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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200135481 審決 商標
無効200235271 審決 商標
審判19951811 審決 商標
異議199891314 審決 商標
審判199911793 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 121
管理番号 1045574 
審判番号 審判1998-35464 
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-10-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-09-30 
確定日 2001-09-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第2582549号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第2582549号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1.本件商標
本件登録第2582549号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に表示したとおりの構成よりなり、平成1年3月13日に登録出願、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、同5年9月30日に設定登録がなされたものである。

2.請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第47号証を提出している。
(1)請求人の使用するポロプレーヤーマークの歴史及びその著名性について
(イ)デザイナーであるラルフ・ローレンは、自らデザインした幅広のネクタイが評判となり、1968年(昭和43)に「ポロ・ファッションズ社」を設立、その年自らデザインしたスーツを発表し、以後精力的にメンズウエアのデザインを発表した。その結果、1970年(同45)には、早くもファッション界のアカデミー賞とも称される「コティ・アメリカン・ファッション・クリティックス賞」のベスト・メンズウエア・デザイナー賞を受賞した。
(ロ)ラルフ・ローレンは、1971年(同46)婦人用のシャツを初めてデザインし、紳士用のブランド「ポロ・バイ・ラルフ・ローレン」と区別するために婦人用には「ラルフ・ローレン」と「ポロプレーヤーマーク」のブランドを使用することとし、更に、アクセントとしてカフスにポロ・プレーヤーの刺繍を小さく入れることにした。これが、請求人のポロプレーヤ-マーク使用の始まりであり、1972年頃からメンズウエアも含めラルフ・ローレンの全商品にポロプレーヤーマークを付すようにしたのである。
その後、ラルフ・ローレンは、1973年に映画「華麗なるギャツビー」の衣装を担当したことから、広く世界の人々にその名を知られるようになり、デザイナーとしての名声が不動のものとなった。現在では、ポロプレーヤーマークを冠した商品は、紳士、婦人、子供を問わず、被服、ホーム・ファニシング、香水、レザーグッズなどに亘ってトータルに展開されており、「POLO」ブランド及びポロプレーヤーマークは、請求人のブランドとして全世界的に著名となって、ポロプレーヤーマークといえばラルフ・ローレンのデザインにかかる「POLO」ブランド商品を示すのであり、それはまた請求人の製造販売に係る商品を示しており、世界中どこでもポロプレーヤーマークを見た者は「POLO」ひいては請求人を連想するものである。
(ハ)以上から明らかなように、被請求人が本件商標を出願した平成1年当時は、既にラルフ・ローレンの「POLO」ブランドは米国で成功を収めており、請求人の「POLO」ブランドのシンボルであるポロプレーヤーマークを付した商品が米国で盛んに販売されていた。
(2)請求人商品及びポロプレーヤーマークの日本における著名性
米国における成功を受けて、日本において、ポロプレーヤーマークを付した請求人商品が展開されるようになった経緯は以下のとおりである。
(イ)日本におけるポロの最初のライセンシーは、菱屋株式会社であり、1975年(昭和50)ポロのネクタイの製造販売を開始、ついで1976年株式会社西武百貨店がメンズウエアについてライセンス契約を結び、メンズウエアの販売を開始した時点、即ち1977年既にポロプレーヤーマークはポロシャツ等の胸に刺繍されていた。また、西武百貨店は、1986年(同61)より請求人の商品のみを扱う「ポロショップ」を全国的に展開しているが、そのショップの看板やディスプレイ等にも必ずポロプレーヤーマークが使用された。
(ロ)西武百貨店は、上記ライセンス商品の展開にあわせて新聞・雑誌等のメディアを通じて、1977年(昭和52)から1987年(同62)まで毎年4000万円〜1億1800万円の宣伝・販促費を投じており、1988年西武百貨店の請求人商品を取り扱う部門が独立し、株式会社ポロ・ラルフローレン・ジャパンが設立されてからは、毎年4億1100万円〜13億7700万円の宣伝・販促費を費やして請求人商品の普及に努めている。なお、かかる宣伝活動の際もポロプレーヤーマークが使用されていることは勿論であり、かかる広告宣伝活動の結果、日本における請求人商品の売上げは、1977年の5億6000万円を皮切りに毎年前年度を大幅に上回る伸びを示し、現在では年間900億円近い売上げを誇る日本でも有数の人気の高いブランドの一つとなっている。このことは、請求人の「POLO」ブランド及びポロプレーヤーマークが、請求人商品を示すものとして、極めて短期間に日本における周知・著名性を獲得したことを示すものである。
(3)本件商標がポロプレーヤーマークに類似していること
ポロプレーヤーマークと本件商標とを比較すると、両者とも乗馬の人がマレットを持ち明らかにポロ競技をしているところを描いてなる構成の軌を一にする図形であって、その表現方法もシルエット又はシルエット状と近似するところから、両者は外観において相紛れるおそれが多分にある類似の商標である。確かに、子細に看れば、馬の向きがやや右向きとやや左向きの差異及びマレットの位置が前者は振り上げられ、後者は振り下ろされている等の差異があるが、本件商標の指定商品は、装身具、かばん類等いわゆる服飾関連商品であって、店頭で商品を購入する一般需要者(顧客)が、時と所を異にしてそれらの商品に付された図形を通常払う注意力で見た場合、この程度の差異をもって、両図形の異同の識別は難しいと言うべきであり、このことは、過去の異議決定に徴して疑いないことである(甲第30ないし第44号証)。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性
請求人は、ポロプレーヤーマークを被服、眼鏡、フレグランス等及び本件指定商品のかばん等の所謂アパレル商品及びその関連商品並びにポロショップのシンボルマークとして使用している。
請求人の主力商品である被服、眼鏡、フレグランス等と本件商標の指定商品とは、アパレル業界又はその関連業界によって取り扱われるものとして共通性を有し、近時のファッション業界では、被服以外に時計、眼鏡、香水等や本件の指定商品であるベルト、ブレスレット、ハンドバッグ等をブランド商品として販売することが、ブランドオーナーの戦略として広く行われるようになっており、請求人も被服以外に眼鏡、香水等のフレグランス、寝具等のホーム・ファニシング、皿等のテーブルウエアー、サンダル、ゴルフのキャディバッグ等の外、本件の指定商品であるハンドバッグ、ベルト、さいふ、ブレスレットといった身につけるファッショングッズを取り扱っている(甲第2及び第47号証、外)。
このような状況のもとで、本件商標を付したその指定商品に一般顧客(需要者)が時と所を異にして接した場合、上述のとおり、両図形の異同の識別が難しいこと、ポロプレーヤーマークが高い著名性を有していることを考慮すると、本件商標が、ポロプレーヤーマークと同一又は多少相違があるとしても請求人の関連マーク又は請求人の関連会社のマークと誤認するなどして、需要者をして、本件商標を付した被請求人の商品を、請求人の製造販売にかかる商品と誤認混同するおそれが生ずることは必定である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
(5)商標法第4条第1項第10号該当性
上述の通り、本件商標は、請求人がハンドバッグ、ベルト、さいふ、ブレスレッド等に使用して周知・著名な商標ポロプレーヤーマークと類似するものであり、かつ、その指定商品も同一又は類似のものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。
(6)以上述べたとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、無効とすべきものである。

3.被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判請求人の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第11号証(枝番号を含む。)を提出している。
(1)出所混同の不可能性/図形の非類似性
(イ)引用図形の特定
審判請求人が、引用図形として挙げているポロプレーヤーマークと称している図形を詳述すると、やや左向きの馬の図形で、右足を上げた状態の馬の上にポロ競技のプレーヤーが体を伸ばしてスティックを右手の上方に高々と振り上げている図形であり、振り上げられたスティックは、競技者の左肩上まで持ち上げられている。このスティック部分が上方に突出している事が他のポロに関する商標と比較して特徴的な部分と考えられる。
(ロ)本件商標の図形
本件商標の図形は、別掲の通り、黒いシルエット図形で、右向きの馬の上にポロの競技者が左下を見ながら真下にあるポロの玉を下向きに降ろしたスティックで正に打たんとしている図であり、馬の足とスティックが混在し、全体として動きを感じさせることに特徴のある図形である。
(ハ)図形の外観の非類似性
審判請求人は、本件商標の図形と引用商標とは「両者とも乗馬の人がマレットを持ち明らかにポロ競技をしているところを描いてなる構成の軌を一にする図形」であり類似の商標であると主張している。そこで、本件商標の図形と引用商標の図形を詳細に対比すると、両者は、先ず第一に馬の向きが異なることが大きな相違となる。動物の図形からなる商標の場合、動物の向きは重大な要素であり、反対向きであっただけでも非類似と判断されている例がある。
次に、競技者の態勢が腕を振り上げている状態であるか屈み込むようにして腕を下方に伸ばしている状態であるかについても明確な相違があり、これに関連して、スティックが上に振り上げられていて独立して明らかに見える状態にあるか、下方向に向けられて馬の足とスティックが混在した状態にあるかについても大きな相違がある。
本件商標と引用商標は、馬の向き、競技者の動作、スティックの位置、図形の持つ動き等々において相違があり、これらの諸点を総合的に判断すると、本件商標と引用商標は、詳細な部分についても類似する点が大変に少ないのみならず、全体の印象等々についても類似するものではなく、容易に識別できる非類似の図形であることは明らかである。
審判請求人は、何をもって「この程度の差異をもって、両図形の異同の識別は難しいと言うべきである。」と主張しているのか登録権利者は理解に苦しむものである。
(ニ)他の登録例との類否
「ポロ競技をしている図形」からなる商標の登録は、本類においても、また他類においても多数併存する。本件商標の図形と引用商標が類似するか否かを判断するに際しては、他の登録例との関係を明確にして類似の幅を確定する必要がある。
多数の「ポロ競技をしている図形」からなる図形商標が併存している状況にあって、類似と判断するにはその特徴的な部分を共通にする等の特別な理由が必要であり、そうでない限り、これを類似するものと判断することはできないものである。単に、ポロ競技をする人の図であることだけを共通にする本件商標と引用商標の場合には、到底これを類似するものとは言えず、非類似の商標と判断せざるを得ないものである。
(ホ)図形の観念・称呼の非類似性
審判請求人は、引用商標を「ポロプレーヤーマーク」と称しているが、本件商標および引用商標の図形からは、特定の称呼および観念を生じないものであり、ポロ競技の図形は、多数の商標が併存しており、それらが全て、称呼・観念を同一とすることはできないものである。したがって、本件商標と引用商標は、その称呼・観念において類似するものではない(乙第1号証、同乙第2号証)。
(ヘ)先審査例
他類における審査例ではあるが、本件商標の図形と同一の図形を含む商標が引例図形とは類似するものでないとの判断の下に登録されている事例がある(乙第3号証の1ないし7)。
前記事例中の登録第2719193号(旧第20類)の審査においては、本件審判請求人の申立てた商標法第4条第1項第15号該当を理由とする異議申立における異議決定において「(本願商標は)乗馬した人がステックで下方のボールを打とうとして右下方に向かっている瞬間をシルエット化したものと解されるところである。他方、引用商標は、(中略)乗馬した人がステッキを右側上方に振り上げて左方向に疾駆する瞬間を写実的に表した図形と認められる。しかして、本願商標及び引用商標ともポロ競技と称される騎乗競技の一つを表したものと理解されるとしても両者は、人馬の疾駆する方向、競技者の動き、ステックの位置、表現方法等に顕著な差異を有し、外観上も区別し得るものである。」と判示し、商標法第4条第1項第15号該当性を否定している(乙第5号証)。
この異議決定例は、他類に属するものとはいえ、図形の形態についての類否の判断をしているものであるので、本件の審理においても尊重されるべき先例であり、これらの先審査例に照らしても、本件商標の図形が引用商標と類似するものではなく、出所混同を生ずるおそれがないことは明らかである。
(4)具体的出所混同の不可能性(商標法第4条第1項第10号および第15号不該当性)
請求人は、本件商標は商品の出所の混同のおそれがあると主張しているが、具体的に混同が生じた事実は挙げておらず、これは、具体的には出所の混同が生じていない事の証左でもあり、出所混同の事実は存在しない。
本件商標を使用した商品は、すでに市場に大量に販売されており、他のポロ関連商品と併存して販売されている(乙第6号証の1ないし6)。したがって、差し迫った混同の虞があれば、商標権を無効にする理由があり、本件の場合、単に為にする主張に過ぎず、現実の取引から判断して本商標権を無効にする理由は全くないものと考えられる。
また、ポロ図形の商標は、登録権利者以外にも多数の者によって使用され(乙第7号証)、商標登録を受けているものも多数いるものである。
これらの商標は、いずれも類似しないものであり、互いに商品が出所混同を生ずる事態は現実に生じていない。
以上の通り、ポロの図形は、多数が並存登録されており、取引の実際においても、それぞれのポロ図形として充分に需要者・取引者に認識され、区別されているものであり、米国においても、日本の市場でも、登録権利者の商品がポロ/ローレン社の業務に係る商品と混同を生じている事例は全くなく、その販売実績と流通量から考えて、出所の混同を生ずる商標でないことは需要者の動向及び市場の反応からも明らかである。
(5) 審判請求人の主張の不当性
審判請求人は、ポロの図形を第三者が使用することを全て禁止できるかのように述べているが、「ポロ」の語自体は、競技の名称であり、ポロ競技をする人の図形等を商標として選択することは、何人も自由にできるものであり、ポロ競技の伝統と紳士のスポーツとしてのイメージの良さから、それを商標化することは大いにあり得ることである。
(6)審判請求人とポロ競技
商標権者の上部団体であるアメリカ合衆国ポロ協会(United States Polo Association)は、米国を初め、カナダ、北メキシコのポロ・プレイヤーおよびポロ・クラブを統括する団体であり、1890年に設立され、すでに100年を越える歴史があり、アメリカのポロ競技において最も権威ある組織である。
これに対して、審判請求人は、単にポロ競技のイメージをその商標に利用するだけのものに過ぎない一業者であり、このような者が、自己の名称の中にポロの名称を取り込んでいるからといって、ポロ競技のイメージを持つ多くの商標の使用を排除しようとすることは、全く妥当性を有するものではなく、自己の権益を過大に評価して他人を排斥せんとする事は、公の秩序、善良の風俗をも害する行為とさえ言えるものである。
このように、一私人が公益性を無視して、総括協会活動の一環としての商標の権利を無効と主張することは、商標法の法目的に沿うものでないことは明かである。
(7)結語
上述のとおり、本件商標は、引用商標とは類似するものではなく、また、具体的出所混同は実在せず、またその可能性はありませんので、商標法第4条第1項第10号および同第15号の規定に該当するものではない。

4.当審の判断
(1)請求人の提出に係る甲各号証を総合すると、次の事実が認められる。
株式会社講談社昭和53年7月20日発行「男の一流品大図鑑」、婦人画報社同59年1月発行「MEN’S CLUB 1984,1」の記載によれば、アメリカ合衆国在住のデザイナーであるラルフ・ローレンは、1967年に幅広ネクタイをデザインして注目され、翌1968年にポロ・ファッションズ社(以下「ポロ社」という。)を設立、ネクタイ、シャツ、セーター、靴、カバンなどのデザインを始め、トータルな展開を図ってきた。1971年には婦人服デザインにも進出、服飾界の名誉ある賞「コティ賞」を1970年に受賞する。1974年に映画「華麗なるギャツビー」の主演俳優ロバート・レッドフォードの衣装デザインを担当したことから、アメリカを代表するデザイナーとしての地位を確立した。その頃から、その名前は我が国服飾業界においても知られるようになり、そのデザインに係る商品には「Polo」の文字とともに「by RALPH LAUREN」の文字及び馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形の各標章(以下、一括して「引用標章」という。(別掲))が用いられ、これらの標章は「ポロ」と略称されている。
そして、前記「男の一流品大図鑑」の「ラルフ・ローレン(ポロ)」の項、株式会社集英社同60年11月発行「LEE」の西武百貨店の広告頁及び同62年7月24日付け繊研新聞の記事によれば、我が国においては、西武百貨店が同51年にポロ社とライセンス契約を結び、ラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、婦人服及び子供服の販売をしていたことが認められる。
また、ラルフ・ローレンに係る紳士服、紳士用品、婦人服については、前出「男の一流品大図鑑」を始め、株式会社講談社同56年5月発行「世界の一流品大図鑑 ’81年版」、前記「MEN’S CLUB 1984,1」、同「MEN’S CLUB 1986,7」(同61年2月発行)、同「MEN’S CLUB 1987,4」(同62年4月発行)、同「MEN’S CLUB 1987,5」(同62年5月発行)、同「MEN’S CLUB 1987,11」(同62年11月発行)、前記「LEE」のそれぞれにおいて、眼鏡については、前出「MEN’S CLUB 1986,7」、婦人画報社「「MEN’S CLUB 1987,1」(同62年1月発行)、前記「男の一流品大図鑑 ’81年版」、同「世界の一流品大図鑑 ’81年版」のそれぞれにおいて、「POLO」「ポロ」「Polo」「ポロ(アメリカ)」「ポロ/ラルフローレン(アメリカ)」等の標章の下に紹介されていることが認められる。
なお、ラルフ・ローレンの「POLO」「Polo」「ポロ」の標章について、上記認定事実とほぼ同様の事実を認定した東京高等裁判所の判決(平成2年(行ケ)第183号、平成3年7月11日言渡)がある。
以上の事実を総合すれば、引用標章は、我が国においては、遅くとも本件商標の出願時までにはラルフ・ローレンのデザインに係る商品を表示するものとして、被服類、眼鏡等のいわゆるファッション関連の商品分野の取引者、需要者の間において広く認識され、かつ著名となっていたものと認められ、その状態は現在においても継続しているというのが相当である。
(2)本件商標は、別掲のとおり、疾走する右横向きの馬に乗ったポロ競技のプレイヤーが真下に位置するボールを、下に位置するマレット(T字状のスティック)で打とうとする様をシルエット風に表してなる図形である。
そして、本件商標とラルフ・ローレンのデザインに係る商品を表示するものとして広く知られている引用標章中の疾走する左横向きの馬に乗ったポロ競技のプレイヤーが右上部にマレットを構えている図形とは、その両者を対比すると、全体の描き方、プレイヤーの姿勢、マレットの位置・角度等が異なるものの、ともに馬に乗ってマレットをもちポロ競技に興じているプレイヤーを表してなることにおいて、共通点を有することが認められる。
(3)そうすると、本件商標をその指定商品である装身具、かばん類等のファッションに関連する商品に使用した場合には、前記実情からして、これに接する取引者、需要者は、前記周知になっているラルフ・ローレンに係る引用標章中の疾走する左横向きの馬に乗ったポロ競技のプレイヤーが右上部にマレットを構えている図形を連想、想起し、該商品がラルフ・ローレン又は同人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く出所の混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。
(4)したがって、本件商標については、その余の無効事由につき判断するまでもなく、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により、その登録を無効とすべきものである。
なお、被請求人は当庁における審査例、審判例を挙げて、種々主張するところあるも、過去にされた審査例等は具体的、個別的な判断が示されているのであって、必ずしも確立された統一的な基準によっているものとはいえず、仮にその中に矛盾や誤りがあるとしても、具体的事案の判断においては、過去の審査例等の一部の判断に拘束されることなく検討されるべきものであるから、被請求人の主張は採用することができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本件商標


引用標章



審理終結日 2001-03-29 
結審通知日 2001-04-13 
審決日 2001-04-25 
出願番号 商願平1-26957 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (121)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小宮山 貞夫 
特許庁審判長 為谷 博
特許庁審判官 中嶋 容伸
久我 敬史
登録日 1993-09-30 
登録番号 商標登録第2582549号(T2582549) 
代理人 黒岩 徹夫 
代理人 岡田 稔 
代理人 広瀬 文彦 
代理人 曾我 道照 

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