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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 124
管理番号 1050431 
審判番号 審判1998-35655 
総通号数 25 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-01-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-12-18 
確定日 2001-11-19 
事件の表示 上記当事者間の登録第2692068号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第2692068号の1の登録を無効とする。 登録第2692068号の2の登録を無効とする。 審判費用は被請求人らの負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第2692068号商標(以下「本件商標」という。)は、昭和55年2月6日に登録出願され、別掲(1)に示すとおりの構成よりなり、第24類「運動具、その他本類に属する商品」を指定商品として、平成6年8月31日に設定登録されたものであるところ、本件審判請求の後、該商標権は、平成11年2月15日付け分割譲渡により、「運動具、その他本類に属する商品但し、おもちゃを除く」を指定商品とする登録第2692068号の1に係る商標権(商標権者 株式会社 ダイフク)及び「おもちゃ」を指定商品とする登録第2692068号の2に係る商標権(商標権者 株式会社 ダブリュー・エー)に分割され、その分割移転の登録が同年3月18日になされたものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を概要次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証乃至同第13号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)本件商標は、左向きに大きく跳躍する猫科の動物をシルエット化した図形と、その下に「COUGAR」の英文字を配した構成よりなる。しかるに、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第11号に該当する。
(2)本件商標の動物図形は、請求人である独プーマ社が同人のスポーツウェア、スポーツシューズ、バッグなどに関し、「PUMA」の文字とともに長年にわたり広く使用してきた結果、世界的に著名となった商標との間で出所の混同を生じさせるおそれがある。
甲第1号証及び甲第2号証(以下、引用商標A、Bという。)は、請求人の著名商標を示すものである。これらはいずれも、猫科の動物が左向きに大きく跳躍しているところを表し、そのしなやかで流美な肢体が特徴的に描かれている。
一方、本件商標の動物図形も全体的なシルエットから猫科の動物を表していること一目瞭然で、これが左向きに大きく跳躍しているところは、引用各商標と構成の軌を一にするものである。
これらを甲第3号証のように並べてみると、さらにその共通性が顕著となる。
上述のように、請求人の引用各商標は長年にわたり使用されてきた結果、世界的に著名となっている。この点は特許庁においても顕著な事実であると思料される。このことは、本件商標が出願された時点においても、また現時点においても変わらない事実である。
請求人の商標は、甲第4号証の商品カタログに示す態様で使用されている。プーマの名声は、スポーツシューズ、とりわけサッカーシューズで広く知られ、Jリーグの選手のほか、かってはサッカーの神様ペレ、天才マラドーナらが使用することで非常に高い人気も得ている。プーマの商標には「PUMA」の文字、各引用商標に示す図形及びプーマラインと呼ばれる線図形があるが、これらは、その組み合わせとしても、また、それぞれ単独としても広く知られ、そのいずれをとってもプーマ社及びその製品を認識させるのである。現に引用各商標に示す図形は、これが単独で大きく表されることがあり、態様はカタログ第41頁に示すとおりである。
このように、世界的に著名な、また特徴的な請求人の図形がある一方で、本件商標の動物図形がその指定商品に使用された場合には、あたかもその商品が請求人またはその関係者の業務にかかるものであるかのごとく出所の混同を生じさせることは必至である。
さらに、著名商標との間に、これほどの共通性を有する図形が使用されるということは、被請求人がプーマ社の名声に乗じようとする意思までもが推認される。長年をかけて蓄積した信用により獲得した名声が、このようなかたちで、いわば、ただ乗りされ、また著名商標の名声もが希釈化されるような行為は許されてはならず、国際的な流通秩序の維持という観点から、これは我が国の信用をも損ないかねない事態といえる。
甲第6号証「広辞苑」に示すように、「クーガー」は「ピューマ(puma)」の説明の中で登場しており、これらが同じ猫科の動物の呼び名であることが確認できる。すると、本件商標の「COUGAR」の部分を仮に「PUMA」に置き換えても意味は同じこととなり、本件商標は、動物図形の部分に、より重点が置かれているといえる。すなわち、本件商標は、まず動物図形があり、これに「COUGAR」が便宜的に付されたものと推測される。これら文字部分より同一観念が生じる以上は、「PUMA」の文字と共に著名となった引用各商標との差異を「COUGAR」の部分に求めることはできず、やはり両者は、同じ動物を同じ態様で表したといえるのである。本件商標の動物図形と引用各商標は、猫科の動物の特徴的な姿が共通するため、本件商標は、時と所を異にして引用各商標と出所の混同を生ずるおそれがあるといわざるをえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)本件商標は、請求人が所有する登録第2068537号商標(引用商標A・甲第1号証)に類似し、引用商標と同一または類似の商品に使用されるものである。
本件商標の動物図形及び引用商標は、いずれも左向きに大きく跳躍する猫科の動物を描いており、それぞれ「跳躍する猫科の動物」との外観、称呼、観念を生じ、類似する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(4)被請求人の答弁に対する弁駁
被請求人は、甲第3号証につき、本件商標のねつ造も甚だしいとしている。しかし、請求人は、動物図形のみが本件商標であると主張しているわけではなく、単に、本件商標中の動物図形が引用各商標と類似している旨述べているに過ぎない。すなわち、動物図形の存在により、本件商標は、請求人の商標との関連で出所の混同を生ずる旨述べているのであって、本件商標をねつ造して動物図形が本件商標であるとしている訳ではない。甲第3号証中に「本件商標」と記載しているのは単なる便宜のためであって、これ自体を本件商標と勘違いさせようとするものでないことはいうまでもない。
本件の場合は、引用各商標が著名なものであるため、なおさら、本件商標の動物図形により、出所の混同を生じるおそれは強くなっているのであり、仮に、全体が非類似であるとしても、決して混同のおそれを否定することはできない。
したがって、商標が非類似であるとしても、商標法第4条第1項第15号の適用は逃れ得ないのであるから、本件商標から混同の原因となる図形を比較検討したとしても、ねつ造云々が問題となることはない。
また、被請求人は、乙第2号証を提出し、請求人の主張をあたかも詐欺であるかのような旨を述べているが、ここで問題となっている登録第1192209号商標とは甲第7号証に示すとおり、本件商標とはおよそ異なる図形を有する商標であり、事例が全く異なるものである。
引用各商標の著名性を示す資料(甲第8号証ないし甲第13号証)を提出する。
請求人に係るシューズ・バッグ等の商品は、世界的な名声を獲得しており、これら商品につき、常に使用される特徴的な動物図形も本件商標の出願時において、既に著名となっているものである。
これが現在も変わらずに著名であることは疑いようがなく、多くの図形的共通点を持ち、これと紛らわしい本件商標は、請求人の業務に係る商品との間で混同を生ずること必至である。
また、商標自体としても本件商標は、引用商標(甲第1号証)に類似するものである。被請求人の提出する資料(乙第3号証ないし乙第9号証)は、それぞれの商標の共通点が本件ほど多くはないため全く参考とならない。

3 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判請求には理由がない。本件商標登録は維持されるべきものである、との審決を求める。」と答弁し、その理由を概要次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第9号証を提出した。
(1)請求人は、甲第3号証の下部に本件商標と称して2匹の動物のシルエットを描いているものを示しているが、これは断じて本件商標ではない。ねつ造も甚だしい。本件商標は、乙第1号証の公報にあるものである。
このようなねつ造したものをもって、本件商標であるかのごとく描き、甲第1号証に類似しているとか混同するとかの主張をするのは詐欺的な我田引水の行為といわざるをえない。
(2)本件商標は、乙第1号証にあるとおり、動物自体は左向きではあっても跳躍しておらず、疾走する様子のものであり、しかも、その動物でさえ商標の一部を構成しているだけで、本件商標の全体構成は、全く引用商標と異なるものであることは一見しただけで判るものである。
(3)請求人は、甲第1号証、甲第2号証商標が世界的に著名であると主張しているが、せいぜい著名となっているのはプーマ(PUMA)であって、甲第1号証商標ではない。プーマは現時点では有名で、とりわけサッカーシューズの世界では著名となっていることは認めるものであるが、動物単体では著名性は全くない。請求人の示すカタログ(甲第4号証)を見ても、動物は、文字PUMAと一体不可分的な使用の仕方であって、動物単体としては何百ある商標の中でも1、2例に過ぎないものである。
例えば、PUMAの動物がPUMA文字なしの単体動物だけで登山ぐつにつけられ、他社の動物のついた登山ぐつと一緒に山と積まれて売られた場合、当業者の専門家であってもプーマ商品を抽出、指摘するのは困難である。文字PUMA無しの単体動物だけのものは、プーマ商標と特定する機能はないのである。著名商標プーマと一緒にデザイン化されている動物は、単なる飾りであり、PUMA文字と一体化するためのデザイン上の意味があるだけで、動物単体だけでは意味もなく、著名性はないのである。動物は、文字PUMAと一体化されて初めて意味がある。
請求人は、プーマ社の名声に乗じるとか、希釈化されるとか、我が国の信用問題に係わるとか主張し、甲第6号証「広辞苑」を引きながら「COUGAR」の部分を仮に「PUMA」に置き換えても意味は同じであり、これら文字部分より同一観念が生じる以上「PUMA」の文字と先に著名となった引用各商標との差異を「COUGAR」の部分に求めることはできず、やはり、両者は、同じ動物を同じ態様で表したものであると主張している。
しかしながら、甲第1号証の商標(引用商標)と同一商標を指定商品第21類に出願、審査の際、審査官より本件商標に関連する商標登録第1192209号と類似であると指摘された時の請求人自身の昭和53年4月18日付意見書(乙第2号証)の中で、請求人は、今回とは正反対の主旨を強調している。
このことは、請求人がその時その時に合わせて、白を黒といい分けるごとくの手法を平気でやってのけており、このようなことは先の詐欺的手法に通じるものがある。
(4)仮に、引用商標が著名であったとしても、本件商標とは全く異なるものであるから、混同を起すおそれは全くないものである。以下、本件商標と引用商標とが全く異なる理由を述べる。
甲第1号証の商標は、「跳躍している動物」のみを描いてなる商標であり、また、甲第2号証の商標も、ほぼ同じようなものである。これら甲第1、2号証の商標のいずれにも、本件商標の構成における文字との組合せ、デザイン化構成が全く存在しない。
したがって、本件商標と甲第1、2号証の商標とは、各々の構成からして外観上一見して互いに明確に識別し得るものであるが、さらに、本件商標の動物の図形と甲第1、2号証の商標の動物の図形とだけを比較してみても、以下のような大きな相違点がみられる。
すなわち、本件商標の動物は
1)顔が全体的に細長く、鋭くとがった印象を与えるものであり、かつ、顔が下を向いている。
2)□を開いている。
3)前足が2本、後足が2本ある。
4)前足が下方に伸びている。
5)尾が略後方に向いており、跳ね上げの度合いが小さい。
等の特徴を有するものであり、動物が疾走している状態を表示しているものであることは明白である。全体的な感じとして「鋭さがあり疾走性」がある。
一方、後者は
1)顔が全体に丸味を帯び、かつ、顔が前方を向いている。
2)□を閉じている。
3)前足が1本、後足が1本である。
4)前足が縮まり、身体にひきつけられている。
5)尾が略上方を向いており、跳ね上げの度合いが大きい。
等の特徴を有するものであり、全体的に丸味と柔らかさがあり、まるで飼い猫のようなおだやかさがあって、跳躍しているというが「飼い猫がじゃれついている」ような感じである。
このように、「鋭さと疾走性」の本件商標の動物の図形と「飼い猫がじゃれついている」甲第1、2号証の動物の図形そのものが、その部分的形象及び動態において顕著に異なるものである。
したがって、本件商標と甲第1、2号証の商標とは、全体の構成はもちろんのこと、動物の部分的形象や動態だけを見ても顕著な差異を有するものであり、外観上、互いに明確に識別し得る非類似の商標である。
(5)上述のとおり、図形だけをみても、本件商標は、「鋭さがあり、疾走性」が特徴づけられる猫科の動物であるのに反し、引用商標は、疾走性も鋭さもなく、「じゃれつく飼い猫」たる動物の図形であって、両者は、時と所を異にしてもこれに接する者が混同を生ずるおそれが全くないのであり、ましてや、商標は一部だけをとり出して見比べることはあり得ないし、実際には、本件商標のごとく動物の図と「COUGAR」なる文字の全体をデザインにまとめられたものと、引用商標のじゃれついている飼い猫然たる図形だけのものを比較する場合、現実の商品売買、流通現場を通して混同はあり得ない話である。事実、被請求人においてライセンスを与えて、本件商標を登山ぐつなどに20年以上にわたって使用してきているが、顧客からもこれを取り扱う流通業者からもプーマ社の商品と混同したとか迷惑がかかったとかのクレームが一度たりとも起ったことがないことをみても明らかである。
(6)本件商標に描かれた動物と甲第1号証の商標及び甲第2号証の商標に各々描かれた動物とを観察すると、甲第1号証の商標に描かれた動物は、線描きされたもので、甲第2号証の商標に描かれた動物は、黒く塗りつぶして描かれており、これらは、いずれも顔面を含む頭部や毛並み、あるいは班紋等が明瞭でなく、これが飼い猫か、豹か、ピューマか、チーターか、ジャガーか、いかなる動物であるか判然としないものである。
すなわち、本件商標の動物の図形と甲第1号証の商標及び甲第2号証の商標の動物の図形のいずれからも特定の観念・称呼を生じないとみるのが相当である。
また、甲第1号証及び甲第2号証の商標には文字が全く存在せず、したがって、本件商標と甲第1号証及び甲第2号証の商標とは、観念上及び称呼上、全く非類似の商標である。
(7)このことは、請求人自身も自ら認めているのである。すなわち、請求人所有の甲第1号証にある引用商標と同一の商標を第21類に出願した際の審査時において、本件商標と関連する商標第1192209号に類似するものとする審査官の指摘に対する昭和53年4月18日付意見書(乙第2号証)の中で、請求人自身、種々の証拠を挙げながら「引用商標は『COUGAR』即ち『クーガー』の称呼を生ずるに対し、本件商標(本件での引用商標)の場合、自然的称呼は生じ得ないと考えられます。従って、両商標が称呼上誤認混同される事態は生じ得ないと考えます。」と言い切っているのである。
(8)このように、本件商標と甲第1号証の商標及び甲第2号証の商標とは、外観、観念、称呼のいずれの点よりみても互いに非類似の商標であるが、本件商標と甲第1号証の商標及び甲第2号証の商標とが互いに非類似の商標とみるべきものであることは、次に挙げる事実からも客観的にいえるものである。
(9)過去の審査、審判事件において、似た種類の動物で、かつ、描かれている動作や形態が近似している商標同士が互いに非類似のものとして認定されている例がいくつもある(乙第3号証乃至同第9号証)。
以上のような事実からしても、本件商標と甲第1号証の商標及び甲第2号証の商標とは、互いに非類似のものとみるのが相当である。
故に、引用商標は、いずれも著名性は全くないものであり、仮に著名であったとしても、本件商標と引用商標は全く異なるものであるから、混同するおそれはないのである。
(10)請求人は、弁駁書において、周知著名性を証明する証拠として甲第8号証ないし甲第13号証を提出しているが、いずれの号証も、請求人が問題提起している引用商標の動物図形だけのものについて扱われたものは無く、精々、PUMA(プーマ)と動物図形が合成され一体化された商標が扱われているだけのものであり、本質的には関係が無いものばかりである。
(11)したがって、請求人の主張には理由がない。

4 当審の判断
(1)請求人が使用する商標の著名性について
請求人が、スポーツウェア、スポーツシューズ、バッグなどに関し、「PUMA」の文字とともに、長年にわたり広く使用してきた結果、世界的に著名となった商標であると主張する引用商標A及び引用商標Bは、それぞれ、別掲(2)及び(3)に示したとおりの構成のものである。
そして、甲第4号証(請求人商品カタログ)、甲第9号証ないし甲第12号証によれば、請求人は、実際の使用においては、この商標を表示する個所が黒色などの濃い色の場合は、引用商標Aのように、動物の図形を白い輪かく線あるいは白抜きに表し、反対に、白色などの明るい色の場合は、引用商標Bのように、動物の図形を黒色などの白以外の一色で塗りつぶして使用しているものと認められる。また、前記動物の図形(以下「請求人動物商標」という。)は、別掲(4)に示す態様の「PUMA」の文字(以下、単に「『PUMA』の文字」という。)と組み合わせて使用している場合が圧倒的に多いものと認められる。
ところで、甲第8号証ないし甲第13号証を総合すれば、「PUMA」の文字と請求人動物商標を組み合わせた商標は、請求人がサッカーシューズなどのスポーツ用シューズ、スポーツウェア、バッグなどに使用した結果、本件商標の登録出願の時には、既に我が国において著名となっていたものと認められる。そして、甲第4号証(請求人商品カタログ)と合わせれば、その状態は、本件商標が商標登録された時点においても継続していたものと判断できる。
被請求人は、この点に関して、著名となっているのはせいぜい「PUMA」の文字よりなる商標であって、請求人動物商標ではない旨主張している。
しかし、前記認定のとおり、請求人は、請求人動物商標と「PUMA」の文字とを組み合わせて使用している場合が圧倒的に多いこと、また、図形からなる商標の識別力が文字商標よりも一般に劣るとすべき相当の根拠はなく、請求人動物商標がこれ単独では商標としての識別力がない又は識別力が弱いとすべき格別の理由も見あたらないことから、請求人動物商標は、請求人の「PUMA」の文字よりなる商標と同時期に同じ程度に著名となっていたものと認められる。被請求人は、請求人動物商標は、単なる飾りであるとか、これだけでは意味もなく著名性はないとか主張するが、根拠のない主張であり採用できない。
また、「PUMA」の文字と請求人動物商標は、請求人が、とりわけサッカーシューズに使用して著名な商標であるが、サッカーシューズ以外のスポーツ用シューズ、スポーツウェア、バッグなどの商品にも使用してきたことからすると、サッカー用品の取引者・需要者に限らず広く一般需要者の間において著名になっていたものと認められる。
(2)本件商標と請求人動物商標の比較
本件商標は、請求人動物商標にはない「COUGaR(aの文字も他の文字と同じ大きさである)」の文字部分を有しており、また、本件商標中の動物の図形(以下「本件動物図形」という。)と請求人動物商標は、被請求人が前記3(4)において指摘しているような動物の各部における形状の差異がある。そして、本件動物図形は、疾走を思わせる体勢であるのに対し、請求人動物商標のものは、左斜め上に跳ねているように見える点も違いがある。
しかし、そのような動物の各部における形状及び体勢に差異があっても、本件動物図形と請求人動物商標は、猫科動物の全体姿態を特徴的に表しているとみられ、図形全体としての外観が類似するものである。そして、特に、請求人動物商標が引用商標Bの態様のように全体が黒塗りで表される場合に極めて近い印象を受けるものといえるところ、請求人は、甲第4号証第10頁、第11頁、第42頁及び甲第12号証第3枚目左下に掲載されているように、引用商標Bの態様でも請求人動物商標を商標として使用してきたものと認められる。
被請求人は、請求人動物商標は「飼い猫がじゃれついているような感じである。」として、本件動物図形との差異を主張するが、この動物がプーマ(ピューマ)であり猫ではないと需要者に認識されることは、請求人が多くの場合、請求人動物商標と「PUMA」の文字とを組み合わせて使用してきた事実に照らせば明らかといえるから、この点の主張は採用できない。
(3)商品の出所混同のおそれについて
以上によれば、本件商標は、これをその指定商品について使用した場合、構成中の本件動物図形より、著名な請求人動物商標を想起連想し、その商品が請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとくその出所について混同を生ずるおそれが、本件商標の登録出願の時、及び本件商標が商標登録された時点においてもあったものと判断せざるをえない。
被請求人は、「被請求人においてライセンスを与えて、本件商標を登山ぐつなどに20年以上にわたって使用してきているが、顧客からもこれを取り扱う流通業者からもプーマ社の商品と混同したとか迷惑がかかったとかのクレームが一度たりとも起ったことがない」ことからも混同はありえない旨主張するが、このように主張するのみで何ら立証するところがないから、採用できず、混同を生じないとすべき格別の事由があるとは認められない。
また、被請求人は、第21類における引用商標Aと同一の商標の登録出願が審査された際の請求人の意見書における記述や過去の審判事件及び登録例からみても、本件商標は、混同のおそれがない旨主張するが、それらを考慮しても出所の混同のおそれについては前記認定のとおり判断するのが相当である。
(4)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(1)
本件商標


別掲(2)
引用商標A

別掲(3)
引用商標B

別掲(4)
文字との組み合わせ使用例

審理終結日 2001-09-11 
結審通知日 2001-09-17 
審決日 2001-10-09 
出願番号 商願昭55-7955 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (124)
最終処分 成立  
前審関与審査官 吉田 秀之 
特許庁審判長 小池 隆
特許庁審判官
鈴木 新五
宮川 久成
登録日 1994-08-31 
登録番号 商標登録第2692068号(T2692068) 
代理人 小谷 武 

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