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審決分類 審判 全部無効 商3条柱書 業務尾記載 無効としない 041
審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効としない 041
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 041
審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効としない 041
管理番号 1050264 
審判番号 審判1999-35341 
総通号数 25 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-01-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-07-06 
確定日 2001-11-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第4157329号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1.本件商標
本件登録第4157329号商標(以下「本件商標」という。)は、平成7年9月1日に登録出願され、「セントラル」の文字を横書きしてなり、第41類「植物・動物の供覧,演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,娯楽施設の提供,録画済み磁気テープの貸与」を指定役務として、平成10年6月19日に設定登録されたものである。

2.請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第14号証(枝番を含む。)を提出した。
本件商標は、商標法第3条第1項柱書、同法第4条第1項第8号、同第15号及び同第16号にそれぞれ該当するので、同法第46条1項1号又は同法同項第5号の規定により、その商標登録を無効にすべきである。
(1)商標法第3条第1項柱書
本件商標の商標権者は、大阪市に本店を有する大企業であり、各種の事業を行っていると想像される。しかし、その定款によれば、役務「植物・動物の供覧、演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営、録画済み磁気テープの貸与」については、その業務を行っている事実を確認する事は出来ず、又、将来、上記役務に係る業務を行う可能性も推察されない(甲第4号証)。
よって、本件商標を係る役務に使用している等の商標権者の証明がなされない場合、本件商標は、商標法第3条第1項柱書に違反し登録を受けられない。
(2)商標法第4条第1項第8号
請求人の名称は「セントラルスポーツ株式会社」である。請求人は、スポーツクラブ経営の先駆け的存在として、1969年に東京オリンピック出場の体操・水泳選手が中心となって設立された会社であり、設立以降現在に至るまで常にこの業界を代表する企業の一つとして業界の先頭に立ってきた(甲第5号証-1ないし同第6号証-2)。この事実は例えば、本件商標出願時(1992年)既に100を越えるスポーツクラブを運営し約30万人の会員を有している業界のトップの企業であったことからも伺い知ることが出来る(甲第7号証-2、同-3)。
請求人は、上記の如く正式名称は「セントラルスポーツ株式会社」であるが、この業界では一般に「セントラル」と略称されている(甲第7号証-2、同-3、甲第8号証-1ないし同第8号証-8等)。即ち、これらの証拠からも明らかなように、「セントラル」の語は、少なくとも第41類の役務「スポーツの教授、運動施設の提供」を行なう業界では「セントラルスポーツ株式会社」の略称として広く認知され、かつ、実際に広く使用されている。
以上より、本件商標は、請求人の著名な略称を含む商標であって、請求人の承諾も得ていない。よって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号
(イ)本件商標は、「セントラル」の文字よりなるものであり、請求人の使用又は所有する著名な商標と同一又は類似することは明らかである。
(ロ)請求人の商標の著名性
請求人は、自らの役務「スポーツの教授、運動施設の提供」の営業の表示として「CENTRAL SPORTS」「セントラルスポーツ」「CENTRAL」の標章を使用ており、これらの標章は、スポーツクラブを営む業界においては広く知られている。かかる事実は、本件商標の権利者の出願にかかる商標であって本件商標と連合関係にあった公告商標に対し、請求人が登録異議を申し立てた事件において、請求人の使用商標の著名性が認められ、公告商標が拒絶された経緯があることからも推察できる(甲第13号証-1及び2)。
(ハ)請求人の業務と本件商標の指定役務との関係
請求人の行う業務は、前述の通りスポーツクラブの経営・運営等であり、本件商標の指定役務との関係では同じ第41類に属する役務「スポーツの教授、運動施設の提供」等について、「CENTRALSPORTS」「セントラルスポーツ」「CENTRAL」「セントラル」等の商標を使用しているものである。したがって、請求人の行う業務と本件商標の指定役務とは相互に関係があると言える。
以上より、本件商標は、請求人の使用する商標と出所の混同を生ずるおそれのある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第16号
請求人の営業に係るスポーツクラブ「セントラルスポーツ」及びその略称の「セントラル」は、前述の如く「スポーツの教授、運動施設の提供」について、周知・著名な商標と認められる。従って、「セントラル」の文字からなる本件商標をその指定役務について使用すれば、いかにも「セントラルスポーツ」が提供する役務であるかの如く、その役務の質を誤認するおそれがある。
特に、1998年以後、請求人は、スポーツクラブの業界で唯一の「JOCオフィシャルスポンサー」であって(甲第11号証-1ないし17)、「セントラルスポーツ」及びその略称の「セントラル」が使用されると、いかにも「セントラルスポーツ」が提供する役務であるかの如く、その役務の質について誤認されるおそれは、更に増大したと考えられる。
以上より、本件商標は、請求人の役務「スポーツの教授、運動施設の提供」との関係において、その役務の質の誤認を生じるおそれのある商標であるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。
(5)被請求人の答弁に対する弁駁
(イ)商標法第3条第1項柱書の該当性
被請求人は、「本件商標に係る指定役務についての業務はありえない。」旨の請求人の主張に対して、設定登録後相当期間が経過しているにもかかわらず、自らの業務について積極的に立証する事ができないため、今回の意味不明な答弁となったものと推察される。
次に、被請求人が乙第2号証-1及び2を提出することで立証しようとしている被請求人の業務は、役務「演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営」に対応する業務であると考えられる。
しかし、被請求人の立証によれば、独立した役務を行っていること及び「演劇興行請負業」又はこれに類する業務を行っていることは一切立証されていない。
以上述べたように、被請求人は、自己の業務について全く立証をしないか又は適切でない資料を提出しているのみである。しかも、審判請求書で述べたとおり、請求人の調査によれば、かかる業務を行っている蓋然性は全く認められない。
(ロ)商標法第4条第1項第8号の該当性
被請求人は、「セントラル」の文字を含む登録商標が多数存在していることを立証しているが、このことが、請求人の名称の略称として「セントラル」が著名でないことを示す資料にはなり得ないことは明かである。
即ち、請求人は、自らの名称の略称を役務「スポーツの教授」等に使用している事実を立証していると共に、その名称の略称が記載されているチラシを全国90箇所以上で年間総計約4,000万枚も配布している。
実際に、全国でスポーツクラブを利用する年代やスイミングスクールに子供を通わせる年代を対象にアンケートを取れば、「セントラル」は「セントラルスポーツ株式会社」の略称として広く知られているのである。これは、前述のチラシの数や全国におけるスポーツ施設の数、業界における地位等を考慮すれば当然のことと考えられるため、あえて証明書やアンケート等を行っていない。
以上より、本件商標は、請求人の著名な略称を含む商標であって、請求人の承諾も得ていないものである。
(ハ)商標法第4条第1項第15号の該当性
被請求人は、「セントラル」は請求人の使用にかかる商標として著名でない旨主張し、その根拠として「セントラル」の文字を含む登録商標が多数存在していることを立証している。
ここでは、前述の「同第8号の該当性」との重複記載を避けるため、請求人以外の者が「スポーツに関連する役務」に商標「セントラル」を使用した場合に、出所の混同を生じる可能性があるか否かについて述べる。
まず、被請求人は著名商標にもその程度等に種類があることを理解していないか又は、意識的に無視しようとしていると考えられる。請求人も自らの使用にかかる商標「セントラル」「セントラルスボーツ」が、この世に存在する全ての商品・役務について出所の混同を生じる程極めて著名な商標であると主張したことはない。請求人は、「スポーツに関連する役務」については、請求人の使用商標「セントラル」「セントラルスポーツ」は周知著名であり、これらの役務と非類似とされる役務であっても、役務の需要者や役務の提供場所などで関連性のある役務に限って出所の混同を生じるおそれがあると主張しているのである。
例えば、本件商標の指定役務との関係では、役務「娯楽施設の提供」が役務「スポーツ施設の提供」と役務の提供を受ける需要者を共通にし、役務の提供場所も近似している役務と考えられるため、商標「セントラル」を該役務に使用した場合については役務の提供者の出所について混同を生じると考えられる。
(ニ)商標法第4条第1項第16号の該当性
本号について、被請求人はほとんど反論しておらず、ただ該当しないとのみ述べているにすぎない。
しかしながら、「セントラル」の語は、ある世代の需要者にとっては、請求人の略称として広く知られていること前記のとおりであるから、例えば、役務「スポーツ関係の録画済み磁気テープの貸与」について商標「セントラル」を使用した場合、その役務の質について誤認を生ずるおそれがあることは否定できない。
(6)むすび
以上のように、被請求人の答弁はいずれも妥当ではなく、本件商標は、商標法第3条第1項柱書、同法第4条第1項第8号・第15号・第16号にそれぞれ該当するので、同法第46条1項1号又は同法同項第5号の規定によりその商標登録を無効にすべきである。

3.被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求める答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証及び同第2号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)商標法第3条第1項柱書
請求人が、無効審判請求理由として挙げている商標法第3条第1項柱書について、請求人は、被請求人の謄本記載事項をもってのみ、本件商標を、自己の業務に係わる商品又は役務に使用することはないと主張しているが、現行商標法は、登録主義を採用し、商標権の自由譲渡、使用許諾を認め、財産権として、私的自治に委ねている。
なお、被請求人の登録商標に係わる指定役務については、添付の乙第2号証のとおり、当該役務を実施している。
(2)商標法第4条第1項第8号
商標法第4条第1項第8号の適用においては、氏名、名称は、いわゆるフルネームでなければならない。略称は、著名でなければならない。
しかるに、請求人の提出した証拠物は、全て、「セントラルスポーツ」に係わる証拠であり、「セントラル」の周知著名性を立証するものは、何も無い。単純に、「セントラルスポーツ」を「セントラル」と自己表示している事実をもって、著名な略称として、本件無効審判を請求した根拠を推察することが出来ない。
因みに、「セントラル」という名称が付く登録商標は、添付の乙第1号証のとおり、555件存在する。
この商標権者の中には、請求人の会社より歴史も古く、社業、業態も大きく、国内外に周知著名な企業も数多く存在している。
しかし、これらの企業のうち、略称としての「セントラル」のみが、周知著名であるとの事実を、見聞することは出来ない。
請求人は、「セントラルスポーツ」の略称としての「セントラル」が、セントラルを結合した登録商標555件と対比して、著名な略称であることを、具体的に証拠をもって立証すべきであり、客観的認定資料として少なくとも官庁や業者団体の証明書をもって立証すべきである。
請求人は、特定地域に限定した、集客資料としての「セントラルスポーツ」のチラシ、広告、資料をもって、「セントラル」の周知著名性を立証しようとしているが、これらの証拠物は、証拠資料としての価値を欠くものと言わざるを得ない。
(3)商標法第4条第1項第15号
著名商標とは、周知商標の中でも、特に高い名声を有するため、それが表示する役務(商品)と競業関係の無い非類似の役務(商品)に使用されても、出所の混同を生じるようなおそれのあるものを言い、また、全国的に知れ渡っている商標を言うのであって、請求人の請求に係わる「セントラル」は、上述の観点から、明らかに商標法第4条第1項第15号に該当しない商標である。
請求人の主張に係わる「セントラル」が、上記著名商標の略称と同列であるとの主張は、請求人の証拠物から、到底、同一視することは出来ない。
何ら、社会的評価及び法的根拠のない、自己主張といわざるを得ない。
周知著名性は、不特定多数の一般需要者、同業者等において、当該商標が、その使用に係わる役務において、現実に良く知られており、第三者の使用により、役務の出所、役務の提供の場所、役務の質について誤認混同を生じる具体的な事実の可能性の大なることである。
しかるに、請求人が、本件審判請求において提出した膨大な証拠物中には、請求人の主張に係わる「セントラル」の周知著名性を立証する具体的かつ客観的な表示、記載は見受けられない。
周知著名性の認定、評価は、独断的な自己主張ではなく、当該役務に係わる、客観的な社会の評価でなければならない。
請求人の主張する「セントラル」の周知著名性についての立証資料を、請求人の提出した証拠物から検証すると、表示・記載があるのは、「セントラルスポーツ」、「セントラルフィットネスクラブ」、「セントラルスイムクラブ」、「セントラルウェルネスクラブ」等に、特定の地域名が付記された名称のみである。
このことから、請求人の主張する「セントラル」は、一般に広く認識されているとは言えない。
請求人の役務の提供の場所を中心に、歩いて通える範囲(甲第8号証)の、ごく限られた地域の人達に「セントラルスポーツ」として、認識されているに過ぎない。
(4)商標法第4条第1項第16号
請求人の主張する商標法第4条第1項第16号該当については、請求人の主張に係わる「セントラル」は、これに該当するものではないので、重ねて反論することは、割愛する。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標は、請求人の主張する無効理由(商標法第3条第1項柱書、同法第4条第1項第8号・第15号・第16号)は、法的に存在しないので、本件無効審判については、答弁の趣旨のとおりの審決を求めるものである。

4.当審の判断
(1)商標法第3条第1項柱書について
本件商標は、「セントラル」の文字を横書きしてなり、第41類「植物・動物の供覧,演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,娯楽施設の提供,録画済み磁気テープの貸与」を指定役務とするものであるところ、請求人は被請求人(商標権者)の登記簿謄本を提出し、この謄本によれば、被請求人が指定役務について業務を行っている事実を確認することはできない旨主張しているが、被請求人より提出された乙第2号証の1及び2によれば、本件商標は自己(被請求人)の業務に係る役務について使用をする商標ではないということはできない。
(2)商標法第4条第1項第8号について
請求人の名称は「セントラルスポーツ株式会社」であるところ、請求人より提出された甲第5号証ないし同第11号証(枝番を含む。)によれば、これが「セントラル」と略称されて使用されている例があることは認められるが、上記の証拠をもっては、請求人の名称が「セントラル」と略称され著名なものとなるに至ったとは認められない。
したがって、本件商標は、他人の名称の著名な略称を含む商標に該当するものではない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
前記甲第5号証ないし同第11号証によれば、請求人「セントラルスポーツ株式会社」が昭和45年に設立され、その主たる事業内容である「スポーツクラブの運営・指導」において、この種業界(いわゆるフィットネス産業)を代表する企業となり「セントラルスポーツ」及び「SENTRAL SPORTS」の文字よりなる商標を使用して、本件商標の登録出願前には我が国の取引者、需要者間に相当程度認識されていたことが認められるとしても、その業務に係る役務は「スポーツの教授」及び「運動施設の提供」等に限られるといえるものである。
してみると、本件商標は、前記したとおり「セントラル」であるうえ、その指定役務中には「スポーツの教授」及び「運動施設の提供」を含んでいないものであり、かつ、請求人の業務に係る上記役務とは、その役務の提供の手段、目的又は場所を異にし、また、需要者の範囲及び業種を異にすることが多いといえるものであるから、請求人の使用に係る商標が上記のとおりであるとしても、本件商標をその指定役務に使用した場合、請求人を想起させることはないと判断するのが相当である。
したがって、商標権者が本件商標を指定役務に使用した場合に、その役務が請求人又は請求人と関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生じさせるおそれのないものである。
(4)商標法第4条第1項第16号について
本件商標は、前記のとおりであるから、本件商標がその指定役務について使用された場合、役務の質について誤認を生ずるおそれがあるものとは認められない。
(5)むすび
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書、同法第4条第1項第8号、同第15号及び同第16号に違反して登録されたものということはできないから、その登録は同法第46条第1項第1号及び同5号により無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-02-06 
結審通知日 2001-02-20 
審決日 2001-10-02 
出願番号 商願平7-90137 
審決分類 T 1 11・ 18- Y (041)
T 1 11・ 23- Y (041)
T 1 11・ 271- Y (041)
T 1 11・ 272- Y (041)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保田 正文 
特許庁審判長 滝沢 智夫
特許庁審判官 中嶋 容伸
涌井 幸一
登録日 1998-06-19 
登録番号 商標登録第4157329号(T4157329) 
商標の称呼 セントラル 
代理人 涌井 謙一 
代理人 鈴木 正次 
代理人 金丸 章一 

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