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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 121
管理番号 1037430 
審判番号 審判1998-35652 
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-06-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-12-18 
確定日 2001-03-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第2614037号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第2614037号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第2614037号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に表示したとおりの構成のものであり、昭和52年6月2日に登録出願、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花、化粧用具(バンド類を除く)」を指定商品として平成5年12月24日に登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を概要次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第14号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)本件商標は、ありふれた五角形輪郭内に左向きに大きく跳躍する猫科の動物をシルエット化した図形と、その下に「COUGAR」の英文字を配した構成よりなる。しかるに、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第11号に該当する。
(2)本件商標の動物図形は、請求人である独プーマ社が同人のスポーツウェア、スポーツシューズ、バッグなどに関し、「PUMA」の文字とともに長年にわたり広く使用してきた結果、世界的に著名となった商標との間で出所の混同を生じさせるおそれがある。
甲第1号証ないし甲第3号証は、請求人の著名商標を示すものである。これらはいずれも、猫科の動物が左向きに大きく跳躍しているところを表し、そのしなやかで流美な肢体が特徴的に描かれている。
一方、本件商標の動物図形も全体的なシルエットから猫科の動物を表していること一目瞭然で、これが左向きに大きく跳躍しているところは、引用各商標と構成の軌を一にするものである。
これらを甲第4号証のように並べてみると、さらにその共通性が顕著となる。本件商標の使用される「バッグ」に関していえば、これが肩に下げられるなどしてそこに付された商標の角度が変わることもあり、一見これらが同一の図形であると看取される場面も想像される。
上述のように、請求人の引用各商標は長年にわたり使用されてきた結果、世界的に著名となっている。この点は特許庁においても顕著な事実であると思料される。このことは、本件商標が出願された時点においても、また現時点においても変わらない事実である。
請求人の商標は甲第5号証の商品カタログに示す態様で使用されている。プーマの名声はスポーツシューズ、とりわけサッカーシューズで広く知られ、Jリーグの選手のほか、かつてはサッカーの神様ペレ、天才マラドーナらが使用することで非常に高い人気も得ている。プーマの商標には「PUMA」の文字、各引用商標に示す図形、及びプーマラインと呼ばれる線図形があるが、これらはその組み合わせとしても、またそれぞれ単独としても広く知られ、そのいずれをとってもプーマ社及びその製品を認識させるのである。現に引用各商標に示す図形は、これが単独で大きく表されることがあり、態様はカタログ第41頁に示すとおりである。
このように世界的に著名な、また特徴的な請求人の図形がある一方で、本件商標の動物図形がその指定商品に使用された場合には、あたかもその商品が請求人またはその関係者の業務にかかるものであるかのごとく出所の混同を生じさせることは必至である。
さらに、著名商標との間にこれほどの共通性を有する図形が使用されるということは、被請求人がプーマ社の名声に乗じようとする意思までもが推認される。長年をかけて蓄積した信用により獲得した名声が、このようなかたちでいわばただ乗りされ、また著名商標の名声もが希釈化されるような行為は許されてはならず、国際的な流通秩序の維持という観点から、これは我が国の信用をも損ないかねない事態といえる。
甲第7号証「広辞苑」に示すように、「クーガー」は「ピューマ(puma)」の説明の中で登場しており、これらが同じ猫科の動物の呼び名であることが確認できる。すると、本件商標の「COUGAR」の部分を仮に「PUMA」に置き換えても意味は同じこととなり、本件商標は動物図形の部分により重点が置かれているといえる。すなわち、本件商標はまず動物図形があり、これに「COUGAR」が便宜的に付されたものと推測される。これら文字部分より同一観念が生じる以上は、「PUMA」の文字と共に著名となった引用各商標との差異を「COUGAR」の部分に求めることはできず、やはり両者は同じ動物を同じ態様で表したといえるのである。本件商標の動物図形と引用各商標は、猫科の動物の特徴的な姿が共通するため、本件商標は時と所を異にして引用各商標と出所の混同を生ずるおそれがあるといわざるをえない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)本件商標は、請求人が所有する登録第1884350号商標(引用商標A・甲第1号証)及び同第1925032号商標(引用商標B・甲第2号証)に類似し、引用各商標と同一または類似の商品に使用されるものである。
本件商標の動物図形、及び各引用商標はいずれも左向きに大きく跳躍する猫科の動物を描いており、それぞれ「跳躍する猫科の動物」との外観、称呼、観念を生じ、類似する。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。
(4)被請求人の答弁に対する弁駁
被請求人は、甲第4号証につき、本件商標のねつ造も甚だしいとしている。しかし、請求人は動物図形のみが本件商標であると主張しているわけではなく、単に本件商標中の動物図形が引用各商標と類似している旨述べているに過ぎない。すなわち、動物図形の存在により本件商標は請求人の商標との関連で出所の混同を生ずる旨述べているのであって、本件商標をねつ造して動物図形が本件商標であるとしている訳ではない。甲第4号証中に「本件商標」と記載しているのは単なる便宜のためであって、これ自体を本件商標と勘違いさせようとするものでないことはいうまでもない。
本件の場合は引用各商標が著名なものであるため、なおさら本件商標の動物図形により出所の混同を生じるおそれは強くなっているのであり、仮に全体が非類似であるとしても決して混同のおそれを否定することはできない。 したがって、商標が非類似であるとしても商標法第4条第1項第15号の適用は逃れ得ないのであるから、本件商標から混同の原因となる図形を比較検討したとしても、ねつ造云々が問題となることはない。
また、被請求人は乙第2号証を提出し、請求人の主張をあたかも詐欺であるかのような旨を述べているが、ここで問題となっている登録第1192209号商標とは甲第8号証に示すとおり本件商標とはおよそ異なる図形を有する商標であり、事例が全く異なるものである。
引用各商標の著名性を示す資料(甲第9号証ないし甲第14号証)を提出する。
請求人に係るシューズ・バッグ等の商品は世界的な名声を獲得しており、これら商品につき常に使用される特徴的な動物図形も本件商標の出願時において既に著名となっているものである。
これが現在も変わらずに著名であることは疑いようがなく、多くの図形的共通点を持ちこれと紛らわしい本件商標は、請求人の業務に係る商品との間で混同を生ずること必至である。
また、商標自体としても本件商標は引用各商標(甲第1・2号証)に類似するものである。請求人の提出する資料(乙第3号証ないし乙第8号証)はそれぞれの商標の共通点が本件ほど多くはないため全く参考とならず、続く並存例(乙第9号証ないし乙第11号証)も商標の類否判断において考慮されるべき著名性等の取引の実情が考慮されていないものである。

3 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判請求には理由がない。本件商標登録は維持されるべきものである、との審決を求める。」と答弁し、その理由を概要次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第11号証を提出した。
(1)請求人は甲第4号証の下部に本件商標と称して2匹の動物のシルエットを描いているものを示しているが、これは断じて本件商標ではない。ねつ造も甚だしい。本件商標は乙第1号証の公報にあるものである。
このようなねつ造したものをもって、本件商標であるかのごとく描き、甲第1号証、甲第2号証に類似しているとか混同するとかの主張をするのは詐欺的な我田引水の行為といわざるをえない。
(2)本件商標は乙第1号証にあるとおり、動物自体は左向きではあっても跳躍しておらず、疾走する様子のものであり、しかもその動物でさえ商標の一部を構成しているだけで、本件商標の全体構成は、全く引用商標と異なるものであることは一見しただけで判るものである。
(3)請求人は、甲第1号証、甲第2号証商標が世界的に著名であると主張しているが、せいぜい著名となっているのはプーマ(PUMA)であって甲第1号証商標ではない。プーマは現時点では有名で、とりわけサッカーシューズの世界では著名となっていることは認めるものであるが、本件出願時点にさかのぼり、本件指定商品の領域では有名であったとは思われない。ましてや動物単体では著名性は全くない。請求人の示すカタログ(甲第5号証)を見ても、動物は文字PUMAと一体不可分的な使用の仕方であって、動物単体としては何百ある商標の中でも1、2例に過ぎないものである。
例えばPUMAの動物がPUMA文字なしの単体動物だけでかばん類につけられ、他社の動物のついたかばん類と一緒に山と積まれて売られた場合、当業者の専門家であってもプーマ商品を抽出、指摘するのは困難である。文字PUMA無しの単体動物だけのものはプーマ商標と特定する機能はないのである。著名商標プーマと一緒にデザイン化されている動物は単なる飾りであり、PUMA文字と一体化するためのデザイン上の意味があるだけで、動物単体だけでは意味もなく、著名性はないのである。動物は文字PUMAと一体化されて初めて意味がある。
請求人はプーマ社の名声に乗じるとか、希釈化されるとか、我が国の信用問題に係わるとか主張し、甲第7号証「広辞苑」を引きながら「COUGAR」の部分を仮に「PUMA」に置き換えても意味は同じであり、これら文字部分より同一観念が生じる以上「PUMA」の文字と先に著名となった引用各商標との差異を「COUGAR」の部分に求めることはできず、やはり両者は同じ動物を同じ態様で表したものであると主張している。
しかしながら、甲第1号証の商標(引用商標)の出願、審査の際、審査官より本件商標の連合の元になっている商標登録第119209号と類似であると指摘された時の請求人自身の昭和53年4月18日付意見書(乙第2号証)の中で請求人は、今回とは正反対の主旨を強調している。
このことは請求人がその時その時に合わせて、白を黒といい分けるごとくの手法を平気でやってのけており、このようなことは先の詐欺的手法に通じるものがある。
(4)仮に引用商標が著名であったとしても、本件商標とは全く異なるものであるから、混同を起すおそれは全くないものである。以下、本件商標と引用商標とが全く異なる理由を述べる。
甲第1号証の商標は、べたぬりの長方形の図形の中に「跳躍している動物」のみを描いてなる商標であり、また、甲第2号証の商標も、ほぼ同じようなものである。これら甲第1、2号証の商標のいずれにも、本件商標の構成における文字との組合せ、デザイン化構成が全く存在しない。
したがって、本件商標と甲第1、2号証の商標とは、各々の構成からして外観上一見して互いに明確に識別し得るものであるが、さらに本件商標の動物の図形と甲第1、2号証の商標の動物の図形とだけを比較してみても、以下のような大きな相違点が見られる。
すなわち、本件商標の動物は
1)顔が全体的に細長く、鋭くとがった印象を与えるものであり、かつ、顔が下を向いている。
2)□を開いている。
3)前足が2本、後足が2本ある。
4)前足が下方に伸びている。
5)尾が略後方に向いており、跳ね上げの度合いが小さい。
等の特徴を有するものであり、動物が疾走している状態を表示しているものであることは明白である。全体的な感じとして「鋭さがあり疾走性」がある。
一方、後者は
1)顔が全体に丸味を帯び、かつ、顔が前方を向いている。
2)□を閉じている。
3)前足が1本、後足が1本である。
4)前足が縮まり、身体にひきつけられている。
5)尾が略上方を向いており、跳ね上げの度合いが大きい。
等の特徴を有するものであり、全体的に丸味と柔らかさがあり、まるで飼い猫のようなおだやかさがあって、跳躍しているというが飼い猫がじゃれついている」ような感じである。
このように、「鋭さと疾走性」の本件商標の動物の図形と「飼い猫がじゃれついている」甲第1、2号証の動物の図形そのものが、その部分的形象及び動態において顕著に異なるものである。
したがって、本件商標と甲第1、2号証の商標とは全体の構成はもちろんのこと、動物の部分的形象や動態だけを見ても顕著な差異を有するものであり、外観上、互いに明確に識別し得る非類似の商標である。
(5)上述のとおり図形だけをみても、本件商標は「鋭さがあり、疾走性」が特徴づけられる猫科の動物であるのに反し、引用商標は疾走性も鋭さもなく、「じゃれつく飼い猫」たる動物の図形であって、両者は時と所を異にしてもこれに接する者が混同を生ずるおそれが全くないのであり、ましてや商標は一部だけをとり出して見比べることはあり得ないし、実際には本件商標のごとく動物の図と「COUGAR」なる文字の全体をデザインにまとめられたものと、引用商標のじゃれついている飼い猫然たる図形だけのものを比較する場合、現実の商品売買、流通現場を通して混同はあり得ない話である。事実、被請求人においてライセンスを与えて、本件商標をかばん類などに20年以上にわたって使用してきているが、顧客からもこれを取り扱う流通業者からもプーマ社の商品と混同したとか迷惑がかかったとかのクレームが一度たりとも起ったことがないことを見ても明らかである。
(6)本件商標に描かれた動物と甲第1号証の商標及び甲第2号証の商標に各々描かれた動物とを観察すると、本件商標に描かれた動物と甲第1号証、甲第2号証の商標に描かれた動物とはいずれも黒く塗りつぶしたり、白抜きにして描かれており、これらはいずれも顔面を含む頭部や毛並みあるいは班紋等が明瞭でなく、これが飼い猫か、豹か、ピューマか、チーターか、ジャガーか、いかなる動物であるか判然としないものである。
すなわち、本件商標の動物の図形と甲第1号証の商標及び甲第2号証の商標の動物の図形のいずれからも特定の観念・称呼を生じないとみるのが相当である。
また、甲第1号証及び甲第2号証の商標には文字が全く存在せず、したがって、本件商標と甲第1号証の及び甲第2号証の商標とは、観念上及び称呼上、全く非類似の商標である。
(7)このことは請求人自身も自ら認めているのである。すなわち、請求人所有の甲第1号証の引用商標が審査時において本件商標の連合の元となっている商標第1192209号に類似するものとする審査官の指摘に対する昭和53年4月18日付意見書(乙第2号証)の中で、請求人自身、種々の証拠を挙げながら「引用商標は『COUGAR』即ち『クーガー』の称呼を生ずるに対し、本件商標(本件での引用商標)の場合、自然的称呼は生じ得ないと考えられます。従って、両商標が称呼上誤認混同される事態は生じ得ないと考えます。」と言い切っているのである。
(8)このように、本件商標と甲第1号証の商標及び甲第2号証の商標とは、外観、観念、称呼のいずれの点よりみても互いに非類似の商標であるが、本件商標と甲第1号証の商標及び甲第2号証の商標とが互いに非類似の商標とみるべきものであることは次に挙げる事実からも客観的にいえるものである。
(9)過去の審判事件において、似た種類の動物で、かつ、描かれている動作や形態が近似している商標同士が互いに非類似のものとして認定されている例がいくつもある(乙3号証ないし乙8号証)。
また、本件商標と同じ第21類の登録例をみても同様のことがいえるものである(乙第9号証ないし乙第11号証)。
以上のような事実からしても、本件商標と甲第1号証の商標及び甲第2号証の商標とは互いに非類似のものとみるのが相当である。
故に、引用商標はいずれも著名性は全くないものであり、仮に著名であったとしても、本件商標と引用商標は全く異なるものであるから、混同する恐れはないのである。
(10)したがって、請求人の主張には理由がない。

4 当審の判断
(1)請求人が使用する商標の著名性について
請求人が、スポーツウェア、スポーツシューズ、バッグなどに関し、「PUMA」の文字とともに長年にわたり広く使用してきた結果、世界的に著名となった商標であると主張する引用商標A、引用商標B及び引用商標Cは、それぞれ別掲(2)ないし(4)に示したとおりの構成のものである。
そして、甲第5号証(請求人商品カタログ)、甲第10号証ないし甲第13号証によれば、請求人は、実際の使用においては、この商標を表示する個所が黒色などの濃い色の場合は引用商標Aのように動物の図形を白抜きに、あるいは白い輪かく線で表し、反対に、白色などの明るい色の場合は引用商標Cのように動物の図形を黒色などの白以外の一色で塗りつぶして使用しているものと認められる。また、前記動物の図形(以下「請求人動物商標」という。)は、別掲(5)に示す態様の「PUMA」の文字(以下、単に「『PUMA』の文字」という。)と組み合わせて使用している場合が圧倒的に多いものと認められる。
ところで、甲第9号証ないし甲第14号証を総合すれば、「PUMA」の文字と請求人動物商標を組み合わせた商標は、請求人がサッカーシューズなどのスポーツ用シューズ、スポーツウェア、バッグなどに使用した結果、本件商標の登録出願の時には、既に我が国において著名となっていたものと認められる。そして、甲第5号証(請求人商品カタログ)と合わせれば、その状態は、本件商標が商標登録された時点においても継続していたものと判断できる。
被請求人は、この点に関して、著名となっているのはせいぜい「PUMA」の文字よりなる商標であって請求人動物商標ではない旨主張している。
しかし、前記認定のとおり、請求人は請求人動物商標と「PUMA」の文字とを組み合わせて使用している場合が圧倒的に多いこと、また、図形からなる商標の識別力が文字商標よりも一般に劣るとすべき相当の根拠はなく、請求人動物商標がこれ単独では商標としての識別力がない又は識別力が弱いとすべき格別の理由も見あたらないことから、請求人動物商標は、請求人の「PUMA」の文字よりなる商標と同時期に同じ程度に著名となっていたものと認められる。被請求人は、請求人動物商標は、単なる飾りであるとか、これだけでは意味もなく著名性はないとか主張するが、根拠のない主張であり採用できない。
また、「PUMA」の文字と請求人動物商標は、請求人が、とりわけサッカーシューズに使用して著名な商標であるが、サッカーシューズ以外のスポーツ用シューズ、スポーツウェア、バッグなどの商品にも使用してきたことからすると、サッカー用品の取引者・需要者に限らず広く一般需要者の間において著名になっていたものと認められる。
(2)本件商標と請求人動物商標の比較
本件商標は、請求人動物商標にはない「COUGaR」の文字部分や五角形の輪郭を有しており、また、本件商標中の動物の図形(以下「本件動物図形」という。)と請求人動物商標は、被請求人が前記3(4)において指摘しているような動物の各部における形状の差異がある。そして、本件動物図形は、疾走を思わせる体勢であるのに対し請求人動物商標のものは、左斜め上に跳ねているように見える点も違いがある。
しかし、そのような動物の各部における形状及び体勢に差異があっても本件動物図形と請求人動物商標は、猫科動物の全体姿態を表しているとみられる図形全体としての外観が良く似ているものと認める。そして、特に請求人動物商標が引用商標Cの態様のように全体が黒塗りで表される場合に極めて近い印象を受けるものといえるところ、請求人は、甲第5号証第10頁、第11頁、第42頁及び甲第13号証第3枚目左下に掲載されているように引用商標Cの態様でも請求人動物商標を商標として使用してきたものと認められる。
被請求人は、請求人動物商標は「『飼い猫がじゃれついている』ような感じである。」として、本件動物図形との差異を主張するが、この動物がプーマ(ピューマ)であり猫ではないと需要者に認識されることは、請求人が多くの場合、請求人動物商標と「PUMA」の文字とを組み合わせて使用してきた事実に照らせば明らかといえるから、この点の主張は採用できない。
(3)商品の出所混同のおそれについて
以上によれば、本件商標は、これをその指定商品について使用した場合、構成中の本件動物図形より、著名な請求人動物商標を想起連想し、その商品が請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとくその出所について混同を生ずるおそれが、本件商標の登録出願の時、及び本件商標が商標登録された時点においてあったとものと判断せざるをえない。
被請求人は、「被請求人においてライセンスを与えて、本件商標をかばん類などに20年以上にわたって使用してきているが、顧客からもこれを取り扱う流通業者からもプーマ社の商品と混同したとか迷惑がかかったとかのクレームが一度たりとも起ったことがない」ことからも混同はありえない旨主張するが、このように主張するのみで何ら立証するところがないから、採用できず、混同を生じないとすべき格別の事由があるとは認められない。
また、被請求人は、引用商標Aの登録出願が審査された際の請求人の意見書における記述や過去の審判事件及び登録例からみても、本件商標は、混同のおそれがない旨主張するが、それらを考慮しても出所の混同のおそれについては前記認定のとおり判断するのが相当である。
(4)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (1)本件商標

(2)引用商標A

(3)引用商標B

(4)引用商標C

(5)請求人が使用の「PUMA」の文字商標

審理終結日 2000-12-01 
結審通知日 2000-12-15 
審決日 2001-01-11 
出願番号 商願昭52-38962 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (121)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小宮山 貞夫 
特許庁審判長 佐藤 敏樹
特許庁審判官 上村 勉
村上 照美
登録日 1993-12-24 
登録番号 商標登録第2614037号(T2614037) 
商標の称呼 クロヒョウ、クーガー、パンサー 
代理人 小谷 武 

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