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審決分類 審判 全部無効 商品と役務の類否 無効としない 035
管理番号 1033115 
審判番号 審判1998-35320 
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-05-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-07-13 
確定日 2001-01-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第4120750号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4120750号商標(以下「本件商標」という。)は、「HAPPIET」の欧文字と「ハピエット」の片仮名文字を上下二段に横書きしてなり、平成8年5月31日登録出願、第35類「商品の販売に関する情報の提供」を指定役務として、平成10年3月6日登録されたものである。
2 引用商標
請求人が引用する登録第2554894号商標(以下「引用商標」という。)は、「ハピネット」の片仮名文字と「HAPPINET」の欧文字を上下二段に横書きしてなり、平成3年6月26日登録出願、第24類「おもちゃ、その他本類に属する商品」を指定商品として、平成5年7月30日登録されたものである。

3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を概要以下のように主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。
本件商標は、請求人所有に係る先願の引用商標と類似しており、その指定商品も引用商標の指定役務に類似するものである。
(ア)商標の類似について
本件商標は、その構成文字に相応して「ハピエット」の称呼を生ずる。 一方、引用商標は、その構成文字に相応して「ハピネット」の称呼を生ずる。
そこで、本件商標より生ずる「ハピエット」の称呼と引用商標より生ずる「ハピネット」の称呼とを比較するに、両称呼はともに5音よりなり、称呼の識別上重要な要素を占める第1音を含む「ハ」「ピ」「ッ」の音及び語尾の「ト」の音を同じくし、第3音において「エ」と「ネ」の音に差異を有するのみである。相違する「エ」と「ネ」の音は、いずれも促音「ッ」を伴っているため、母音「e」が強調されるものである。また、「ネ」の音の子音「n」は鼻音であり、比較的弱い音であることから、母音「e」に吸収されて、「エ」の音に近似した音として聴取されやすいものである。さらに、この差異音は、破裂音で強く発音される「ピ」の音のすぐ後に位置し、しかも称呼の識別上印象に残りにくい中間音であることから、この差異が全体に及ぼす影響はごく僅かなものであるというべきである。
そうとすると、両称呼は、それぞれを一連に称呼するときは、全体の語調、語感が極めて近似し、互いに相紛れるおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本件商標と引用商標とは、称呼上類似の商標である。
(イ)指定役務について
本件商標の指定役務は、第35類「商品の販売に関する情報の提供」であり、引用商標の指定商品は旧第24類「おもちゃ、その他本類に属する商品」である。よって、本件商標の指定役務には「おもちゃの販売に関する情報の提供」が含まれ、引用商標の指定商品には「おもちゃ」が含まれている。 請求人株式会社ハピネットは、玩具卸売の分野において業界第3位の売上高を誇る有名卸売業者である(甲第3号証)。請求人は玩具の卸売のみならず、その付帯業務として、取扱商品あるいはその販売に関する情報をインターネットを通じて需要者に提供している(甲第4号証、甲第5号証)。このようなことは請求人だけではなく、おもちゃ業界では、ごく一般的に行われているものである(甲第6号証ないし甲第8号証)。
以上のような取引の実情からみて、役務「おもちゃの販売に関する情報の提供」と商品「おもちゃ」とは、きわめて密接な関係にあり、これらに同一又は類似の商標を使用した場合には誤認混同のおそれがあるというべきである。
そうとすれば、本件商標の指定役務に含まれる「おもちゃの販売に関する情報の提供」と、引用商標の指定商品に含まれる「おもちゃ」とが、相類似する役務と商品であることは明らかである。
(2)被請求人の答弁に対する弁駁
被請求人は、昭和60年審判第6642号審決(乙第1号証)を引用しているが、この事案は称呼における識別上重要な要素を占める語頭音において、「ネ」と「エ」に差異を有するものであり、中間音の差異を問題とする本件とは事案を異にするものである。
また、被請求人は「ハピネット」の語が2語からなる造語であると主張するが、引用商標は「ハピネット」の片仮名文字と「HAPPINET」の欧文字を一連に上下二段に左横書きしてなるものであり、「ハピ」と「ネット」に分離して称呼される理由は全くない。

4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を概要以下のように主張し、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。 本件商標は引用商標と類似する商標ではなく、商標法第4条第1項第11号に該当しないので、請求人の主張は成り立たない。
以下、詳論する。
(ア)称呼について
本件商標と引用商標の差異音である「ネ」と「エ」についてであるが、「『ネ』の音は、舌尖を前硬口蓋に接触して発する鼻子音(n)と母音(e)との結合した柔らかくて美しい音であるのに対し、『エ』の音は声を口腔内に響かせて出すことによって発生する『ア』と『イ』の中間の母音『e』であり、『ア』の音に近似したはっきりした澄んだ音であるから、音質を異にするものである。」とする審決例(昭和60年審判第6642号、乙第1号証)が示すように、この差異は、それぞれ一連に称呼したとき称呼全体に及ぼす影響が極めて大きく、全体の語調、語感が相当異なるものになることは明確である。また「相違する『エ』と『ネ』の音は、いずれも促音『ッ』を伴っているため、母音『e』が強調され」という請求人の主張はかえって逆であり、促音を伴っているために母音が弱くなると考えるべきである。更に、中間に位置する音が識別上印象に残りにくく聴取されにくいというのは比較的長い音構成であるときに該当するとされるのが通説であり、極めて短い5音からなる本件商標及び引用商標は長い音構成であるとは言い難い。したがって請求人の「破裂音で強く発音される『ピ』の音のすぐ後に位置し、しかも称呼の識別上印象に残りにくいとされる中間音であることから、この差異が全体に及ぼす影響はごく僅かなものであるというべきである」という主張にも根拠がない。
第2に、本件商標、引用商標ともに、「幸せ」等を意味する英単語の「happy」から派生した造語であると考えるのが自然である。我が国における英語普及の度合いを考慮すれば、この「happy」という語は既に日本語化されており、逆に「ハッピー」という日本語化された語をローマ字表記すれば、「happi」と表記され、「ハッピー」という称呼を生ずるのみならず「ハピ」「ハッピ」とも称呼され得る。
してみれば、本件商標は、広く一般に知れ渡り既に日本語化している「happy」「ハッピー」をローマ字表記した「happi」「ハピ」という語に「et」「エット」という特定の観念を持たない語を付加した造語であり、構成上一体的であり、また「ピ」を発音した後「エ」が比較的弱めに発音されるため淀みなく一気に称呼するのが極めて自然であるといえる。または少なくとも前半の「ハピ」の部分にアクセントがあり、後半の「エット」の部分にはアクセントがなく従属的であると考えられる。
これに対し、引用商標は、前半の「ハピ」「Happi」が英単語の「happy」を、後半の「ネット」「net」は「網」「正味」「コンピュータネットワーク」「通信網」等を意味する英単語の「net」をそれぞれ表している。
また「net」という語は、「ne」(ネ)の部分にアクセントがあるために、この語の前に「happy」「ハッピー」をローマ字表記した「happi」及びその称呼である「ハピ」という語を付加しても、「net」「ネット」部分が強調され、一般取引者・需要者に印象づけるとともに、「ハピ」と「ネット」は意識的に区切って称呼すると考えるのが極めて自然である。または少なくとも「ハピ」と「ネット」の両方に等しくアクセントがあり、両者が均等な関係に立つと考えられる。即ち、「ハピエット」は1語の造語であり、発音は「ハピエット」なのに対し、「ハピネット」では2語からなる造語であり、発音は「ハピネット」となる。これは「インターネット」などと同様の現象である。
このことは、実際に請求人が、自社のカタログ・パンフレット類・インターネットホームページなどで、自社名を表す英語表記において上下2段書きで「Happi」と「net」を明確に区別するべく分離して表記していることからも、これらを自ら認めているものと思われる(乙第3号証及び同第4号証)。
してみれば、引用商標の「ハピネット」「HAPPINET」の文字には、「ハピ」「HAPPI」と「ネット」「NET」とに分離して称呼される契機が包含されているとともに、取引上の経験則によればその強調される2つの結合概念により商品を識別することが取引者には通常であるから、本件商標と引用商標は明らかに称呼が区別される。
以上のことから、本件商標のように一気に淀みなく称呼できるものと引用商標のような区切って称呼しなければならないものとは全体の語調・語感が相当相違し、また両商標の相違する1音において全体の音感が異なるとともに、音質・音調上著しい差異があると認められる。
したがって、本件商標と引用商標は、称呼上明らかに非類似と認められ、本件商標の登録を無効にすべきとする請求人の主張は成り立たない。

5 当審の判断
本件商標は、その構成文字からみて、一連の造語「HAPPIET」とこれの読み方を示す「ハピエット」の文字を併記したものと認識され、「ハピエット」と称呼されるものと認められる。
一方、引用商標は、その構成文字からすると、一連の造語「HAPPINET」とこれの読み方を示す「ハピネット」の文字を併記したものと認識され、「ハピネット」と称呼されるものと認められる。
ところで、被請求人は、「ハピエット」は1語の造語であり、「ハピネット」は2語からなる造語であって、引用商標の「ハピネット」「HAPPINET」の文字には、「ハピ」「HAPPI」と「ネット」「NET」とに分離して称呼される契機が包含されている旨主張する。
しかし、「ハピ」という知られた語はないから、「ネット」が「網」、「放送網」などを意味する語であるとしても、一連一体に表されている引用商標中の「ハピネット」の文字が、「ハピ」と「ネット」の2語よりなるものと認識されることはなく、前記認定のとおり、一連の造語「HAPPINET」の読み方を示した文字として認識されるものであって、引用商標は一連に「ハピネット」と称呼されると認められるから、前記の被請求人の主張は採用できない。
そこで、本件商標の「ハピエット」の称呼と引用商標の「ハピネット」の称呼を比較すると、称呼の中間に位置する第3音が「エ」と「ネ」で相違しているが、聴取したときに印象が強い語頭音を含めて他の音はすべて共通しており、相違する第3音も母音は共通している。また、共通している第2音「ピ」は、破裂音で明瞭に聴取される音質を持っている音であり、相違している第3音「エ」と「ネ」は、促音の前に位置しており共にアクセントがある音と認められる。
そうすると、「ハピエット」と「ハピネット」の称呼は、第3音の相違を考慮しても、その語調・語感が似たものとなるため、互いに紛れて聴取されるおそれがあるものとするのが相当である。
また、本件商標と引用商標の外観を比較すると、欧文字部分の綴りの相違は第5文字の「I」の次に「N」の文字があるか否かのみであり、片仮名文字部分の相違は第3文字の「エ」と「ネ」であって、その構成文字は相違より共通するところがむしろ多いから、本件商標と引用商標は、その外観が明らかに異なるものとはいえない。
そして、本件商標と引用商標は、前記認定のとおり、共に一連の造語を表す欧文字とその読み方を示した片仮名文字よりなるから、認識させる観念が明確に異なるものともいえない。
このようにみてくると、本件商標は、引用商標と称呼において紛らわしい類似する商標といわざるをえない。
次に、本件商標の指定役務に含まれる「おもちゃの販売に関する情報の提供」と、引用商標の指定商品に含まれる「おもちゃ」とが、類似する役務と商品であることは明らかであるとの請求人の主張について検討する。
甲第3号証の1ないし3によれば、請求人株式会社ハピネットは、おもちゃ業界において一定の知名度がある会社と認められる。しかし、提出の甲第4号証及び甲第5号証によっては、請求人が独立して取引の対象となる役務として、「おもちゃの販売に関する情報の提供」をしている事実は認められない。同証拠によれば、請求人は、主として顧客である小売業者向けにおもちゃに関する販売情報をインターネットを通じて提供している事実が認められるが、この情報の提供は、その取り扱いに係る商品の販売を促進するために無償で提供されているものと認められるから、商品の取引に付随するものであり、取引の対象となる役務として、「おもちゃの販売に関する情報の提供」をしているものでない。また、甲第6号証ないし甲第8号証によれば、おもちゃメーカーが商品情報をインターネットを通じて需要者に提供している事実が認められるが、これらについても商品の販売を促進するために無償で提供している商品情報と認められる。
そうすると、おもちゃを製造又は販売する企業が、「おもちゃの販売に関する情報の提供」を独立の取引の対象となる役務として行なっているのが一般的であると認め得る証拠はない。
したがって、商品「おもちゃ」と役務「おもちゃの販売に関する情報の提供」が、類似する商品と役務の関係にあるとすべき相当の根拠はないものである。
よって、前記の請求人の主張は採用できない。
そして、本件商標の指定役務と引用商標の指定商品は類似しないものということができる。
以上のとおりであって、本件商標と引用商標は類似するが、本件商標の指定役務と引用商標の指定商品は類似しない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第第11号に違反して登録されたものでないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-10-24 
結審通知日 2000-11-06 
審決日 2000-11-20 
出願番号 商願平8-59384 
審決分類 T 1 11・ 265- Y (035)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 巻島 豊二 
特許庁審判長 佐藤 敏樹
特許庁審判官 上村 勉
村上 照美
登録日 1998-03-06 
登録番号 商標登録第4120750号(T4120750) 
商標の称呼 ハピエット 
代理人 名越 秀夫 
代理人 生田 哲郎 
代理人 高田 修治 

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