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審決分類 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない Z29
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Z29
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない Z29
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない Z29
管理番号 1050496 
審判番号 無効2000-35452 
総通号数 25 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-01-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-08-28 
確定日 2001-11-26 
事件の表示 上記当事者間の登録第4373054号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4373054商標(以下、「本件商標」という。)は、「B&Z」の欧文字を横書きしてなり、平成11年1月19日に登録出願され、第29類「カキ肉エキスを主原料として打錠成形した加工食品,食肉,食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物,豆,加工野菜及び加工果実,冷凍果実,冷凍野菜,卵,加工卵,乳製品,食用油脂,カレー・シチュー又はスープのもと,なめ物,お茶漬けのり,ふりかけ,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,食用たんぱく」を指定商品として、平成12年4月7日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張の要点
1 請求の趣旨
「本件商標の登録を無効にする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決。
2 請求の理由
(i)本件商標は、かき肉エキス錠剤の瓶及び包装パッケージに付して株式会社ヒューモアが使用している(以下、本件商品という)。
株式会社ヒューモアは、本件商標権者と住所、代表者を同じくする同一経営主体である。
請求人は、昭和60年より、「バランスターZ」の商標をかき肉エキスの錠剤の瓶及び包装パッケージに付して、全国の薬局で販売している(以下、請求人商品という)。
請求人は、かき肉エキスの錠剤である「バランスターZ」を昭和60年以降、甲第3号証ないし同第7号証に示すように、多くの広告、宣伝をおこなった。
請求人は、請求人商品の販売開始直後より、甲第2号証のリーフレットを作成し、全国の薬局等を通じて、消費者に配布してきた。
また、請求人は、甲第8号証のように、請求人商品を全国の薬局を通じて、毎年数回の販売促進キャンペーンを行ない、宣伝をおこなってきた。
甲第9号証に示すように、首都圏2500世帯を対象にした市場調査によって、請求人商品は、平成8年の健康食品の市場でシェアがトップであり、一般消費者の認識度も高いものであった。
そして、請求人は、販売薬局との間でJCOE(Japan Creative Oyster Extract)研究会(かき肉エキスを主成分とする請求人商品の効能を評価している全国の薬局・薬店で任意に組織された研究会)の会報を通じて、「バランスターZ」の販売を促進してきた。
「バランスターZ」は、「JCOE研究会会報」の中で「BZ」の略称が用いられており、全国の薬局とのあいだでは、「バランスター」の頭文字「B」をとって「BZ」の略称で認識され、本件商標が出願された平成11年1月19日及び登録査定時には、商品名の略称「BZ」は、全国の薬局・薬店、需要者の間で周知であったといえる。
そして、「BZ」と「B&Z」は、真ん中に接続詞である「&」があるか否かの違いでしかなく、「&」を加えることは「Louis Vuitton」を「Louis & Vultton」としても需要者は同一出所のものと認識するように、意味のないことである。
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(ii)かき肉エキスの錠剤を「B&Z」の商標を付して販売している株式会社ヒューモアは、請求人の顧客名簿を不正に入手し、請求人の商標「バランスターZ」の略称「BZ」に「&」を加えて「B&Z」とし、しかも、請求人商品と類似したパッケージを使用して、請求人の顧客名簿に登載された顧客に請求人商品とまったく同一成分のかき肉エキスの宣伝販売を行い、需用者が「B&Z」を請求人商品の「バランスターZ」と混同させる営業活動を行っている。
請求人の元従業員2名が請求人の顧客名簿を不正に持ち出して株式会社ヒューモアに入社したもので、株式会社ヒューモアが、「松田まり」を「松田まい」と請求人の顧客名簿の誤記をそのまま反映して案内状を送付したこと、及び「倉富ミル」の住所を請求人の顧客名簿から1段ずらして誤記されていることなど、独自の名簿に基づいていれば起こりえるはずのない事実から請求人の顧客名簿を不正に用いたことが明らかである。
また、本件商品のかき肉エキスと請求人商品のかき肉エキスは、成分が記載されている甲第1号証と甲第2号証を対比すると、成分がまったく同一であり、記載順序も段構成を除いて同一である。
請求人は、昭和59年8月30日に、特許出願されたら無条件で名義変更をする約束で、株式会社日本食品開発研究所の名を借用し、かき肉エキスの製法について特許出願した。平成5年6月30日に登録(特許第1770901号)を受け、すぐさま、平成6年10月24日に特許権を請求人に移転したものである。請求人は、このかき肉エキスの製法特許を第三者に実施許諾していないことから第三者はその製法を使用することができない。かき肉エキスは、製法が異なれば、成分が異なるのが通常で、異なる製法により請求人商品と微量な成分まで同一となるものを製造することは不可能である。にもかかわらず、本件商品と請求人商品がまったく同一成分なのは、その製法を熟知し、発明者が代表者である株式会社日本食品開発研究所が関与して製造し、株式会社ヒューモアが販売しているものと推定される。
本件商標は、株式会社日本食品開発研究所を出願人とし、かき肉エキスを主原料として打錠成形した加工品等を指定商品として商標登録出願し、登録されると商標権を株式会社ヒューモアと同一経営主体の株式会社ツカサに移転しでいる。
以上のことから、これら三社は共謀して、請求人商品と混同を生じさせる意図をもって同一成分のかき肉エキス錠剤を製造販売しており、不正な競業行為を行っていることは明らかである。
甲第1号証には、「納得の価格でこれなら毎日続けられる」、「長年かき肉エキスをご愛用されている方々から、とても健康で元気になれたなど感謝のお言葉を多数頂いて参りました」とあるように、請求人商品と同一成分のものをメーカーからの直接販売のため廉価に販売できる、と請求人と関連があるかのように装って案内状を送りつけ、請求人の顧客を混乱させていることが甲第12号証の陳述書から明らかである。
このように不正の競業、不正の利益を得る目的で本件商標が使用されており、また、本件商標は、請求人の周知商標と類似のものであり、請求人の商品との混同を生じさせており、不正競争防止法第2条第1項第7号及び同法第2条第1項第1号に該当するものである。
請求人は、本件商標を使用している株式会社ヒューモアに対して、前記行為の差止を求めて不正競争防止法に基づいて仮処分の申立を申請した。
このように、本件商標は、公正な取引の秩序を乱し、公の秩序を害するもので商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
(iii) 請求人商品と同一成分の本件商品に、請求人商標の略称と類似する「B&Z」を付し、請求人から不正に入手した顧客名簿の消費者に、同一成分のかき肉エキス錠剤を廉価で販売する案内状を出した。消費者は、「B&Z」を見て、請求人商品が商品名を略称に変更させたものと誤認しており、商品の生産者を誤って認識させるものであるので、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(iv)本件商標は、需要者の間に広く認識されている「バランスターZ」の信用を利用し、請求人の顧客名簿を盗用して、あたかも同一出所の商品のように装い、不正の利益を得る目的で使用されており、請求人の顧客を奪って請求人に多大の損害を与えているので、商標法第4条第1項第19号に該当するものである。
3 証拠方法
請求人は、証拠として甲第1号証ないし同第16号証(枝番を含む。)を提出した。

第3 被請求人の答弁の要点
1 答弁の趣旨
結論掲記の審決
2 答弁の理由
(a) 無効原因(i)について(商標法第4条第1項第10号)
イ.本件商標は、「B」と「Z」とが「&」で結ばれ、同一の間隔で「B&Z」と配置されている点は認める。本件商標は、甲第1号証に示すかき肉エキス錠剤の瓶及び包装パッケージに付して株式会社ヒューモアが使用している点は認める。株式会社ヒューモアと本件商標権者とがその住所及び代表者を同じくすることは認める。
請求人が「バランスターZ」の商標を請求人商品に付して販売を開始した時期が昭和60年であるか否かは不知。
「バランスターZ」の販売が全国の薬局で行なわれているか否かは不知。
一部の薬局でその販売が行なわれていることは認める。
「バランスターZ」の広告、宣伝が行なわれたことは認めるが、その開始時期、規模、回数は不知。甲第2号証ないし同第8号証ではその点不明。
甲第9号証によれば、「バランスターZ」の平成8年度の売上げが各種健康食品の中でトップになっているが、そうであるからといって、請求人商品に対する一般消費者の認識が高いものであったとは言えない。甲第9号証によれば、「バランスターZ」の売上げ金額別の市場占有率は4.75%であるが、その平均単価は3万6千円とあるから、その販売数量はかなり少ないと考えられる。
請求人がJCOE研究会会報を通じて「バランスターZ」の販売を促進してきたか否かは不知。JCOE研究会とは何か、誰が、どのような目的で組織したものか、どのような活動をしているかは不知。
請求人が、「バランスターZ」がJCOE研究会会報の中で「BZ」の略称が用いられていると述べる点は争う。
請求人が、全国の薬局とのあいだでは、「バランスター」の頭文字「B」をとって「BZ」の略称で認識されていると述べる点は争う。
請求人が、本件商標が出願された平成11年1月19日及び査定時には、商品名の略称「BZ」は、全国の薬局・薬店、需要者の間で周知であったと述べる点は争う。
請求人が、「B&Z」の真ん中に「&」があることは意味のないことであると述べる点は争う。
ロ.まず、請求人は「バランスターZ」がJCOE研究会会報の中で「BZ」の略称が用いられていると述べるが、甲第10号証及び同第11号証(JCOE研究会会報)では「BZ」の文字が多用されているものの、その「BZ」が「バランスターZ」の略称であるとはどこにも記載されておらず、「BZ」と「バランスターZ」との関係は不明である。
ハ.次に、請求人は、全国の薬局とのあいだでは、「バランスター」の頭文字「B」をとって「BZ」の略称で認識されている旨述べるが、上述の通り、甲第10号証及び同第11号証には「BZ」が「バランスターZ」の略称であるとはどこにも記載されていない。甲第12号証では、一薬局店主が薬局業界では請求人商品「バランスターZ」が「BZ」と愛称されている旨陳述しているが、そこには被請求人を誹謗する陳述があり、このような被請求人の誹謗を目的として作成された一私人の陳述には信憑性がない。
ニ.次に、請求人は、本件商標が出願された平成11年1月19日及び登録査定時には、商品名の略称「BZ」は、全国の薬局・薬店、需要者の間で周知であった旨述べる。
しかし、まず第一に、「BZ」が商標として使用されている事実は甲各号証からは見出せない。
商標法でいう商標とは「文字等の標章であって、業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用するもの(同法第2条第1項第1号)。」をいうが、甲第10号証及び同第11号証によれば、「JCOE研究会」なる者がその会報に「BZ」の文字を使用していることが認められるものの、「JCOE研究会」が「業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者」であるという事実は見出せない。
「BZ等、日本クリニック製品の箱内に添付されている愛用者はがきー。」という文言が甲第11号証の12頁に存在するが、請求人が「BZ」の文字を使用していることを示すものではなく、「JCOE研究会」が日本クリニック製品に「BZ」の記号を与えているに過ぎない。ましてこの「BZ」と「バランスターZ」との関係は不明である。
また、商標法において「使用」とは、商品又は商品の包装に標章を付する行為等をいうが(同法第2条第2項第1号,2号,7号)、甲第10号証及び同第11号証の「JCOE研究会会報」は、「BZ」なるものを話題にしている(記事にしている)に過ぎず、社会的事実としての商標としての「使用」がなされていることを示すものではない。
甲第12号証では、薬局業界では請求人商品「バランスターZ」が「BZ」と愛称されていることが陳述されているが、信憑性がない。また、他にそのような証拠は提示されていない。
仮にJCOE研究会内部で「バランスターZ」を「BZ」と呼んでいるとしても、その場合の「BZ」の使用者はJCOE研究会会員であり、且つ内部での使用であるから、「BZ」が商標として社会的に機能しているとはいうことができない。このことは、JCOE研究会と請求人との関係でも同様であり、JCOE研究会会員が請求人との関係で「BZ」を使用しているとしても、それは商標法第2条でいう「商標」及び「使用」には該当しない。すなわち、「BZ」は社会的には商品識別標識として何ら機能していない。
ホ.次に「BZ」が請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている事実は甲各号証からは見出せない。
まず、請求人商品(かき肉エキス錠剤)は全国流通の日常商品であるから、一般的に言って、その周知の対象(需要者)は最終消費者であるというべきである。
しかし、「BZ」が請求人商品を表示するものとして最終消費者に広く認識されていることを示す証拠は何ら提出されておらず、しかも「BZ」が商標として使用されたことを示す証拠すら提出されていない。
なお、甲第12号証では、「バランスターZ」は、私どもの業界では「BZ」の愛称で多くの顧客から人気を得ている、と陳述されているが、先に述べた通り信憑性がない。
周知の対象を取引者に限ってみても、全国において同種商品取扱業者の間に相当程度に認識されているか、数県に限っても同種取扱業者の半ばに達する程度の層に認識されていることを要すると一般に解されている。しかし、仮に「BZ」が請求人の商品を意味するものとしてJCOE研究会会員に知られているとしても、「需要者の間に広く認識されている」とはいうことができない。
すなわち、甲第10号証の1頁右端欄第1〜4行に「中部ブロックは、佐々木光敏副会長を頂点として愛知・岐阜・三重・静岡・長野の5県、6支部で約140件の会員店で構成されています。」と記載されている。被請求人の調査によれば、この5県には平成10年度において薬局・薬店が9668店存在するから、同地域ではJCOE研究会会員は1.5%に満たない数である。
この程度では、「BZ」が請求人商品を表示するものとして同種商品取扱業者の間に広く認識されているとは決していうことができない。
なお、全国では平成10年度において薬局・薬店が74348店存在するが、JCOE研究会の全会員数は不明であるものの、全国的にみても1.5%を越えることはないと推察される。
また、他に「BZ」が日本クリニック株式会社の商標として周知性を有することを示す証拠は提出されていない。
へ.次に、請求人は、「BZ」と「B&Z」は真ん中に接続詞である「&」があるか否かの違いでしかなく、「&」を加えることは「Louis Vuitton」を「Louis & Vuitton」としても需要者は同一出所のものと認識するように意味のないことであると述べるが失当であろう。
すなわち、ローマ文字の2字を単に並べた商標は、それ自体構成が簡単であり、取引上商品の記号・符号として一般に採択、使用されているので商品識別力を十分に発揮し得ないが、本件商標のように「&」で連結したローマ文字の2字からなる商標は、「〜と〜」の如き観念も生じ、構成上も簡単ではなく、また、商品の記号・符号としても使用されないので、商品識別力を発揮する、と一般に認められている。
ト.以上のとおり、「BZ」が商標として使用されているとはいうことができず、「BZ」が請求人商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているとはいうことはできず、したがっって、本件商標「B&Z」は、「BZ」に類似するか否かに拘わらず、商標法第4条第1項第10号に該当する商標であるとはいうことができない。
(b) 無効原因(ii)について(商標法第4条第1項第7号)
無効原因(ii)での請求人の主張点は全て争う。
イ.株式会社ヒューモアが請求人の顧客名簿を不正に入手した事実は一切ない。
株式会社ヒューモアは、請求人の商標「バランスターZ」の略称「BZ」に「&」を加えて「B&Z」としたのではない。まず、先に述べた通り「BZ」が「バランスターZ」の略称として需要者に広く認識されている事実はない。また、「B&Z」は、最高かつ究極ないしはギリシャ神話最高の神の意味で命名したものである。すなわち、「B&Z」の「B」は「BEST」の頭文字であり、「Z」はギリシャ神話最高の神「ZEUS」の頭文字であり、また、アルファベット最後の文字であるから、そこに「究極」の意味を持たせたものである。
株式会社ヒューモアが使用するパッケージは請求人商品と類似したものではない。
すなわち、甲第1号証によれば、株式会社ヒューモアが使用するパッケージは、地が赤であり、上下において真ん中やや上に黒地に金色で上下11本の細い横線が存するストライプ状の帯が配置され、この帯の上に「B&Z」の大きな文字が金色で且つ上1/3ほどを当該帯より上方へ突出させて横に配置され、さらにその上側に「ビーアンドゼット」の文字が白色で横に比較的大きく配置されている。
これに対して、甲第2号証によれば、請求人商品のパッケージは、地が赤であり、上下において真ん中やや上に黒地に1本の金色の太い横線を入れた帯が配置され、その帯内に「Z」の文字が金色で配置され、その上側に「バランスターZ」の文字が白色で横に比較的大きく配置されている。
このように、両者は、帯がストライプ状か否かの点、この帯の上に配置されている文字が一方は「B&Z」で、他方は単なる「Z」である点、それらの文字の大きさの点、それらの文字が帯から上に突出しているか否かの点、帯の上側に配置されている文字が一方は「ビーアンドゼット」で、他方は「バランスタ-Z」である点、さらに他の文字及びその配置の点でも相異なる。これでは、両パッケージが類似しているとはいうことができない。
株式会社ヒューモアが宣伝販売を行なった顧客が請求人の顧客名簿に登載されていたとしても、それは単なる偶然である。株式会社ヒューモアは独自の名簿に基づいて宣伝販売活動を行なっているものである。
株式会社ヒューモアが需要者に対し「B&Z」を請求人商品の「バランスターZ」と混合させる営業活動を行なった事実はない。上述の如く株式会社ヒューモアの使用するパッケージは請求人のそれとは異なる。また、株式会社ヒューモアは「バランスターZ」とは非類似の商標「B&Z」を使用している。また、先に述べたように請求人は「BZ」を商標として使用しておらず、もちろん「BZ」が請求人商品を表示するものとして需要者に広く認識されているわけではない。これでは、需要者が混同するとはいうことができない。
ロ.請求人は、甲第1号証、同第2号証及び同第15号証に基づき、本件商品(商標「B&Z」を付した商品)と請求人商品とは成分が同一であること、株式会社日本食品開発研究所、株式会社ヒューモア及び株式会社ツカサの三社が共謀して、請求人商品と混同を生じさせる意図をもって本件商品の製造販売を行なっている旨述べる。
しかし、本件商品は請求人が被請求人に提供し、被請求人が自己ブランドとして販売することを認めたものである。
したがって、その成分が請求人商品と同じになることは当然であり、三社共謀云々は言い掛かりである。そうして、被請求人は、請求人商品との混同を生じないように、「バランスターZ」とは非類似の商標「B&Z」を使用し独自デザインのパッケージを使用して商品の販売を行なっているものである。請求人の顧客を混乱させているという甲第12号証の陳述には何ら根拠がない。
請求人は不正の競業、不正の利益を得る目的で本件商標が使用されている旨述べるが、上述のとおり、そのような事実は一切ない。また、請求人は、「本件商標は、請求人の周知商標と類似のものであり、」と述べるが、上記(a) で述べたようにそのような周知商標は存在しない。
請求人は甲第16号証を提出して不正競争防止法に基づいて仮処分の申立を申請した旨述べるが、そのような申請をしたからといって被請求人が不正の競業、不正の利益を得る目的で本件商標を使用しているということはできない。
被請求人は当該仮処分の申立に対して答弁書、準備書面一〜三を裁判所に提出して反論を展開している。請求人が被請求人に提供し被請求人が自己ブランドとして販売することを認めた事情や、被請求人が不正競業行為を行っていないことはこれら答弁書等で詳述している。
そもそも、本件商標の指定商品への使用が請求人との関係で不公正となるか否かは私的な問題であり、公序良俗を害するおそれがある商標の登録を排除しようとする商標法第4条第1項第7号の問題とは考えられない。
したがって、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当する商標であるとはいうことはできない。
(c) 無効原因(iii) について(商標法第4条第1項第15号)
無効原因(iii) での請求人の主張点は全て争う。
請求人は、「B&Z」が請求人商標の略称と類似する旨述べるが、「BZ」が請求人商標「バランスターZ」の略称であることを示す証拠は提出されていない。先に述べたように、甲第10号証及び同第11号証の「JCOE研究会会報」には「BZ」と「バランスターZ」との関係は記載されていない。
また、甲第12号証の陳述内容には信憑性がない。しかも、請求人は、消費者が「B&Z」を見て、請求人商品が商品名を略称に変更させたものと誤認している旨述べるが、そのような証拠は何ら提出されていない。甲第12号証陳述書には消費者が誤認している旨の陳述はない。
そうして、甲第10号証及び同第11号証は、「BZ」が日本クリニック株式会社の標章として著名性を有することを立証するものではなく、甲第12号証は事実を述べたものとは思われず、他に「BZ」が日本クリニック株式会社の標章として著名性を有することを示す証拠は提出されていない。
したがって、「B&Z」が商標法第4条第1項第15号に該当する商標であるとはいうことができない。
(d) 無効原因(iv)について(商標法第4条第1項第19号)
無効原因(iv)での請求人の主張点は全て争う。
上記(a)〜(c)で述べたとおり、「BZ」が、社会的事実としての商標として使用され、かつ請求人の商標として需要者・取引者の間に広く認識され、客観的にも取引社会において商標としての機能を広く営んでいる商標であるとは認められないので、商標法第4条第1項第19号の他の要件を検討するまでもなく、本件商標「B&Z」が同号に該当する商標であるとはいうことができない。
(e) むすび
以上に述べたとおり、本件商標は商標法第4条第1項第7号、第10号、第15号及び第19号のいずれにも該当せず、請求人の主張には理由がない。
3 証拠方法
被請求人は、証拠として乙第1号証ないし同第4号証を提出した。

第4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第15号について
請求人は、商品「かき肉エキスの錠剤」に使用する商標「バランスターZ」が、「JCOE研究会会報」の中で「BZ」と略称されて用いられており、また、全国の薬局とのあいだでは、「BZ」は、「バランスター」の頭文字「B」と「Z」をとって、「バランスターZ」を表すものとして認識され、本件商標が出願された平成11年1月19日及び登録査定時には、「BZ」は、全国の薬局・薬店、需要者の間で周知であったと主張する。
そこで、請求人の提出した甲第1号証(本件商標「B&Z」を付した商品のチラシ)、甲第2号証(請求人の登録商標「バランスターZ」を付した商品のチラシ)、甲第3号証ないし同第7号証(請求人の登録商標「バランスターZ」付した商品の紹介等の新聞、雑誌の記事)、甲第8号証(請求人の登録商標「バランスターZ」を付したカキ肉エキス製品等のキャンペーンに関するチラシ)、甲第9号証(請求人の登録商標「バランスターZ」が新聞に掲載された記事)、甲第10号証及び同第11号証(「BZ」に関する記事の掲載された「JCOE研究会会報」)、甲第12号証(陳述書)、甲第13号証(「松田まい」宛ての案内状及び顧客一覧表)、甲第14号証(「倉冨ミル」宛ての案内状及び顧客一覧表)、甲第15号証-1(特許第1770901号の特許原簿)、甲第15号証-2(特公平4-63672公報)、甲第16号証(仮処分命令申立書写し)より、請求人の主張する「BZ」の著名性についてみるに、甲第10号証及び同第11号証では、「BZ」の文字が記事の一部として使用されているものであり、また、甲第10号証及び同第11号証の「JCOE研究会 販売促進ツールのご案内」の頁に「BZ」の文字が会員特典の商品の案内として使用されているものであり、さらに、甲第12号証では、「JCOE研究会」の九州ブロック長の陳述書であり、「BZ」を主力商品として販売に力を入れているところであるという内容のものである。
そうすると、甲第10号証ないし同第12号証よりは、「BZ」の文字が「バランスターZ」の文字の略称であり、かつ、著名であると認めるに足りる証拠はない。
それ以外の甲第1号証ないし同第9号証及び甲第13号証ないし同第16号証においては、「BZ」の文字も見当たらない。
してみると、請求人の提出した甲第1号証ないし同第16号証よりは、「BZ」が全国の薬局・薬店、需要者の間で周知であった事実を認めることはできないものである。
そうすれば、「BZ」の文字が「バランスターZ」の略称と使用されて、それが取引者、需要者間に広く知られていることを理解、認識させるに足りる具体的な証拠の提出もないものであるから、請求人の提出した甲第1号証ないし同第16号証よりは、「BZ」の文字が著名な標章として認識されているものとは判断しがたいものである。
したがって、請求人の使用しているという「BZ」の文字が著名な標章であることを前提にして、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するとする請求人の主張は、理由がない。
(2)商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字でなく、指定商品について使用しても社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するものでもない。
また、他の法律によって、その使用等が禁止されている商標、特定の国若しくはその国民を侮辱する商標又は一般に国際信義に反する商標でもない。
(3)商標法第4条第1項第10号について
請求人の主張する標章「BZ」の文字は、前記(1)で認定したとおりであるから、他人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている商標に該当しないものである。
(4)商標法第4条第1項第19号について
請求人の主張する標章「BZ」の文字は、前記(1)で認定したとおりであるから、他人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用をする商標とは認められないことは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものでなく、同法第46条第1項1号に該当しないものであるから、その登録を無効とすべき限りでない。
以上のとおり、請求人の審判請求は、理由がないから成り立たないものとし、審判費用の負担については、商標法第56条第1項、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定を適用して、請求人の負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-10-01 
結審通知日 2001-10-04 
審決日 2001-10-16 
出願番号 商願平11-4169 
審決分類 T 1 11・ 222- Y (Z29)
T 1 11・ 271- Y (Z29)
T 1 11・ 25- Y (Z29)
T 1 11・ 22- Y (Z29)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山内 周二谷村 浩幸 
特許庁審判長 廣田 米男
特許庁審判官 柳原 雪身
大島 護
登録日 2000-04-07 
登録番号 商標登録第4373054号(T4373054) 
商標の称呼 ビイアンドゼット、ビーゼット 
代理人 前田 弘 
代理人 竹内 宏 
代理人 石井 良和 

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