の誤認を生じさせるおそれがある。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び弁駁に対する答弁を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第5号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)請求の理由(1)について
(イ)甲第1号証ないし同第3号証は、3件の英国商標登録証の写であると認められ、何れも請求人が現存する法人であることを証明する能力を有しない。3件の英国商標登録の存在とそこに請求人と同一名義の表示が記載されている事実は認めるが、登録名義人が請求人と同一人であるかどうかは、それぞれの住所が異なるので、不知とする。
なお、因みに請求人の住所は、「バルバドス クライストチャーチ グレーメホール ザ バルバドス アグリカルチュラル デベロップメント コーポレーション」と表示されているが、被請求人の認識する限り、このような住所は存在しない。
また、本件登録が、商標法第4条第1項第8号の規定に違反している事実の具体的指摘が何もないにもかかわらず、「よって」と短絡的に結論付けを試みる請求人の主張は、本件審判請求の理由のないことを裏付けるものである。
(ロ)被請求人は、日本国および極東地域において、高品質で純正な西インド諸島海島綿を取扱う業者を統括管理することにより偽物の市場への侵入を阻止し、常に純正な海島綿を消費者に提供することを目的として、1980年2月1日に「協同組合西印度諸島海島綿協会(英文名「WEST INDIAN SEA ISLAND COTTON ASSOCIATION」)」の名義のもとに設立され(乙第1号証)、そして、純正な海島綿であることを象徴する標識として本件商標を選択し、組合の設立以来、協会に所属する組合員および賛助会員に使用させてきた(乙第2号証及び同第3号証)。つまり、本件商標は、純正な現地産海島綿であることを証明する象徴として機能し、日本国において多くの会員により守られてきた品質証明商標である。
そして、被請求人は、同英文字に関して、答弁書1頁において「そもそも、英文字『WEST INDIAN SEA ISLAND COTTON ASSOCIATION』は被請求人の団体名称である『西印度諸島海島綿協会』の英文名称であり1980年2月1日以来20年間以上に亘り被請求人によって公然と使用されているものであって、商標登録を得るに当たり請求人の承諾を得る必要のない単なる品質表示用語である。」とも述べた。
(ハ)優れた原産地品を世界の市場に普及させ、かつ市場を守るためにその拠点となる地域に同種同名の団体が形成され、独自にまたは連携して活動する例は、以下に例示するまでもなく産業界に多く存在する。
a.Interntional Mohair Association
b.The woolmark Company(旧国際羊毛事務局)
c.IWS Nominee Company Limited
d.日本エキストラファインウール協会(Japan Extra Fin e Wool Association)
e.英国羊毛公社(British WooI Marketing Board)
(ニ)被請求人は日本の、請求人は欧米の地域にと互いに特定の管理地域において、西インド諸島産の海島綿の市場開発および品質維持を行う共通の目的のもとに設立され、それぞれ責任を果たしているのであって、「西印度諸島海島綿」ないしは「WEST INDIAN SEA ISLAND COTTON」自体は単に商品の品質や産地を表示する表現に過ぎず、独占的保護法益を有しないものである(商標法第3条第1項第3号、不正競争防止法第11条第1項第1号)。例えば、香港での商標登録出願時に「CERTIFIED BY WEST INDIAN SEA ISLAND COTTON ASSOCIATION(INC)」の文字については権利化できないので削除して出願手続をしたほうがよいとの現地代理人の助言(乙第4号証)に従い、これらの文字を削除したかたちで登録を受けた経緯がある(同第5号証)。
(2)請求の理由(2)について
被請求人と請求人との存在も前記と同類型のものであって、先に述べた通り1980年2月1日の組合結成以来20年間に亘り、37社に及ぶ組合員および賛助会員の支持のもとに、本件商標を品質保証の象徴として使用して需要者の信頼に応えているのであって、請求人の主張する商品の品質表示の誤認等あり得ない。
2 弁駁に対する答弁
(1)請求理由(1)ついての弁駁に対して
(イ)請求人が弁駁書に甲第4号証と同第5号証として添付して提出した法人証明書の写をみると、先ず同第4号証の法人証明書の写に記載される法人名は「WEST INDIAN SEA ISLAND COTTON ASSOCIATION(INCORPORATED)」であり、次に同第5号証の法人証明書の写に記載される法人名は「WEST INDIAN SEA ISLAND COTTON ASSOCIATIONINC.」である。
(ロ)そこで、改めて甲第1号証ないし同第3号証の英国商標登録原簿の写を精査してみると、同第3号証の英国商標登録原簿の写には商標登録権利者の表示として、「WEST INDIAN SEA ISLAND COTTON ASSOCIATION INCORPORATED」の表示がみられ、したがってその訳文として「ウエスト インディアン シー アイランド コットン アソシエーション」と表示されていることは偽りであることが判明致した。
(ハ)請求人の主張および立証の試みを整理すると、請求人の法人名称は、「〜ASSOCIATION」、「〜(INCORPORATED)」、「〜INC.」並びに「〜INCORPORATED」の4つの形態を持つことになり、そのうち請求書の請求人の表示と整合する名称は「〜(INCORPORATED)」である。
そして、請求人の所有に係る3つの英国登録商標は「〜(INC.)」の表示を含むものとなっている。
(ニ)商標法第4条第1項第8号は、「他人の肖像又は他人の氏名若しくは 名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)」と規定しており、「〜ASSOCIATION」が「〜(INCORPORATED)」の著名な略称であることの請求人の主張も立証もない。したがって、本件商標の登録につき請求人の承諾を得なければならない理由はない。
(2)請求理由(2)ついての弁駁に対して
(イ)請求人の提出に係る甲第7号証の英和辞典の記述からも理解できることであるが、「SEA ISLAND COTTON」とか「WEST INDIAN SEA ISLAND COTTON」の表現は良質な綿花を象徴する用語として世界中で使用されるものであり、特定人が独占し得るものではない。
(ロ)そして、良質な海島綿花が真正なものであることを業界を代表して保証する機関として被請求人のような「ASSOCIATION」存在し、参加組合員に保証の証として使用させる標識が本件商標なのであるから、本件商標は証明商標と団体商標の機能を有し、請求人の主張するような産地や誤認を生じさせることは全くあり得ず、むしろ、これを防止するための商標なのである。
(ハ)このような目的と機能をもった商標は、請求人も被請求人も、さらに別な第3者(乙第3号証)もそれぞれが営業活動する商圏内において使用するために選択し、商標登録し、かつ永年に亘り市場において何等の混乱もなく使用されてきたものであって、請求人が永年に亘って築かれた商圏を越えての営業を目論む結果として、不可解な無効審判請求に及んだものと思われる。

第4 当審の判断
(1)本件商標が商標法第4条第1項第8号に該当するかについて
本件商標は、前記のとおり、海、島影、椰子の木、上昇する太陽と雲を組み合せた図形の上部に英文字「SEA ISLAND」を表示し、その下部に「WISICA」の文字を配し、さらに、これらの構成要素全体を矩形枠体で取囲み、その左側枠体に「CERTIFIDE BY」の文字を、上部枠体に「WEST INDIAN SEA ISLAND」の文字を、右側枠体に「COTTON」の文字を、下部枠体に「ASSOCIATION」の文字をそれぞれ配置をしてなる構成のものである。
そして、これら矩形枠体中の文字は左から右回りに順に「CERTIFIDE BY WEST INDIAN SEA ISLAND COTTON ASSOCIATION」と表してなるものであって、これより「西印度諸島海島綿協会の証明」なる、まとまった意味合いが容易に理解され、それ自体が構成全体より独立しても識別標識としての機能を果たすものといえる。
また、「CERTIFIDE BY」の部分は、「〜証明」の意味を有し、指定商品との関係では、この商標が証明商標であることを理解させるにとどまるから、商標としての要部は、「西印度諸島海島綿協会」なる意味合いの「WEST INDIAN SEA ISLAND COTTON ASSOCIATION」の文字にあるというのが相当である。
そうすると、本件商標は、請求人が主張する、「WEST INDIAN SEA ISLAND COTTON ASSOCIATION」の文字が商標の要部として含むものと認められる。
ところで、商標法第4条第1項第8号は、「他人の名称」及び「他人の名称の著名な略称」等は登録できないと規定し、ただし、その名称が出願の時に該当しないものについては適用しないものである(商標法第4条第3項)。
そこで、本件商標中の「WEST INDIAN SEA ISLAND COTTON ASSOCIATION」と、請求人の名称の「ウエスト インディアン シー アイランド コットン アソシエーション(インコーポレーテッド)」(その英文名称は、甲第3号証ないし同第6号証によれば、「WEST INDIAN SEA ISLAND COTTON ASSOCIATION INCORPORATED(他に「〜ASSOCIATIONINC.」等の表示がある)」と表示している。なお、後記のとおり住所が一致しておらず同一法人か確認し得ない)を比較するに、両者は、一般に「株式会社」の表示と認識される「INCORPORATED(インコーポレーテッド)」等の有無に差があるから、この場合の本件商標は、他人の名称に当たらない。
しかしながら、請求人の名称中の「INCORPORATED(インコーポレーテッド)」が略される場合は一致し、その場合は「WEST INDIAN SEA ISLAND COTTON ASSOCIATION」の著名性が問われることとなる。
そこで、「WEST INDIAN SEA ISLAND COTTON ASSOCIATION」が請求人の著名な略称であるかを提出の証拠よりみるに、甲第1号証ないし同第6号証は、イギリス国における商標の登録原簿の登録第772362号商標、同第772363号商標、同第772364号商標の抄録及び会社存続証明書、資産状態証明書、外国会社登記証書と認められるが、これに記載されている法人名と請求書に記載された法人名の住所が一致していないので同一法人かどうかが、確認し得ないのみならず、請求人が如何なる法人か等を示す会社の概要等、その企業活動等が不明であると共に、請求人略称が著名であることを具体的に証拠として一切提出されていないものである。尤も、被請求人の提出にかかる乙第3号証の「WISICA NEWS」をみると後記認定のとおり「WISCA」または「WEST INDIAN SEA ISLAND COTTON ASSOCIATION」は、1750年に創立された英王室直属の西印度諸島協会の下部組織なる記載がみられ、請求人もこの点を指摘するが、この下部組織と請求人との関係及びその著名性を具体的に示していないところであるから、この証拠のみによっては、請求人の名称が、直ちに本件商標の出願時に我が国において著名であるとの認定をするには十分なものとはいえないといわざるを得ない。
しかして、同第3号証(「WISICA NEWS」1980年創刊号」)によれば以下の事実を認めることができる。
(イ)同ニュース誌の表紙には、本件商標及び「WEST INDIAN SEA ISLAND COTTON」の文字が表示され、また、裏表示には、これらの他に「西印度諸島海島綿協会」及びその住所及び電話番号が表示されている。(ロ)「SEA ISLAND COTTONのQ&A」の見出しの下の頁において、「西印度諸島海島綿」が高級素材で希少性があることの説明の他に、その生産量の殆どが英国向けに積み出されたが、1976年に日本への輸出が許可され、現在海島綿から糸を紡ぐライセンスを持っているのは、英国のカーリントン・ビエラ社と、日本の「同興紡績」の2社であり、国内でも海島綿を使用した商品には品目ごとにライセンスを与え、事前に協会の品質管理基準にパスした商品のみ本件商標が使用される旨徹底していることが記載されている。(ハ)「WISCAとは」は「英王室直属の西印度諸島協会の下部組織」、また、「西印度諸島海島綿協会」(WEST INDIAN SEA ISLAND COTTON ASSOCIATION)は、1750年に創立された英王室直属の西印度諸島協会の下部組織として昭和7年に設立したことが記載されている。(ニ)協会は、海島綿の作付け、耕作、収穫から梱包、さらには出荷に至るまで一貫した管理をします。さらに、肌着から靴下アウターウェアー寝装品に至る35品目30社が結束して、「協同組合・西印度諸島海島綿協会」を組織しています。原則的に1品目1社。しかも厳重な資格審査をパスしたもののみが、ロンドン協会本部から製品化のライセンスを与えられる旨、が記載されている。(ホ)「007なんかに負けてたまるか」の見出しの下の頁の下欄に、本件商標に酷似した標章、即ち本件商標の構成中の「ASSOCIATION」の文字を「ASSOCIATION(INC.)」と表示し、さらに本件商標の矩形枠体の上部に「WEST INDIAN」と「SEA ISLAND COTTON」を2行に表示した文字をそれぞれ加えた構成よりなる標章を表示し、その右側に「世界最高級の証明です、海島綿(シーアイランドコットン)製品には、世界共通に図のような織ネームがついています。これは、カリブ海に浮かぶ6つの島だけで収穫され、古くから英国王室に籠用されてきたという、いわば、“世界最高級品”としての証明であります。(下げ札にも図のような“WEST INDIAN SEA ISLAND COTTON”のマークが必ず表示されています。お買い求めの際にお確かめ下さることをお奨めします。)」と記載し、そして下げ札に用いられる標章として「横長長方形内に前記標章及び『WEST INDIAN』と『SEA ISLAND COTTON』の文字を2行に表した文字からなる標章」が表示されている。
そうすると、被請求人においては、「海島綿(シーアイランドコットン)製品」には、上記のような「世界共通に使用されている標章」の存在が認識されていたものと推認される。そして、その「世界共通に使用されている標章」は、本件商標に酷似する標章であることが認められる。
しかしながら、「世界共通に使用されている標章」は、上記認定にとどまるものであって、請求人においても具体的にどのように関係しているものか等を立証するところがないこと前示のとおりで明らかでなく、結局、本件商標は、請求人の名称ないしその著名な略称を含んでなるものということはできない。
一方、乙第1号証ないし同第3号証及び被請求人の主張の趣旨によれば、被請求人は、高品質で純正な西インド諸島海島綿を取扱う業者を統括管理することにより偽物の市場への侵入を阻止し、常に純正な海島綿を消費者に提供することを目的として、1980年2月1日に「協同組合西印度諸島海島綿協会」の名義のもとに設立されたことが認められる。そして、本件商標は、同協会を設立以来、純正な西印度諸島海島綿であることを証明するための識別標識として協会に所属する37社の組合員および賛助会員に使用させる団体商標であって、20年近くの年月に亘り、使用してきたものと認められる。そして、被請求人においては、同人の英文名称が「WEST INDIAN SEA ISLAND COTTON ASSOCIATION」)であること証する書証を提出していないが、それと実質的に同一で、被請求人の「協同組合」を省略した「西印度諸島海島綿協会」の名称が使用されており、組合成立から出願の時点までのこの間をもって、取引者、需要者にも、本件商標は、被請求人に係る「西印度諸島海島綿」の証明商標と理解、認識され、他人の名称ないしその著名な略称を含むものとは理解・認識されていないというのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しないものである。
(2)本件商標が商標法第4条第1項第16号に該当するかについて
本件商標の構成中の商標としての要部である「WEST INDIAN SEA ISLAND COTTON ASSOCIATION」の文字部分には、確かに「西印度諸島海島綿」を表す「WEST INDIAN SEA ISLAND COTTON」の文字を含むものであるが、この部分は前記認定のとおり「西印度諸島海島綿協会」なる協会の名称を表示したものと理解されるものであり、同協会は、商品「西印度諸島海島綿」を専ら扱うものということができる。
そして、本件商標は、その目的が、「西印度諸島海島綿」を証明する商標として採用されているものであり、さらに、海島綿から糸を紡ぐライセンスを持つのは日本では同組合員の「同興紡績」の1社であり、海島綿を使用した商品には品目ごとにライセンスを与え、事前に協会の品質管理基準にパスした商品のみ本件商標が使用されていること、また本件商標は、日本国において多くの会員により純正な現地産海島綿であることの品質証明商標として守られてきたこと前記のとおりであるから、これを「西印度諸島海島綿」以外の指定商品に使用することはあり得ず、商品の品質誤認は生じるおそれはない。
以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第16号に違反して登録されたものでないから、同法第46条第1項第1号により無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本件商標

審理終結日 2001-11-20 
結審通知日 2001-11-26 
審決日 2001-12-20 
出願番号 商願平9-180952 
審決分類 T 1 11・ 23- Y (Z18)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井岡 賢一 
特許庁審判長 三浦 芳夫
特許庁審判官 滝沢 智夫
中嶋 容伸
登録日 1998-11-20 
登録番号 商標登録第4213430号(T4213430) 
商標の称呼 サーティファイドバイウエストインディアンシーアイランドコットンアソシエーション、シーアイランドウイシカ、ウイシカ、ダブリュウアイエスアイシイエイ、シーアイランド、ウエストインディアンシーアイランドコットンアソシエーション、ウエストインディアンシーアイランドコットン、ウエストインディアンシーアイランド 
代理人 浜田 治雄 
代理人 城村 邦彦 
代理人 白石 吉之 
代理人 田中 秀佳 
代理人 江原 省吾 

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