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審決分類 審判 査定不服 商3条1項6号 1号から5号以外のもの 登録しない Z0439
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Z0439
管理番号 1029301 
審判番号 審判1999-10205 
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-06-18 
確定日 2000-11-24 
事件の表示 平成 9年商標登録願第101750号拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第4類「工業用油,液体燃料,気体燃料」、第39類「貨物自動車による輸送」を指定商品・役務として、平成9年4月1日に立体商標として登録出願されたものであるが、その後、第39類の指定役務については「タンクローリー車による輸送」と補正されたものである。

2 原査定の理由
原査定は、「1.本願商標は、タンクローリー車の一種を表したものと認識される立体的形状よりなるものであるから、これをその指定商品中「タンクローリー車による輸送」に使用するときは、単に役務の提供の用に供する物、役務の質(内容)を表示したにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記役務以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。2.本願商標は、その指定商品との関係において、商品の運搬手段として一般に使用されるタンクローリー車の一種を表したものと認識されるにすぎない立体的形状よりなるものであるから、これをその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者は、商品の運搬手段としてのタンクローリー車であることを認識するにとどまり、何人かの取扱いに係る商品であるのか認識することができないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定して本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)平成8年法律第68号により改正された商標法は、立体的形状若しくは立体的形状と文字、図形、記号等の結合又はこれらと色彩との結合された標章であって、商品又は役務について使用するものを登録する立体商標制度を導入した。
立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下、「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、或いは、その商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に、特徴的な変更や色彩等の装飾が施されていても、それは前記したように商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品・役務を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者・需要者は、当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品等の機能又は美感と関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。
また、商品等の形状は、同種のものにあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者・需要者間において当該形状をもって同種のものと明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として、或いは、商品等と密接に関わりのある物と認識するに止まり、需要者が何人かの業務に係る商品・役務であることを認識することができない商標として商標法第3条第1項に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
(2)立体商標制度を審議した工業所有権審議会の平成7年12月13日付け「商標法等の改正に関する答申」P30においても「3.(1)立体商標制度の導入 需要者が指定商品若しくはその容器又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識する形状のみからなる立体商標は登録対象としないことが適当と考えられる。・・・ただし、これらの商標であっても使用の結果識別力が生ずるに至ったものは、現行法第3条第2項に基づき登録が認められることが適当である。」としている。
(3)これを本願についてみれば、本願商標は、別掲のとおりであって、ガソリン等の液体を輸送する貨物自動車(タンクローリー)そのものを表した立体的形状よりなるものであるから、これをその指定役務「タンクローリー車による輸送」に使用しても、取引者・需要者は、貨物の輸送にタンクローリーが使用されること、即ち、単に役務の提供の用に供する物を表示するにすぎないものとして理解するに止まり、自他役務を識別するための標識とは認識し得ないものと判断するのが相当である。
また、本願商標は、タンクローリーそのものを表した立体的形状よりなるものであること前示のとおりであるから、これをその指定商品「工業用油,液体燃料,気体燃料」に使用しても、取引者・需要者は、該商品がタンクローリーにより輸送されるものであることを表示したものとして理解するに止まり、何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものといわざるを得ない。
なお、請求人は、「石油業界においては、各社が、深緑色・臙脂色・ライトブルー等のコーポレートカラーを独自に採用し、その色彩をガソリンスタンド等の設備、従業員のユニフォームやタンクローリーに使用しているから、取引者等は、色彩によって会社を判別することが可能である。そして、本願商標は、タンクローリー車の一種を表したものと認識される立体的形状よりなるものであっても、その施された『色彩』の特殊性故、自他商品・役務の識別標識としての機能を有するものである。」旨主張する。
しかしながら、各石油会社が独自の色彩をコーポレートカラーとして採用していることは否定するものではないが、請求人提出の参考資料におけるタンクローリーには、いずれも会社の略称やシンボルマーク等が共に付されていて、それが自他商品・役務の識別標識としての機能を果たしているといい得るものであって、色彩のみを施したものは見当たらないこと及びタンクローリーを含む「車両」においては、その車両の美観(見た目の美しさ)をより効果的に際立たせるために、種々の色彩を施すことは一般的に行われていると認められることを併せ考慮すれば、本願商標を構成するタンクローリーに施された赤白の色彩は、タンクローリーの美感をより効果的に際立たせるための一形態にすぎないものとみるべきである。
しかして、本願商標は、前記認定のとおり、立体的形状に色彩が施されていても、それはタンクローリーの美感をより発揮させるために施されたものであり、タンクローリーの形状を普通に用いられる方法の範疇で表示する標章のみからなる商標というべきであって、本願商標は、その形状に色彩を施したことをもって自他商品・役務の識別力を有するものとは認められないことは(1)で述べたとおりである。
(4)請求人は、「本願商標は、遅くとも昭和50年代から請求人の業務に係る石油製品を輸送するために使用されているものであるから、自他商品・役務の識別標識としての機能を有している。」旨主張する。
しかしながら、自社の石油製品を販売するための輸送が商標法上の役務に該当するか否かはおくとして、請求人提出の参考資料をみるに、石油業界大手の企業である請求人が、長年に亘って、タンクローリーを使用して石油の輸送をしてきたことは認められるとしても、該タンクローリーには、同人の略称である「出光」の文字とシンボルマーク(図形)が付されていて、赤白(同人のコーポレートカラー)の色彩のみを施したものは見当たらないから、本願商標(赤白の色彩のみを施したタンクローリー)がその指定商品・役務に使用された結果、自他商品・役務の識別標識としての機能を有するに至っているものということはできない。そして、他に前記認定を左右するに足る証拠はない。
さらに、請求人の挙げる審決例は、平面商標に関するものであって、本件とは事案を異にするものであるから、これに基づく主張は採用の限りでない。

4 結 論
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同第6号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 本願商標


(色彩については原本参照)
審理終結日 2000-09-11 
結審通知日 2000-09-22 
審決日 2000-10-05 
出願番号 商願平9-101750 
審決分類 T 1 8・ 16- Z (Z0439)
T 1 8・ 13- Z (Z0439)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保田 正文和田 恵美 
特許庁審判長 為谷 博
特許庁審判官 寺光 幸子
宮川 久成
代理人 木下 實三 
代理人 中山 寛二 

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