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審決分類 審判 全部無効 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) Z41
管理番号 1058467 
審判番号 審判1999-35768 
総通号数 30 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-06-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-12-20 
確定日 2002-02-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第4244880号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4244880号の指定役務中「第41類 セラピードッグに関する知識の教授,動物の調教,動物の供覧、録画済み磁気テープの貸与」についての登録を無効とする。 その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。 本件審判の請求注、登録第4244880号商標が商標法第4条第1項第7号、同第15号及び同第16号に該当することを無効の理由とする審判請求は却下する。 審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4244880号商標(以下「本件商標」という。)は、「THERAPY DOG」の欧文字と「セラピードッグ」の片仮名文字とを二段に横書きしてなり、平成9年8月22日登録出願、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,動物の調教,植物の供覧,動物の供覧,図書及び記録の供覧,美術品の展示,庭園の供覧,洞窟の供覧,映画・園芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,ゴルフの興行の企画・運営又は開催,相撲の興行の企画・運営又は開催,ボクシングの興行の企画・運営又は開催,野球の興行の企画・運営又は開催,サッカーの興行の企画・運営又は開催,競馬の企画・運営又は開催,競輪の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催,小型自動車競争の企画・運営又は開催,当せん金付証票の発売,音響用又は映像用のスタジオの提供,運動施設の提供,娯楽施設の提供,興行場の座席の手配,映写機及びその附属品の貸与,映写フィルムの貸与,楽器の貸与,スキー用具の貸与,スキンダイビング用具の貸与,テレビジョン受信機の貸与,ラジオ受信機の貸与,図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,おもちゃの貸与,遊園地用機械器具の貸与,遊戯用器具の貸与」を指定役務として、平成11年2月26日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録は、これを無効とする。」との審決を求め、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第6号証及び証第1号証ないし証第31号証を提出している。
1 本件商標は、アメリカにおいて一般的に用いられている「Therapy Dog」をそのまま用いたものであり、1997年8月22日以前に日本でも一般に使用されている。したがって、本件商標は、商標法第3条第1項に該当する。
2(1)被請求人は、「セラピードッグ」について、本件以外に2件の商標登録をしており、その商標登録について各無効審判請求がなされている(商標登録第4191072号については平成11年審判第35754号。商標登録第4278507号については平成11年審判第35755号)。
(2)被請求人の「セラピードッグ」の商標登録は許されない。
(ア)本件商標は法律の規定に違反して登録されたものである。
本件商標は、商標法第3条に該当するもので、商標登録出願は拒絶されるべきものである。
しかるに、これが登録されているので以下の理由により無効にされなければならない。
(イ)商標登録一覧表の商標登録の標章は次のものであり、商標登録がなされるべきものではない。
(a)「THERAPY DOG/セラピードッグ」
「治療」「癒し」を意味する英語の「THERAPY」の文字と「犬」を意味する英語の「DOG」の文字の組み合わせをし、その発音を片仮名で「セラピードッグ」と表示する。
老人医療や心理療法において犬を介在させてその治療や健康づくり、あるいは精神的な癒しの効果のために使用する犬のことである。
(b)「アニマルセラピー/ANIMAL THERAPY」
「動物」を意味する英語の「ANIMAL」と「治療、癒し」を意味する英語の「THERAPY」の文字の組み合わせをし、その発音を片仮名で「アニマルセラピー」と表示する。
従来より動物が人の心を和ませ、あるいは精神的に大きな影響を与えることはよく知られているが、老人医療や心理療法において動物を介在させて精神的な癒しによる医療ないし療法である。
英語では「ANIMAL ASSISTED THERAPY」と呼ばれ、またこれを省略して「ANIMAL THERAPY」ともいわれ、これがそのまま日本語として発音どおりに「アニマル アシステッド セラピー」「アニマルセラピー」と使用されている。
日本語として「動物介在療法」とも呼ばれる。
(c)動物介在療法
上記「アニマルセラピー」ないし「アニマル・アシステツド・セラピー」の日本語訳である。
(d)「ドッグセラピー/DOG THERAPY」
「犬」を意味する英語の「DOG」の文字と「治療、癒し」を意味する英語の「THERAPY」の組み合わせをし、その発音を片仮名で「ドッグセラピー」と表示する。
アニマルセラピーのうち、特に犬は人間との共同生活に最も身近なものになっており、セラピーに使われることが多いので、犬による介在療法を「ドッグセラピー」として一般に呼ばれている。
(e)「RESCUEDOG/レスキュードッグ」
救助犬である。
一般に、まさに「RESCUE DOG」「レスキュードッグ」であり、一般に使用されている。
欧米では、古くから使われており、日本では阪神大震災(1995年、平成7年1月)で、海外及び国内からしスキュードッグが派遣され、一般に有名なった。
この言葉(文字)をリンリンコンボレーシヨンが平成9年8月に登録出願したが、拒絶査定を受けた(商願平09一151074,7946)。
(f)「RESCUE & THERAPY DOG/レスキューアンドセラピードッグ」)
「救助」を意味する英語の「RESCUE」の文字と「治療、癒し」を意味する英語の「THERAPY」の文字と「犬」を意味する英語の「DOG」の文字の組み合わせをし、その発音を片仮名で「レスキューアンドセラピードッグ」と表示する。
発音を片仮名でいわゆる「レスキュードッグ」(救助犬)と「セラピードッグ」(医療犬)をくっつけて一緒に呼称するものである。
(g)「セラピードッグハウス/THERAPY DOG HOUSE」
セラピーは「治療」「癒し」を意味する英語の「THERAPY」の文字と、「犬」を意味する英語の「DOG」の文字と、「家」を意味する英語の「HOUSE」の文字の組み合わせをし、その発音を片仮名で「セラピードッグハウス」と表示する。セラピードッグ(治療犬)の家(家屋)を意味する。
(ウ)商標登録されている言葉の使用状況について
(a)資料の通り、次の状況がわかる。
アメリカでは、すでに数十年の歴史の中で、セラピードッグ(ないしアニマル アシステッド セラピー、ANIMAL ASSISTED THERAPY、動物介在療法)が確立されている。
これが日本に紹介され導入されてきている。
例えば、ミュージシャンで有名な大木トオル氏は12年前(1987年)からセラピードッグの紹介をするとともに、自身もその活動に積極的に取り組み、1998年には「ジャパンセラピードッグプロジェクト」の組織を立ち上げている。
(b)別件請求人らが集めた資料によれば次の通りである。
ア)1994年3月号、6月号の「愛犬の友」では、セラピードッグやアニマルセラピーが紹介されている。
イ)平成6年7月には、東京都衛生局が、集合住宅における動物飼養モデル規定として「集合住宅における動物飼養モデル規定」が作成されている。
その作成の経緯として、「人と動物の共生が身近なものになってきたことを前提として、犬・猫などが人生の伴侶動物(コンパニオンアニマル)として人の生活を精神的に支える不可欠な存在になっている」こと、「高齢化.核家族化の中で人で人と動物の絆(ヒューマンアニマルポンド)も重要という考え方が芽生えている」、「老人医療や心理療法において動物達が役立っており、動物を介した人の心の健康作り(アニマルセラピー)という評価もある」とする。
そして、「医療の動物と人間との関係を前提として近隣とのトラブルや苦情の問題を発生させないように集合住宅での動物の飼育管理について、動物を飼養する人と近隣の人達との間の関係が円滑になされるようモデル規定を作成した。」とする。
ウ)朝日新聞ニューメディアサービスより朝日新聞代行検索サービスをファクスで入手した、1995年11月9日付の「犬だってボランティア 老人ホーム・障害者施設を訪問」の記事である。
1986年(昭和61年)に、獣医師が設立した(社)日本動物病院福祉協会(JAHA)が「人と動物とのふれあい運動(CAPP)をする犬(CAPP犬)」で、ボランティア活動で活躍する犬をCAPP犬と認定している。
これらの犬は、老人ホームなどを訪問する活動をしており、欧米では入院患者の心身のリハビリに「セラピードッグ」を使う病院も増えており、日本でもこのような活動が広がり始めている。
エ)アメリカのセラピードッグの活動を紹介する本で、1996年に発行された「VOLUNTEERING With Your Pet」(アメリカで発行された本)において、「アニマル アシステッド セラピー(ANIMAL ASSISTED THERAPY)」の中で、「セラピードッグ」が、アニマルセラピーとして最も一般的に用いられるとともに、その活動や訓練方法が紹介されている。
オ)1996年4月号の雑誌で、「犬とのふれあいを通して心の安らぎとほほえみを届けます ボランティア・CAPP活動」に、ペットという言葉に代わる「コンパニオン・アニマル」という言葉の使用のあり方、また、「アニマル・アシステッド・セラピー」「動物介在療法」が人間にとって精神的、肉体的効果に有効であることについて、医療の分野で研究がなされていることが報告されている。
カ)動物雑誌「WAN」1996年8月では、見出しが「セラピー・ドッグたちの活躍を追う。犬が私達の心を救う」として、「アニマルセラピー」の記事が掲載されている。
「『アニマルセラピー』がどんなものか紹介する。最近ではごく一般的に使われている名称なのだが、違う呼び方をしている人も多く、その区別がついていない人がいるのではないかと思う」として、アメリカでのアニマルセラピーの説明がされている。
JAHA((社)日本動物病院福祉協会)のCAPP活動として、「アニマルセラピー(アニマル・アシステッド・セラピー)」の活動を組織的に行っている状況や、「アニマルセラピーのガイドライン指針」の論文などの資料を読んで活動してほしいと呼びかけている。
日本でも臨床例として、アニマルセラピーの活動が着実に広まっていること、精神科の医師などがボランティアなどによるアニマルセラピーを行っており、その論文なども報告されている。
「アニマルセラピーを実践する動物に求められる必要条件として、『アメリカデルタ協会』の認定テストの紹介がされている。テストに合格した動物は晴れて『アニマルセラピー』の認定を受ける。犬の場合は『セラピー・ドッグ』を意味する赤いハーネスが贈られる。地下鉄やバスに乗っても『セラピー・ドッグ』と認定され活動している」との記載がある。
キ)マスコミや雑誌では、一般的に、「アニマルセラピー」(ANIMAL THERAPY)、「アニマル アシステッド セラピー」(ANIMAL ASSISTED THERAPY)、「動物介在療法」、さらに「アニマル・アシステッド・アクティビティ」(動物介在活動)などが紹介され、海外や日本での研究や活動が紹介されている。アニマルセラピーのうち、特に犬は、「セラピードッグ」による治療や癒し(ドッグセラピー)として、新聞や一般雑誌などで紹介されることが多い。
「アニマル・アシステッド・アクティビティ(略称A.A.A)」(動物介在活動)のうち、特に人の医療に生かすことを「アニマル・アシステッド・セラピー(略称A.A.T)」(動物介在療法)と呼んでいる。「アニマル・アシステッド・セラピー」の動物に犬を用いることを「ドッグセラピー」と言い、その犬を「セラピードッグ」と言う。
ク)WHO(世界保健機構)が会議のスポンサーになって、「第8回 人と動物に関する国際会議」が開催され、本会議で、(i)動物介在療法などの発表がなされ、(ii)「アニマル・アシステツド・アクティビティとアニマル・アシステッド・セラピーに関するガイドライン」 が決議された。(愛犬ジャーナルNo.466、1998年(平成10年)10月号)
なお、同記事の後に、「人と動物作用国際学会」の案内記事に、ナショナルメンバーとして(社)日本動物病院福祉協会(JAHA)がCAPP活動の実績が評価され、メンバーとなったこと、学会の参加者の対象として「動物介在療法」のプログラムに関するプロフェッショナル、ボランティア、政府及び行政各機関の関係者としている。
ケ)また行政においても、石川県では、平成11年の予算案にて、「アニマルセラピーモデル事業」の予算を付け、「セラピー犬」やボランティアの養成、施設への訪問活動を、保健所や石川動物園が連携して進めるとの記事がある(朝日新聞1999年(平成11年)2月18日)。
(エ)以上のとおり、本件商標登録一覧表の文字・標章は、医療の場での研究や治療、あるいは社会活動に一般に用いられている言葉であり、商標法第3条のその物や役務の普通名称であり、「品質」「効能」「用途」「使用の方法」役務の「提供の質」や「態様」「方法」について普通に用いられるものであり、これらの商標のみからなる本件商標は、商標登録を受けることは許されない。
「ペット法学会」 の会員を中心として、学者、研究者や医師、獣医師、犬の訓練や「セラピードッグ」の社会活動をしている関係者は、研究や社会活動に基本的、普通に用いられている言葉が商標登録されることあるいはされていることに、強く反対の声をあげている。
現実に本件商標の商標登録については、その商標にかかる用語を用いて社会活動をしている者に対して、日本レスキュー協会本部長大山(同人は出願をした株式会社リンリンコーポレーシヨンの代表者でもある)より、「セラピードッグの使用をするな」との妨害活動が積極的になされている。
人の社会と動物との関係を研究し、活動するための基本的用語を商標登録することは許されない。
(3)被請求人の答弁書に対する反論
(ア)はじめに
(a)被請求人の主張は全く不当である。
併せて本件商標の商標登録がなされたことについての審査には、極めて問題がある。
被請求人の主張は、別件請求人の提出資料の印刷物、報道は個人的な記載か、商標登録以降のものとの主張に尽きる。
右主張は次の点で不当である。
(b)資料は基本的に全て公に頒布されている印刷物である。そもそも被請求人の商標登録は、従前から使用されたものを登録したもので、被請求人の造語ではない。
個人的に使用されたとする主張は、従前ある一般的用語をその必要性に応じて各団体、個人がそれぞれのところで使用しているもので、それぞれ執筆された言葉がその執筆者達による独自の造語ではなく、既に一般的にアメリカで使用され、それが日本でも既に10年余前に導入されて一般的に使用され、今や世界的な一般用語として使用されているものである。
(イ)被請求人の各主張に対する反論
(a)大木トオル氏の記述とその社会活動について(証1、2、3)
ア)大木トオル氏は、世界的に有名なミュージシャンであるが、1980年代より、アメリカでのセラピードッグの活動を知り、日本でのセラピードッグの普及活動をするようになった。
1998年代(平成10年)よりジャパンセラピードッグプロジェクトの組織を作って活動中である。
セラピードッグの活動は、アメリカで以前より活発になされており、大木トオル氏はこれを1980年代より日本に紹介している。
イ)セラピードッグが大木トオル氏の発案の言葉でもなければ、個人的に使用するのでもなく、既にセラピードッグの活動が活発にされているアメリカの状況を紹介し、日本での実践活動をしてきているのである。
ウ)「個人的な使用」ということの意味が不明である。
被請求人の主張する「個人的使用」というのは、「既に他の人が使用している言葉を援用して使用しているが、使用するのが個人だから個人的使用という」のか。そうならば既に他の人が使用しているからこれは個人的使用とはいえないはずである。
それとも大木トオル氏が発案造語をしているというのか。
明らかにされたい。
エ)証2は、セラピードッグが、「愛犬の友」という有名な犬の専門誌で社会に公知されていることの証拠として提出するものである。
被請求人の大山氏が、犬の社会に関心を持ち始めたのは阪神大震災(1995年、平成7年)に触発された以降のことである。
既に、犬の文化は、世界的に盲導犬、聴導犬、介護犬ばかりではなく、セラピードッグ、レスキュードッグなどの人間社会での犬の種々の役割が一般的になっており、日本でも多くのボランティアグループ、犬の訓練上、医師、獣医師、行政、災害関係者などが注目して、一般的になっている。
このような一般的に用いられる公用的言葉を、自らからのものとすることは反社会的で許されない。
オ)大山氏は、別件請求人の兵庫県動物愛護センターでの「セラピードッグの訓練の方法」の講演に対して、「セラピードッグ」の言葉を使用をするなといって、その講演を見張り、またホームページなどでセラピードッグを使用する者に対してその使用をするななどと、業務妨害を続ける者で、功劣極まりない。
(b)動物飼育モデル規定(東京都衛生局)(証4)
ア)同文書は次の通り、動物と人間の関係を述べる。
「人と動物の共生として人生の伴侶動物(コンパニオン・アニマル)、ヒューマン・アニマル・ポンドが重要となってきている。」
「老人医療や心理療法において動物たちが役立っており、動物を介した人の心の健康づくり(アニマル・セラピー)という新たな評価もある。」
「身体に障害のある人や高齢者で動物(人の日常生活行動を助ける「サポート・ドッグ」など)の必要な人への理解と配慮も求められている。」
イ)アニマルセラピー(動物による医療、介護、健康づくり)の中の主要なものは、犬によるドッグセラピーである。当然の自明のことである。その犬がセラピードッグである。
アメリカなどの動物と人との機能や役割の文化や知識が、日本でも必要であることを、公の団体としても認めこれを導入していくことの資料である。
ちなみに、被請求人の商標登録の登録出願をした「アニマルセラピー」(平成11年商標登録願第20680号)が平成11年12月10日に商標登録されたが、特許庁の審査機能は極めて問題がある。
「医療」とか「内科治療」等という言葉の商標登録を「ルイ・ヴィトン」と同様に認めるのであろうか。被請求人は、「アニマルセラピー」及び、その日本語訳の「動物介在療法」についても商標登録の請求をしており、常軌を逸する請求を繰り返しており、商標登録の制度を不法に利用するものである。
被請求人の、公に用いられる一般的用語を自らからのものとすることなどは許されない。
(c)ニュース記事(証5)
「セラピー犬」「セラピードッグ」が報道されていること、「セラピードッグ」について、1970年代からアメリカで、「セラピードッグ」の認定を受けた犬が障害者施設などで活動がされていることなどの紹介があり、日本でもセラピードッグの活動がされていること、の紹介報道がなされており、「セラピードッグ」による動物介在療法が古くから一般的になされていることの証拠である。
被請求人の、私的とか、「セラピードッグ」の商標登録の登録出願をした平成9年(1997年)5月以降の記事であるとの反論は、全く不適切な主張・反論でしかない。
(d)「ドッグ・ワールド」(証6)について
被請求人は、証6について、「コンパニオン・アニマル」「サポート・ドッグ」と称され、「セラピードッグ」の表現は使用されていない、と主張する。
不当である。
JAHA((社)日本動物病院福祉協会)は、獣医師が中心であり、CAPP活軌(コンパニオン・アニマル活動)を中心に活動している。
証6においては、動物による治癒効果について「こうした精神的・肉体的効果は『アニマル・アシステッド・セラピー』(動物介在療法)として、医療の分野で研究されており、実際に治療に用いられている」との紹介がされている。
既に説明するように、動物(特に犬)がセラピー(医療)などに用いられており(アニマル・アシステッド・セラピー、アニマルセラピー、動物介在療法)、犬によるセラピーを「ドッグセラピー」といい、その犬が「セラピードッグ」であることは自明である。 被請求人は、「アニマルセラピー」「ドッグセラピー」「動物介在療法」「セラピードッグ」(その他、レスキュードッグ、レスキュー&セラピードッグなども商標登録の登録出願をしている)が、異常である。
(e)雑誌「wan 1996年8月号」(証7)について
ア)被請求人は、個人的使用であると主張するが、論外である。
同雑誌の見出しは「セラピードッグたちの活躍を追う」としている。
同雑誌は「『アニマルセラピー』という名称が一般的となってきた。各マスコミにもたびたび登場し、その活躍ぶりの一端を見せてくれる。」との説明の下で、その活動の紹介をする。
イ)被請求人は、同雑誌の「セラピードッグ」は山崎恵子氏の個人的使用と言うが、論外である。
a)山崎氏は、雑誌記事の取材協力者であり、ペット問題評論家であり. デルタ協会の会員である。山崎氏の個人の記事でもなく、山崎氏の発案した言葉でもない。
雑誌は、アニマルセラピーの紹介をする。
同記事は、「CAPP活動と『アニマルセラピー』が同じように使われている場合も多い。アメリカでは『アニマルセラピー』のことを『アニマル・アシステッド・セラピー』という。」「アニマル・アシステッド・セラピーとは、患者の治療の方法の一つである。」「病院によってはアニマル・アシステッド・プログラムのコーディネーターがいる病院もある。」
b)横山章光共済立川病院神経科医師を取材協力者として、「アニマルセラピー(アニマル・アシステッド・セラピー)」の説明や、日本での状況が述べられている。
c)アメリカのデルタ協会の「アニマルセラピーを実践する条件」の紹介がなされ、セラピーアニマルの認定テストが紹介されている。
犬がセラピーアニマルの認定を受けると「セラピードッグ」を意味する赤いハーネスが贈られる。アメリカではこれを着けていれば、地下鉄やバスに乗ってもセラピードッグと認識される。ちなみに、聴導犬はオレンジ、盲導犬は青のハーネスを着ける。
d)ニューヨークのグリーン・チムニーという組織の、犬などによる動物による教育がなされている。
e)「アニマルセラピーに取り組む人たち」との見出しで、新潟県内の保健所の動物保護管理センターでは、行政の立場から、「アニマルセラピー」に取り組んでいる、との紹介がされている。
ウ)山崎氏個人の記事ではなく、「アニマルセラピー」(「アニマル・アシステッド・セラピー」「動物介在療法」)、「セラピーアニマル」「セラピードッグ」が古くから活動していることの紹介がされており、これが一般的用語として使用されていることが分かる。
そして、セラピードッグが、盲導犬や聴導犬と同様な社会的認知を受けて活動している。
被請求人の主張は、これらの言葉を独占して他者に使用させないという不当極まりないものである。
(f)本「ヘンリー、人を癒す」(証8)について
被請求人は、これを例によって、「個人的使用」というが、全く不当な主張である。
本書は、著者が日本人として「セラピードッグ」を育て、アニマルセラピーの実践活動をした記録であり、著名な本である。
ア)表題は「ヘンリー、人を癒す」とし、副題は「心の扉を開けるセラピー犬」である。
イ)本書前書きには、東京医科歯科大学の内科医師の高柳友子氏の次のような序文が寄せられている。
「『動物の価値が医療・福祉の場で認められる日が早くくることを願って』Animal Assisted Therapyは、日本ではそのままアニマル・アシステッド・セラピーと呼ばれたり、アニマル・セラピー、ペット・セラピー、また日本語に訳して動物介在療法などと呼ばれています。(中略)
何をすればもういちど笑顔を取り戻してくれるのか、生きていてよかった、と思ってくれるのか、そんなことが医療のもう一つの大きなテーマになろうとしています。その一つの方法として動物が存在します。それがアニマル・アシステッド・セラピーなのです。
ウ)目次は次の通りである。
プロローグ
4 いよいよ訪問活動
初めての訪問
AAAとAAT
へンリーの誘導
6 課外活動
グリーン・チムニーの子供たち
模範演技もできるようになった
7 アニマル・セラピーを支える人たち
小さな奇跡に魅入られる
エ)1994年3月に著者は、愛犬ヘンリーのセラピー犬とペットパートナーのテストを受けて合格し、アニマルセラピーとして病院や福祉施設への訪問活動に入る(117〜124ページ)。
オ)AAAとAAT(134頁〜)
私たち、 セラピー・アニマルとハンドラーが、作業をともにする施設のスタッフはさまざまです。大半はレクリエーシヨナル・セラピスト(レクリエーション療法士)と呼ばれる遊戯や娯楽を用いた治療補助の専門家たちで、彼らの職務は本当に多大な体力と精神力を必要とされます(134べージ)。
へンリーと彼の訪問を受ける人々との交流を紹介する前に、この活動に関してもう一つ説明しておかなければならないことがあります。それは「アニマル・セラピー」という言葉が意味する内容についてです。
現在、多くの人々から注目を浴びているアニマル・セラピーですが、アメリカでは具体的にはAAA(アニマル・アシステッド・アクティビティ)とAAT(アニマル・アシステッド・セラピー)という二つの領域に分けられます。どちらもセラピー・アニマルを用いるプログラムであるという点には変わりはありませんが、プログラムに加わる専門家やその体制の違いで区別されます。簡単にいえば、プログラムを慰問として扱うのか、療法として扱うのかの違いです。
前者AAAの場合は、基本的に慰問が目的であり、慰問動物は愛の配達人として人々と交流し、当然施設のスタッフによる監督のもとで行わなければいけないわけですが、慰問を受けた人々の療法の効果や反応といった個人の記録は管理されません。病院や老人・身障者施設など、限られた生活圏の中で暮らす人々にとって、犬をはじめとするセラピー・アニマルの訪問は想像を絶する驚きをもたらします。(中略)
一方、後者のAATでは、プログラムにおける目的や目標が専門家の手により、受容者一人ひとりに応じて設定されます。プログラムに加わる専門家たちとは、理学療法、作業療法、言語療法、レクリニーション療法などのセラピスト、医師、看護婦、そしてプログラムを受ける人々の社会的な介護を担うソーシャル・ワーカーたちです。そしてプログラムを受ける人の反応や効果といった情報は専門家によって正式な記録として受容者ごとに管理され、プログラムの次のステップが管理記録をもとに検討されながら進められていきます。(中略)
要するにAATの場合、動物は治病を強化する役割を果たします。
私たちハンドラーの役目は、AAA/AATいずれを問わず、セラピー・アニマルがプログラムのなかで、より安全にそして有意義に生かされるよう、専門家の人々や受容者の人々との信頼に基いた共同作業を補助することです。(136〜140ページ)
カ)「グリーンチムニー」の紹介と「ヒューマン・アニマル・ボンド(人と動物の絆)」(217ページ以下)
キ.犬の訓練に親しんでいたバーチ博士は、ボランティアとしてこの活動にふれると同時に、犬とのふれあいがどれほど人の心理上に前向きな効果をもたらすかを確信し、直ちに自分のセラピー・プログラムに愛犬ラディを用います。ラディはその後、1992年、デルタ・ソサエティ、セラピードッグ・オブ・ジ・イヤーの栄誉に輝き、十数年以上に及ぶバーチ博士のAATにおける研究と成果は、デルタ・ソサエティの前進とともに今日に至るまで人々を導いてきています(244ページ)。
治療介助犬としてのセラピードッグに対し、実際に障害を持つ人々と生活をともにし、心身のサポートをする介助犬、サービス・ドッグについても現在大きな努力と開拓が注がれています。
サービス犬として、一般的に最も知られているのが盲導犬です。しかし現在はその種別は聴導犬、転換発作予知犬などの身体障害の介助から、重度の鬱病、神経衰弱および拒食・過食、対人恐怖などのほか、精神的障害により社会生活に困難を持つ人々の介助と幅広く活躍をしています。まだ盲導犬にしか尊厳が向けられていない現状の中で、サービス犬の定義、訓練、そして必要性が広く世間に問いかけられています。サービス犬は実際の肉体労働ばかりでなく、精神的介助犬として患者と一緒にいるだけで患者の心拍数や血圧の安定を促し発病を防ぐという効果が医学的に立証されています(246ページ)。
厳密には、AAA(アニマル・アシステッド・アクティビティ)とAAT(アニマル・アシステッド・セラピー)という二つの領域があり、前者ば慰問であり、後者は医療である。どちらもセラピー・アニマルを用いるプログラムであるという点には変わりはない。
アニマル・アシステッド・セラピーは、アニマルセラピーとも言われ、動物介在療法と訳される。
アニマルセラピーは、厳密には医療(セラピー)に用いられるもので、AAA(アニマル・アシステッド・アクティビティ)に用いられるものは、例えばJAHAのCAPP活動ではコンパニオンアニマルなどとも呼んでいる。
動物によるセラピー(アニマルセラピー)の内、犬によるものをドッグ・セラピーといい、セラピーアニマルの内、犬によるものをセラピー・ドッグという。
被請求人の商標登録の請求は、これら動物の一般用語を全て自らのものとして占奪しようとする許容し難い行為であって、酷いものである。
(g)「愛犬ジャーナル」(証10)について
ア) 被請求人は、「JAHAの説明が、動物介在療法は『アニマル・アシステッド・セラピー』と呼ばれているが、この療法に活動する動物は『コンパニオン・アニマル』と表現されているので、動物介在療法に介在する動物の普通名称は『コンパニオン・アニマル』であることは明らかである。」と主張する。
被請求人の主張は全く誤りである。
イ)証10には、被請求人の主張するような説明はない。
証10の説明は、アニマル・アシステッド・アクティビティ(AAA)とアニマル・アシステッド・セラピー(AAT)で後者が動物介在療法であり、コンパニオン・アニマルがアニマル・アシステッド・セラピーをするとは書いてはいない。アニマル・アシステッド・セラピーはセラピー(医療)アニマルが使用され、コンパニオン・アニマルは「ペット動物を社会的にとらえた言葉で伴侶動物、仲間動物という意味」との説明しかない。動物介在療法の動物はセラピー(医療)(アニマル)であり、コンパニオン(伴侶、仲間)(アニマル)ではない。
(h)「愛犬ジャーナル」(証11)について
被請求人は、「動物介在療法に寄与する動物は『コンパニオン・アニマル』と表現されているというが、そのような表現はどこにもない。
虚偽の主張である。
同書証では「世界各国で、それぞれの方法論で進められていた動物介在療法も、今回、決議案として『アニマル・アシステッド・アクティビティ(AAA)とアニマル・アシステッド・セラピー(AAT)に関するガイドライン』が決まったため、この領域の研究者や獣医師、団体にとって、活動指針が明確になるはずです。」として、医療としてのセラピーとそれ以外のアクティビティとの明確化がされたと記載されている。
被請求人は、基本的な用語の無知誤解がある。コンパニオン・アニマルはAAAであり、厳密にはセラピー(動物介在療法)には含まれない。
普通名称は、コンパニオン・アニマルもそうであるが、セラピーアニマルもそうである。
(i)「ドッグスポーツマガジン」(証12)について
被請求人は、この書証について何らのコメントをしないが、「(社)野百合会、障害児への新しい療育の考え方と方法を探して」との案内に「動物介在療法(AAT:Animal Assisted Therapy)の適用と効果」の表題がある。
被請求人が、商標登録を登録出願する「動物介在療法」「アニマル・アシステッド・セラピー」が掲載されているのと被請求人の理解不足を主張する。
(j)本「検証アニマルセラピー」(証13)について
被請求人は、「『アニマルセラピー』については記載されているが、『セラピードッグ』の用語はでてこない」と主張する。
被請求人は、「アニマルセラピー」も、「動物介在療法」も商標登録の請求をしている(アニマルセラピーは商標登録を受けた)。一般に使用される普通名称であるもので、常軌を逸している。
「セラピードッグ」「セラピー犬」が、既に雑誌や本で多用されているとおり、一般に使用される普通名称であることは明らかである。
(k)「バーチ博士の著書」(証14)、「デルタソサイエティのホームページ」(証15)、「アメリカのホームページ」(証16)について
ア)被請求人は、証14については、これをアメリ力での出版物であり、日本では普通名称ではないと主張し、証15については、サービスドッグであって、セラピードッグは普通名称ではないと主張し、証16については、本件商標の登録の後だと主張する。論外である。
イ)デルタソサイエティは、既に数十年にもわたって、セラビードッグの啓蒙と公益的社会活動をしてきた団体である。バーチ博士はその実践者である。これが約10年余前に日本でも積極的に取り入れられてきた。他の書証資料からも明らかである。
これを被請求人ないし被請求人の代表者の大山氏が自から特定の意味付けをして商標化したなどと言うことは許されない反社会的行為である。
またアメリカのホームページの入手資料である。
(l)「吉田眞澄同志社大学教授の文書」(証17)、新聞記事(証18)、兵庫県南部地震動物救援本部発行「大地震の被災動物を救うために」(証19)、雑誌「ペピイ」(証20)、ペット社会を考える連絡会の署名(証21)
ア)被請求人は、証17について、本件商標の登録の後であり、「吉田氏の個人的使用」であると主張し、証18について、別件請求人の一方的主張の記事であるとし、証20について、「アニマル・アシステッド・セラピー」の説明はあるが、「セラピードッグ」の記載はないと主張する。
イ)証17は、長くペット法の研究をされてきた吉田教授の掲載文である。従前からペットないし動物と人との関係の分野で一般的に使用されてきた用語を使用しているものであり、その証拠としての資料である。
ウ)証18は、被請求人の商標登録が社会的に大きな問題となっていることを証するものである。
被請求人は「介護や福祉の知識がない人が安易にセラピーという言葉を使っており、きちんとした定義づくりが必要と考えて登録した。商売目的ではない。」と言う。論外である。
被請求人も、大山が中心となってする日本レスキュー協会も、医師でもない。アニマル・セラピー(アニマル アシステッド セラピー、動物介在療法)は、定義は確立しており、その必要もない。医療活動である。セラピードッグはこれに用いられている犬である。被請求人らが定義づけられる立場にもないし、セラピードッグの認定機関や専門機関でもない。一般的用語を商標登録するなどは論外である。
商標は、ルイ・ヴィトンやソニーなど、営業活動に使用されるグッドウイル(自己の信用)であり、商品・役務についての出所識別、品質保証、宣伝広告を目的とするものであり、制度自体が、商売目的である。自から築き上げた商品をベースとする独占排他性のある用語ならばともかく、多くの人々がボランティア活動の中で形成してきた動物と人との群の医療や、交流の用語を、商標登録することなど許されるはずはない。
被請求人の答弁書は、どこにもボランティア活動としての行為などとは窺われず自分の用語として独占的排他的に使用することを目的として、個人的使用(これ自体が、被請求人の独自用語として性質を否定している)とか、商標登録以降の使用であると強弁している。
上記被請求人の、新聞記事の虚偽的弁明は社会に対して嘘を言うに等しい。
エ)証19は、兵庫県貝原知事が「動物たちは単なるペットとしての存在だけではなく、家族の一員であり、時には心の支えとなっていたこと再認識するとともに、(中略)今兵庫県では、動物愛護思想の普及啓発や動物保護事業の推進を図り、その拠点施設となる『動物愛護センター(仮称)』の建設に努めています。」とする。
マークとして「ANIMAL(アニマル)」と「RESCUE(レスキュー)を使う。 兵庫県が建設したこの「兵庫県動物愛護センター(尼崎市)」で、別件請求人が「セラピードッグへの道(適正と役割)」の講義をした際に、被請求人代表者大山は、セラピードッグを用語の使用をするなとセンター所長と別件請求人に要求し、その講義を聴講監視をしたのである。
大山は、阪神大震災のレスキュードッグなどに触発されて、日本レスキュー協会をつくり、レスキュードッグを育成して活動するようになるや、「レスキュードッグ」「セラピードッグ」などの、犬や動物の人間社会での役割に使用されていた一般的な言葉を商標登録の登録出願して、言葉の奪取を図った。
後から来たものが、「レスキュードッグ」「セラピードッグ」などの医療などにも使用される専門的用語も含む言葉を商標登録する行為は、厳しく批判せざるを得ない。
(オ)証20については、「アニマル・アシステッド・セラピー」はあるが「セラピードッグ」はない、との主張は、不当な主張か、これを知らないかのいずれかである。
アニマル・アシステッド・セラピー(アニマルセラピー)において、犬を用いるものがセラピードッグである。
(f)証21については、ペット法学会のメンバーの学者、弁護士などの実務家、医師、獣医師、社会活動家において、人間と動物の関係として形成され、一般用語となっている言葉を、被請求人が、商標登録をして用語の奪取をする行為をする事の不当性を訴え、これを防止するための署名である。
(g)証22「セラピードッグインターナシヨナル(冊子)」について
同冊子にはセラピードッグの紹介が多数なされ、その活動が紹介され、同書14頁にTHERAPY DOGS INTERNATIONAL,INC.の歴史(1976年に設立)と活動が紹介されている。
(h)証23「Pets and the E1derly」について
1984年に発行された本で、THERAPY DOGS INTERNATIONAL,INC.の設立者のエレーン・スミス氏の著書である。セラピードッグの訓練などの記載をする。
(i)証24「山崎恵子氏意見書」について
デルタ協会の会員であり、マスターインストラクターの立場にある山崎氏の、商標登録についての意見である。
「本年11月には日本動物福祉協会の主催で人と動物の絆に関する国際会議がアジアにおいて初の環太平洋地域会議をすることになっており、会議関係者が現在に至るまで使用している極めて日常的な言葉が『日本の会議においては特定の組織の所有物故に自由に使うことはできない』と海外からの出席者に告知しなければならないということは、わが国にとって極めて恥ずかしいことである」と述べる。
(j)証25「People,Animals,Environmaent」(1989年夏号)、証27同(1990年春号)、証28同(1990年夏号)について
いずれもデルタ協会の雑誌である。いづれもセラピードッグの活動や訓練案内などの紹介がなされている。
(k)証29 「InterActions」(1993年)、証30同(1994年)について
いずれもセラピードッグに関する活動記事が紹介されている。
証30ではセラピードッグ・オブ・ザ・イヤーやその他セラピードッグの活動の紹介などもされている。
(l)証31「高柳哲也氏意見書」について
日本介助犬アカデミー理事長で奈良県立医科大学名誉教授である高柳氏の「Therapy Dog/セラピードッグ 商標登録の無効に関する意見書」であり、「セラピードッグは動物介在療法のために用いられる犬を総称するもので、一般用語であり学術用語である。昨今はアニマルセラピーと俗称されている動物介在療法の文献的検索から、この名称は1970年代から欧米でボランティア活動として発展・普及を遂げ、わが国では1986年に犬などのペット動物を連れての老人ホームなどへのボランティアグループが同様の活動を独自に行うようになっている。セラピードッグ(同様にセラピー犬)、アニマルセラピー、動物介在療法の名称は、無償の奉仕活動としての犬と人とのふれあいを推進してこられた多くの人の努力の上に成り立つ言葉であり、その人々の努力の結果、平成9年の登録出願時にはすでにボランティアまでは広く使われており、その後は日本においても医療分野におけるこの分野の意義や重要性が認められ、学術用語として認められるようになったものである。これらの名称を独占して営利目的に使用することはこれまで活動してきた人々の努力に対する冒涜であり、わが国におけるこの分野の発展を妨げるものであると説明と意見を述べられる。
(4)セラピードッグは、アニマル・アシステッド・セラピー(動物介在療法)とともに用いられる医療用語であるとともに、アニマル・アシステッド・アクティビティ(医療活動以外の社会活動)に用いられる社会的用語である。
それは既に資料の中にて説明されるとおり、盲導犬や聴導犬と同じサービス犬として、一般名称であることは明らかである。
これの商標登録は、動物と人間の文化の侵害であり、許し難い。
3(ア)被請求人の本件商標は商標法第3条第1項第3号に該当し無効とされねばならない。
a)本件商標「セラピードッグ」が、「レスキュードッグ」や「盲導犬」などの使役犬と同様、医療活動や社会的活動の用語として、一般的用語として使用されていることは書証等により明らかである。
b)「レスキュードッグ」について商願平09-151074号につきなされた拒絶理由通知書とパラレルに評価されるべきものであり、セラピードッグについても同様に拒絶されねばならない。
上記、レスキュードッグ事件において、その拒絶理由として、「『救助』を意味する英語の『RESCUE』の文字と『犬』を意味する『DOG』を書し、その下段に前記英語の発音を片仮名により『レスキュードッグ』と書してなるものであり、全体として『救助犬』の意味を想起させるものであるから、これを本件商標のその役務中「動物の調教、動物の供覧」のように、役務の内容、質を表示するに過ぎないものと認める。したがって・・・商標法第3条第1項第3号に該当する」と判断する。
c)セラピードッグは、医療の場での研究や治療、あるいは社会活動に一般に用いられている言葉である。
「ペット法学会」の会員を中心として、学者、研究者、医師、獣医師、犬の訓練や「セラピードッグ」の社会活動をしている関係者は、研究や社会活動に普通に用いられている言葉が商標登録されることに、強く反対の声をあげている。
セラピードッグについても、前記の「レスキュードッグ」と同様のことが言えるものであり、同様の判断がなされるべきである。
即ち、「『治療』『癒し』を意味する英語の『THERAPY』の文字と『犬』を意味する『DOG』を書し、その下段に前記英語の発音を片仮名により『セラピードッグ』と書してなるものであり、全体として『治療犬』『癒し犬』の意味を想起させるものであるから、これを本件商標のその役務中『動物の調教、動物の供覧』のように、役務の内容、質を表示するに過ぎないものと認められる。したがって・・・商標法第3条第1項第3号に該当する」。
d)商標法第3条の、その物や役務の普通名称であり、「品質」「効能」「用途」「使用の方法」、役務の「提供の質」や「態様」「方法」について普通に用いられるものであり、これらの商標のみからなる本件商標は、商標登録を受けることは許されない。
本件商標は商標法第3条に該当するもので、本件商標は、その登録を無効にされるべきものである。
e)日本レスキュー協会本部長大山(同人は本件出願をした被請求人の代表者)は、本件商標にかかる用語を用いて社会活動をしている請求人らに対して、「セラピードッグ(の用語)を使用するな」との妨害活動を積極的にしてきた。
人と動物との関係の研究や、医療や行政を含む社会活動の基本的用語を商標登録することは許されない。
(イ)被請求人の、本件商標は商標法第4条第1項第7号に反する反社会的なものである。
ア)商標に関する先例につき、「母衣旗事件」東京高等裁判所平成11年11月29日判決(平成10年(行ケ)第18号)において、裁判所は商標法第4条第1項第7号に該当するとして判示している。
本件についても、被請求人において、「セラピードッグ」の独占的使用権限を取得して、他業者の使用を不可能又は困難とさせることを目的として、「セラピードッグ」の使用の用語を断念させようと、兵庫県動物愛護センターでのセラピードッグの講演の妨害や、請求人のセラピードッグの用語の使用について、その妨害行為をしてきた。
本件事件は、母衣旗事件と同様に考えられるべきべきであり、商標法第4条第1項第7号に該当して公序良俗に反すると言うべきである。
イ)母衣旗事件においては、「本件商標を自ら使用する意思をもってその出願に及んだものであるとしても、原告による、町の振興を図るという地方公共団体としての政策目的に基づく公益的な施策に便乗して、その遂行を阻害し、公共的利益を損なう結果に至ることを知りながら、指定商品が限定されるとはいえ、該施策の中心に位置付けられている『母衣旗』の名称による利益の独占を図る意図でしたものといわざるを得ず、本件商標は、公正な競業秩序を害するものであって、公序良俗に反するものというべきである。」とする。
本件についても、セラピードッグが医療活動の用語であり、また社会的ボランティア活動の用語であり、このような公益的な諸活動を進める諸団体や個人の活動を阻害する意図でなされていることは明らかである。
この用語の独占は、公共的利益を損なうものであり、公正な競争秩序を害するものであり、公序良俗に反すると言わざるを得ない。
(ウ)本件商標は、商標法第4条第1項第15号、16号にも反すると言うべきである。
a)セラピードッグは、既に縷々説明し、立証するように、各諸団体や医療現場、ボランティア的な活動をする人々が一般的に使用している状況にある。
これの商標登録は、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずる虞れのある商標」(15号)と言うべきであり、商標登録は許されない。
b)また、「商品の品質又は役務の質の誤認を生ずる恐れのある商標」(16号)にも該当すると言うべきである。
アメリカでは、医療犬としてのセラピードッグには厳しいテストによる認定がなされており、日本では医療の一部に試みに使用されて来つつあるが、社会活動としての「セラピードッグ」の活動は全国各地で積極的になされてきており、被請求人がこの用語を専占して使用することは社会に誤認をさせる商標と言うべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、請求の理由及び第1及び第2弁駁に対して次のように答弁している。
1 請求の理由として、本件商標は、商標法第3条第1項に該当する、とする。しかし、商標法第3条第1項のいずれの規定に該当するか明記されておらず、理由が明らかでないから、本件審判請求は、成り立たない。
2 請求の理由には「アメリカにおいて一般に用いられている『Therapy Dog 』をそのまま用いたものであり、先願権発生日の1997年8月22日以前に日本でも一般に使用されている。したがって、商標法第3条第1項の規定に該当する」旨、主張している。
しかし、ある用語が一般に使用されること自体をもって、商標法第3条第1項に該当するとはいえない。
仮に、一般に用いられている、との主張が普通名称である、としても、本件商標が、日本国内において本件商標の指定役務について普通名称として使用されていたこととする証拠はない。
以下、この点について各証拠毎に反論する。
なお、請求の理由として前記以外の具体的理由については何ら主張していない。
(1)甲第1号証について
甲第1号証は、1999年10月13日に作成されたものであり、本件商標の登録日後のものであって、本願商標についての登録を無効とする根拠とはなしえないものである。
(2)甲第2号証について
甲第2号証は、英文で記載されているものであるところ、外国文について必要とされる訳文がなく、証拠として採用しえないものである。
しかも右下に記載された日付は、1999年12月10日であって、本件商標の登録日以後に作成されたものであるから、この点からも本件商標の登録無効の根拠とはなしえないものである。
(3)甲第3号証について
甲第3号証は、1999年9月7日に作成されたものであって、甲第3号証も本件商標の登録日以後に作成されたものであり、本件商標の無効理由とはなし得ない。
しかも、セラピー犬、セラピードッグの記載は犬の種類を示す造語を記載しているにすぎないもので、本件商標の指定役務について普通名称として使用されているものではない。
(4)甲第4号証について
甲第4号証におけるセラピードッグとの記載は、特定の個人あるいは団体が個人的に使用しているにすぎないもので、これをもって普通名称であるとはいえない。
しかも、甲第4号証におけるセラピードッグとの記載は、いずれも犬の種類としての造語であって、本件商標の指定役務についての普通名称ではない。
(5)甲第5号証について
甲第5号証は、北海道ボランティアドッグの会の会報であり、会報のなかで「セラピードッグ活動」との記載があるように、ボランティアドッグの会の活動の1つを示す用語として使用されているにすぎない用語であり、「ボランティアドッグ」と同様の造語であって、普通名称であるとはいえない。
しかも、犬の種類の造語として使用されているに過ぎないもので、本件商標の指定役務の普通名称として使用されているものではない。
3 被請求人は、平成13年11月8日付けの答弁書(2)において、請求人の提出に係る証第1号証ないし証第30号証について答弁し、本件商標は、商標法第3条第1項のいずれの規定に該当するか明らかでないし、同第3号にも該当しない旨主張している。
さらに、本件審判請求書の請求の理由において、同法第第4条第1項第7号、同15号及び同第16号について、主張していなかった理由を追加したものであるから、請求人の主張は認められない。

第4 当審の判断
請求人は、請求の理由において、商標法第3条第1項に該当する旨主張しているが、該法条は、請求の理由の内容及び証拠よりして、商標法第3条第1項第3号と認められるから、以下同号について主張したものとして以下審理する。
本件商標は、「THERAPY DOG」の欧文字と「セラピードッグ」の片仮名文字を二段に横書きしてなるところ、構成中、前半の「THERAPY」の文字及び「セラピー」の文字は、「治療」等の意味を有する英語及び外来語として親しまれているものであり、また、後半の「DOG」の文字及び「ドッグ」の文字は、「犬」の意味を有する英語及び外来語として親しまれているものである。
ところで、構成中の「セラピードッグ」の文字については、例えば、請求人の提出の甲第3号証によれば、1998年8月15日付けの朝日新聞朝刊(福岡版)に、「犬たちが注ぐ愛情は、高齢者や病気の人たちの心をいやしてくれる―。・・・、が、米国在住の知人らとともに『セラピードッグ(治療犬)』のシステム確立に向けて活動している。患者らが動物と触れ合って心の安らぎを得る動物介在療法(アニマルセラピー)のひとつで、・・・」の記述が掲載され、同じく、1996年8月14日付けの朝日新聞朝刊(奈良版)に「・・・患者が動物と触れ合って心の安らぎを得る動物介在療法の一環で『動物セラピスト(治療士)』『セラピードッグ』と呼ばれている。・・・」の記述が掲載され、同じく、1995年11月9日付けの朝日新聞朝刊に、「・・・欧米では入院患者の心身のリハビリに効果的な『セラピー・ドッグ』を認める病院も増えているが、日本は『動物同伴禁止』が当たり前。CAPP活動の中心となってきた柴内裕子獣医は『一般の家庭犬も、しつけ次第で人間社会の手伝いができることを知ってほしい。地道に市民権を得ていく努力を続け活動の範囲をもっと広げていきたいと思います』と抱負を語った。」の記述の掲載がそれぞれされている。
また、同じく、請求人の提出の甲第4号証の「ヘンリー、人を癒す 心の扉を開けるセラピー犬」(株式会社扶桑社 平成八年十月二〇日発行)に、「ASPCAトレーニング部門の部長、ジャッキー・ショルツ(左)と、セラピー・ドッグ上級クラスのトレーナ、エリザベス・ティール(右)。」の記述とともに写真が掲載され、同じく、「ミッキー・ニエゴ(左)と、セラピー・ドッグのスーパー・スターだったジェイク(ブル・マスチフ)。写真は、食物を前にコントロールを維持する訓練の模範演技です。」の記述と写真が掲載され、同じく、「愛犬の友 1994年6月号」(株式会社誠文堂新光社 1994年6月1日 発行)に、「心の病いを持った人々に会い、ふれ合うことで、精神的な助けとなるセラピー・ドッグとしても活躍する。」の記述と写真が掲載され、同じく、「愛犬の友 1994年3月号」(株式会社誠文堂新光社 1994年3月1日 発行)の表紙に、「特集 不況の時こそ犬は強い見方」、同18ページに「心と体をリフレッシュ!!」の「心の扉を開く欧米でのセラピー・ドッグ」の項に「セラピー・ドッグは、病める国々の政府が考案したことではないのです。犬の効果を知る一般の個人が集まって団体となり、自分達でスポンサーを探し、犬達の援助をしたことから始まりました。・・・」の記述が掲載され、同じく、「日経トレンディ」(1996年9月号 日経ホーム出版社 発行)によれば、「セラピードッグまで登場 米国のペットビジネス最前線」の記述の掲載がそれぞれされ、「セラピードッグ」について紹介されているものである。
以上の事実によれば、「セラピードッグ」の文字は、動物を介して治療等を行う役務を取り扱う業界において、「医療や心理療法において犬を介してその治療や健康づくり、あるいは精神的な癒しの効果のために使用する犬」の意味合いを有するものとして、本件商標の登録査定時には、広く使用されているものというべきである。
また、「THERAPY DOG」の文字は、「医療や心理療法において、犬を介してその治療や健康づくり、あるいは精神的な癒しの効果のために使用する犬」の意味合いを容易に認識させるものと判断するのが相当である。
してみれば、「セラピードッグ」の片仮名文字と「THERAPY DOG」の欧文字とを二段書きしてなる本件商標は、その指定役務中「セラピードッグに関する知識の教授、動物の調教、動物の供覧及び録画済みビデオテープの貸与」に使用しても、本件商標の登録査定時には、これに接する取引者、需要者は、「医療や心理療法において、犬を介してその治療や健康づくり、あるいは精神的な癒しの効果のために使用する犬」の意味合いを認識されていたものであるから、役務の質、提供の用に供する物(犬)、効能、用途若しくは提供の方法を表示したものと理解するにとどまり、自他役務の識別標識としての機能を果たさないものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、その指定役務中「セラピードッグに関する知識の教授、動物の調教、動物の供覧及び録画済みビデオテープの貸与」については、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づいてその登録を無効とすべきである。
しかしながら、本件商標は、その指定役務中「セラピードッグの知識の教授、動物の調教、動物の供覧及び録画済みビデオテープの貸与」以外の指定役務については、商標法第3条第1項第3号を適用するに足りる証拠の提出がないから、その余の役務について、これを無効にすることはできない。
なお、請求人は、弁駁書(2)において、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同15号及び同第16号に違反して登録されたものであるから、無効にすべきである旨主張しているが、該法条に係る請求の理由は、当初の請求書に記載されていなかったものである。
してみれば、弁駁書(2)における該法条についての請求の理由に関する請求書の補正は、その要旨を変更するものであるから、商標法第56条において準用する特許法第135条の規定により、却下すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-12-04 
結審通知日 2001-12-10 
審決日 2002-01-17 
出願番号 商願平9-151075 
審決分類 T 1 11・ 13- ZC (Z41)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 田中 幸一 
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 米重 洋和
宮下 行雄
登録日 1999-02-26 
登録番号 商標登録第4244880号(T4244880) 
商標の称呼 セラピードッグ 
代理人 福島 三雄 
代理人 植田 勝博 
代理人 下垣 邦彦 
代理人 小山 方宜 
代理人 下垣 和久 
代理人 野中 誠一 

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