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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない 016 |
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管理番号 | 1037487 |
審判番号 | 審判1999-35039 |
総通号数 | 18 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2001-06-29 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1999-01-19 |
確定日 | 2001-02-26 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第3319510号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第3319510号商標(以下「本件商標」という。)は、「知っ得情報」の文字を横書きしてなり、平成6年7月15日登録出願、第16類「雑誌,新聞」を指定商品として、平成9年6月6日登録されたものである。 2 引用商標 請求人が、本件商標の登録を無効であるとして、その理由に引用する登録第3133498号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲に示すとおりレタリングした「知っトク手帳」の文字を上段に、「知っ得手帳」の文字を下段に表してなり、平成5年3月30日登録出願、第16類「雑誌,新聞」を指定商品として、平成8年3月29日登録されたものである。 3 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を概要次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第21号証を提出した。 本件商標は、本件商標の出願日以前に出願された引用商標に類似し、かつ指定商品も類似することから、商標法第4条第1項第11号に該当し、同法第46条第1項第1号の規定により、その登録は無効とされるべきである。 本件商標中の「情報」の文字は、本商品区分における商品の内容を普通に表す語句にすぎないため、その要部は「知っ得」である。 一方、引用商標の構成中「知っトク手帳」の前段の「知っトク」が漢字と片仮名混じりであり、一方「手帳」が漢字構成であることから、当該「知っトク」と「手帳」とは分断されて看取される可能性がある。つまり、本件商標と引用商標とを外観の点において照らして判断するならば、本件商標からは「知っ得」が、引用商標からは「知っ得」若しくは「知っトク」がそれぞれ抽出され、これらの商標要部は互いに類似する。 商品の点において、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品は、同一であることから、本件商標は、引用商標により拒絶されるべきであった。 昨今の社会的実情を鑑みるに、例えば書店において販売される書籍、雑誌等の「印刷物」に伍して「手帳」が販売されている。このことから、「手帳」は、一般需要者や取引者間においてはもはや「印刷物」として認識されるおそれが極めて高い。書店における販売実情を鑑みるだけでも、「手帳」は「印刷物」と販売場所を共通にしており、また、新聞、雑誌、書籍等の「印刷物」の出版を手掛ける会社も「手帳」の市場に参入している。 「手帳」なる商品に対する一般需要者や取引者の認識は、もはや「文房具」における「手帳」であるとか、「印刷物」における「手帳」といった商品概念の境界がなくなりつつあることを示唆している。よって、「手帳」の語は、商品の品質を表すかもしくは商品の誤認混同を生ぜしめるものとして既に自他商品識別力は喪失しているのであり、類否判断における要部となりえず捨象されて看取されるのであり、結局、本件商標と引用商標とは類似することとなり、本件商標は先願の引用商標によって拒絶されるべきである。 4 被請求人の主張 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を概要次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第14号証を提出した。 (1)引用商標は、「大東京火災海上保険株式会社」が所有する登録商標であるばかりでなく、請求人の提出に係る甲第4号証においても何人にも専用使用権又は通常使用権の設定の登録はなされていないものである。 そうとすると、請求人は本件審判を請求する適格を欠くものであるから、請求の理由を検討するまでもなく、本件は速やかに却下の審決がなされるべきものである。 (2)本件商標について 本件商標は「知っ得情報」と横書きしてなるもので指定商品を「雑誌,新聞」とするものである。 そしてその称呼は、「シットクジョウホウ」の一連の称呼を生じる他に「シットク」の称呼を生じるものである。 (3)本件商標と引用商標の指定商品について 請求人は、「手帳」の語は自他商品識別力が失せているかの如く論を進めるが、これは商標法が規定する商品「文房具類」と「印刷物」との概念を混在した中で「手帳」についての議論を展開されたことによる誤った結論であるといわざるを得ない。 即ち、「手帳」とは「心おぼえに雑事や必要事項を記入する小さな帳面」のことで、一般のノートブック若しくは本等と同様の装丁を施してはいるものの所有者が記入することを目的に作られたものであって、読書の目的の為にある書籍等の印刷物とは異なる種類の商品である(乙第1号証)。 商品所属においても、特許庁商標課編「類似商品・役務審査基準」で「手帳」が「文房具類」の範疇に属するとされているのは、上述の用途を考えて分類されたものである。 したがって、商品「手帳」は一般書店において販売される場合があるとしても、印刷物として認識されているとはいえないものである。 このことは、例えば商品「ブックカバー」は書店においても販売されているが文房具類の範疇に属する商品であるとされていることでも明らかである(乙第2号証)。即ち、用途が如何なるところにあるかが要点である。 更に換言すれば、例えば「暮らしの手帖」という雑誌の商標を見て文房具類に属する「手帳」を想起することはあり得ないのである。 「雑誌、新聞」は毎号その記事内容を異にし定期的に発刊される出版物であり、「書籍」等の特定の内容よりなる著作物とはその性質を異にする商品である。 その取引においても、定期購読等のある特殊の場合を除けばほとんどの需要者は、自己の趣味に合ったものを購入した経験に基づき、編集方針を異にする様々の同種商品の外形を目視して、それらに付された商標の外観及び称呼により、他の商品と誤認することなく意欲した商品を識別しているものである。 したがって、「雑誌、新聞」に付された商標に接する取引者・需要者は他の商標と僅かな差異があっても当該商品の性質から容易に峻別して商品を選択するものであるから、商標の類否を判断する上においても、類似の範囲は狭いと考えられているところである。 ちなみに、商標中に「手帳」の語を含む商標で引用商標と同様に指定商品を「雑誌、新聞」に限定する登録商標は枚挙に暇がない程であるが、その中でいくつかの登録例を確認的に列挙する。そして特筆すべきは「α十手帳」という構成からなる商標と「α」を要部とする商標とが併存していることである(乙第3号証ないし乙第14号証)。 (4)引用商標について 引用商標はあくまで印刷物の範疇の中の「雑誌、新聞」を限定して登録されているものであるから、上記基準の「文房具類」の中に例示されている「手帳」は除外して考えられ、更に「雑誌、新聞」という特殊な商品を指定していることから尚更、引用商標は一連の造語商標であって、「シットクテチョウ」の称呼のみを生じると考えるのが自然である。 (5)本件商標と引用商標の類否について 本件商標の称呼は「シットクジョウホウ」若しくは「シットク」であり、一方の引用商標は、「シットクテチョウ」の称呼を生じるものであるから、両者は「ジョウホウ」と「テチョウ」の部分が相違するか、本件商標中「情報」は要部でないとすると「テチョウ」の有無が相違するものであって、その構成音が明らかに相違するから例え両者の商品が同一であるとしても、両商標に接する需要者は両者を瞬時に区別して認識するものである。 さらに、本件商標と引用商標とは特定の観念を生じない造語商標であるから比較すべくもなく、外観においては殊更論ずるまでもなく両者は類似しないものである。 したがって、本件商標と引用商標とは、その称呼、観念及び外観のいずれにおいても類似しない商標であるといわざるを得ない。 そうとすると、請求人の全主張及び添付の証拠をもっては本件商標が無効とされるべき何等の立証もされていないものである。 5 審尋に対する回答 請求人に、請求人が本件審判請求をする利害関係を有する根拠を明らかにするよう求めたところ、次のように回答し、証拠方法として、乙第22号証ないし乙第26号証を提出した。 (1)請求人は平成10年8月25日に、被請求人である「株式会社主婦の友社」より、「財団法人日本漢字能力検定協会」に対して送付された警告書の写し(甲第22号証)を提出する。当該警告書は、前記「財団法人日本漢字能力検定協会」が「新書」に使用している標章「知っ得ことば術シリーズ」及び「知得」が商標登録第4131648号(甲第23号証)の商標権を侵害する旨であります。この警告書を受けて前記「財団法人日本漢字能力検定協会」と深い関係にある請求人は、被請求人の権利を調査したところ本件商標が見いだされました。 本件商標は、前記警告書に掲げられていないものの、前記「財団法人日本漢字能力検定協会」が使用している標章「知っ得ことば術シリーズ」及び「知得」に対して、権利を拡張して争われるおそれがあったため本審判請求に至った次第であります。 (2)請求人と前記「財団法人日本漢字能力検定協会」との関係 請求人は「財団法人日本漢字能力検定協会」と密接に関与するグループ企業として位置づけられるのであり、無関係の法人ではない。そして、このグループ内の方針として「財団法人日本漢字能力検定協会」が使用する商標の権利関係については、権利関係の主体は「株式会社オーク」で行うことを取決めしております。以上の経過から、「株式会社オーク」が本審判の請求人となった次第であります。念のため「株式会社オーク」と「財団法人日本漢字能力検定協会」との関係を示した「会社の概要」を提出いたします。 請求人が「財団法人日本漢字能力検定協会」と無関係ではなく、むしろ密接に関係した法人として左記財団の事業を支援し協力していることが明らかであります。ならば、請求人が本審判を請求したとしても、何ら不自然ではなく、充分に審判請求人として利害関係があると思料いたします。 6 当審の判断 (1)請求適格について 前記5(1)(2)に示した審尋に対する回答、関連の証拠方法である乙第22号証ないし乙第26号証及び前記審尋に対する回答について被請求人が何ら反論しなかった事実を総合すると、請求人は、本件審判を請求する利害関係を有しているものと認めるのが相当である。 そして、他に、請求人が本件審判を請求する適格がないとすべき事実は認められないから、本件は却下の審決がなされるべきものであるとする被請求人の主張は、根拠がないものであり、採用できない。 (2)本件商標と引用商標の類否について 本件商標は、「知っ得情報」の文字を横書きしてなり、「雑誌,新聞」を指定商品とするところ、その「情報」の文字が、その指定商品の品質内容を思わせるやや識別機能が弱い語であることからすると、その構成文字全体から「シットクジョウホウ」の称呼を生ずる以外に、「情報」の文字を除く「知っ得」の文字部分から単なる「シットク」の称呼を生ずる可能性がまったくないとまでは断定できないというべきである。 一方、引用商標は、前記した構成のものであり、上段のレタリングされた「知っトク手帳」の文字は、漢字と仮名が混ざっているがレタリングに共通性のある前記文字をまとまりよく一連に表しているものであって、外観上は自然に一体のものとして看取されるものである。したがって、これに反する、上段のレタリングされた「知っトク手帳」が「知っトク」と「手帳」に外観上、分断されて看取される可能性がある旨の請求人の主張は採用できない。 そして、引用商標は、「雑誌,新聞」を指定商品としているところ、引用商標の「知っトク手帳」及び「知っ得手帳」の文字中の「手帳」が、雑誌、新聞の品質内容などを具体的に表す識別力がない文字であるとすべき証左はなく、また、その「知っトク」又は「知っ得」の文字が、たとえば周知著名な商標であるなどの理由により需要者に注目されるというような実情があるとも認められない。 そうすると、引用商標は、その指定商品である「雑誌,新聞」について使用した場合、その「知っトク手帳」及び「知っ得手帳」の文字のそれぞれが一連不可分の一種の造語として認識され、前記文字全体から生ずる「シットクテチョウ」の称呼によって取引され、単なる「シットク」の称呼を生じないものとするのが相当であり、また、その「知っトク」又は「知っ得」の文字が商標要部として需要者に認識されるとはいえないものであって、これに反する請求人の主張は、採用できない。 ところで、請求人は、引用商標中の「手帳」の文字をとらえて、手帳と書籍、雑誌などの「印刷物」とが同じく書店で販売され、また、出版社が手帳の市場に進出している事実があるとして、それを根拠に手帳が「文房具」に属する商品であるか「印刷物」に属するか、その境界がなくなりつつあり、したがって、引用商標中の「手帳」の文字は、印刷物に属する引用商標の指定商品「新聞,雑誌」についても自他商品識別力を喪失しており商標要部となりえない旨主張する。 しかし、前認定のとおり、「手帳」の文字が、引用商標の指定商品である「新聞,雑誌」の品質内容などを具体的に表す識別力がない文字であるとすべき証左はなく、しかも、引用商標は、その指定商品である「雑誌,新聞」について使用した場合、全体が一連不可分のものとして認識されるから、請求人主張のとおり、手帳が「文房具」に属する商品であるか「印刷物」に属するか、その境界がなくなりつつあるとしても、そのことは、引用商標中の「手帳」の文字が、その指定商品との関係において自他商品識別力があるか否かの判断、また、ひいては引用商標中の「手帳」の文字を除く「知っトク」「知っ得」の文字部分が引用商標の要部として認識されるか否かの判断に影響を及ぼさないものであり、したがって、請求人の前記主張は失当である。 以上のようにみてくると、引用商標は、その「知っトク」「知っ得」の文字部分を抽出して本件商標との類否を比較すべきものでないから、本件商標と引用商標は、その指定商品「雑誌,新聞」について使用した場合、その外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛らわしいところがあるとはいえないものであって、非類似の商標といわざるをえない。 (3)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものでなく、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
引用商標 |
審理終結日 | 1999-09-09 |
結審通知日 | 1999-09-24 |
審決日 | 2001-01-05 |
出願番号 | 商願平6-71742 |
審決分類 |
T
1
11・
26-
Y
(016)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 薩摩 純一、岡田 美加 |
特許庁審判長 |
佐藤 敏樹 |
特許庁審判官 |
上村 勉 村上 照美 |
登録日 | 1997-06-06 |
登録番号 | 商標登録第3319510号(T3319510) |
商標の称呼 | シットクジョーホー、シットク |
代理人 | 館石 光雄 |
代理人 | 岡田 全啓 |
代理人 | 萼 経夫 |
代理人 | 村越 祐輔 |