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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) 027
管理番号 1038237 
異議申立番号 異議1998-92060 
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2001-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-11-06 
確定日 2001-03-02 
異議申立件数
事件の表示 登録第4173705号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4173705号商標の商標登録を取り消す。
理由 1 本件商標
本件登録第4173705号商標(以下「本件商標」という。)は、平成7年6年19日に商標登録出願され、別掲のとおりの構成よりなり、第27類「敷き物,壁掛け(織物製のものを除く。),洗い場用マット,プラスチック製の壁板・タイル及び床板,リノリューム製の壁板・タイル及び床板,壁紙」を指定商品として、同10年8月7日に設定登録がなされたものである。

2 取消し理由の要旨
本件商標は、別掲のとおりの構成よりなり、該構成中には黒塗りで描かれた馬に乗ったポロ競技プレーヤーの図形及び「POLO」の文字を含むものである。
ところで、馬に乗ったポロ競技プレーヤーの図形及び「POLO」の文字は、「ザ ポロ/ローレン カンパニー リミテッド」(アメリカ合衆国ニューヨーク所在)が、商品「被服、眼鏡」等に長年使用し、本件商標の出願前から取引者、需要者の間に広く知られているものである。
それゆえ、黒塗りで描かれた馬に乗ったポロ競技プレーヤーの図形及び「POLO」の文字を含む本件商標をその指定商品について使用するときは、上記の者の商標を連想、想起させるものであり、あたかも、上記の者と何らかの関係を有する者の商品であるかのごとく、需要者がその商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものと認める。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものである。

3 商標権者の意見の要旨
(1)本件商標は世界最古のポロクラブである「CAMBRIDGE UNIVERSITY POLO CLUB」の現実に使用されている商標である。また、ラルフ・ローレンの「POLO」商標は単独では使用されていないので、もはや著名性を失ったと解するのが正当であり、かつ「馬に乗ったポロプレイヤーの図形」をすべてラルフ・ローレンの「ポロ図形」と混同するということは不合理なことである。
(2)東京高裁平成11年(行ケ)253号の平成12年1月27日付け判決では、結合商標中に「POLO/ポロ」が含まれているから、ラルフ・ローレンの「POLO/ポロ」を連想するかどうかは個別具体的に判断するべきと判示した上で、「PALM SPRINGS POLO CLUB/パームスプリングスポロクラブ」は、世界的に有名な保養地である「PALM SPRINGS」にある「ポロ競技のクラブ」と認識されるため、ラルフ・ローレンの「POLO/ポロ」が有名であったとしても「PALM SPRINGS POLO CLUB/パームスプリングスポロクラブ」より「POLO/ポロ」の文字のみが注目されると解することはできないと判示している。
この判決は、請求人が主張している「ケンブリッジ大学のポロクラブ」としての一体性を裁判所も認めたものである。

4 当審の判断
(1)「POLO」の周知性について
株式会社講談社昭和53年7月20日発行「男の一流品大図鑑」、サンケイマーケティング昭和58年9月28日発行「舶来ブランド事典'84ザ・ブランド」の記載によれば、以下の事実が認められる。
アメリカ合衆国在住のデザイナーであるラルフ・ローレンは、1967年に幅広ネクタイをデザインして注目され、翌1968年にポロ・ファッションズ社(以下「ポロ社」という。)を設立、ネクタイ、シャツ、セーター、スーツ、靴、カバンなどのデザインをはじめ、トータルな展開を図ってきた。1971年には婦人服デザインにも進出し、「コティ賞」を1970年と1973年の2回受賞したのをはじめ、数々の賞を受賞した。1974年に映画「華麗なるギャッツビー」の主演俳優ロバート・レッドフォードの衣装デザインを担当したことから、アメリカを代表するデザイナーとしての地位を確立した。その頃からその名前はわが国服飾業界においても知られるようになり、そのデザインに係る一群の商品には、横長四角形中に記載された「Polo」の文字と共に「by RALPH LAUREN(by Ralph Lauren)」の文字及び馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形の各商標が用いられ、これらは「ポロ」の略称でも呼ばれている(別掲引用商標A及び引用商標B参照)。
そして、株式会社洋品界昭和55年3月発行「海外ファッション・ブランド総覧1980年版」「ポロ/Polo」の項及びボイス情報株式会社昭和59年9月発行「ライセンス・ビジネスの多角的戦略'85」の「ポロ・バイ・ラルフ・ローレン」の項の記述及び昭和63年10月29日付け日経流通新聞の記事によれば、わが国においては西武百貨店が昭和51年にポロ社から使用許諾を受け、同52年からラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、紳士靴、サングラス等の、同53年から婦人服の輸入、製造、販売を開始したことが認められる。
また、ラルフ・ローレンに係る紳士服、紳士用品については、株式会社スタイル社1971年7月発行「dansen男子専科」を始め、前記「男の一流品大図鑑」、株式会社講談社昭和54年5月発行「世界の一流品大図鑑'79年版」、株式会社チャネラー昭和54年9月発行別冊チャネラー「ファッション・ブランド年鑑'80年版」、「男の一流品大図鑑'81年版」(昭和55年11月発行)、「世界の一流品大図鑑'80年版」(昭和55年6月発行)、婦人画報社昭和55年12月発行「MEN’S CLUB 1980,12」、「世界の一流品大図鑑'81年版」(昭和56年6月発行)、前記「舶来ブランド事典'84ザ・ブランド」、株式会社講談社昭和60年5月発行「流行ブランド図鑑」のそれぞれにおいて、眼鏡については、「世界の一流品大図鑑'80年版」、「ファッション・ブランド年鑑'80年版」、「男の一流品大図鑑'81年版」、「世界の一流品大図鑑'81年版」のそれぞれにおいて、「POLO」、「ポロ」、「Polo」、「ポロ(アメリカ)」、「ポロ/ラルフ・ローレン(アメリカ)」等の表題の下に紹介されていることが認められる。
以上によれば、引用商標は、ラルフ・ローレンのデザインに係る被服類及び眼鏡製品に使用する商標として遅くとも昭和55年頃までには既にわが国において取引者、需要者間に広く認識されるに至っていたものと認められ、その状態は現在においても継続しているというのが相当である。
この点に関し商標権者は、ラルフ・ローレンの「POLO」商標は単独では使用されていないので、もはや著名性を失ったと解するのが正当であると述べている。
確かに最近においては、ラルフ・ローレンデザインの被服等に使用されている商標は、「POLO by Ralph Lauren」の文字や、乗馬したポロ競技者がマレットを振り上げている図形、あるいはこれらを組み合わせたものであって、「POLO」の文字を単独で用いたものではないが、わが国においてはこれが「POLO」、「ポロ」とも呼ばれてきていることは前認定のとおりであるし、1992年(平成4年)9月23日付け読売新聞(東京版、朝刊)には、「〜アメリカの人気ブランド『ポロ』のロゴ『ポロ・バイ・ラルフ・ローレン』に酷似したマークのTシャツを販売していた大阪の業者が〜」の記事が、1993年(平成5年)10月13日付け読売新聞(大阪版、朝刊)には、「ポロ球技のマークで知られる米国のファッションブランド『POLO(ポロ)』の製品に見せかけた眼鏡枠を販売〜」の記事が掲載され、1999年(平成11年)6月8日付け朝日新聞(夕刊)に、「米国ブランド『ポロ』などのマークが入った偽物セーターや〜」の記事が、1999年(平成11年)9月9日付け日本経済新聞において、「ラルフローレン偽物衣料を販売」の見出しの下に、「〜団体職員〜に『ポロ』ブランドの偽物セーター一枚を二千九百円で販売したほか〜」の記事が掲載され、また辞典類においては、1991年発行株式会社研究社「英和商品名辞典」の「Polo ポロ」の項には、「⇒Polo by Ralph Lauren」と、1998年1月10日発行株式会社小学館「小学館ランダムハウス英和大辞典」の「Polo」の項には、「〜。3(商標)ポロ;米国のRalph Laurenデザインによるバッグなどの革製品。4ポロ.⇒POLO BY RALPH LAUREN」と掲載されている。
こうしたことよりすれば、「POLO」、「ポロ」等の商標の周知性については、現在もなお継続しているものと判断されるものであるから、商標権者のこの点に関する主張は採用できない。
(2)商品の出所の混同のおそれについて
本件商標は、別掲のとおりの構成よりなるところ、横向きの馬にまたがりマレットを振り上げ疾走するごとき黒塗りの図形を上段に表し、その下に「C.U.P.C.」、「CAMBRIDGE UNIVERSITY」及び「POLO CLUB」の文字を三段に表してなるものである。
そして、その図形部分は、馬に乗ったポロ競技のプレーヤーを表したものであることは明らかである。また、図形部分の下方に表された「CAMBRIDGE UNIVERSITY」及び「POLO CLUB」の文字において、これを意味する「ケンブリッジ大学のポロ競技クラブ」について、及び競技としてのポロは、わが国においては格別親しまれているものであるとも認められないことよりすれば、本件商標の図形部分及び下段の冒頭見やすい位置に表された「POLO」の文字部分から、前記ラルフ・ローレンのデザインに係る馬に乗ったポロ競技プレーヤーの図形及び「POLO」「Polo」「ポロ」等の文字が需要者の間に広く知られている商標を連想、想起し混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
さらに、ラルフ・ローレンは服飾等のデザイナーであり、ラルフ・ローレンのデザインに係る商品に付される商標ないしそのブランドが著名である紳士服、婦人服、眼鏡等は、デザインが重要な要素とされるものである。
一方、本件商標の指定商品もやはりデザインが重要な要素とされる「敷き物,壁掛け(織物製のものを除く。),洗い場用マット,プラスチック製の壁板・タイル及び床板,リノリューム製の壁板・タイル及び床板,壁紙」であり、これらの商品は同一デザイナーによる統一ブランドの下にトータル的にファッションをまとめようとする商品群の一つとなりうるものである。
そうすると、本件商標に接した取引者、需要者は、その商標の図形部分が馬に乗ったポロ競技のプレーヤーであることに着目し、さらに、商標中の「POLO」の文字部分に着目し、ラルフ・ローレンのデザインに係る商標を連想、想起し、該商品がラルフ・ローレン又は同人と組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
(3)商標権者は、東京高裁平成11年(行ケ)253号の平成12年1月27日付け判決では、結合商標中に「POLO/ポロ」が含まれているから、ラルフ・ローレンの「POLO/ポロ」を連想するかどうかは個別具体的に判断するべきと判示した上で、「PALM SPRINGS POLO CLUB/パームスプリングスポロクラブ」は世界的に有名な保養地である「PALM SPRINGS」にある「ポロ競技のクラブ」と認識されるため、ラルフ・ローレンの「POLO/ポロ」が有名であったとしても「PALM SPRINGS POLO CLUB/パームスプリングスポロクラブ」より「POLO/ポロ」の文字のみが注目されると解することはできないと判示していると述べる。
しかし、商標「ROYAL PRINCE POLO CLUB」において、東京高等裁判所における平成11年(行ケ)第290号審決取消請求事件(平成11年12月16日判決言渡)では、「一方、球技としてのポロは、わが国においてはほとんどなじみのないものであることは、当裁判所に顕著な事実である。そうすると、被服等のファッション関連商品に『POLO』,『Polo』,『ポロ』の文字が使用されると、これに接した取引者・需要者は、球技としてのポロに関係する商品とは認識せず、ラルフ・ローレンあるいはポロ社に関係する商品と認識する蓋然性が極めて高いということができる。そして、本願商標の指定商品はファッション(装身に関する流行)関連商品にほかならないから、これに『POLO』の文字を使用した場合も、これに接した取引者・需要者は球技としてのポロに関係する商品とは認識せず、ラルフ・ローレンあるいはポロ社に関係する商品と認識する蓋然性が極めて高いことになるのである。」と判示している。
本件商標中の「CAMBRIDGE UNIVERSITY」の文字がわが国においてよく知られているものであるとしても、「CAMBRIDGE UNIVERSITY」及び「POLO CLUB」が意味する「ケンブリッジ大学のポロクラブ」について、及び球技としてのポロはわが国においてはほとんどなじみのないものであること、「POLO」の文字は下段の冒頭見やすい位置に表されているものであること、本件商標は文字のみについてのものではなく、図形も含まれた結合商標でありその図形部分についても商品の出所の混同を生ずるおそれがあることは前記認定のとおりであることよりすれば、商標権者が引用した判決とは事案を異にするものといわなければならない。
したがって、この点に関する商標権者の主張は採用できない。
(4)以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものであるから、商標法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 本件商標

引用商標A

引用商標B

異議決定日 2000-10-12 
出願番号 商願平7-61478 
審決分類 T 1 651・ 271- Z (027)
最終処分 取消  
前審関与審査官 須藤 祀久 
特許庁審判長 佐藤 敏樹
特許庁審判官 上村 勉
村上 照美
登録日 1998-08-07 
登録番号 商標登録第4173705号(T4173705) 
権利者 ザ ユニバーシティー オブ ケンブリッジ
商標の称呼 シイユウピイシイ、ケンブリッジユニバーシティーポロクラブ、ケンブリッジユニバーシティー、ポロクラブ 
代理人 曾我 道照 
代理人 今村 元 
代理人 山内 淳三 
代理人 岡田 稔 
代理人 黒岩 徹夫 

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