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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) Z020916
管理番号 1040122 
異議申立番号 異議2000-90305 
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2001-07-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-04-03 
確定日 2001-05-02 
異議申立件数
事件の表示 登録第4340433号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4340433号商標の商標登録を取り消す。
理由 1 本件商標
本件登録第4340433号商標(以下「本件商標」という。)は、「Intellidge」の文字を標準文字とし、平成11年3月11日に登録出願、第2類「電子計算機用プリンタのインクカートリッジ及びトナーカートリッジ,塗料,染料,顔料,印刷インキ,絵の具,塗装用・装飾用・印刷用又は美術用の非鉄金属はく及び粉,塗装用・装飾用・印刷用又は美術用の貴金属はく及び粉,防錆グリース,カナダバルサム,シェラック,媒染剤,マスチック」、第9類「理化学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,コンタクトレンズ,その他の眼鏡,レンズ用ガラス,液晶プロジェクター,その他の電気通信機械器具,録音済みのコンパクトディスク,その他のレコード,メトロノーム,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させたCD-ROM・電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む。),電子回路(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路を除く。),その他の電子応用機械器具及びその部品,遊園地用機械器具,スロットマシン,運動技能訓練用シミュレーター,乗物運転技能訓練用シミュレーター,電気ブザー,磁心,抵抗線,電極,磁石,録画済みビデオデイスク及びビデオテープ,文字・画像・音声を記憶させたCD-ROM(録音済みのコンパクトディスクを除く。),自動販売機,金銭登録機,作業記録機,写真複写機,製図用又は図案用の機械器具,タイムレコーダー,パンチカードシステム機械,票数計算機,ビリングマシン,電気計算機,家庭用テレビゲームおもちゃ」及び第16類「紙類,印刷物,文房具類(「昆虫採集用具」を除く。),印字用インクリボン」を指定商品として、同11年12月3日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立ての理由の要旨
本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第8号、同第11号、同第15号及び同法第8条第1項の規定に違反して登録されたものであるから、その登録は取り消されるべきである。

3 本件商標に対する取消理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の提出に係る甲各号証によれば、申立人の引用する「INTEL」の文字を横書きしてなり、昭和46年1月6日に登録出願され、第11類「電子応用機械器具、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和54年2月27日に設定登録された登録第1373591号商標、同じく別掲に示すとおりの構成よりなり、昭和63年8月19日に登録出願され、第11類「電子応用機械器具、その他本類に属する商品」を指定商品として、平成3年8月30日に設定登録された登録第2332545号商標(以下あわせて「引用商標」という。)は、申立人(インテル コーポレーション)の名称の著名な略称といえるものであり、申立人が製造販売する「マイクロプロセッサをはじめコンピュータ関連製品」に使用するものとして、本件商標の登録出願当時すでに世界各国のこの種業界及び取引者・需要者間において周知・著名な商標と認められるものである。加えて、申立人のマイクロプロセッサを搭載したパソコン機種には、そのことが外部から識別できるための目印として「intel inside」の文字よりなる商標(申立人所有の登録第4060597号商標)がステッカーとして貼付され、使用されていることが認められる。
しかして、本件商標は、前記したとおりであって「Intellidge」の欧文字よりなるところ、この欧文字の綴りは全体としてある意味合いを有する一語を形成するもの(既成の観念を示すもの)ではなく、かつ、本件商標の指定商品中には電子計算機をはじめコンピュータ関連商品が多く含まれているものであるから、商標権者が本件商標をその指定商品について使用した場合、これに接する取引者・需要者は、前記した実情よりして、その構成中の「Intel」の文字部分に注目して周知・著名な引用商標を想起し、該商品が申立人の業務に係る商品、又は、申立人と組織的若しくは経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように誤認し、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。

4 商標権者の意見要旨
引用商標は、たしかに「マイクロプロセッサ」については、この種の業界及び取引者、需要者間において周知・著名性を獲得しているものかもしれないが、いくら周知・著名性を獲得しようとも、単に商標全体の中の一部として「intel」の文字が使用されるすべての場合にまで、混同の可能性を認めるのは行き過ぎである。
そもそも「intel」という語は、「intelligent(理解力のある・知性のある)」、「intellect(知的な・知力の)」、「intelligentsia(知識階級)」といった「知力、知性」を表す言葉のはじめにつくもので、「インテル社」よりも「知力、知性」に関連したイメージを思い浮かべるほうが自然であり、「SONY」や「CANON」のような造語とは異なり、「intel」の語自体は特にユニークな造語というほどのものとはいえない。
現に、「intelligent」等からの「知的」なイメージが手伝い、「intel〜」という新しい商標は数多く採択されているのであり(乙第2号証の1、2 なお、商標権者は提出に係る証拠に甲号証を付しているが、乙号証をもって処理した。以下、同じ。)、このような場合、仮に「intel〜」という商標を全て本号を理由に拒絶・取消・無効とするとなると、接頭語、あるいは殆ど既成語とも呼べるような文字「intel〜」の商標としての採用ができないことになり、著しく商標採択の幅を狭小化することとなる。
引用商標「intel」は、「インテル」という称呼とともに周知・著名なのであって、称呼が「インテリ〜」と続く商標との関係にあっては、まず「インテリジェンス」などのイメージが浮かび、引用商標や「インテル社」のことを思い浮かぶ余地はおそらくないものというべきである。
ちなみに、本件商標は「intelligent(インテリジェント)+cartridge(カートリッジ)」がその由来であり、まさに商標より生じる「知的」イメージを前提として採択されたものであり、標準文字で「Intellidge」と一連一体にて横書きされ、「インテリッジ」と発音されるのであって、特に「Intel」の文字が他の部分に比べて大きいとか、目立つ態様で表されているなどの特段の事情はなく、実際にコンピュータプリンタ用の「インクカートリッジ」についての本件商標の使用例(乙第1号証の1ないし3)を見ても、「Intellidge」、「intellidge」と普通に表されているだけで、この態様のどこから「インテル社」を想起できるのか疑問といわざるを得ない。

5 当審の判断
申立人の提出に係る甲各号証によれば、申立人は、1968年にアメリカ合衆国カリフォルニア州において創業され、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、マイクロコンピュータを含む半導体製品・コンピュータ関連製品の製造販売メーカーであり、1970年には世界初のICメモリ1103を、1971年には世界初のマイクロプロセッサ4004を開発し、その後、1978年には業界標準となる8ビット・マイクロプロセッサ8080を、1982年には16ビット・マイクロプロセッサを、1985年には32ビット・マイクロプロセッサを開発したことを認めることができる(甲第10号証)。
そして、1995年にはパソコンの心臓部であるマイクロプロセッサ(MPU)における全世界の市場シェアの約80%を占めるに至っていたこと(甲第11号証)、申立人の世界半導体市場におけるランキングは、1989年には第8位であったものが、1990年には第5位にまで上昇し、1991年には第3位となり、1992年に第1位を獲得し、これ以降、第1位を維持していること(甲第12号証及び甲第61号証)、又、申立人は、1998年の「FORTUNE」誌の「世界の最も賞賛すべき企業」におけるコンピュータ産業部門の第1位を獲得していたこと(甲第51号証)、更に、申立人の名称の略称であり、ハウスマークとしても使用されている「INTEL」及び「intel」の商標は、1993年8月9日付「Wall Street Journal」誌及び1993年9月1日付「Financial World」誌におけるブランド価値の推定において、178億1000万ドル(全米第3位)という評価を受けていたこと(甲第45号証及び甲第46号証)、1997年9月・10月号の「FINANCIAL WORLD」誌における「Most Valuable BRANDS」(最も価値のあるブランド)においても、「Coca-Cola」、「Marlboro」、「IBM」、「McDonald’s」等の世界的な著名商標に続く第8位にランキングされており、そのブランド価値は132億7400万ドルと評価されていたこと(甲第48号証)を認めることができる。
また、わが国における引用商標の使用開始は、1970年における申立人商品のわが国への輸出に遡り、その翌年である1971年には、申立人の子会社「インテルジャパン株式会社」が設立され、以後、申立人の日本国内における営業は、インテルジャパン株式会社(平成9年に「インテル株式会社」と変更)によって行われている。
そして、申立人のマイクロプロセッサを搭載したパソコン機種には、それが申立人「インテル社」製のマイクロプロセッサを内蔵したパソコンであることが外部から認知できるための目印として、引用商標を一部に有するロゴの商標「intel inside」がステッカーとして貼付されており(甲第39号証)、この「intel inside」については、一般消費者を対象として行うテレビコマーシャルを中心に、「インテル、入ってる。」というキャッチコピーを伴って大々的に広告宣伝されており、又、申立人の製品および経営戦略に関する第三者による様々な特集記事が各種雑誌に数多く掲載されていることを認めることができる(甲第10号証ないし甲第18号証、甲第40号証ないし甲第52号証、甲第60号証ないし甲第61号証)。
以上の事実に照らしてみれば、引用商標は、申立人が製造販売する「マイクロプロセッサをはじめとするコンピュータ関連製品」に使用するものとして、本件商標の登録出願当時すでに我が国を含む世界各国のこの種業界及び取引者・需要者間において周知・著名な商標となっていたものと認めることができる。
しかして、本件商標は、前記のとおり、「Intellidge」の欧文字よりなるところ、この欧文字の綴りは全体としてある意味合いを有する一語を形成するもの(既成の観念を示すもの)ではなく、構成文字の全体をもって常に一体的にのみ認識しなければならない格別の関連性を有しているとも認められないものである。そして、自他商品識別標識として最も重要な要素となる語頭部分において、引用商標と同一の表示である「Intel」の文字を含み、しかも、本件商標の指定商品中には、電子計算機をはじめコンピュータ関連商品が多く含まれているものである。
してみれば、本件商標は、その構成中に、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える「Intel」の文字を含むものであるから、商標権者が本件商標をコンピュータ関連機器をはじめとするその指定商品について使用するときは、これに接する取引者・需要者は、前記した実情よりして、「Intel」の文字部分に注意が惹かれ、申立人の使用に係る著名な商標である「Intel」を想起し、あるいは、申立人のハウスマークとしても著名な「Intel」のファミリ-商標の一種であるかの如く連想し、該商品が申立人の業務に係る商品、又は、申立人と組織的若しくは経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように誤認し、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
この点について、商標権者は、「Intel」の文字を含む商標は数多く登録されており、称呼が「インテリ〜」と続く商標との関係においては、「インテル社」を想起することはなく、本件商標も「intelligent(インテリジェント)+cartridge(カートリッジ)」がその由来であり、商標より生じる「知的」イメージを前提として採択された商標であって、標準文字で一連一体に書され、「インテリッジ」と称呼されるものであるから、「インテル社」を想起させるものではない旨主張している。
しかしながら、商標権者の主観的意図がそのようなものであったとしても、本件商標は、その構成から客観的に商標権者の意図を把握し得るとはいい難いばかりでなく、その称呼についても、本件商標は造語からなるものであるから、商標権者が主張する「インテリッジ」の称呼に特定されるものではなく、商標権者の提出に係る乙第1号証の1ないし3(商品パッケ-ジ、商品カタログ、雑誌掲載記事)においても、その読みは特定されていない。そうとすれば、本件商標は、「インテル」と称呼される著名な引用商標と同じ「Intel」の文字からはじまることから、「インテルリッジ」の称呼をもって把握・認識される場合も決して少なくないものというべきである。又、過去に「Intel」の文字を含む商標が登録されていたとしても、それらの商標と引用商標との間に出所の混同をきたすおそれはないと考え得る事情の存在が立証されている訳でもなく、そのような登録例があるというだけでは、本件商標についての前記した判断を左右することにはならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであり、通知した取消理由は、妥当なものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 引用商標(登録第2332545号商標)

異議決定日 2001-03-15 
出願番号 商願平11-20839 
審決分類 T 1 651・ 271- Z (Z020916)
最終処分 取消  
前審関与審査官 八木橋 正雄 
特許庁審判長 佐藤 敏樹
特許庁審判官 板垣 健輔
上村 勉
登録日 1999-12-03 
登録番号 商標登録第4340433号(T4340433) 
権利者 セイコーエプソン株式会社
商標の称呼 インテリッジ 
代理人 小谷 武 
代理人 柳田 征史 
代理人 佐久間 剛 

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