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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 025
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない 025
審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない 025
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない 025
管理番号 1057249 
審判番号 審判1999-35586 
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-05-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-10-21 
確定日 2002-04-02 
事件の表示 上記当事者間の登録第4123477号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1.本件商標
本件登録第4123477号商標(以下「本件商標」という。)は、平成8年9月26日に登録出願され、「TOMMY BOY」の文字を横書きしてなり、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチ一フ,マフラー,耳覆い,ずきん,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具」を除く。),靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具,げた,草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品として、平成10年3月13日に設定登録されたものである。

2.請求人の引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第2699963号商標(以下「引用商標」という。)は、「TOMMY JEANS」の文字を横書きしてなり、平成3年8月27日に登録出願され、第17類「ジーンズ製被服、ジーンズ製布製身回品、ジーンズ製寝具類」を指定商品として、平成6年11月30日に設定登録されたものである。

3.請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由及び弁駁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第27号証(枝番を含む)を提出した。
(1)本件商標は、引用商標と類似し、その商標登録にかかる指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
本件商標の構成中「BOY」は「少年、男の子」を示す英語であり、この「BOY」の語は本件商標の指定商品の属する被服・繊維業界において「少年用、男の子用」を表すものとして通常に使用されている。即ち、本件商標中「BOY」はその指定商品の用途・品質を表示するものにすぎず、自他商品の識別力がない。
従って、本件商標の要部は「TOMMY」の部分にあり、そこから「トミー」の称呼を生じる。
一方、引用商標は、その構成中「JEANS」の語がその指定商品との関係において甲第4号証及び甲第5号証に明らかなとおり、「綾織りの丈夫な綿布」いわゆるデニム地を指称する語である。即ち、「JEANS」の部分はその指定商品「ジーンズ製被服」との関係において、その品質、素材を表す自他商品識別力のない語である。このことは甲第6号証及び甲第7号証に示す審決例においても明らかである。
従って、引用商標の要部は「TOMMY」であり、そこから「トミー」の称呼を生じる。
してみれば、本件商標と引用商標は、共に「トミー」の称呼を生じるから、称呼上類似する。よって、本件商標は引用商標と類似する商標であるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(2)また、本件商標は、著名なファッションデザイナーである「TOMMY HILFIGER」のデザインにかかる商品を表す商標として本件商標の出願時にはアメリカ合衆国はじめ、南アメリ力諸国、香港、日本等でよく知られていた商標「TOMMY」と類似するものであり、その商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。
なお、請求人である「トミー ヒルフィガー ライセンシング インコーポレイテッド」は上記デザイナー「トミー ヒルフィガー」の商標を所有・管理している会社である。
そして、トミー ヒルフィガーの商品は、最初は紳士衣料・洋品から始まったが、現在では婦人及び子供衣料・洋品、かばん類、香水、眼鏡、靴等広い分野にわたっている。また、トミー ヒルフィガーのショップは、アメリカではいたるところにあるが、日本においては1992年に伊藤忠商事と合弁でトミー ヒルフィガー ジャパンが設立され(甲第11号証)、1993年9月の時点ですでに全国16の百貨店に店舗を展開(甲第12号証)、1996年8月以前の時点では約百店舗となっており、その後さらに増加した。また、売上高は1995年で29億円(卸売りベース)を数え、衣料品市場が低迷している中でも好調のブランドであった(甲第13号証)。
トミー ヒルフィガーは、しばしば「TOMMY」と略称されており(甲第14号証)、今やファッション業界では「TOMMY」といえば「TOMMY HILFIGER」を指すに至っている。
実際に「TOMMY」というブランドで商品も出しており、特に1996年はじめに発売した香水「tommy」は好評を博して一躍有名になった。
かかる状況において、本件商標の「TOMMY BOY」は、上述のとおり、その構成中「BOY」はその商品の用途・品質を表すものとして自他商品の識別力がないから「TOMMY」が要部であり、「トミー」の称呼を生じる。上記請求人の商標「TOMMY」、「TOMMY JEANS」は、いずれも「トミー」の称呼を生じる。
従って、本件商標は、上記周知商標「TOMMY」及び「TOMMY JEANS」とは類似する。即ち、本件商標は、本件商標の出願時において請求人の業務にかかる商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた商標に類似する商標であって、その商品又はこれに類似する商品に使用するものであったから、本件商標の登録は商標法第4条第1項第10号に違反しており、無効とされるべきである。
(3)本件商標は、出願時において著名であったデザイナー、トミー ヒルフィガーの業務にかかる商品と混同を生ずるおそれがある商標なので、本件商標の登録は商標法第4条第1項第15号に違反してされたものである。
即ち、トミー ヒルフィガーはアメリカを代表するデザイナーとして本件商標の出願時である平成8年(1996年)9月26日以前からアメリカはもとより日本においても著名であった(甲第16、17号証)。
また、上述のとおり、トミー ヒルフィガーは、しはしば単に「TOMMY」と略称され、「TOMMY」、「TOMMY JEANS」、「TOMMYGIRL」等の商標をも使用していたことはよく知られていた。特に、最近ではファッションデザイナーの進出がめざましく、ファッションの業界と非常に密接な関係にある香水の分野において1995年に発表した香水「tommy」が大ヒットしたため(甲第15号証)、ファッション業界においては殊更、「tommy」といえばトミー ヒルフィガーを示すという認識が浸透した。
従って、その構成中に「TOMMY」の文字を有する本件商標を見る需要者・取引者が該商標が付された商品とトミー ヒルフィガーの業務にかかる商品との間で出所の混同を生じる蓋然性は高く、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してなされたものであって、無効とされるべきである。
(4)本件商標は、上述のとおり、請求人の業務にかかる商品を表示するものとして日本国内及び外国における需要者の間に広く認識されていた商標と類似の商標であって、不正の目的をもって使用するものである。
そして、請求人の商標「TOMMY HILFIGER」、「TOMMY」、「TOMMY JEANS」、「TOMMY GIRL」、「TOMMY NATURAL」がその業務にかかる商品を表示するものとして、日本及びアメリカ、その他多数の国において需要者の間に広く認識されていたことは前記したとおりである。また、これらの商標は甲第18号証に示したとおり、世界中の国々で商標登録され、実際に使用されている。
かかる状況において、被請求人が、上記著名商標と類似する本件商標を出願したのは、これらの著名商標のグッドウイルにただ乗りしようという意図があったからに他ならない。
従って、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであり、その登録は無効とされるべきである。
(5)弁駁の理由
(イ)本件商標中の「BOY」の識別力について
被請求人は、答弁書において、本件商標「TOMMY BOY」における「BOY」はその指定商品の用途、品質を表示するものではないと述べている。しかしながら、甲第20号証に示したとおり、「BOY」は英語で「少年、男児」を表し、被服の分野においては「少年用衣服のサイズ、少年用サイズの衣服、少年用衣服の売場」を意味する。
よって、本件商標中「BOY」の部分には自他商品の識別力がない。
被請求人は「COWBOY」「PLAYBOY」「MODERNBOY」等の熟語を例にあげて、これらの熟語は一連の語と解されると述べている。
たしかに、これらの熟語は辞書にも載っている周知のものであり(甲第21号証)、全体としてひとつの観念を生じる。だから、このような熟語中の「BOY」はそれだけを取り出して判断されることがないのである。
一方、本件商標「TOMMY BOY」はこのように辞書に載るような一般的な熟語ではなく、特定の意味合いを生じるとは言い難い。とすれば本件商標において上記のような被請求人の主張はあてはまらず、「TOMMY」と「BOY」とに分けて判断するのが当然である。
以上のとおり、特許庁における登録例をみても、被服の分野において「トミー」の称呼を生じる商標は過誤登録を除いては引用商標「TOMMY JEANS」以外にはなく、他の「TOMMY」、「TOMY」及び「トミー」を含む商標はいずれも一連一体のものである。
(ロ)引用商標「TOMMY JEANS」の要部について
被請求人は、請求人が「TOMMY HILFIGER」、「TOMMY」、「TOMMY JEANS」、「tommy girl」、「TOMMY NATURAL」等のブランドを使い分けているから、「TOMMY JEANS」と「TOMMY」とは違うものであり、「TOMMY JEANS」の要部は「TOMMY」ではないと述べている。
しかしながら、これは商標の出所表示機能を全く無視した議論である。たしかに、請求人は上記のようないくつかのブランドを使い分けている。そして、このようなやり方は他の多くのファッションデザイナーやファッションメーカーが取り入れているものであるが、サブブランドというものであり、メインブランドあるいはハウスブランドといわれるものの下にいくつかのザブブランドを創出し、メインブランドのイメージの範囲内で少しずつ変化をつけ、傾向の異なったグループにまとめた商品群を生み出すことでより購買意欲をかき立て、需要を増やそうという一種の販売戦略である。
従って、各々のブランドがすべて同じ出所から流出したと認識されなければこの戦略は成り立たない。 即ち、「TOMMY JEANS」、「tommy girl」、「TOMMY NATURAL」はすべて同じ出所を表示するものであり、これらの商標の要部は「TOMMY」である。
(ハ)「トミー ヒルフィガーの被服業界における著名性について
請求人は、これを示す証拠として、既に提出した甲第13号証に加えて甲第14号証ないし甲第17号証及び甲第19号証を提出する。
請求書においても述べたとおり、「トミー ヒルフィガー」は実際に「TOMMY」というブランドで商品も出しており、特に1995年5月にアメリカで、1996年10月に日本で発売した香水「tommy」は好評を博して一躍有名になった(甲第19号証)。この商品「tommy」はフレグランスのアカデミー賞といわれるFIFI賞において、1996年に5部門で賞を獲得している。又、トミー ヒルフィガーは被服においては「TOMMY HILFIGER」の他、上記の「TOMMY JEANS」、「TOMMY」他の商標をも使用している(甲第15号証)。
これらはいずれも本件商標の出願時である平成8年9月26日以前からファッション業界の取引者及び需要者の間で広く知られていた。
また、甲第17号証及び甲第19号証にも記されているとおり、「トミー ヒルフィガー」は1995年にはCFDA(アメリカ ファッション デザイナーズ協会)のメンズ デザイナー オブジ イヤーに選出され、現在最も注目されるデザイナーのひとりとなっている。
さらに、被請求人は、答弁書において「トミー ヒルフィガー」及びその商品、ブランドについて知らないと述べているが、請求人は、甲第9、12ないし17、19号証他を提出し、「トミー ヒルフィガー」及び彼のデザインするブランド「TOMMY」の著名性について明らかにした。
これらに加えて、請求人は甲第24号証としてアメリカの新聞・雑誌において「トミー ヒルフィガー」及び彼のブランドを取り上げた記事の写しを提出した。これらの記事は本件商標の出願時である1996年9月26日以前のものである。そして、「トミー ヒルフィガー」が、しばしば単に「TOMMY」と称されていたことを示すものである。

4.被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第26号証を提出した。
(1)本件商標と引用商標との比較
本件商標は、「TOMMY BOY」の構成から成り、引用商標は「TOMMY JEANS」の構成から成る。即ち、両者とも「TOMMY」と「BOY」、「TOMMY」と「JEANS」を切り離して別々に配置せず、いずれも一連に配置した一体語として構成されている。
そして、本件商標は「トミーボーイ」の称呼を生じ、引用商標は「トミ一ジ一ンズ」の称呼を生ずる。
したがって、両商標は外観、称呼を異にし、また、観念も異にする。
よって、この両者を認識した者が、時と場所を異にして、いわゆる離隔観察をしたとき、両商標を誤認したり、混同することはない。
(2)本件商標の要部について
「BOY」の語は、初級英語の教科書で少年、男の子を指す英語として教える。しかし、「BOY」の語は、少年、男の子を指すだけでなく、レストランの給仕係やホテルのフロントで待機する顧客の案内係を指す語でもあることは衆人の知っているところである。
また、「BOY」の文字を配した語に「COWBOY」、「PLAYBOY」、「MODERNBOY」と言う語がある。これらの語中に用いられる「BOY」の文字は少年、男の子を指すものではなく、若者、成年、壮年の牧童や、遊び好きの男性やおしゃれな男性を指すことは明らかである。
これらの語から成る商標については一連の語として理解され、これらの語の中から「BOY」の文字を切り離して、その要部は「COW」、「PLAY」、「MODERN」であるとは誰も言わない。
そうすると、本件商標の要部は「TOMMY」の部分にあるとする請求人の主張は、理由がない。
(3)引用商標の要部について
引用商標「TOMMY JEANS」を以て、請求人側は勿論、需要者側も「TOMMY」とは略称しない。引用商標を「TOMMY」と略称したときは、商品の取扱いに混乱を来すことになる。
請求人は、甲第18号証を提出し、「TOMMY HILFIGER」、「TOMMY」、「TOMMY GIRL」、「TOMMY NATURAL」、「TOMMY JEANS」の商標を世界各国で出願しているとしている。そして、請求人は、香水について「tommy」、「tommy girl」、「TOMMY NATURAL」のブランドを出し、被服においては「TOMMY JEANS」、「TOMMY」他の商標をも使用しているとしている。
上記事実は、請求人は香水について、「tommy」、「tommy girl」、「TOMMY NATURAL」のブランドを使い分けていると言うことである。
また、被服についても「TOMMY JEANS」、「TOMMY」のブランドを使い分けしていると言うことである。
普通、JEANS(ジーンズ)と言えば甲第4及び5号証に示すように仕事着、作業着を示す。被服については「TOMMY JEANS」と「TOMMY」の商標を付けた商品とが取り違われても困るわけであり、現に、引用商標は、指定商品について、第17類の「被服、布製身回品、寝具類」とせず、「ジーンズ製被服、ジ一ンズ製の布製身回品、ジ一シズ製寝具類」と限定した上で登録されたものである。
(4)「BOY」の語の識別力について
(イ)日常使われる「BOY」の文字は少年(男の子)を指す語としてのみ使われるものではない。「BOY」の文字は、初級英語の和訳では「少年」、「男の子」と訳すように教わる。しかし、使われる場所によっては、「若い給仕、ボーイ、召使い、ポーター、エレベーターボーイ等」を指す語として使われることもあり、いろいろな場合に年令に関係なく、いろいろな状態にある人を指す語としても用いられる。
このように、「BOY」の語は、使用される場所、使用の仕方によっていろいろの意味に使い分けされ、特に、或る言葉と合成されたときは必ずしも「少年」、「男の子」を指す言葉としてのみ一義的に和訳されるものではない。
そして、合成語中に用いられる「BOY」の文字は、必ずしも少年(男の子)を指す文字としてだけに使用されないことは、前記した通りである。
(ロ)請求人が「BOY」の語は、被服の分野においては「少年用衣服のサイズ、少年用衣服の売場」を意味するとする主張は否認する。
英語を以て少年用被服、少年用被服売場などを指す語は、紳士用服、紳士服売場などを指す語として「MAN」、或は「MAN」の複数を指す「MEN」とは言わず「MENS(メンズ)」の語を用いるように、「BOY」とは言わず「BOYS(ボーイズ)」の語を用いるものである。
(ハ)請求人は、本件商標と引用商標が要部を同じくすると言う外に、トミー ヒルフィガーがファッション界では有名であること、同人の取扱商品には紳士服、洋品から始まって婦人服及び子供衣料、洋品、かばん類、香水、眼鏡、靴等の広い分野にわたっているとし、それぞれの業界で同人が使用する「TOMMY(トミー)」のブランドは有名になっていると述べて、「TOMMY」を要部とする本件商標は、商標法第4条第1項第10、11、15、19号の規定に該当して登録されたものであると主張している。
しかしながら、本件商標を構成する「TOMMY BOY」の文字中の「BOY」の文字が自他識別力をもたないとする請求人の主張が誤りであること、並に、本件商標が「TOMMY」と「BOY」の文字を熟語調に合成した造語であって、「TOMMY」と「BOY」の文字または称呼を切り離して観察するものでないことは前記したとおりである。従って、本件商標は、引用商標と要部を同じくすると言う請求人の主張は誤りである。
そして、被請求人は「トミー ヒルフィガー」なる人物が請求人の言うように有名人であるかどうかは知らない。
また、同人の扱う商品について、「TOMMY(トミー)」のブランドを使用するかどうかは知らない。更に、そのブランドが請求人の言うように有名であるかどうかは知らない。
仮に、請求人の主張するように「TOMMY(トミー)」のブランドがファツンョン界で有名であったとしても、その表示と本件商標とは自他識別機能を異にし、これを以て、本件商標は、商標法第4条第1項の各号に該当するものではない。

5.当審の判断
(1)本件商標と引用商標の類否
(ア)本件商標
本件商標の構成は、前記に示すとおり「TOMMY BOY」の欧文字を横書きしてなるものである。
(イ)引用商標
引用商標の構成は、前記に示したとおり「TOMMY JEANS」の欧文字を横書きしてなるものである。
(ウ)本件商標と引用商標の比較
本件商標と引用商標は、上記のとおりであって、外観においては明らかに区別し得る差異を有する類似しない商標であると認められ、この点については当事者間に争いはない。
次に、称呼について比較するに、本件商標は、その構成文字全体は、同じ書体で同じ大きさの文字をもって外観上まとまりよく一体的に表されており、これより生ずると認められる「トミーボーイ」の称呼は、冗長というべきものでなく、簡潔に一気に称呼し得るものであって、その構成文字全体をもって一体不可分のものと認識し把握されるとみるのが相当である。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して「トミーボーイ」の称呼を生ずるにすぎないといえるものである。
これに対し、引用商標も、その構成文字全体は、同じ書体で同じ大きさの文字をもって外観上まとまりよく一体的に表されており、これより生ずると認められる「トミージーンズ」の称呼は、冗長というべきものでなく、簡潔に一気に称呼し得るものであって、その構成文字全体をもって一体不可分のものと認識し把握されるとみるのが相当である。
そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して「トミージーンズ」の称呼を生ずるにすぎないといえるものである。
なお、請求人は、両商標の構成中の「BOY」又は「JEANS」の文字について、証拠を挙げて該語が商品の品質を表示するものである旨を主張しているが、両商標の構成においては上記の判断を妥当とするところであり、これらの主張は採用することができない。
しかして、本件商標と引用商標は、それぞれより生ずる上記称呼の後半部において「ボーイ」と「ジーンズ」の顕著な差異を有するものであるから、称呼上は明確に区別され相紛れるおそれはないものというべきである。
さらに、観念については、本件商標と引用商標は共に造語と認められるから、特定の観念を生ずるものとはいえず、比較することができない。
したがって、本件商標は、引用商標とその外観、称呼及び観念のいずれにおいても類似しない商標といえるものである。
(2)本件商標の出所の混同のおそれの有無
本件商標と引用商標は、前示認定したとおり類似しない商標であり、かつ、請求人が所有・管理しているとされるファッションデザイナー トミー ヒルフィガーのデザインにかかる商品を表す商標「TOMMY」は、提出に係る甲各号証によっては、デザイナー トミー ヒルフィガーがファッション界において相当程度知られていたことが認められるとしても、該「TOMMY」の商標が需要者の間に広く認識されていたことを証明するものとしては不十分なものであって、その他、両商標間に誤認混同を生じる事由はなく、別異の商標といわざるを得ないから、本件商標をその指定商品に使用した場合、本件商標から請求人又は上記デザイナーを想起させることはないといえるものである。
したがって、本件商標は、請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのようにその出所について混同を生ずるおそれは認められない。
(3)本件商標は不正の目的をもって使用をするものであるか否か
前示(1).(2)のとおりであって、請求人の提出に係る証拠を検討したが、本件商標は、請求人がその業務に係る商品(被服、香水など)に使用する商標の出所表示機能を希釈化させたり又はその名声を毀損させるなど不正の目的をもって出願されたものとは認められない。
(4)結語
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものではなく、その登録は同法第46条第1項第1号により無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-10-25 
結審通知日 2001-10-30 
審決日 2001-11-20 
出願番号 商願平8-108469 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (025)
T 1 11・ 222- Y (025)
T 1 11・ 26- Y (025)
T 1 11・ 25- Y (025)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 飯島 袈裟夫 
特許庁審判長 三浦 芳夫
特許庁審判官 滝沢 智夫
中嶋 容伸
登録日 1998-03-13 
登録番号 商標登録第4123477号(T4123477) 
商標の称呼 トミーボーイ、トミー 
代理人 鳥羽 みさを 
代理人 松原 伸之 
代理人 浜田 廣士 
代理人 中山 健一 
代理人 村木 清司 
代理人 志村 正和 

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