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審決分類 審判 査定不服 商3条1項6号 1号から5号以外のもの 登録しない Z42
管理番号 1025482 
審判番号 審判1999-1988 
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-02-08 
確定日 2000-09-11 
事件の表示 平成9年商標登録願第179516号拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、商標の構成を別掲に示すものとし、第42類「調剤、医業、医療情報の提供、健康診断、栄養の指導」を指定役務として、平成9年11月26日に立体商標として登録出願され、その後、指定役務については、平成10年8月13日付け手続補正書により「調剤」と補正されたものである。

2 原査定の理由
原査定は、「他の事業者との差別化を図るため、あるいは、目立たせることを目的として、店舗又は事業所の形状に特徴をもたせることが一般に行われていると判断されるところよりすれば、本願商標は、指定役務を取り扱う店舗又は事業所の形状を表したものと認識されるものであるから、これをその指定役務に使用しても、これに接する需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものと認める。また、添付の甲第1号証乃至同第6号証等を勘案しても需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるに至っているものとは認められない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定し、本願を拒絶したものである。

3 請求人の主張
請求人は、概略次のように述べた。
本願商標は、別掲のとおりの特徴を有する立体商標であるが、これは請求人会社が経営する漢方薬局チェーン店・薬日本堂の店舗(現在26店舗)のほとんどに採用されている特徴的な形状を表したものである。上記チェーン店の建物は請求人会社の社長・河端敏博が全く独自に意匠設計をしたものであって、全体として寺院ふうであるが、屋根はピラミッドをイメージしており、四隅の太い円柱と共に、漢方の思想と価値観を表している。
ところで、原査定は、「他の事業者との差別化を図るため、あるいは、目立たせることを目的として、一般的に行われる範囲内で特徴を持たせた程度のものと認められる薬日本堂の店舗の形状に過ぎないものを表す本願商標は自他役務識別力を有しない。」ということと推察されるところ、薬日本堂の店舗デザインは“他の事業者との差別化を図ること、あるいは目立たせること”を目的としてなされたものではあっても一般的に行われる範囲内で特徴を持たせた程度のものではなく、指定役務である調剤を取扱う店舗としては、初めて見る人を驚かせるほど特異な外観のものである。そして、そのユニークさのゆえに、各地に出店するたびにその地域の話題となっている。この点については原査定において意見書に添付して提出した甲第1号証ないし同第6号証を援用する。
したがって、薬日本堂の店舗デザインは、まさに薬日本堂を表すものとして業界および需要者間に広く知られているものであり、これと同一もしくは類似の外観の薬局店舗は、日本国内には存在しない。
してみれば、調剤薬局としてはもちろん他のいかなる業種の店舗のデザインとしてもユニークなものを抽象化した標章からなるのが本願商標であるから、十分自他役務識別力を有するものである。

4 当審の判断
(1)平成8年法律第68号により改正された商標法は、立体的形状若しくは立体的形状と文字、図形、記号等の結合又はこれらと色彩との結合された標章であって、商品又は役務について使用をするものを登録する立体商標制度を導入した。
立体商標も商品又は役務に使用されるものでなければならないことは、平面商標と異ならないところ、不動産である建築物も立体商標を構成し得るものであるということができる。
しかしながら、商標の本質的機能は、商品・役務(以下、「役務等」という。)の出所を明らかにすることにより、自己の業務に係る役務等と他人の業務に係る役務等との品質・質等の相違を認識させること、即ち、自他商品・役務(以下、「自他役務等」という。)の識別機能にあるということができるところ、一般的に家屋や店舗、事業所等の建築物は、住居や商品の製造・販売の場又は役務の提供の場等として利用されるものであることから、本来、役務等の出所を表示し、自他役務等を識別するために使用をする標識として採択されるものではない。
そして、このような建築物の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは建築主又は事業主が自己の好みに合わせ他の建築物との差別化を図るためや、建築物としての美感を際だたせることを目的として施されたものであって、前示したように、自他役務等を識別するための標識として採択されるものではなく、全体としてみた場合、家屋や店舗、事業所等の建築物の形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該建築物のある所で商品の販売又は役務の提供が受けられるものと認識するに止まり、自他役務等を識別するための標識として認識し得ないものといわなければならない。
また、このように本来的には自他役務等を識別するための標識として採択されるものではない立体商標については、登録によって発生する商標権が全国的に及ぶ更新可能な半永久的な独占権であることを考慮すれば、その自他役務等の識別力について厳格に解釈し、適用することが役務等の取引秩序を維持するということを通じて産業の発達に貢献するという商標法の目的に沿うものといえるところである。
そうとすれば、建築物全体が立体的識別標識(広告塔)と認識されるような場合などはともかくとして、建築物の形状として認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標のみをもって、取引者、需要者間において自他役務等の識別標識として明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、自他役務等の識別力を有しないものとして商標法第3条第1項の規定に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
(2)これを本願についてみれば、本願商標は、寺院風の建築物の立体的形状からなるものといえるところ、指定役務「調剤」との関係において「調剤」を取り扱う店舗の形状としてその一形態を表したものとみられるものであって、当該建築物の形状が立体的識別標識(広告塔)として機能しているとは認められないから、これをその指定役務「調剤」について使用しても、取引者、需要者は、単に当該建築物のある所で「調剤」の提供が受けられるものと認識するに止まり、自他役務を識別するための標識としての機能を有するものとは認識し得ないものであるから、結局、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものと判断するのが相当である。
(3)請求人は、前記3の如く主張しているが、本願商標は、請求人も認めているように請求人会社が経営する漢方薬局の店舗の形状であるところ、前記(1)及び(2)で述べたとおり自他役務を識別するための標識としての機能を有するとは認め難いものである。
また、請求人の提出に係る甲各号証は、いずれも請求人会社が経営する漢方薬局の店舗の形状を紹介しているに止まるものであって、その形状自体が広告塔として使用され、当該形状のみをもって取引者、需要者間において自他役務の識別標識として明らかに識別されているとも認められないものである。
したがって、本願商標は、自他役務を識別するための標識としての機能を果たしているとは認められないものであるから、請求人の主張は採用できない。
(4)してみれば、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当し、登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別 掲
本願商標





審理終結日 2000-07-04 
結審通知日 2000-07-14 
審決日 2000-07-27 
出願番号 商願平9-179516 
審決分類 T 1 8・ 16- Z (Z42)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保田 正文和田 恵美 
特許庁審判長 三浦 芳夫
特許庁審判官 寺光 幸子
宮川 久成
代理人 板井 一瓏 

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