• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 商3条1項6号 1号から5号以外のもの 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 016
管理番号 1029494 
審判番号 審判1999-35054 
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-04-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-01-29 
確定日 2000-12-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第4125412号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4125412号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4125412商標(以下「本件商標」という。)は、「2020グリップ」の文字を横書きしてなり、第16類の「グリップ部に軟質ゴムの部材を装着したシャープペンシル」を指定商品として、平成8年5月21日に出願し、平成10年3月20日に設定登録されたものである。

2 請求人の引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第840669商標(以下「引用商標」という。)は、「グリップ」の片仮名文字を横書きしてなり、第25類「紙類、文房具類(但し、三角定規、地球儀、計算尺、そろばん、およびその類似商品を除く)」を指定商品とし、昭和41年11月22日登録出願、同44年12月9日に設定登録され、その後、平成12年1月18日に3回目の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)本件商標は「2020グリップ」であり、「グリップ」の語の頭部に数字が付加されているにすぎないものであるから、「グリップ」の語が要部であるといえる。これに対し引用商標の態様は「グリップ」の語である。したがって、両商標は同一ないし類似である。しかも、本件商標の指定商品である「シャープペンシル」は引用商標の指定商品である「文房具類」に含まれる。
(2)本件商標に対する異議申立に対し、「本件商標は、その構成中の『グリップ』の文字がその指定商品『グリップ部に軟質ゴムの部材を装着したシャープペンシル』の品質を表示したものとはいい難いものであるから、その効能,数量,価格又は時期等を表示するものとして取引者・需要者の間において認識されているものとはいえず、自他商品の識別標識としての機能を有しないものということができない。また、本件商標の指定商品『グリップ部に軟質ゴムの部材を装着したシャープペンシル』は、引用商標の指定商品『紙類,文房具類(但し三角定規,地球儀,計算尺,そろばん,およびその類似商品を除く)』とは、その生産部門,販売部門,品質および用途等が一致していないものであり、需要者の範囲も相違するものであるから、両者は非類似の商品といわざるを得ない。したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号、同第6号及び同法第4条第1項第11号に違反して登録されたものでない。」の判断をした。
しかし、本件商標の「グリップ」の文字は、「指定商品の『グリップ部に軟質ゴムの部材を装着したシャープペンシル』の品質を表示したものとはいい難いものと認定しているが、請求人(異議申立人)はそのような主張はしていない。請求人は、本件商標の構成中の「2020」という数字は、当該商品の品質,効能,数量,価格,時期等を普通に用いられる方法で表示しているものであると主張していたのである。したがって、前記のような認定は明らかに誤審である。また、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品中の「文房具類」とは、「その生産部門,販売部門,品質および用途等が一致せず、需要者の範囲も相違するから、両者は非類似の商品といわざるを得ない」と認定しているが、商標法施行規則の旧別表にも、第25類の文房具類の中に鉛筆類としてシャープペンシルが記載されており、「シャープペンシル」は鉛筆類の一種として明らかに文房具類に属する商品である。生産部門,販売部門,品質及び用途が一致していないとは意味不明である。需要者の範囲が相違するということも意味不明である。われわれが日常出入りする文房具店にはシャープペンシルと鉛筆が並んでいるのである。したがって、前記の認定は明らかに誤審である。
(3)被請求人は、答弁の理由において、「本件商標は、同一の字体及び同一の大きさで、一連に左横書きにしてなるものであり、これらを分離して称呼及び認識しなければならない格別の理由は存しない。」と主張する。しかしながら、本件商標に係る標章態様は、何人が見ても「2020」の数字と「グリップ」の文字との結合から成立しているものであることに変わりはない。これは、あえて2つに分離しなくても変わりはない。本件商標を構成する数字と文字とが、それぞれ特別顕著性のある数字であり文字であるかといえば、被請求人が提出した乙第1号証の1、乙第1号証の2、乙第1号証の3、乙第2号証に係る証拠では、商標法3条2項で要求されている周知性を裏付ける証明にはなっていない。通常の需要者は、「2020」を「ニセンニジュウ」と称呼するし、「グリップ」は英語の“grip”から今日ではすでに日本語化している「にぎり」、「にぎる部分」を意味していることについては、十分承知しているのである。したがって、被請求人もまたその指定商品を「グリップ部に軟質ゴムの部材を装着したシャープペンシル」とあえて表記しているのである。してみれば、本件商標の要部を、被請求人は数字の「2020」にあると決めていることについては、需要者に十分伝わるのである。したがって、本件商標に係る標章は、全体としても前記要部としても、基本的に明らかに自他商品の識別力を欠如した標章であると認定されて然るべきであり、客観的には異論の起らないところである。そして、これに反する認定をすることの方がはるかに異常である。
つぎに、被請求人は、本件商標の要部は「2020グリップ」であるから引用商標とは類似しないと主張し、指定商品の非類似性についても主張する。しかしながら、本件商標に係る標章の要部は、前記したように、その指定商品の記載において、「グリップ部…シャープペンシル」と表記していることを考えれば、その要部は「2020」にあると考えて当然である。また、引用商標の指定商品について被請求人は、その但し書の「その類似商品を除く」とある点を指摘して、「シャープペンシル」は、これに含まれない非類似商品であると主張する。しかしながら、引用商標の指定商品にいう「その類似商品を除く」とは、何を含むものなのか明らかではない。そこで、生産部門,販売部門,品質及び用途等が一致しているか否かという観点で判断することになるのであろうが、「三角定規,地球儀,計算尺,そろばん」と「シャープペンシル」とは類似商品であるから、これは除かれているという論理は短絡的であり、不当である。旧25類の「文房具類」において、「鉛筆類」は「事務用紙」と「絵画用材料」とは類似商品と見られているようであるが、具体的に見れば、その生産部門や販売部門,品質,用途などが全部一致する商品といえるものではないから、非類似商品と認定することもできる商品も多いのである。してみれば、前記のような被請求人の一方的な主張は失当であるというべきである。
(4)以上のように、本件商標は、商標法第3条第1項第6号及び第4条第1頂第11号に該当する商標であったにもかかわらず登録されたものであるから、その登録は第46条第1項第1号により、無効とされなければならない。

4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第8号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)本件商標は、「2020グリップ」の文字を同一の字体及び同一の大きさで、一連に左横書きにしてなり、これらを分離して称呼及び認識しなければならない格別の理由は存しないから、本件商標「2020グリップ」は、それ自体が一連一体の語として需要者・取引者に認識される。したがって、本件商標の識別力を発揮させる部分、即ち、要部は「2020グリップ」全体であると解すべきであり、「2020」の文字部分のみを本件商標の構成から抜き出して、本件商標全体の自他商品識別力の有無を判断することは妥当ではない。
(2)本件商標の構成中の文字「2020」の自体商品識別力の有無について検討するに、この部分は、単なる数字の「ニセンニジュウ」として称呼、観念されるものではない。被請求人は、遅くとも昭和53年頃から「2020」の文字からなる商標「フレフレ」の称呼を生じさせるものとして、筆記具について継続的に使用しているところ(乙第1号証)、被請求人の筆記具に関する市場占有率が高いことに鑑みれば(乙第2号証)、本件商標の構成中の文字「2020」は「フレフレ」を表示するものとして需要者等に浸透しているものである。したがって、本件商標の構成中の「2020」の文字部分についても十分に自他商品識別標識として機能し得る。
請求人は、本件商標の構成中「2020」の部分のみが本件商標の要部となる旨を主張している。この主張は、換言すれば、本件商標「2020グリップ」の構成中「グリップ」の部分には自他商品識別力が無いと主張しているのと実質的には同一であると思料する。そして、当該異議申立ての審理において審判官は、請求人(異議申立人)のこのような主張を認めず、「指定商品の『グリップ部に軟質ゴムの部材を装着したシャープペンシル』の品質を表示したものとはいい難いもの」と認定した(乙第3号証)。
(3)また仮に、本件商標の構成部分である「グリップ」の語が自他商品の識別力のないものであるならば、請求人が引用商標として示している商標登録第840669号「グリップ」は、その指定商品中に「柄付補虫網」等の「にぎる部分」を備えた商品を含むものであるから、それら商品との関係において商標登録を受けることができなかったはずである。
さらに、「2020」の文字は、請求人が主張するように「ニセンニジュウ」と称呼されるものではなく、「フレフレ」と称呼されるものである。請求人が本件商標の構成中の文字「2020」から「フレフレ」を想起、称呼するものとして用いている証拠として、本件商標に関連する他の使用態様「フレフレ/2020」についても商標登録を受けている事実があげられる(甲第5号証)。他方、仮に、本件商標の各構成部分それぞれの文字単独では自他商品の識別力を不足しているとした場合であっても.そのことのみを理由として、直ちに、本件商標全体としての自他商品の識別性までを否定するような請求人の主張には到底首肯することはできない。すなわち、各語単独では自他商品の識別力が弱い語であっても、それらを結合させることにより、その結合語全体が一連の造語として自他商品の識別力を発揮する場合があることは取引の経験則上疑う余地はない。この点に関し、本件商標は「2020」の文字と「グリップ」の文字を同一の字体・大きさで一連に書してなるものであるから、「2020グリップ」の文字が一体不可分の造語として、需要者・取引者に認識され、自他商品の識別力を発揮するものである。特に、本件商標を構成する「グリップ」の語は、本件商標の指定商品の内容を直接的に表示するものではなく、ある特定の要素を単に暗示するものにすぎないから、本件商標全体としての自他商品の識別力は否定されるべきでない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第6号の規定に該当するものではない。
(4)請求人は、「本件商標は、数字の『2020』と片仮名文字からなるものである。これに対し、引用商標は『グリップ』の片仮名文字からなり、指定商品は『文房具類』を含むものである。したがって、『2020』の数字は前記のとおり、自他商品識別力がないものであるから、本件商標の要部は『グリップ』にあり、引用商標に類似する。」旨主張している。しかしながら、本件商標は、一連一体の語として認識されるものであるから、本件商標の要部は「2020グリップ」である。これに対し、引用商標は「グリップ」の文字から構成されるものである。ここで、両商標の類否について検討するに、両者は、それらの称呼、観念又は外観のいずれの点においても類似するものではない。したがって、両商標は非類似の商標である。また、引用商標の指定商品は「旧第25類紙類、文房具類(但し、三角定規、地球儀、計算尺、そろばん、およびその類似商品を除く)」であるのに対し、本件商標の指定商品は「第16類グリップ部に軟質ゴムの部材を装着したシャープペンシル」であるから、両者が非類似の商品であることは明らかである。すなわち、引用商標の指定商品表示では「旧第25類文房具類」から「三角定規、地球儀、計算尺、そろばん、およびその類似商品」が除かれているところ、「三角定規、地球儀、計算尺及びそろばん」の類似商品とは「文房具類(柄付補虫網、毒つぼ、殺虫管、昆虫胴乱、昆虫採集箱を除く。)」と解されるから、結局、引用商標の指定商品は「旧第25類紙類、柄付補虫網、毒つぼ、殺虫管、昆虫胴乱、昆虫採集箱」ということになる(乙第4号証)。したがって、引用商標の指定商品は、本件商標の指定商品と何ら類似するものではない。よって、本件商標は、その商標及び指定商品のいずれの点においても引用商標とは非類似のものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
以上、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第6号及び同法第4条第1項第11号に違反して商標登録されたものではなく、商標法第46条第1項第1号により無効にされるものではない。

4 当審の判断
(1)本件商標は、前記に表示した構成よりなるところ、その構成中の「2020」の文字について、被請求人は、「2020」の文字部分についても、十分に自他商品識別標識として機能し得るとして、乙第1号証(枝番を含む。)を提出している。そして、その提出に係る「文具・事務機でみる戦後50年」の「戦後50年文具・事務機商品年表(1996年3月文研社発行)」(乙第1号証の1)の商品欄に「2020」と表示されているが、同欄には他社の商品に係る「JW-10」、「WD-3000」も表示されていて、該商品欄に表示されたものが、全て掲載各社の商標を表したものとして認識されるのか、あるいは、商品の品番等を表したものと認識されるのか判断できない。また、被請求人の1983年及び1997年のシャープぺンシルのカタログ(乙第1号証の2及び3)に「2020」の数字が表示されていることが認められるが、その数字の上段には「フレフレ」の片仮名文字を併記しているものであって、提出に係る証拠のみによっては、本件商標の構成中の「2020」の文字部分が、被請求人の製造販売に係るシャープペンシルの商標として、「フレフレ」と称呼され、自他商品識別標識と需要者等に認識され、浸透している旨の被請求人の主張は採用できない。一般に、数字は、各種商品の規格、等級等を表す品番等として普通に採択使用されているところから、本件商標の構成中の「2020」の文字部分についても、需要者に商品の品番等を表した部分と認識、理解されるに止まるとみるのが相当である。
(2)本件商標の構成中の「グリップ」の文字部分について検討すると、本件の指定商品に係る取引界においては、シャープペンシルのグリップの形状、グリップの材質及びグリップ部分に装着する部材の開発にあたり、その機能を追求し、技術を競っているものであり、シャープペンシルの特徴を被請求人及び同業他社〈以下の()書きの社名の商号は、省略する。〉は、「グリップが上下に移動するもの、軍手をしたまま筆記できるように滑りにくいグリップを採用したもの」(ぺんてる)、「中央部をへこました凹型のラバーをグリップに巻き付けたもの、グリップにコルク使ったもの」(三菱鉛筆)「滑りにくくするため、グリップ部分にシリコンラバーを装着したもの」(パイロット)、「持ちやすく滑りにくくするため、グリップ部分にゴムとプラスチックの性質を併せ持つエラストマーを装着したもの」(サクラクレパス)、「グリップ部分の独自の形状が滑りを防止もの」(ファーバーカステルジャパン)、「指先が当たるグリップ部分に適度な滑り止め効果が得られるエラストマー素材を採用したもの」(プラス)、「握る部分にはゴム製のグリップを巻き付けたもの」(トンボ鉛筆)等と宣伝したり、新聞等で紹介されている事実が認められる。そして、コクヨ株式会社のカタログ「コクヨオフィスサプライズ編」をみると商品名として「グリップ付きシャープペンシル」及び「グリップ付ロング消しゴムシャープペンシル」と表示し、その仕様として「グリップ/エラストマー素材」と表示している。
そうとすると「グリップ」の文字は、本件の指定商品に係る取引者・需要者は、シャープペンシルの部分名称あるいは部品名称を表す語として認識、理解されているとみて差し支えない。
してみると、本件商標の指定商品は、「グリップ部に軟質ゴムの部材を装着したシャープペンシル」であるから、本件商標は、一連一体に表されているとしても、これをその指定商品に使用した場合、本件商標に接する需要者は、「商品の記号、品番等とグリップ部に軟質ゴムの部材を装着したもの」と認識、理解するに止まると認められ、結局、本件商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であるかを認識することができないものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、その余の主張について検討するまでもなく、商標法第3条第1項第6号に違反して登録されたものであるから、同法第46条の規定に基づき、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-09-12 
結審通知日 2000-09-26 
審決日 2000-10-16 
出願番号 商願平8-55019 
審決分類 T 1 11・ 16- Z (016)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩本 明訓 
特許庁審判長 板垣 健輔
特許庁審判官 上村 勉
八木橋 正雄
登録日 1998-03-20 
登録番号 商標登録第4125412号(T4125412) 
商標の称呼 ニセンニジューグリップ、ニゼロニゼログリップ 
代理人 牛木 理一 
代理人 村橋 史雄 
代理人 石田 昌彦 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ