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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Z21
管理番号 1037720 
審判番号 審判1999-2460 
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-02-18 
確定日 2001-04-05 
事件の表示 平成 9年商標登録願第152665号拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、その構成を別掲に示すものとし、第21類に属する商品を指定して、平成9年8月29日に立体商標として登録出願されたものであり、その指定商品については平成10年9月11日付手続補正書により「清掃用若しくは洗濯用の磨きスポンジ,化粧用スポンジ」と補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、その指定商品との関係からみると、『清掃用若しくは洗濯用の磨きスポンジ、又は化粧用スポンジ』の一形態を認識させる立体的形状のみからなるものであるから、これを指定商品について使用するときは、単に商品そのものの形状を普通に用いられる方法をもって表示してなるにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。出願人は、本願商標は出願人の取扱いに係る商品を表示するものとして需要者、取引者に広く知られるに至っているものであると述べ、証拠方法として甲第1乃至同第6号証を提出しているが、これらの証拠からは、どの程度宣伝して、その結果どの程度の売上があり、シェアはどの程度占めているのか等が不明確であり、また、同業他者による証明もないので、出願人の前記主張は採用することができない。」旨の理由で本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)平成8年法律第68号により改正された商標法は、立体的形状若しくは立体的形状と文字、図形、記号等の結合又はこれらと色彩との結合された標章であって、商品又は役務について使用するものを登録する立体商標制度を導入した。
立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の有する機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の有する美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは、前示したように、商品等の機能、又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品等の機能又は美感に関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。
また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
さらに、本来的には自他役務等を識別するための標識として採択されるものではない立体商標については、登録によって発生する商標権が全国的に及ぶ更新可能な半永久的な独占権となることを考慮すれば、その識別性について厳格に解釈し、適用することが求められるところである。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者間において当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
(2)立体商標制度を審議した工業所有権審議会の平成7年12月13日付け「商標法等の改正に関する答申」P30においても「3.(1)立体商標制度の導入 需要者が指定商品若しくはその容器又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識する形状のみからなる立体商標は登録対象としないことが適当と考えられる。・・・ただし、これらの商標であっても使用の結果識別力が生ずるに至ったものは、現行法第3条第2項に基づき登録が認められることが適当である。」としている。
また、商品の形態を不正競争防止法により保護を求めた事件の判決においても、例えば、「商品の形態自体は、その商品の目的とする機能をよりよく発揮させあるいはその美感を高める等の見地から選択されるものであって、本来、商品の出所を表示することを目的とするものではないけれども、二次的に出所表示の機能を備えることもありうべく、この場合には商品の形態自体が特定人の商品たることを示す表示に該当すると解すべきである。」(東京地方裁判所 昭和50年(ワ)第3035号 昭和52年12月23日判決言渡【最高裁判所事務総局発行 無体財産権関係民事・行政裁判例集第9巻第2号769頁】)との判示がなされているところである。
したがって、前記(1)の解釈は、本件独自の見解でないことは明らかである。
(3)これを本願についてみるに、本願商標は、別掲に示すとおり、上面と底面の色彩と態様を違え二層形状をなす、紋章の分銅状の立体を扁平にした形状よりなるものであり、該形状は指定商品の一形態を表したものとみるべきであって、これを指定商品に使用しても、取引者、需要者は、単に商品の形状を表示したものと認識するにすぎないと判断するのが相当である。
請求人は、原審における意見書において、本願に係る形状は指定商品の一形態ではあっても、極めて特徴的なものであり、商品そのものの形状を普通に用いられる方法をもって表示してなるとはいえず自他商品の識別標識として機能する旨主張している。
しかしながら、本願指定商品を取り扱う業界においては、その形状に特徴をもたせたものを採択し、販売していることが一般に行われているところであって、この特徴は、商品の機能(使い易さ等)や美感(見た目の美しさ)を効果的に際立たせるための範囲のものというべきである。
しかして、本願商標は、前記認定のとおりであり、その形状が多少特徴的なものであっても、それは商品等の機能、又は美感をより発揮させるために施されたものであり、商品の形状を普通に用いられる方法の範疇で表示する標章のみからなる商標というべきであって、本願商標は、その形状に特徴をもたせたことをもって自他商品の識別力を有するものとは認められないことは(1)で述べたとおりである。
したがって、本願商標が指定商品の一形態を表示するものであるとの原審の判断は妥当なものである。
(4)請求人は、原審における意見書において、本願商標が使用により自他商品識別力を獲得している旨主張し、甲第1号証ないし同第6号証を提出している。
そこで検討するに、甲第1号証及び同第2号証は、広告を継続して掲載した旨の、甲第3号証及び同第4号証は、パンフレットを印刷納入した旨の、甲第5号証及び同第6号証は、扁平な分銅形状をした商品を販売した旨の各証明であるが、これらは、1997年及び1998年における使用状況が把握できるだけであり、これらのみでは、本願商標が使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っていると認めるに十分とはいえないものである。
加えて、甲各号証に示された商品は、当該商品の形状を表示したにすぎず、これら商品は、むしろ、「スコッチ・ブライト」等の文字をもって自他商品が識別されているとみるべきであり、本願商標に係る形状部分が、それのみにより自他商品の識別標識として機能しているとは認められない。
してみれば、請求人(出願人)が提出した甲各号証をもって本願商標が使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っていると認めることはできないといわざるを得ない。

4 結 論
したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当し、同法第3条第2項には該当しないとした原査定の認定、判断は妥当なものであって取り消すべき理由はない。
なお、請求人は、審判請求書において具体的理由及び証拠は追って補充すると述べているに止まり、当審による審尋にもかかわらず意見を補充していないからこれを待たずに審理した。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 【別掲】
本願商標


(この商標はカラー写真によって表されたものであるから細部及び色彩については原本を参照されたい)
審理終結日 2000-10-24 
結審通知日 2000-11-07 
審決日 2000-11-20 
出願番号 商願平9-152665 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (Z21)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 良弘和田 恵美 
特許庁審判長 為谷 博
特許庁審判官 久保田 正文
宮川 久成
代理人 石田 敬 
代理人 勝部 哲雄 
代理人 青木 篤 
代理人 田島 壽 
代理人 宇井 正一 

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