• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効としない 016
管理番号 1025400 
審判番号 審判1999-35600 
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-03-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-10-26 
確定日 2000-09-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第4248544号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4248544号商標は、別掲のとおり「ワールドサッカーマガジン」及び「WORLD SOCCER MAGAZINE」の文字を上下に横書きしてなり、第16類「雑誌」を指定商品として、平成9年3月12日に登録出願 、同11年3月12日に登録されたものである。

2 引用商標
請求人が引用する登録第3307034号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲のとおり「ワールドサッカー」の文字を横書きしてなり、平成6年4月14日に登録出願 、第16類「雑誌」を指定商品として、同9年5月16日に登録されたものである。

3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第7号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)本件商標とその先願にあたる引用商標とは「ワールドサッカー」の文字部分を共通にするものであって、これより生ずる称呼を共通にする点において相紛らわしい商標であり、かつ、その指定商品「雑誌」を同一にする。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号により拒絶されるべきものであったものが登録されている。
本件商標を構成する文字中、その後半部の「マガジン」及び「MAGAZINE」の文字は、指定商品「雑誌」に使用しても、自他商品の識別機能を有するものではなく、本件商標の要部を構成しないものである。このことは、審決例、審査例に徴して明らかである。
本件商標及び引用商標中の「ワールドサッカー」又は「WORLD SOCCER」の文字は単なる「サッカー」又は「SOCCER」の文字のみに「マガジン、MAGAZINE」が結合されたものとは異なり、独立して出所識別機能を果たし得るものとみられるので、該文字に相応して生ずる「ワールドサッカー」の称呼を共通にする類似の商標と判断するのが相当である。加えて、本件商標の構成文字に相応して生ずる「ワールドサッカーマガジン」の一連の称呼は、長音、促音をも含めて12音よりなるため、一連一体に称呼するものとしては冗長であることから、商品「雑誌」については出所識別性を有しない「MAGAZINE」「マガジン」の文字部分を省略し、語頭部の構成文字に相応して生ずる「ワールドサッカー」の簡易な称呼をもって取引に資せられることも決して少なくはないものとみることが相当である。
引用商標は、「ワールドサッカー」の片仮名文字を顕著に書してなるから、これより、「ワールドサッカー」の称呼を生ずることが明らかである。
本件商標と引用商標とは、前記のとおり、「ワールドサッカー」の称呼を共通にする類似の商標であり、その商品を同一にするものである。
しかして、かかる極めて近似する題名よりなる雑誌が市場において競合する場合には、たとえ、該商品が定期的、反復的に取引される商品であるという取引の実情を考慮するとしても、該商品の取引者及び需要者は、両誌を同一出版社の発行する姉妹誌又は系列誌であるかのようにその出所を誤って認識することが少なくなく、また、このような事態が放置されるならば、商品取引の流通秩序の維持を目的とする商標法の目的にも合致しないものと思量する。
以上述べたとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、拒絶されるべきでものであったにもかかわらず登録されたものあるから、商標法第46条第1項によりこれを無効とすべきものである。
(2)例えば、本件商標による取引の実際において、カタカナ文字のみを「ワールドサッカー」と大書しながら、「マガジン」の文字のみを小さく書して使用される場合には、外観上、両商標の誤認混同の可能性が大きいため、かれこれ相紛らわしい外観上も類似の商標であるといえる。
被請求人は、本件商標より「世界のサッカーと関連のある幅広い情報をも掲載した総合情報誌であることの認識を与える」と述べているが、本件商標の観念が何故、そのように認識されのか、格別の証左が示されているものではない。
そもそも、本件商標中の「MAGAZINE」及び「マガジン」の文字は、「雑誌」の語意を第1義とし、指定商品「雑誌」の普通名称として容易に把握され、認識される英語及びそのカタカナ語として良く親しまれていることは明らかである。
被請求人は、本件商標の指定商品「雑誌」の取引においては、商標の外観及び称呼により商品を識別しており、雑誌の商標から生ずる観念そのものは商品の出所表示機能を果たすことが稀である旨を雑誌の取引の実情として述べ、「雑誌」を指定商品とする商標の類否判断にあたっては該取引の実情を勘案してなされるべきであると主張する。
この主張は、一般論として述べられたもので、実際に雑誌の誌名を分析した上での主張ではないと思量する。雑誌の取引にあたって、雑誌の誌名から生ずる観念そのものが出所表示機能を果たすことが稀であるとは断定し難いものである。
甲第6号証(1999年1月末日現在で全国の書店で販売されている雑誌約3300誌を収録する「雑誌のもくろく1999」)によって、被請求人が乙号証(乙第1号証の1ないし乙第12号証の1)として提出した「マガジン」の文字の有無のみが異なる併存登録商標の使用状況、発行状況をみると、これら二個の登録商標による雑誌が共に、発行されている事例はなく、一方が発行されている場合には、他方が発行されていないものである。あるいは、二個の登録商標が存在しながら、ともに未発行の場合のいずれかである。この事実は、商品「雑誌」の普通名称としての「マガジン、MAGAZINE」の文字のみが異なる雑誌の発行がされないことによって、該誌名が商標登録されているか否かに係わらず、雑誌の発行主体についての誤認混同のおそれが防止される、いわば実際取引の現場における自浄作用ともいうべき力が働いているものとみるのが相当である。
したがって、購買者の注意力によって、雑誌名の識別が現に行われ、混同することなく購読されている旨の被請求人の主張は、格別の根拠を欠くものといわなければならない。
被請求人の指摘に係る「WORLD SOCCER GRAPHIC」商標(登録第3267513号)の存在については、その指定商品が「印刷物、書画」として、商品「雑誌」に限定されることなく登録されているものである。該商標構成中の「GRAPHIC」の文字が「絵をみるような、グラフで示した」等の語意を有するとしても、商品「雑誌」の普通名称ではないから、本件商標と引用商標とは異なる認定、取り扱いがなされたものと推認される。
したがって、上記登録商標があるとしても、そのことのみによって本件商標と引用商標との類否判断が左右されるべきものではない。

4 被請求人の主張
被請求人は結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第12号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)本件商標と引用商標とは、次に述べる点から非類似であることは明らかである。
ア 外観上の観察
本件商標は上段に左横書きした片仮名文字の「ワールドサッカーマガジン」、下段に欧文大文字にて「WORLD SOCCER MAGAZINE」なる構成であるのに対し、引用商標は単に左横書きした「ワールドサッカー」の片仮名計8文字よりなるから、視覚的要因において相紛れるおそれはなく、外観上は非類似である。
イ 知覚的要因・観念上の観察
本件商標は、その構成態様中の一部である「ワールドサッカー」及び「WORLD SOCCER」なる字句が、「マガジン」及び「MAGAZINE」なる字句と相俟って、単に世界のサッカーそのものの情報のみならず、世界のサッカーと関連のある幅広い情報をも掲載した総合情報誌であることの認識を与えるのに対し、引用商標「ワールドサッカー」は世界のサッカーそのものを題材としたものであるとの認識を需要者・購読者に与えるから、知覚的要因において混同を生じることはなく、両商標は観念の点においても区別できるというべきものである。なお、本件商標の指定商品「雑誌」の取引においては、需要者は自己の趣味にあったものを購入した経験に基づき、編集方針の異なる様々な同種商品の外観を認識して、それらに付された商標の外観及び称呼により、他の商品と混同することなく自己の欲する商品を識別しており、雑誌の商標から生ずる観念そのものは、特段の事情が存在しない限り、自他商品の識別力が乏しく、商品の出所表示機能を果たすことが稀であることは、雑誌の取引の実情であると思量される。したがって、雑誌を指定商品とする商標の類否判断にあたっては、上記取引の実状を勘案して類否判断がなされるべきである。
ウ 称呼上の観察
本件商標は、「ワ」「一」「ル」「ド」「サ」「ッ」「力」「一」「マ」「ガ」「ジ」「ン」なる12音にして一連に発音され特別冗長なものとは言い得ないものであり、しかも、全体が極端に長くもなく、かつ同一書体、同一の文字の大きさで表記されているから前半部「ワールドサッカー」と「マガジン」とに分割されることなく円滑に称呼されるものである。これに対し、引用商標は「ワ」「一」「ル」「ド」「サ」「ッ」「力」「一」のみでの8音にて称呼されるものである。
してみれば、「ワールドサッカーマガジン」として称呼、認識される本件商標と、単に「ワールドサッカー」として称呼、認識される引用商標とは聴覚的要因においても相紛れるおそれは全くなく、称呼上も非類似であることは明らかである。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観・観念・称呼のいずれの点においても非類似であり、本件商標と引用商標とが「ワールドサッカー」の称呼を共通にする類似の商標であるとする請求人の主張は到底認められるものではない。
(2)ここで、先にも触れた指定商品「雑誌」の特殊性について述べる。
本件商標に係る指定商品「雑誌」は、定期に編集され刊行される出版物である点において、一般市場に不定期かつ必要に応じて流通される他の商品と異なる特殊性を有することは明らかである。したがって、その定期性の故に顧客層が特定化しており、また、回帰性の故に同種内容のものであってもその名称(雑誌名)にわずかな相違があれば明瞭に区別されているのが実状である。すなわち、特定化された若しくは特定化され得る顧客層にあっては雑誌名を厳密に区別し、同種の雑誌であっても混同することなく購読しているのが現状である。それ故、商標(雑誌名)においての類似する範囲は極めて狭いものであり、雑誌名においてのわずかな相違があれば、この種業界では区別されたものとして取り扱われているのが一般的慣行となっている。したがって、本件商標と引用商標との称呼上における「マガジン」の有無は、明瞭に識別可能な判別できる重要な要素であり、両者間に混同を生じる余地は皆無であるといわざるを得ないのである。
かかる「雑誌」の特殊性の故に、既登録商標との間に「マガジン」や「ジャーナル」等のわずかな相違があれば、後願商標であっても両者間に混同を生じる余地は皆無であると判断され、多数登録となっている(乙第1号証の1ないし乙第7号証の2)。
したがって、請求人の「『ワールドサッカーマガジン』と『ワールドサッカー』という極めて近似する題名よりなる雑誌が市場において競合する場合には、たとえ、該商品が定期的、反復的に取引される商品であるという取引の実情を考慮するとしても、該商品の取引者及び需要者は、両誌を同一出版社の発行する姉妹誌又は系列誌であるかのようにその出所を誤って認識することが少なくない」との判断は誤りであると言わざるを得ない。
(3)「ワールドサッカー」の文字は、「世界(の)」の語意をもつ「ワールド」と世界で最も人気のあるスポーツの名称である「サッカー」からなるため、それが全体としては既成語として存在しないものであっても、そこから直観して内容を把握することができ、したがって、当該「ワールドサッカー」の文字からなる引用商標は、本来は商標法第3条第1項第3号に該当し、出所識別機能を果たし得ないものとして登録を拒絶されるべきものであるが、商標法第3条第1項第3号の適用における「雑誌」の特殊性により登録を認められているものである。
特許庁商標課編「商標審査基準[改訂第6版]」8頁には、「新聞、雑誌の題号は、原則として、自他商品の識別力があるものとする」との基準が明確に示されており、「新聞、雑誌」の特殊性が故に、本来は商標法第3条第1項第3号に該当する商標が、「自他商品の識別力があるものとする」ものとして例外的に本規定の適用を除外されているものである。
(4)「ワールドサッカー」の文字が、出所識別機能の点において、「ワールドカップ」「ワールドシリーズ」「ワールドミュージック」等の語と異なると論ずることはできない。
(5)本件商標が引用商標と区別して登録されるべきことは明らかである。 この点は、引用商標「ワールドサッカー」(登録第3307034号)自体が、「WORLD SOCCER GRAPHIC」(登録第3267513号)よりも後願であるにもかかわらず登録となっていること(乙第5号証及び甲第2号証の1ないし2)からも明らかである。
(6)名称(雑誌名)が冗長であるかは、雑誌の顧客層の注意力をもって、その名称(雑誌名)が冗長であるかという観点から判断されるべきである。 このことは、11音の音構成にかかる商標「高校野球マガジン」(登録第2515569号)(乙第11号証の1)と「高校野球」(登録第2556649号)(乙第11号証の2)とが共に登録となっている例にみられるような、登録例が多数存在していることからも明らかである(乙第8号証の1ないし乙第12号証の2)。
(6)以上述べたとおり、本件商標が商標法第4条第1項第11号の規定に該当しないことは明らかである。

5 当審の判断
雑誌を発行しようとする者が、その雑誌名を選択する場合、主としてどのような記事を掲載している雑誌であるかが需要者に分かりやすいように、例えば野球関連の雑誌であれば「野球」又は「ベースボール」、サッカー関連の雑誌であれば「サッカー」、将棋や囲碁関連の雑誌であれば「将棋」又は「囲碁」の文字を含んだ雑誌名又は前記文字自体からなる雑誌名を選択することはある程度必然的な傾向と考えられる。
これに加えて、雑誌名は、雑誌名らしく簡潔であることも一般には求められるから、その結果として、似通った雑誌名が選択されることは避けられないものといえる。
そして、前記のような雑誌名についての実情を需要者は、無意識的にあるいは意識的に認識しており、特に雑誌の内容を表しているとみられる文字を含んだ雑誌名同士については、その内容を表している文字部分以外にわずかな違い、例えば雑誌を意味する「マガジン」や「ジャーナル」という語を有するか否かといった程度の違いがあれば、特段の理由がない限り、別の雑誌であって、別人の取り扱いに係る雑誌であるものと理解し、出所について混同を生ずるおそがないものとみるのが相当である。
これを本件についてみると、本件商標中の「ワールドサッカー」及び「WORLD SOCCER」の文字と引用商標を構成している「ワールドサッカー」の文字は、「世界のサッカー」の意を直ちに理解させるものであって雑誌名として使用されたときはその雑誌が主として世界のサッカーに関する情報を掲載しているものと需要者が認識すると認められるから、その雑誌の内容を表す文字といえる。
そうすると、本件商標と引用商標とは、雑誌の内容を表す文字といえる「ワールドサッカー」、「WORLD SOCCER」の文字以外に本件商標では、「マガジン」、「MAGAZINE」の文字が付加されているという違いによって十分識別され、出所について混同を生ずるおそがないものといわなければならない。そして、この意味において、本件商標と引用商標を観念が紛らわしい雑誌名とすることはできない。
また、本件商標全体より生ずる「ワールドサッカーマガジン」の称呼は、雑誌名として冗長であるとはいえないから、本件商標は、「ワールドサッカーマガジン」と省略されることなく称呼されものとみるのが相当であり、引用商標の称呼である「ワールドサッカー」と紛らわしいものということはできない。したがって、本件商標は、引用商標と称呼上、類似しないものである。
次に、請求人は、本件商標による取引の実際において、カタカナ文字のみを「ワールドサッカー」と大書しながら、「マガジン」の文字のみを小さく書して使用される場合には、外観上、引用商標と誤認混同の可能性が大きいため、両商標は、外観上も類似の商標である旨主張している。
しかし、登録商標の範囲は、願書に添付した書面に表示した商標に基づいて定めなければならず(改正前商標法第27条第1項)、本件商標の構成態様が変えられて使用されることを前提にした前記主張は採用することができず、本件商標は、引用商標とその外観において明らかな差違が認められる。
そして、請求人は、本件商標を雑誌について使用した場合、請求人の業務に係る商品と混同を生ずるとすべき特段の理由を示していない。
そうすると、本件商標は、引用商標と類似しない商標といわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものでなく、同法第46条第1項の規定により無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 本件商標


引用商標

審理終結日 2000-06-20 
結審通知日 2000-06-30 
審決日 2000-07-12 
出願番号 商願平9-26346 
審決分類 T 1 11・ 262- Y (016)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小田 明 
特許庁審判長 佐藤 敏樹
特許庁審判官 山田 忠司
上村 勉
登録日 1999-03-12 
登録番号 商標登録第4248544号(T4248544) 
商標の称呼 ワールドサッカーマガジン、ワールドサッカー 
代理人 中村 政美 
代理人 小出 俊實 
代理人 石川 義雄 
代理人 鈴江 武彦 
代理人 吉野 日出夫 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ