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審決分類 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない 030
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない 030
管理番号 1052024 
審判番号 審判1997-5876 
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1997-04-10 
確定日 2001-12-12 
事件の表示 平成 6年商標登録願第102078号拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲のとおり「肉桂餅」の文字を縦書きした構成よりなり、第30類に属する商品を指定商品として、平成6年10月6日に登録出願、指定商品については、平成8年8月14日付手続補正書をもって「肉桂入り餅菓子」とする補正がされたものである。

2 当審における証拠調べ結果の通知
当審において、本願について改めて証拠調べを行った結果、本願商標をなお、商標法第3条第1項第3号に該当すべきものとする新たな証拠を発見したので、商標法第56条において準用する特許法第150条の規定により、請求人に対し、期間を指定して意見を述べる機会を与えて通知した審尋書の内容は以下のとおりである。
<審尋書>
1.岐阜県・池田町の発行に係る観光案内パンフレット「でい・とりっぷ」及び ガイド・マップ「IーPAL」において、また、池田町商工会がいわゆるインタ ーネットホームページ(http://:www.town.ikeda.gifu.jp/sangyo.htm)上において、「池田といえば、『肉桂餅』。薄皮のお餅にこし餡を入れてニッキをほんのりと・・・」と紹介し、同町の名産品の一つとして肉桂入り餅菓子について「肉桂餅」の文字(標章)を使用し、宣伝している事実が認められる。
2.岐阜県・揖斐川町が、観光案内パンフレット「いびがわ」において、「揖斐川町は、香りのよさに定評のあるお茶の産地です。・・・その他にも・・『肉桂餅』など・・数多くあります。」と紹介し、同町の名産品の一つとして肉桂入り餅菓子について「肉桂餅」の文字(標章)を使用し、宣伝している事実が認められる。
3.全国6つの地域にある池田町が共同して作成した全国池田町・ガイドブック「ザ・イケダ」において、岐阜県・池田町の名産品の一つとして「肉桂餅」が紹介されている事実が認められる。
4.請求人(出願人)の他、少なくとも下記の者が現に肉桂入り餅菓子について「肉桂餅」の名称(標章)を使用している事実が認められる。
(1)岐阜県揖斐郡池田町池野496
有限会社肉桂餅本舗いげたや
(2)岐阜県揖斐郡池田町青柳91ー1
餅松(馬淵静子)
(3)岐阜県揖斐郡揖斐川町三輪716
株式会社神原屋
(4)岐阜県揖斐郡揖斐川町三輪1150ー2
馬淵製菓(馬淵 清)
(5)岐阜県揖斐郡揖斐川町市場1001ー3
伊吹堂(窪田悦郎)
(6)岐阜県揖斐郡揖斐川町北方1328ー1
催花堂(河瀬 弘)
(7)岐阜県揖斐郡大野町黒野860ー1
うぐいす堂(宇佐美邦夫)
(8)岐阜県揖斐郡大野町黒野1661
関谷製菓(関谷 務)
(9)岐阜県揖斐郡大野町黒野706
美野屋本店(所 一子)
5.西日本スポーツ(昭和56年8月13日付)、新潟日報(昭和56年8月15日付)及び山陽新聞(昭和56年8月21日付)紙上において、いげたや肉桂餅本舗の「肉桂餅」が紹介されていること。
6.「和菓子百楽」(仲野欣子著 株式会社里分出版 昭和58年10月20日発行)及び「和菓子の旅」(柳原敏雄著 株式会社共同通信社 発行日昭和60年12月7日)によれば、「肉桂餅」の製造元として岐阜県揖斐郡池田町在の「いげたや肉桂餅本舗」が紹介されていること。
7.前出「有限会社肉桂餅本舗いげたや」が古くより、旧々第43類「肉桂餅」を指定商品とする別掲のとおりの登録第506347号商標を所有しており、「肉桂餅」がすでに当時から菓子の一名称として使用されていたものであること。
以上によれば、「肉桂餅」の文字(標章)は、請求人以外の者により肉桂入りの餅菓子の名称若しくはその品質表示語として取引上普通に使用されているものと認められるから、本願商標について請求人(出願人)の述べる商標法第3条第2項の適用の主張は俄には認め難く、したがって、「肉桂餅」の文字(標章)を商標登録し特定の者に独占させることは適切でないものと判断される。

3 審尋に対する請求人の回答
請求人は、平成12年9月13日付け回答書をもって、当審が示した前記審尋に対し、要旨次のように意見、回答を述べ、反論している。
(1)審尋書において、岐阜県の揖斐川郡において複数の店舗が「肉桂餅」なる文字商標を使用している事実がある旨記載されている(審尋書の1.項から6.項)。岐阜県内で販売されている「肉桂餅」がいつの時点から、どのような経緯で販売されてきたかは不知であるが、これまで提出した証拠から少なくとも審尋書で示された事実が生じた日時には、請求人の「肉桂餅」は全国的に周知であった。
すなわち、審尋書の1.項から6.項において示されている使用事実は、昭和50年代以降に生じたものである。また、インターネットが普及したのは本願出願の後であり、出願後にインターネットにおいて使用された事実により、周知商標が保護されなくなるのは不合理である。
一方、甲第4号証は戦前に発行された刊行物であり、甲第5号証、甲第6号証、甲第7号証は、昭和20年代に発行された刊行物である。上記各刊行物は、新聞や雑誌ではなく、図書館等にて保存されている書物として発行されている。さらに、既に提出した証拠により、本願出願人に係る商標が記載された書物や雑誌が昭和50年代まで多数発行されており、本願出願人に係る「肉桂餅」なる商標は、審尋書において示された事実が発生した以前から周知に至っていたものである。
(2)審尋書の7.項については、「有限会社肉桂餅本舗いげたや」が昭和31年11月5日に「肉桂餅」なる文字を含む商標を出願し、昭和32年8月7日に登録第506347号として登録されている。
しかしながら、同時に提出した証拠補充書に添付した甲第40号証ないし甲第42号証から明らかなように、出願人は、上記登録商標が出願される前の昭和20年代後半に行われた全国的な複数の博覧会に「肉桂餅」なる商標を付した商品を出品して賞を獲得している。
昭和20年代に発行された上記刊行物及び上記博覧会への出品の事実からすると、「有限会社肉桂餅本舗いげたや」の出願がなされる以前に、出願人の「肉桂餅」は、少なくとも当業者間では、全国的に周知の商標に至っていたものである。
しかも、上記登録商標は、「肉桂餅」なる文字について商標が与えられたものではなく、背景の模様等によって商標が付与されたものであると考えられる。
したがって、「有限会社肉桂餅本舗いげたや」の登録商標は、商標法第3条第2項の適用を妨げるものではない。
以上述べたように、本願商標は永年の使用によって、審尋書において示された事実が生じる以前に自他商品識別力を獲得しており、本願商標は商標法第3条第2項の適用を受けて登録され、保護されるべきである。

4 当審の判断
本願商標について、当審においてした証拠調べ結果に基づく上記審尋は妥当なものであって、その認定の不当性を述べる請求人の主張は以下の理由により、いずれも採用の限りでなく、さきの認定を覆すに足りない。
(1)本願商標の商標法第3条第1項第3号該当について
本願商標は、前記のとおり「肉桂餅」の文字よりなるところ、構成中前半の「肉桂」の文字部分は、古来より食品香料の一つとして用いられた「肉桂」(ニッケイ)の語がその後転じて「ニッキ」と読まれるに至った邦語であって、該香料は、とりわけ菓子の分野においては、昔からケーキやクッキー等の洋菓子だけでなく八つ橋、煎餅及び飴等の和菓子にも広く使用されており、また、後半部分の「餅」の文字は、同じく菓子の分野においては、大福餅、柏餅等、餅を主材料とする餅菓子の品質を表す語として、それぞれよく知られているところである。
そうすると、「肉桂餅」の文字を普通の態様で書してなる本願商標を、その指定商品に使用した場合、これに接する取引者・需要者は、該商品が、単に「肉桂入りの餅菓子」であること、すなわち、その品質を表示したものと理解するに止まり、自他商品の識別標識とは認識し得ないものと判断するのが相当である。
してみれば、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものといわざるを得ない。したがって、本願については、これを登録すべきものとする特段の事情、すなわち、商標法第3条第2項所定の要件を具備するに至った事情が存しない限り、同法条の規定によりその拒絶を免れないものといわなければならない。
(2)商標法第3条第2項該当の当否について
請求人は、本願商標は、永年に亘り広く使用された結果、請求人の取扱いに係る商品であると認識されるほど取引者、需要者間に周知、著名となったものであるから、商標法第3条第2項に該当し、登録されるべきであると主張し、証拠方法として、審査時に提出した第1号証ないし同55号証(枝番号を含む)を当審において援用するともに新たに当審において甲第1号証ないし同甲第43号証(枝番号を含む)を提出している。
ところで、商標法第3条第2項は、同法第3条第1項各号に該当する、本来的には自他商品又は役務の識別力のない商標について特定の者が永年独占的にその業務に係る商品又は役務について使用した結果、当該使用者の商品又は役務を表示するものとして認識されるに至った場合に初めて登録を認めることとする規定と解される。したがって、特定の者以外の者もまた前記のような商標を使用している場合は、当該業務に係る者を特定し得ないから、自他商品又は役務の識別機能を果たさない商標であり、その商標登録は認められない。
これを本願商標についてみるに、請求人提出の各証拠によれば、請求人は昭和の初めの頃から現在にいたるまでの間、大阪・堺市を中心に自己の業務に係る商品として当該店舗の店頭又は百貨店等において相当量のものを販売し、かつ、その広告・宣伝を行っていたことが認められる。
しかしながら、前記審尋において示したように、「肉桂餅」の文字(標章)は、請求人以外の少なくとも当該記載に係る複数の者により「肉桂入りの餅菓子」の名称(種類名)若しくはその品質表示語として取引上普通に使用されている事情(状況)を勘案すると、請求人提出の全証拠をもってするも、本願商標が、商品「肉桂入り餅菓子」に使用された結果、需要者が唯一請求人の業務に係る商品として認識するに至ったものとはいい難い。
したがって、本願商標を商標法第3条第2項該当のものとして登録することはできない。
(3)請求人の意見、反論について
請求人は前記審尋に対する回答書において、「審尋書の1.項から6.項において示されている使用事実は、昭和50年代以降に生じたものである。また、インターネットが普及したのは本願出願の後であり、出願後にインターネットにおいて使用された事実により、周知商標が保護されなくなるのは不合理である。」旨主張する。
しかしながら、商標法第3条第2項の要件を具備するか否かの判断時期は査定時又は審決時と解するのが相当である。なぜなら、商標法第3条第2項は、商標の登録に関する積極的な要件に関する規定、換言すれば、出願に係る商標が本来的に識別力を有せず、使用の結果初めて識別力を有するに至った場合に、登録を受けることができるとする規定であるから、このような要件の存否の判断は、行政処分時、すなわち査定時又は審決時を基準とすべきものと解される故である。
そして、審尋書摘示の現実の取引事情が存する以上、これを無視して本願商標を一人請求人に帰属させるべき権利とすることは、商標の保護目的(商標法第1条)に照らし、極めて不合理といわなければならない。したがって、この点に関する請求人の主張は妥当でなく、採用の限りでない。
もっとも、前記審尋書項目5.中の少なくとも岐阜県揖斐郡池田町池野496在の有限会社肉桂餅本舗いげたや及び岐阜県揖斐郡揖斐川町三輪716在の株式会社神原屋は、請求人(出願人)に係る本願商標の登録出願の相当以前から「肉桂餅」の文字(標章)を、「肉桂入りの餅菓子」の名称若しくはその品質表示語として取引上普通に使用しているものであるから、この点よりして、他人による使用事実が本願商標の出願後のものとばかりはいえない。
また、請求人は前記回答書において、「『有限会社肉桂餅本舗いげたや』に係る登録第506347号商標は、『肉桂餅』なる文字について商標が与えられたものではなく、背景の模様等によって商標が付与されたものであると考えられ、したがって、『有限会社肉桂餅本舗いげたや』の登録商標は、商標法第3条第2項の適用を妨げるものではない」旨主張する。
しかしながら、該登録商標を審尋書において挙示したのは、その登録商標の指定商品が「肉桂餅」であること、すなわち、「肉桂餅」の文字がその当時において、商品の普通名称として若しくは品質表示語として使用されていた事情、すなわち、その存在を理由に本願商標について商標法第4条第1項第11号を適用しなかった事情を明らかにしたのであって、当該事業者を含む相当数に上る事業者が「肉桂餅」の文字よりなる標章を当該「肉桂入りの餅菓子」に使用している状況は、本願商標について商標法第3条第2項適用を妨げる直接要因というべきであるから、その主張は妥当でなく、採用の限りでない。
このほか述べる、審尋に対する請求人の主張(反論)は、いずれも妥当性を欠くものであって、採用することができない。
(4)結語
以上のとおり、請求人が提出した全証拠及びその主張の全趣旨を総合勘案しても、本願商標が請求人により永年使用された結果、その業務に係る商品を表示するものとして取引者、需要者に広く認識せられるに至ったものとはいえないから、結局、本願商標は、商標法第3条第2項所定の要件を具備するに至ったものということはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 [本願商標]



[登録第506347号商標]


審理終結日 2001-09-19 
結審通知日 2001-10-02 
審決日 2001-10-23 
出願番号 商願平6-102078 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (030)
T 1 8・ 17- Z (030)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 有三小俣 克巳 
特許庁審判長 原 隆
特許庁審判官 渡口 忠次
宮川 久成
商標の称呼 ニッケイモチ、ニッキモチ、ニッケイ、ニッキ 
代理人 盛田 昌宏 

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