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審判番号(事件番号) データベース 権利
審判199830703 審決 商標
取消2012300362 審決 商標

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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 104
管理番号 1055530 
審判番号 審判1999-30688 
総通号数 28 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-04-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 1999-06-03 
確定日 2002-03-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第2641656号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第2641656号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示したとおりの構成のものであり、平成3年7月12日に登録出願、第4類「せつけん類(薬剤に属するものを除く)歯みがき・化粧品(薬剤に属するものを除く)香料類」を指定商品として、同6年3月31日に登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、「商標法第50条第1項の規定により、登録第2641656号、第4類『せっけん類(薬剤に属するものを除く)・化粧品(薬剤に属するものを除く)』の商標の登録を取り消す」との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
(1)請求の理由
本件商標の商標権者は、甲第2号証の商標登録原簿によれば、株式会社東京放送である。
ところが、過去、継続して3年以上日本国内において、株式会社東京放送が本件商標を指定商品について使用したものと認められない。また、商標登録原簿上、使用権者が登録されていないから、使用権者が本件商標を指定商品について使用しているとも認められない。
以上の理由から、本件商標は、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが指定商品について使用をしていないものと認められる。よって、商標法第50条第1項の規定により、指定商品についての本件商標の登録は、取り消されるべきものである。
(2)弁駁(第1回)
乙第1号証は、1999年度版の株式会社東京放送の「会社案内」である。そこには、放送事業(営業)の概要や放送番組についての記載はあるが、本件商標の指定商品中の「せっけん類(薬剤に属するものを除く)・化粧品(薬剤に属するものを除く)」についての使用の事実を示すものは全く存在しない。
また、乙第2号証は、株式会社東京放送の定款である。そこには、日用品雑貨などの商品販売に関する記載があるものの、本件商標の指定商品中の「せっけん類(薬剤に属するものを除く)・化粧品(薬剤に属するものを除く)」についての使用の事実を示すものは少しも存在しない。
なお、被請求人は、乙第1号証及び乙第2号証の記載内容や、さまざまな活動を幅広く行っていることから、株式会社東京放送の略称「TBS」が民間の放送局を表示するものとして著名であるなどと主張している。しかし、略称「TBS」が民間の放送局のサービスマークとして著名であるかないかは、本件の取消審判と関係のないことである。
乙第3号証は、1999年4月19日放送の放送番組のタイトル「買物大図鑑」の音声付のビデオテープである。そこには、副タイトルとして、「TBSの社員とスタッフが厳しい目で選んだ商品」あるいは「TBS TASTE」などが付され、販売商品の1つとして「TIGI」ブランドの「シャンプー及び頭髪用化粧品」が紹介されている。
しかし、それらの商品「シャンプーおよび頭髪用化粧品」に関して本件商標の表示や、音声(ナレーション)は、記録画像中に全く存在しない。
なお、記録画像中の「TBS TASTE」や「TBSショッピング」などの表示、及びその音声は、通信販売の事業主体あるいは放送事業者を表示するものとして消費者に認識され、通信販売の放送によって宣伝されている商品の商標を表すものとなっていない。商品「シャンプーおよび頭髪用化粧品」のブランド(商標)は、記録画像中で当該商品とともに表示される「TIGI」にほかならない。このことは、乙第7号証の顧客受注照会の「TIGIヘアケアセット」の表記からも明らかである。
したがって、乙第3号証は、指定商品中の「せっけん類(薬剤に属するものを除く)・化粧品(薬剤に属するものを除く)」について本件商標の使用の事実を証明するものとならない。
乙第4号証の1、乙第4号証の2、乙第5号証及び乙第6号証は、TBSテレビ放送連携の通販カタログまたはショッピングマガジンであるが、そこには、請求に係る指定商品「せっけん類(薬剤に属するものを除く)・化粧品(薬剤に属するものを除く)」の掲載はなく、もちろん本件商標の使用の事実を示すものは存在しない。
乙第7号証は、報告書及びその添付資料「TIGIヘアケアセット」の顧客受注紹介画面の写しであるが、本件商標の指定商品中の「せっけん類(薬剤に属するものを除く)・化粧品(薬剤に属するものを除く)」についての使用の事実を証明するものとなっていない。それは、本件と関係のない「TIGIヘアケアセット」に関するものでしかない。
次に、顧客受注紹介画面の写しは、いずれも、ブランド(商標)「TIGI」を表示した上での商品「ヘアケアセット」の取引書類であり、当該商品について本件商標の使用の事実を立証していないから、本件商標の使用の事実を証明する資料となり得ない。
なお、報告書および多くの取引書類の中で、「商品シャンプーおよび頭髪用化粧品」のブランド(商標)は、当該商品とともに表示される「TIGI」にほかならない。
乙第8号証は、商品(「TIGI」ヘアケアセット)のパッケージの写真及びパッケージ内の当該商品の写真である。
写真のパッケージは、発送用の梱包箱であり、その商品(「TIGI」ヘアケアセット)についてのみ使用する包装または容器でない。このことは、パッケージの側面に「食品、特注品、オーダーメード商品、一度ご使用になった商品(開封された映像ソフト、音源ソフト等を含む)、セット販売品の一部、・・」などと記載されていることから明らかである。すなわち、写真のパッケージは、注文に基づいて注文主に、1または2以上の商品を詰め合わせ、混合して一度に輸送する過程で、販売対象の全ての商品に用いられる汎用の梱包箱である。
したがって、このパッケージの側面に「TBS」の表示があり、このパッケージの中に商品(「TIGI」ヘアケアセット)が収まっていたとしても、それらの写真は、請求に係る指定商品について本件商標の使用の事実を証明することにならない。
ちなみに、これらの写真に、撮影年月日、撮影者が明記されていない。これらの写真は、発送を想定し、梱包態様の一例として、審判請求後に作成されたものであろう。
ところで、以上の乙第1号証ないし乙第8号証において、それらに表示されている「TBS」の文字は、明朝または角ゴシックの印刷書体である。
これに対して、本件商標は、高度に図案化され、それ自体で「TBS」と判読できない程度の特殊なローマ文字(字形)である。
実際の取引過程において、「TBS」の文字が併記されていれば本件商標は、「ティービーエス」と読めないこともない。しかし、本件商標が単独で表記されているとき、それは、常識的に考えて、とても「ティービーエス」と読めない文字である。
このように、本件商標と「TBS」とは、著しく表示態様を異にしており、社会通念上も、もちろん審査基準の判断でも、同一と認められる範囲を大きく逸脱している。
この理由から、明朝または角ゴシックの「TBS」の使用は、本件商標の使用を立証するものとならない。
被請求人は、参考資料1及び参考資料2を提出して、放送事業についての登録商標「TBS」の著名性や、本件商標について「・・取り消されても..」と仮定して、その時の審判請求の利益について言及しているが、それらの事柄は、商標登録の取消審判の成立と無関係である。
(3)弁駁(第2回)
株式会社東京放送の略称「TBS」は、民間の放送局のサービスマークとして著名であっても、本件商標の指定商品中の「せっけん類(薬剤に属するものを除く)・化粧品(薬剤に属するものを除く)」について、略称「TBS」は、周知著名といえないし、被請求人も、その立証をしていない。もっとも、サービスマーク「TBS」の周知著名性の有無は、これと異なる本件商標の取消審判と関係のないことであり、立証するに及ばない。
乙第9号証(竹内隆一の証人申請書)は、審判事件答弁書(第2回)により新たに提出された。請求人は、前回の審判事件弁駁書で、乙第8号証の商品「TIGI」ヘアケアセットのパッケージの写真及びパッケージ内の当該商品の写真について、撮影年月日、撮影者の記載のないことなどを指摘した。
この指摘に関連し、被請求人は、乙第9号証(証人申請書)により補強しようとしている。しかし、乙第1号証ないし乙第8号証の証拠収集や、書証の成立を証明したところで、すでに記載したように、乙第1号証ないし乙第8号証は、本件商標の使用の事実を証明することにならない。この理由から証人申請は、本件商標の使用の事実の立証と無関係であり、不要である。
乙第10号証(包装資材の納品書)、乙第11号証(宅急便/売上票写し)及び乙第12号証(竹内隆一の報告書)は、平成12年8月17日付けの証拠提出書により新たに提出された。
これらから、平成11年6月3日以前の包装資材としての「TBSショッピング8」の存在、平成11年6月3日以前の包装資材(パッケージ)による商品「TIGI」ヘアケアセットの発送の事実が推認できるが、乙第8号証(商品「TIGI」ヘアケアセットのパッケージ)は、専ら使用に係る商品(商品「TIGI」ヘアケアセット)についてのみ用いられているものでないから、これらの乙第10号証(包装資材の納品書)、乙第11号証(宅急便/売上票写し)及び乙第12号証(竹内隆一の報告書)も、また本件商標の使用の事実を立証するものとならない。
被請求人は、「TBS」から「ティービーエス」の称呼がでるのであるから、「TBS」の使用は、本件商標の使用に相当するとの趣旨の主張をしているが、その趣旨の主張は、誤りである。
そのような主張は、2つの商標の間での類似の判断にもとづいているからである。登録商標の使用に関する審査基準の事例を参照されれば明らかなように、登録商標の使用に関する審査基準は、商標の同一性に基礎を置いており、商標の類似の判断と必ずしも一致しない。
ちなみに、商標権者は、指定商品について本件商標の使用をする権利を専有するが、本件商標の類似の範囲について、使用をする権利を専有せず、いわゆる禁止権を有するにすぎない。かりに、商標権者がシャンプーについて「TBS」を使用していたとしても、その使用は、本件商標の禁止権の範囲の使用に相当し、商標法により付与されたいわゆる専有権に基づく使用に当たらない。
また、審判請求の利益は、審判請求の成立要件ではない。

3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由及び請求人の弁駁に対する答弁を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第11号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)答弁の理由
被請求人は、1951年(昭和26年)5月17日に設立されて以来、 「TOKYO BROADCASTING SYSTEM(東京放送)」の略称「TBS」として国内外で広く親しまれ、今日では国内最強の民放ネットワークと世界17都市に網羅された海外支局を誇る民放放送局の一つである。
また、メディア放送以外にも映画・音楽・イベントの企画・運営及びショップ・通信販売によるマーチャンダイジング等の様々な活動を幅広く行っている。そのため、本件商標「TBS」が被請求人の略称であることは著名である(乙第1号証)。
被請求人は、1997年(平成9年)11月よりマーチャンダイジングの一貫として、略称「TBS」の知名度から、「TBSの社員とスタッフが厳しい目で選んだ商品」を「TBS TASTE」と名付けて放送番組やショッピングマガジンによって様々な商品を紹介・販売している。その放送番組の一つであり不定期に放送されている「買物大図鑑」では、「TBS TASTE/買物大図鑑」と番組中に表示するとともに(乙第3号証 1999年4月19日放送 「買物大図鑑」ビデオテープ)、「TBSの社員とスタッフが厳しい目で選んだ商品」として「TIGI」ブランドのシャンプー及び頭髪用化粧品を紹介している。そして、被請求人は、乙第6号証として添付した商品パッケージ及び見本写真からも明らかなように、注文する需要者に本件商標の表示されたパッケージを使用して送付することで当該商品を販売している(乙第4号証の1「TBS TASTE」vol.1(パイロット版)写し、乙第4号証の2「TBS TASTE」vol.1(1997.12)写し、乙第5号証「TBS TASTE」vol.2写し、乙第6号証「TBS TASTE」vol.3、乙第7号証 報告書「TIGI ヘアケアセット 顧客受注照会」について、乙第8号証 商品パッケージ及び見本写真)。
したがって、被請求人が本件商標を指定商品中「せっけん類(薬剤に属するものを除く),化粧品(薬剤に属するものを除く)」について使用していることは明らかである。
被請求人の放送業に係る登録商標「TBS」(商標登録第2641656号)は著名商標であることから、仮に本件商標の指定商品中「せっけん類(薬剤に属するものを除く),化粧品(薬剤に属するものを除く)」について取り消されても、請求人が同商標を出願した場合には、商標法第4条1項15号及び商標法第4条1項19号に該当し、請求人の出願商標は拒絶査定とされることは明らかであり、審判請求の利益がない。
(2)答弁(第2回)
乙第1号証及び第2号証中には、本件商標の指定商品「せっけん類(薬剤属するものを除く),化粧品(薬剤に属するものを除く)」の販売に関する直接的な記載はされてない。しかしながら、審判被請求人がマーチャンダイジング形式を取った雑貨・ファッション関連商品全般の(通信)販売を行っていることは明らかであり、商品の流通経路や需要者・一般取引者の年齢層から見てもライフスタイルをコーディネイトするという意識が高く、本件指定商品が被服・身飾品とともに雑貨・ファッション関連商品を構成することから、本件指定商品もマーチヤンダイジング商品の一部として含まれることを示すものである。
乙第3号証ないし乙第8号証は、被請求人が行っている「TBSショッピング」及び「TBS TASTE」の放送・販売内容及び通信販売商品の1つであり本件商標の使用に係る「TIGIヘアケアセット」の商品見本及び同商品パッケージ写真等である。
乙第7号証の報告書は、「TBS」ショッピングの通信販売によって、審判請求の登録前3年以内に被請求人が「TIGIヘアケアセット」の通信販売を受注し、販売したことを明らかにしている。
これら被請求人の不定期放送番組「買い物大図鑑」(ビデオテープ等)では番組名を「TBS TASTE/買物大図鑑」と表示するとともに、実際に「TBSのスタッフが選んだ商品」として被請求人「TBS」のショッピングコーナーとなる放送番組で「TIGIヘアケアセット」を宣伝したことは明らかである。更に、パッケージに標章「TBS」を付して「ヘアケアセット」を包装し、注文に応じて販売したことは明らかである。
ヘアケアセット商品は「TBS」のパッケージに包装されて「TBS」の品質保証又は信用により流通するのであって、当該証拠は本件指定商品中「せっけん類(薬剤に属するものを除く),化粧品(薬剤に属するものを除く)」を被請求人が使用していることを立証するものである。
被請求人の通信販売パッケージ「TBS/ショッピング」はアルファベット文字「TBS」とそれよりも小さく表記された片仮名「ショッピング」より構成される。本件商標の「ショッピング」部分は「買い物」全般を示す品質表示であり、「TBS」の文字が特段に大きく上段に表記されているため、需要者は当該パッケージの「TBS」部分によって被請求人の販売する商品であると認識して購入するものであり、商標としての機能を有する。
よって、需要者の注文に応じて商品を販売する際に包装する「TBS」パッケージは商標としての識別機能を有し、本件商標「TBS」と同一の商標であるから、パッケージの使用が本件商標を使用する事実を示すことは明らかである。
当該パッケージ写真には、撮影日等を明記していないが、乙第7号証として提出した報告書添付の受注照会やパッケージが本審判請求前に存在していたことは明らかであり、乙第1号証ないし乙第8号証については、人証を以て補強する(乙第9号証 証人申請書/株式会社東京放送 総務部 部長:竹内 隆一)。
請求人は、本件商標の態様について「ティービーエス」と読めない文字である旨を言及しているが、本件商標が請求人の出願商標(商願平11-39874号)の引例商標となっていることからも明らかなように、本件商標はある程度図案化された態様であっても称呼「ティービーエス」を生ずるものであり、社会通念上同一である(参考資料3 商願平11-39874号閲覧申請書類写し)。
請求人は、本件商標の取消しと「TBS」の著名性については無関係である旨主張する。しかし、被請求人の「放送・広告業」に係る登録商標「TBS」が著名であれば、本件商標の指定商品中「せっけん類(薬剤に属するものを除く),化粧品(薬剤に属するものを除く)」について取り消されても、請求人が出願した商願平11-39874号は、商標法4条1項15号及び4条1項19号に該当するため、拒絶査定とされることは明らかであり、審判請求の利益がない。
(3)答弁(第3回)
乙第10号証は、本件審判が請求された平成11年6月3日以前に、被請求人が「TIGI ヘアケアセット」を含めた「TBS」ショッピングの商品を発送する際に使用した包装資材に関する納品書(写し)である。
「TBS」ショッピング商品の発送に係る委託関係については、各証拠には記載されていないが、被請求人が被請求人関連会社である「東京都港区赤坂五丁目3番6号 赤坂メディアビル」所在の「TBSテレビショッピング 株式会社グランマルシェ」に物流業務を委託し、株式会社グランマルシェは「東京都中央区銀座二丁目16番10号」所在の「ヤマト運輸株式会社(新東京ロジステイック営業所)」に商品配送業務を委託している。ヤマト運輸株式会社(新東京ロジスティック営業所)では「TBS」ショッピングの梱包資材を「東京都江東区海辺8番4号」所在の「千代田梱包工業株式会社」に発注している。
なお、当該納品書中の品名欄「TBSショッピング 8」及び「TBSショッピング12」の数字部分は梱包資材のサイズを示しており、本件に係る「TIGIヘアケアセット」については「TBSショッピング 8」により発送されている(乙第12号証 報告書 「TIGIヘアケアセット」パッケージについて)。
乙第11号証は、本件審判が請求された平成11年6月3日以前に本件に係る商品「TIGI ヘアケアセット」を当該パッケージにより発送したことを示す宅急便/売上票(写し)である。
よって、本件審判請求以前に「TBSショッピング」のパッケージにより「TIGI ヘアケアセット」が販売され、当該パッケージの使用は本件商標を使用する事実を示すことは明らかである。

4 当審の判断
(1)審判請求の利益の主張について
商標法第50条の規定に基づく商標登録の取消しの審判は、何人も請求できることが、その条文上明らかであるから、請求人は、本件審判を請求することができるものであり、請求人には本件審判を請求する利益がない旨の被請求人の主張は失当であって採用できない。
(2)被請求人による商標の使用事実について
乙第1号証ないし乙第8号証、乙第10号証ないし乙第13号証及び主張の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
ア 被請求人は、1951年(昭和26年)5月17日に設立の民間放送会社であって、「TOKYO BROADCASTING SYSTEM(東京放送)」の略称「TBS」で広く親しまれおり、本来の放送事業以外の事業も行っており、テレビ放送などで商品を紹介し販売する事業もその一つであること。
イ 被請求人は、「TIGI ヘアケアセット」という商品名のトリートメント、シャンプー及びスタイリング剤をセットにした商品(以下「本件使用商品」という。)をテレビ番組中において紹介し、本件使用商品について平成11年4月3日から同年7月13日にかけて少なくとも100件を越える注文があり(複数セットを注文しているものもある。)、その配送をヤマト運輸株式会社に指示したこと。
ウ ヤマト運輸株式会社は、平成11年4月13日に、被請求人から少なくとも39件の本件使用商品の配送を依頼されたこと。また、その配送売上票(乙第11号証)の「発送元」の欄には、「TBSショッピング配送センター」の文字の記載、商品名の欄には「TIGIヘアケアセット」の文字の記載があり、左下にはやや大きい文字で「TBSショッピング」と横書きされていること。
エ ヤマト運輸株式会社は、被請求人から依頼された本件使用商品の配送をする際に、少なくとも平成11年4月前後の時期は、乙第8号証の写真に写っている段ボール箱に包装して配送していたこと。また、前記段ボール箱の上面には「TBS」と「ショッピング」の文字が上下二段に横書き表示されていること。
そして以上の事実によれば、乙第11号証の配送売上票の左下に横書きされている「TBSショッピング」の文字は、需要者に被請求人の使用する販売標として認識されるものと認められるから、被請求人は、本件使用商品に関する取引書類にこの販売標を商標として付して頒布したものということができる。また、前記配送売上票を頒布した時期は、ヤマト運輸株式会社が被請求人から少なくとも39件の本件使用商品の配送を依頼され注文主である需要者に配送した時と解されるから、被請求人から配送を依頼された平成11年4月13日から間もない時期と推認できる。
同様に、乙第8号証の写真に写っている段ボール箱の上面に表示されている上下二段の「TBS」と「ショッピング」の文字も、需要者に被請求人が使用の販売標として認識され、また、この段ボール箱に包装されている本件使用商品は被請求人の販売に係る商品であるから、被請求人は、本件使用商品の包装に前記上下二段の「TBS」と「ショッピング」の文字からなる販売標を商標として付して使用したものということができる。
ところで、請求人は、乙第8号証の写真に写っている段ボール箱は、本件使用商品についてのみ用いられているものでなく、注文主に、一または二以上の商品を詰め合わせ、混合して一度に輸送するときに用いられる汎用の梱包箱であるから、そこに「TBS」の表示があり、本件使用商品が収まっていたとしても請求に係る指定商品について本件商標の使用の事実を証明することにならない旨主張する。
しかし、本件の場合、前記段ボール箱が汎用の梱包箱であるかないかによって、前記段ボール箱の上面に表示されている上下二段の「TBS」と「ショッピング」の文字が需要者に被請求人の販売標として認識されたり、されなかったりするということはないものであり、また、前記段ボール箱に包装されている本件使用商品も被請求人の販売に係る商品であるから、前記認定のとおり、被請求人は前記上下二段の「TBS」と「ショッピング」の文字からなる販売標を本件使用商品の包装に商標として付して使用したものということができる。
(3)被請求人の使用商標と本件商標の同一性について
前記配送売上票の左下に横書きされている「TBSショッピング」の文字からなる商標(以下「使用商標A」という。)は、別掲(2)に示すとおりであり、また、前記段ボール箱の上面に表示されている上下二段の「TBS」と「ショッピング」の文字からなる商標(以下「使用商標B」という。)は、別掲(3)に示すとおりである。
また、使用商標A及び使用商標Bの構成中の「ショッピング」の文字は「買い物」を意味する語であって、自他商品の識別機能がないことから、需要者は、使用商標A及び使用商標Bの構成中の「TBS」の文字部分によって被請求人の販売する商品であると認識して商品を購入するものであり、この文字部分(以下「使用TBS」という。)が商標としての識別機能を果たすものといえる。
そして、本件商標と「使用TBS」を比較すると、その外観において違いはあるが、本件商標は、「TBS」の略称で知られている被請求人が自己のマークとして一時期使用した事実もあり、かつ、いまだに欧文字の「TBS」をデザインしたものであろうとみられる外観を有しているうえ、これより生ずると認められる「ティービーエス」の称呼及び被請求人を示すマークとして認識されると認められるその観念において「使用TBS」のそれと共通することは明らかである。
そうすると、使用商標A及び使用商標Bは、本件商標と社会通念上同一の商標と認めるのが相当である。
(4)本件使用商品について
本件使用商品は、前記認定のとおり、トリートメント、シャンプー及びスタイリング剤をセットにした商品であって、シャンプーは、本件商標の指定商品中の「せっけん類(薬剤に属するものを除く)」に属する商品であり、トリートメント及びスタイリング剤は、本件商標の指定商品中の「化粧品(薬剤に属するものを除く)」に属する商品と認めることができる。
(5)以上によれば、本件審判の請求の予告登録(平成11年9月8日)前3年以内に日本国内において、商標権者(被請求人)が本件請求に係る指定商品「せつけん類(薬剤に属するものを除く)・化粧品(薬剤に属するものを除く)」に含まれている商品について、本件商標を使用したものであるから、本件商標登録は、本件請求に係る指定商品について、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (1)本件商標

(2)使用商標A

(3)使用商標B

審理終結日 2001-12-27 
結審通知日 2002-01-07 
審決日 2002-01-18 
出願番号 商願平3-73701 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (104)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 俊男 
特許庁審判長 野本 登美夫
特許庁審判官 上村 勉
村上 照美
登録日 1994-03-31 
登録番号 商標登録第2641656号(T2641656) 
商標の称呼 テイビイエス 
代理人 安原 正之 
代理人 安原 正義 
代理人 中川 國男 

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