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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 126
管理番号 1050442 
審判番号 審判1999-31628 
総通号数 25 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-01-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 1999-12-06 
確定日 2001-11-21 
事件の表示 上記当事者間の登録第2210828号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2210828号商標(以下、「本件商標」という。)は、「SAI」の文字を横書きしてなり、第26類「印刷物、書画、彫刻、写真、これらの付属品」を指定商品として、昭和62年2月26日登録出願、平成2年2月23日に設定登録、その後、平成12年5月9日に商標権の存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張の要点
1 請求の趣旨
「本件商標の登録を取り消す」との審決を求める。
2 請求の理由
本件商標は、指定商品を「印刷物,書画,彫刻、写真、これらの付属品」として、平成2年2月23日に登録されたものである。
しかしながら、登録名義人は継続して3年以上に亘って本件商標をその指定商品に使用していない。また、使用権者によって使用された事実もないので、商標法第50条の規定により登録を取り消されるべきである。
3 弁駁の理由
被請求人が提出した平成12年6月15日付答弁書に対し、以下のとおり弁駁する。
(1)請求人は、乙第1号証(本件商標の公告公報)の成立について争いはない。
(2)請求人は、乙第2号証(「SG式総合職業適応検査」に使用される検査用紙)の立証の趣旨については否認する。
乙第2号証は、総頁数31頁からなる検査用紙であるが、「SAI」の表示があるのはその表紙の一箇所のみである。
したがって、「SAI」は、検査用紙の検査内容を表すものとして使われているに過ぎない。
即ち、この表紙を見たものは「SG式総合職業適応検査(の一部である)SAI(に関する)検査用紙」であると認識し、理解するのが自然である。
また、検査用紙中の具体的質問内容に照らしても、「SAI」は、「Self Actualization Inventory」(自己実現記録)の略称として使用されていることが類推されるので、「SAI」が検査内容の表題であることは一層明白である。
換言すれば、「SAI」は、商品としての印刷物の出所を表示し自他商品を識別するための目的には使われていない。
(3)乙第3号証についても、全く同様のことが言える。
乙第3号証の納品書の品名欄には「大学・職業適応検査用紙SAI」の記載が見られるが、これは答弁書の説明によれば、正確には「大学生版SG式総合職業適応検査SAI検査用紙」と記入するべきところ、使える字数の制約から便宜上このように記載されたものと思われる。
しかしながら、取引の対象となった実際の物品が、乙第2号証に提示されたものである限り、これは検査内容を示す表題が省略されて記載されたものであることを示すに過ぎない。
(4)次に、乙第4号証(注文書)を見ると、上記請求人の主張が明確に裏付けられている。
乙第4号証(注文書)の「検査名」の欄の最下段には「SAI短大」の記載があるが、これは「SAI短大」が「検査名」の一つとして取り扱われていることを示すものである。
同欄には他に適職(職業適性?),興味(興味対象?),クレペ(クレペリン検査?),知能(知能検査?)等の検査内容を表すと思われる略語が列記されており、「SAI短大」もこれらと同列に扱われていることから、当然検査内容を表示するものである。
そして、その検査内容は、当業者であれば容易に推測できる「Self Actualization Inventory」の略称と思われることから、被請求人による「SAI」の使用は、検査内容を示すに過ぎないことが明らかである。
(5)上記のように、乙第2号証ないし同第4号証は「SAI」が印刷物に印刷された事柄の目的や内容を説明するために使用されているに過ぎず、反対に商標の本質である商品の出所を識別し、自他商品を区別する目的には使用されていないことを示すものである。
してがって、請求の趣旨の如く、登録を取り消されるべきものである。

第3 被請求人の答弁の要旨
1 答弁の趣旨
結論掲記の審決
2 答弁の理由
(1)本件商標について
本件商標はアルファベットで「SAI」と横書してなる文字商標であって、旧第26類の「印刷物、書画、彫刻、写真、これらの附属品」をその指定商品として、昭和62年2月26日付で登録出願され、出願公告決定を経て、平成2年2月23日付で登録されたものである。
(2)被請求人が本件商標を使用していることの証明について
被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、その取り扱いに係る商品「印刷物、書画、彫刻、写真、これらの附属品」中の「印刷物」について本件商標を使用している。被請求人はここに乙第2号証ないし同第4号証を提出する。
すなわち、乙第2号証は被請求人の取り扱いに係る商品自体であり、当該商品は大学・短大・専門学校等がその学生を対象として実施する職業適応検査・心理検査としての「SG式総合職業適応検査」に使用される検査用紙である。この総合職業適応検査は、学生の就職意識を啓発し早期就職対策を促進すると共に、学生の就職活動に先立ち、職業・職種に対する適性を総合的に判定することにより適職発見へと導くことを目的として行われる検査である。そして、当該検査用紙には本件商標「SAI」が明確に表示記載されている。
当該検査用紙は、市中の書店などにおいて市井人を対象に販売されるものではなく、その性質上大学・短大・専門学校等へ被請求人が直接に販売したり、或いは、被請求人との間で締結された販売契約に基づき当該販売契約を締結した特約代理店を介して大学・短大・専門学校等へ販売されるものである。そして、当該商品「検査用紙」を購入した大学・短大・専門学校等がその学生に対して総合職業適応検査を行い、その判定結果を基礎に学生自身の就職活動及び大学等側の就職指導に資するものである。
また、乙第3号証は、被請求人が奈良女子大学生活協同組合本部に対して乙第2号証の「大学生版 SG式総合職業適応検査」に使用する検査用紙「SAI」を納品した事実を示す納品書(控え)の写しであり、1999年11月8日付で納品したものである。
これは、被請求人が直接に大学に対して当該商品「検査用紙」(注文部数及び予備等を含め235部)を販売し納品したものである。
さらに、乙第4号証は特約代理店「(株)サクセス・ベル」からの被請求人宛FAXによる検査用紙「SAI」の注文書(1999年11月9日発信)の写しである。これは、「徳山女子短大」の学生100人を対象として1999年12月17日に「職業適応検査」が実施されたのであるが、その職業適応検査用の商品「検査用紙(SAI短大)」についての注文書である。この注文書に基づいて被請求人は特約代理店「(株)サクセス・ベル」宛に当該検査用紙「SAI」を発送し、販売したことが明らかである。
してみれば、乙第2号証ないし同第4号証により、被請求人が本件商標「SAI」をその取り扱いに係る商品「印刷物(検査用紙)」について本件審判の請求の登録前3年以内に使用していた事実が明らかである。
尤も、本件審判の請求書副本は、被請求人に何の前触れもなく、いきなり送達されたものであるから、商標法第50条第3項を考慮したとしても、本件商標の上記使用が「登録商標の使用」に該当することはいうまでもない。
したがって、本件商標はその指定商品について正当に使用されている事実が明らかであるから、本件商標は商標法第50条の規定により取り消されるべきものではない。
(3)結論
上記の通り、本件商標は、被請求人により現実に使用され、自他商品の識別機能を充分に発揮しているのであるから、本願商標は商標法第50条の規定に該当するものではない。
3 答弁の理由(第2回)
(1)被請求人は、平成12年12月14日付弁駁書に対し、以下の通り答弁する。
(a) 乙第2号証について
請求人は、本件商標「SAI」が「自己実現記録」等の意味合いを有する英語「Self Actualization Inventory」の略称であるから、被請求人による本件商標の使用は、自他商品の識別標識としての使用ではない旨主張をしている。
しかし、本件商標「SAI」は、特定の意味合いを生じない造語であるが、本件商標から如何なる意味合いが生じようとも、本件審判の審理とは無関係であるので、以下、本件商標の使用が識別標識としての使用である旨説明する。
乙第2号証における「SG式総合職業適応検査」とは、学生が職業を選択・決定するに際して、自己の適性を把握し、適切な職業選択を通して自己実現を図っていくための情報資料の提供を目的として開発された心理検査をいい、この「SG式総合職業適応検査」には調査項目として「職業希望調査」「業種希望調査」「資格・検定調査」があり、検査スケールとして「能力スケール」「就職意識スケール」「適応態度スケール」「興味スケール」「価値態度スケール」等が含まれている。乙第2号証の「SAI」検査用紙にはステージ1(A・B)、ステージ2、ステージ3、ステージ4及びステージ5が掲載されており、80分ほどの時間で回答する検査内容となっている。すなわち、職業適応検査としての複数の調査項目及び検査スケールが含まれているがゆえに、乙第2号証が「総合職業適応検査」と銘うたれている所以である。
乙第2号証の表紙中、中央の「検査用紙」は商品の名称を表示し、同じく中央に最も大きく表された「SAI」は当該検査用紙の商標であることを表示しているのである。そして、被請求人は、上記種々の検査を総合的に行う心理検査「SG式総合職業適応検査」に使用される検査用紙のみを「SAI」と呼称して取り扱っており、他の職業適応検査或いは職業適性検査において、調査項目や検査スケールが異なる別の検査内容を構成するもの(検査用紙)は、「SAI」とは異なる別の名称により取引をしているのである。それゆえ、かかる差別化商品を明確に識別するために「SAI」が目立つように最も大きく表されているのである。かかる商品においては、かかる使用態様が所謂商標的使用態様といわれるものである。
また、請求人は、「SAI」が検査内容の表題であると決め付けているが、「Self Actualization Inventory」又は「自己実現記録」等という名称の検査は存在せず、検査は、飽くまでも「職業適応検査」であることから、乙第2号証において検査内容の表題と認められるのは「SG式総合職業適応検査」の部分であり、「SAI」は、他の職業適応検査と識別するための標識(商標)である。
してみれば、乙第2号証の表紙中「SAI」は「SG式総合職業適応検査」の総合的な検査を行う検査用紙であることを指称表示するものであり、請求人の主張の如く個別特定の検査の内容を指称表示するものではない。当該検査用紙は、被請求人の発行に係る独自の差別化商品(の商標)であることを表示するものである。
したがって、本件商標「SAI」は、自他商品の識別標識として現実に機能しているものであり、乙第2号証の表紙中の表示場所の点から見ても、識別標識として機能し得る位置に表示されているといえるものである。
(b) 乙第3号証について
請求人は、乙第3号証の納品書の品名欄の記載「大学・職業適応検査用紙SAI」は便宜上「大学生版SG式総合職業適応検査SAI検査用紙」を略して記載したものと恣意的に決め付けている。
しかし、上述の通り、「SAI」は検査名ではなく、検査用紙名であるから、乙第3号証における「大学・職業適応検査用紙SAI」の表示は、「SAI」という独自の名前の検査用紙を意味するものである。
また、「品名」欄とはいうものの、所謂普通名称のみならず、区別するために必要な場合には、商標が記載されることがあるのは当然であるから、「品名」欄に記載されているからといって、「SAI」が商標的使用でないと断定することは妥当ではない。上述のように、調査項目や検査スケールが異なることにより、内容が異なる職業適応検査の検査用紙となった場合には、これを区別する必要があるからである。
してみれば、乙第3号証は「大学生用の職業適応検査」に使用される検査用紙であって、「SAI」という名前の検査用紙が納品された事実を如実に物語るものである。
(c) 乙第4号証について
請求人は、乙第4号証のファックスによる注文書の記載「SAI短大」が検査名の一つと決め付けている。
しかし、「SAI短大」の記載が単独の検査名たる「職適」「興味」「クレペ」「知能」等と同列に表されているからといって、同様の検査名ということにはならない。当該注文書における記入枠が小さいこと及び被請求人が「(特定の調査項目・特定の検査スケールにより構成された)大学生・短大生・専門学校生用の職業適応検査用紙」を「SAI」という独自の命名により指称・表示することとしていることにより、このような形式の注文書となったからである。
また、注文書の「検査名」欄に記載されているからといって、必ずしも検査名のみが記載されているとは限らない。調査項目及び検査スケールが異なることにより、別の総合職業適応検査(の内容)を構成することとなった場合等「総合職業適応検査」の名称によっては、具体的な検査名を特定し難い場合等には、これを区別するために(当該名称に代り)商標を記載することが慣習上普通に行われているからである。
(d) 上記の通り、乙第2号証ないし同第4号証により、本件商標は、その指定商品について自他商品を識別するために正当に使用されているものであるから、本件商標は、商標法50条の規定に該当するものではない。
(2)結論
上記の通り、本件商標は、被請求人により現実に使用され、自他商品の識別機能を充分に発揮しているものである。
4 証拠方法
被請求人は、証拠として乙第1号証ないし同第4号証を提出している。

第4 当審の判断
本件商標である「SAI」の文字について、当事者間では、自他商品の識別標識としての機能の有無が争点となっているところ、商標法第50条による商標登録の取消しの審判においては、本件商標の「SAI」の文字が審判請求に係る指定商品について使用されているか、否かについて判断するものであるから、本件商標の自他商品の識別標識としての機能の有無については、無効審判の請求をまって判断すべきものである。
そこで、本件商標の使用の有無について検討するに、乙第2号証は、指定商品「印刷物」に属する商品「SG式総合職業適応検査の検査用紙」と認められるところ、表紙の中央やや右上に本件商標と社会通念上同一と認められる「SAI」の商標が付けられていることが認められる。
乙第3号証をみるに、同号証は、被請求人「株式会社実務教育出版」から「奈良市北魚屋西町 奈良女子大学生活協同組合本部」に宛てた1999年11月8日付けの「納品書」の写しと認められるところ、この書類には「品名」に「大学・職業適応検査用紙SAI」と記載され、「注文部数」、「単価」、「正味」、「予備部数」、「教師用部数」の欄があり、各欄に必要事項が記入されていることが認められる。
また、乙第4号証をみるに、同号証は、「(株)サクセス・ベル」から被請求人「株式会社実務教育出版」に宛てた1999年11月9日付ファックスによる「注文書」の写しと認められるところ、この書類には「検査名」に「SAI短大」と記載され、「生徒用」、「先生用」、「実施日」の欄があり、各欄に必要事項が記入されていることが認められ、右下と右上に担当者の印が押されていることが確認できる。
そうすると、本件商標は、乙第2号証ないし同第4号証により、本件審判請求の登録(平成12年1月19日)前3年以内に日本国内において、商標権者により指定商品中の「印刷物」について使用されていたものと認めることができる。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべき限りでない。
以上のとおりであって、請求人の審判請求は、理由がないから成り立たないものとし、審判費用の負担については、商標法第56条第1項、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定を適用して、請求人の負担とすべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-09-25 
結審通知日 2001-09-28 
審決日 2001-10-10 
出願番号 商願昭62-19908 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (126)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山内 周二三浦 芳夫 
特許庁審判長 廣田 米男
特許庁審判官 宮下 行雄
大島 護
登録日 1990-02-23 
登録番号 商標登録第2210828号(T2210828) 
商標の称呼 エスエイアイ、サイ、セイ 
代理人 涌井 謙一 
代理人 高橋 光男 
代理人 鈴木 正次 

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