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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200020976 審決 商標
不服200412168 審決 商標
不服2007650066 審決 商標
審判199920949 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない Z30
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Z30
管理番号 1032882 
審判番号 審判1999-15644 
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-09-27 
確定日 2000-12-27 
事件の表示 平成 9年商標登録願第105216号拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、商標の構成を別掲(1)に示すものとし、第30類に属する商品を指定商品として、平成9年4月10日に立体商標として登録出願されたものであり、その指定商品については、平成10年8月19日付の手続補正書をもって「しょうゆ,ソース」と補正されたものである。

2 原査定の理由
原査定は、「本願商標は、その指定商品との関係よりすれば、その収納容器の形状の一形態であることを容易に認識させる立体的形状を普通に用いられる方法をもって表してなるから、これを指定商品に使用しても、単に商品の包装(収納容器)の形状を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、出願人は、本願商標が商標法第3条第2項に該当する旨述べ、証拠方法を提出しているが、これをもってしても、本願商標が未だ同条項の要件を備えているとは認められない。」旨の理由で本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)平成8年法律第68号により改正された商標法は、立体的形状若しくは立体的形状と文字、図形、記号等の結合又はこれらと色彩との結合された標章であって、商品又は役務について使用するものを登録する立体商標制度を導入した。
立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは、前示したように、商品等の機能、又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品等の機能又は美感に関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。
また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者間において当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
(2)立体商標制度を審議した工業所有権審議会の平成7年12月13日付け「商標法等の改正に関する答申」P30においても「3.(1)立体商標制度の導入 需要者が指定商品若しくはその容器又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識する形状のみからなる立体商標は登録対象としないことが適当と考えられる。・・・ただし、これらの商標であっても使用の結果識別力が生ずるに至ったものは、現行法第3条第2項に基づき登録が認められることが適当である。」としている。
また、商品の形態を不正競争防止法により保護を求めた事件の判決においても、例えば、「商品の形態自体は、その商品の目的とする機能をよりよく発揮させあるいはその美感を高める等の見地から選択されるものであって、本来、商品の出所を表示することを目的とするものではないけれども、二次的に出所表示の機能を備えることもありうべく、この場合には商品の形態自体が特定人の商品たることを示す表示に該当すると解すべきである。」(東京地方裁判所 昭和50年(ワ)第3035号 昭和52年12月23日判決言渡【最高裁判所事務総局発行 無体財産権関係民事・行政裁判例集第9巻第2号769頁】)との判示がなされているところである。
(3)これを本願についてみるに、本願商標は、別掲に示すとおり、上部を注ぎ口付の蓋部とした液体等を収納する容器の形状を表してなるものであって、その形状に看者の注意を強く惹き付けるような外観上の特異性は認められず、これを指定商品に使用しても、取引者・需要者は、それが液体等を収納する容器としての一形態を表したものと認識するに止まり自他商品の識別標識とは認識しないと判断するのが相当である。
(4)請求人は、「本願商標は、昭和36年以来、継続して使用された結果、請求人の業務に係る商品『しょうゆ,ソース』を表示するための商標として、取引者及び需要者の間において、広く認識されるに至っており、商標法第3条第2項の要件を具備している。」旨主張し、証拠方法として甲第1号証ないし同第11号証を提出している。
そこで、以下、請求人の前記主張について検討する。
ところで、商品等の形状に係る立体商標が、商標法第3条第2項に該当するものとして登録を認められるのは、原則として使用に係る商標が出願に係る商標と同一の場合であって、かつ、使用に係る商品と出願に係る指定商品も同一のものに限られるものである。
したがって、出願に係る商標が立体的形状のみからなるものであるのに対し、使用に係る商標が立体的形状と文字、図形等の平面標章より構成されている場合には、両商標の全体的構成は同一でないことから、出願に係る商標については、原則として使用により識別力を有するに至った商標と認めることができない。
ただし、使用に係る商標の形状の全体を観察した場合、その立体的形状部分と出願に係る商標とが同一であり、その立体的形状が識別標識として機能するには、そこに付された平面標章部分が不可欠であるとする理由が認められず、むしろ平面標章部分よりも立体的形状に施された変更、装飾等をもって需要者に強い印象、記憶を与えるものと認められ、かつ、需要者が何人かの業務に係る商品等であることを認識することができるに至っていることの客観的な証拠(例えば、同業組合又は同業者等、第三者機関による証明)の提出があったときは、直ちに商標の全体的な構成が同一ではないことを理由として商標法第3条第2項の主張を退けるのではなく、提出された証拠から、使用に係る商標の立体的形状部分のみが独立して、自他商品又は役務を識別するための出所表示としての機能を有するに至っていると認められるか否かについて判断する必要があるというべきである。
そこでこれを本件についてみるに、まず、甲第4号証ないし同第11号証の広告宣伝や書籍、パンフレットなどに示されている本願商標と同一と認められる収納容器には、別掲(2)に示した標章(以下、「請求人標章」という。)あるいは「KIKKOMAN」、「キッコーマン」の文字が表示されており、使用に係る商標と出願に係る商標との同一性は認めらない。そして、むしろ、これらの各号証に示された立体的形状は、商品「しょうゆ,ソース」の収納容器の形状そのものを表したものであって、該商品は、請求人標章や「KIKKOMAN」、「キッコーマン」の文字により識別されているとみるのが相当である。
次に、本願商標に係る立体的形状部分のみが独立して、自他商品又は役務を識別するための出所表示としての機能を有するに至っていると認められるか否かについて検討するに、甲第1号証に示された工場見学者数は、それをもって本願商標が使用され、需要者により請求人に商品「しょうゆ,ソース」を表示する商標であるとの認識がされる状態に至っているとの直接的証左とはいえないものである。
甲第2号証は、本願商標に係る形状をした容器に入った「しょうゆ,ソース」の販売本数が示されているが、これらの商品には前記の請求人標章や「KIKKOMAN」、「キッコーマン」の文字が付されているとみるべきであって、本号証によっては本願商標に係る立体的形状部分のみが商標として使用されていたと認定することはできない。なお、示された販売量(本数)では、本願商標は「ソース」との関係では、その周知・著名性は認められないものである。
甲第3号証の証明書は、あらかじめ準備されたものと推認される「証明願」と題する用紙を用いたものであり、その証明内容についてみるに、昭和60年以降の製造量について、「しょうゆ」と「ソース」の製造量を一括して記載しており、証明者がどのような事実をもとに該数量を証明したのかが明らかでない。また、「一般家庭やレストランにおいては、備品として使用されている」としており、本願商標が立体商標として使用されていることを証明するものとしては証明力が乏しく、さらに、「取引者及び需要者の間に広く認識されるに至っている周知、著名なもの」との記述があるが、証明者が何をもって、他者である「取引者及び需要者の認識」を証明できるのかも定かではない。
してみれば、本証明は、全体として、証明者(団体としての正式な証明なのか、担当者が個人として証明しているのかは置くとしても)が安易に捺印したのではないかとの疑問を否定し得ず、かつ、本願商標が立体商標として使用され、その立体的形状部分のみが、請求人の取扱に係る商品「しょうゆ,ソース」を表示するものとして取引者、需要者間において周知、著名になっていることを客観的に証明するには十分とはいえない内容のものである。
以上、提出された証拠によれば、本願商標に係る形状をした収納容器に入った商品「しょうゆ,ソース」が相当数取り扱われた事実は認め得るものの、これら商品は、請求人標章や「KIKKOMAN」、「キッコーマン」の文字により識別されているとみるべきであって、甲各号証を総合して検討しても、本願商標が使用された結果、これが取引者、需要者間において請求人の取り扱いに係る商品を表示するものと認識することができる状態に至っていると認めることはできないものである。

4 結論
してみれば、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当し、同法第3条第2項の要件を具備していないとした原査定の認定、判断は妥当なものであって取り消すべき理由はない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 【別掲】
(1)本願商標


(2)請求人標章

審理終結日 2000-10-10 
結審通知日 2000-10-24 
審決日 2000-11-07 
出願番号 商願平9-105216 
審決分類 T 1 8・ 17- Z (Z30)
T 1 8・ 13- Z (Z30)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 薫水茎 弥 
特許庁審判長 為谷 博
特許庁審判官 宮川 久成
久保田 正文
代理人 高梨 範夫 
代理人 浅村 肇 
代理人 浅村 皓 
代理人 宇佐美 利二 

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