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審決分類 審判 一部無効 称呼類似 無効としない Z010332
審判 一部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Z010332
管理番号 1058565 
審判番号 無効2000-35662 
総通号数 30 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-06-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-12-08 
確定日 2002-04-26 
事件の表示 上記当事者間の登録第4360110号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1.本件商標
本件登録第4360110号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲(A)に示すとおり、商標の構成を横書きした「オーブス」の片仮名文字とし、指定商品を第1類「化粧品原材料水,農業用原材料水,工業用原材料水,食品用原材料水,その他の水」、第3類「化粧品,洗剤」及び第32類「鉱泉水,その他の清涼飲料,果実飲料,ビール,飲料用野菜ジュース,乳清飲料」として、平成11年2月8日に登録出願、平成12年2月10日に設定登録されたものである。

第2.請求人の引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する商標は、次の(1)及び(2)に示すものである(以下、まとめて「引用各商標」という。)。
(1)別掲(B)に示すとおり、商標の構成を横書きした「オーブ」の片仮名文字とし、指定商品を第4類「せつけん類(薬剤に属するものを除く)歯みがき、化粧品(薬剤に属するものを除く)香料類」として、平成3年9月13日に登録出願、平成6年5月31日に設定登録された登録第2671275号商標(以下、「引用商標1」という。)。
(2)別掲(C)に示すとおり、商標の構成を上下二段に横書きした「Aube」の欧文字と「オーブ」の片仮名文字として、指定商品を第3類「せっけん類,植物性天然香料,動物性天然香料,合成香料,調合香料,精油からなる食品香料,薫料,化粧品,歯磨き」として、平成4年7月30日に登録出願、平成10年12月25日に設定登録された登録第4224830号商標(以下、「引用商標2」という。)。

第3.請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録は、その指定商品中、第3類『化粧品、洗剤 』についての登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、別表1及び証拠方法として甲第1号証ないし甲第48号証(甲第1号証の2ないし甲第3号証の2は、それぞれ「甲第1号証ないし甲第3号証」と読み替えた。)を提出している。
〈請求の理由〉
本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号の規定に該当するものであって、商標法第46条第1項第1号の規定により、その登録は無効とされるべきものである。以下にその理由を述べる。
(1)商標法第4条第1項第11号について
(a)本件商標と引用各商標の比較
本件商標と引用各商標の構成は前記のとおりであるから、本件商標からは「オーブス」の称呼を、引用各商標からは、いずれからも「オーブ」の称呼を生ずるのを自然とする。
この「オーブス」の称呼と引用各商標の称呼は、字面上からも一見して明らかなように最終音に「ス」音の有無の差異を有するのみである。
一般に最終音の「ス」音は、舌端を前硬口蓋に寄せて発する無声摩擦音であって極めて弱く響く音である。このような無声摩擦音であるところの「ス」音の有無の差異は、格別の事情を有さない限り、聴者にこれを明瞭に聴取せしめるのはこのうえなく難しいことである。
これは、本件商標にあってもそのまま当てはまることであって、しかも本件商標の場合は、「オーブ」という3拍音に続く最終音として位置するのでなおさらのことである。
このことは、本件商標に対する登録異議申立をした際にも十分に述べた。実際に、本件商標と引用各商標とは、その称呼を明瞭に区別すべき程の語調、語感の相違はない。
ちなみに両商標の称呼を英語又はフランス語の読みに従って称呼し、これを発音記号で表せば、本件商標は「o:bs」であり、引用各商標は「o:b」である。差異音である「s」は摩擦音であるところから弱音であること明白であり、しかも最終音に位置するところから、両商標は「o:b」を共通にして、かつ語調、語感を共通にする。当然ながら「o:b」における抑揚も同じである。
したがって、本件商標と引用各商標とが時と所を異にして称呼された場合、聴者はこれを明確に聴別することは至難の業である。このことは多くの審決例でも認めている。
さらに、本件商標の称呼を引用各商標の称呼と識別することの困難性は、引用各商標の著名性にもある。
以上のとおり、本件商標は引用各商標に称呼において類似する商標である。
(b)指定商品の対比
本件商標に係る指定商品のうち、「化粧品、洗剤」は、引用商標1に係る指定商品中「化粧品(薬剤に属するものを除く)、せっけん類(薬剤に属するものを除く)及び引用商標2に係る指定商品中「化粧品、せつけん類」とそれぞれ同一又は類似である。
してみると、本件商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
(a)引用各商標の著名性について
「オーブ」「Aube」が化粧品に使用され、需要者や取引者に広く知られている事実を以下に説明する。
請求人は、本件商標の出願前より今日まで「オーブ」又は「Aube」の文字を商品の包装用容器に表示して継続して販売しており、多くの広告媒体を利用して広告宣伝に努めている。
広告宣伝は主としてテレビ、雑誌を通して行っており、その広告宣伝の具体的な幾つかを甲第5号証ないし甲第48号証により示す。
そして、甲各号証に示されるように、請求人はテレビや雑誌を媒体として多量の広告宣伝を行ってきた結果、「オーブ」の名は需要者や取引者に広く知られるようになった。
(b)出所の混同について
以上のように、「オーブ」は一般の需要者や取引者に広く知られた商標であることは疑う余地はない。
そのため、仮に本件商標が引用各商標に類似するものではないとしても、本件商標は、引用各商標の「オーブ」の後に称呼上明確に称呼されず、また、明確に聴取されにくい摩擦音の「ス」音を帯同するにすぎないものであることにより、指標力の強い「オーブ」と混同し、請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある。
してみると、本件商標は、その指定商品中「化粧品、洗剤」については、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものである。
(3)被請求人の答弁に対する弁駁
(a)商標法第4条第1項第11号について
被請求人が述べるところの、語尾に弱音が2つ連続すると比較的明瞭に発音されるという経験則などは存在しない。弱音はあくまでも弱音である。
なお、本件商標は「オーブス」を書してなるものであるから、このうちの2音「ブス」を語尾であると表現するのは恣意的である。このような表現をすると語尾でないのは1音のみとなってしまう。
しかも、仮に「ブ」音が弱音であったとしても、弱音である「ス」音とは全く性質が異なる。すなわち、「ブ」音の子音「b」は口腔内で気流を一時閉鎖したのち、急に閉鎖を破って出す有声の破裂の音であるから、聴取しにくい摩擦音である。「ス」音の子音「s」とは異なり、聴者をしてとても印象深い音である。そのため「オーブス」を全体として称呼したとき、差異音である「ス」音は、その語の最終に位置することも相まって、明瞭には称呼されず、かつ、明瞭には聴取されにくいものとなり、決して「ス」音が「ブ」音とともに並列的にかつ明瞭に発音されるということはない。
また、本件商標の構成は、一見して字面的にも明らかなように、冗長なものではないから、殊更に段落をつけて前段と後段とに分けて称呼する必要はない。全体を区切りなく一連に称呼することができるものである。被請求人は「オーブ・ス」とは発音しにくいと述べているが、請求人は本件商標が「オーブ」と「ス」とに分けて称呼されると述べているのではなく、「オーブス」という一連称呼において、「ス」音は明瞭には称呼されにくいし、また聴取されにくいと述べているのである。
さらに、被請求人は、商品の需要者層は婦人であり、注意力は極めて高いから、両商標を彼此混同して聴取することはあり得ないと述べているが、婦人であると注意力が高く、男性だと注意力が低いという経験則があるわけではないから、独自の見解を示しているにすぎない。それに化粧品は男性でも使用するものである。
(b)商標法第4条第1項第15号について
被請求人は、「甲第5号証ないし甲第48号証からは、商品の販売数、売上高などが不明であり、引用各商標が全国的に著名性を獲得しているとは到底認められない旨述べている。
しかしながら、被請求人は、少なくとも化粧品を製造又は販売しているか、或いは化粧品をこれから製造又は販売をしようとしている者である。
請求人が提出した甲第5号証ないし甲第48号証が世間的にどの程度のものであるかは知っている筈である。
このことは、特許庁における本件商標に対する登録異議申立の決定においても、また、被請求人も認めているように「本件商標の登録出願時に請求人の業務に係る『化粧品』の商標として取引者・需要者の間に広く認識されていたとしても」と述べている。
特許庁における登録異議申立の決定においても、被請求人が述べているところの「本件商標は、引用各商標とは類似しない別異のものであり」というのは、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かの議論においては何の意味合いもないのである。けだし、商標が類似して指定商品が類似するというのは、もともと商標法第4条第1項第11号に議されるものだからである。

第4.被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求める。と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
(a)本件商標中「ブ」音は、一旦両唇を閉じる両唇音で有声の破裂音である子音「b」と、母音「u」を結合した濁音であって、比較的明瞭に聴取しがたい弱音である。「ス」音は一般的には弱音とされる。
しかしながら、本件商標では、語尾にこのような弱音が2つ連続する関係上、また「b」音が両唇が-旦閉じられて発音される両唇音であるところから、本件商標における語尾は「b・s」と並列的に発音されるものであり、「ブ」音、「ス」音が共に比較的明瞭に発音され、かつ聴取される。
(b)本件商標は4音からなるものであって、「オーブ・ス」とは発音しにくいことから、前段の2音と後段の2音とが比較的に分離されやすく、「オー・ブ・ス」と自然的に称呼される。
このように本件商標は、最終音に「ス」音が入ることにより、単に「オーブ」なる称呼に対して抑揚に変化が生じるものである。
一方、引用各商標は、単に「オーブ」(「ブ」は弱音)と連続的に称呼されるにすぎない。
してみると、両商標は、称呼上、その語調、語感がまったく相違するものであって、十分区別しうるものである。
また、本件商標は4音、引用各商標は3音であって、共に短い称呼よりなるものであり、上記の語調、語感の相違が両称呼の全体に及ぼす影響は極めて大きく、聴者をして明瞭に区別して聴取せしめるものである。
さらに、商品「化粧品」の主たる需要者層は、婦人であり、その商標に対する注意力は極めて高いものといえ、上記のように語調、語感を異にする両商標を称呼上、彼此混同して聴取することは有り得ないものといえる。
してみると、本件商標は、引用各商標とは、その外観、称呼、観念のいずれにおいても互いに相紛れることのない非類似の商標であり、商標法第4条第1項第11号の規定に該当するものではない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
請求人が提出した甲第5号証ないし甲第48号証からは、商品の販売数、売上高などが不明であり、引用各商標が全国的に著名性を獲得しているとは到底認められない。
また、前記のように、本件商標は、外観、観念はもとより称呼においても、そもそも引用各商標とは彼此混同する余地のない、明らかに別異の商標であることからして、特許庁での異議の決定理由中でも述べられているとおり、例え引用各商標が本件商標の登録出願時に請求人の業務に係る商品「化粧品」の商標として取引者・需要者の間に広く認識されていたとしても、本件商標を指定商品に使用する場合、その商品が請求人又は請求人と関係のある者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生じるおそれのないものであり、またその具体的事実も示されていない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に該当するものではない。

第5.当審の判断
(1)本件商標と引用各商標の類否
本件商標と引用各商標は、前記のとおりであって、外観においては明らかな差異を有する類似しない商標と認められ、この点については当事者間に争いはない。
次に、称呼について比較するに、本願商標は、前記のとおり「オーブス」の片仮名文字よりなるから「オーブス」の称呼を生ずること明らかである。
これに対し、引用各商標は、前記のとおり「オーブ」の片仮名文字、ないしは「Aube」の欧文字とによりなるものであるから、その構成文字に相応して「オーブ」の称呼を生ずるものと認められる。
しかして、本件商標より生ずる「オーブス」の称呼と、引用各商標より生ずる「オーブ」の両称呼は、語頭の「オ」の音を長母音とする「オー」とこれに続く「ブ」の音を同じくするものではあるが、前者は語尾に無声摩擦子音(s)と母音(u)との結合した音節「ス(su)」を有するという差異があり、この音は僅か3音とする本件商標のかかる音構成にあっては、語尾に位置するとはいえ一音として明確に発声し、聴取されるというのが相当である。
そうすると、「オーブス」の称呼と、「オーブ」の両称呼は、構成各音が明確に聴取される上、語尾において「ス」の音の有無という顕著な差異が3音と2音という短い両称呼に及ぼす影響は大きく、それぞれを一連に称呼された場合においても、語感、語調を異にし彼此聞き誤るおそれはないものといわなければならない。
さらに、観念については、本件商標は造語と認められるから、特定の観念を生ずるものとはいえず、引用各商標と比較することができない。
してみれば、本願商標と引用各商標は、外観、称呼及び観念のいずれにおいても類似しない商標といわざるを得ない。
(2)本件商標の出所の混同のおそれの有無
本件商標と引用各商標は、上記認定のとおり類似しない別異の商標といえるものであり、他に、両商標間に誤認混同を生じる事由は認められないものであるから、本件商標をその指定商品中の「化粧品、洗剤」に使用した場合、本件商標から請求人を想起させることはないと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものとは認められない。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品中「化粧品、洗剤」について、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものではなく、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (A)本件商標




(B)引用登録第2671275号商標



(C)引用登録第4224830号商標


審理終結日 2002-02-25 
結審通知日 2002-02-28 
審決日 2002-03-14 
出願番号 商願平11-10623 
審決分類 T 1 12・ 271- Y (Z010332)
T 1 12・ 262- Y (Z010332)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 三男 
特許庁審判長 小松 裕
特許庁審判官 涌井 幸一
高野 義三
登録日 2000-02-10 
登録番号 商標登録第4360110号(T4360110) 
商標の称呼 オーブス 
代理人 綿貫 隆夫 
代理人 宇野 晴海 
代理人 堀米 和春 

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