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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 020 |
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管理番号 | 1025399 |
審判番号 | 審判1999-35228 |
総通号数 | 15 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2001-03-30 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1999-05-17 |
確定日 | 2000-09-01 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4220652号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第4220652号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4220652号商標(以下「本件商標」という。)は、「ささえ」のかな文字を横書きしてなり、第20類「家具」を指定商品として、平成8年1月11日登録出願、同10年12月11日に設定登録されたものである。 第2 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求めるとして、その理由を要旨次のように述べ(弁駁書を含む。)、証拠方法として甲第1号証ないし甲第57号証を提出した。 1 甲第1号証及び甲第2号証に示されている本件商標は、請求人である株式会社吉野商会(以下「請求人」という。)製造の商品を示すものとして需要者の間に広く認識されている商標(以下「引用商標」という。)と同一であり、かつその商品を含む商品について使用をするものであるので、商標法第4条第1項第10号に該当し、同法第46条第1項第1号の規定により、無効とされるべきである。 2 請求人は、平成5年末から(出荷は平成6年1月から)、高齢者、身障者等がベッドから立ち上がる際に使用する「ベッド用手すり」について商標「ささえ」を使用し始めた(甲第3号証ないし甲第5号証、甲第6号証、甲第8号証、甲第9号証、甲第11号証ないし甲第25号証、甲第35号証及び甲第36号証)。この商標「ささえ」は、本件商標と同一であり、この「ベッド用手すり」は、本件商標の指定商品「家具」に含まれる商品である。 3 請求人の「ベッド用手すり」は、特定機種に限らず多様なベッドに取付け可能であるという機能性と安価であるという特長から、発売後直ちに好評を博し、その商標も需要者に広く知られるようになった。他に同様の商品が今日に至るまでほとんどないことから、この出願がなされた平成8年1月以前に、請求人の商品は、「ベッド用手すり」の市場のほとんどを獲得し、今日までその状態を維持していると思われる。なお、前記商品はその後「ささえDX型」「和室(畳)用手すりささえ」が追加発売され、競合商品がないことから、市場を完全に独占している。周知性を立証する証拠として、介護用品とは関係ない分野の雑誌「国際ジャーナル」に掲載された請求人の社長の対談コピーを提出する(甲第7号証)。 4 カタログの作成日付と数量の証明のため、甲第27号証及び甲第31号証ないし甲第34号証を提出する。 5 平成7年10月から開始したアンケートの回答葉書において、特に初期にはヘルパー等から知ったとの回答が多く、介護関係者の間では、「ささえ」が広く知られていたことが解る(甲第10号証および甲第37号証)。一般に介護用品は、販売ルートが限られており、多くは、通信販売、医療機関やヘルパー等の紹介、地方公共団体関連の展示施設等を介して販売される。これらのルートは、いずれも、商品に相応の販売実績があること、特に使用者に満足を与えていることがその取り扱い開始の条件とされる。このアンケート回答は、この実績、使用者の満足を示すものであり、このような回答があるからこそ、これらの販売ルートを確保することができたものである。地方公共団体関連の展示施設に「ささえ」が展示されたことの契約関係書類を提出する。(甲第46号証ないし甲第49号証) 6 同じ介護用品である「ポータブルトイレ用フレーム」について、被請求人が商標「ささえ」を使用しており(甲第26号証)、需要者に混乱を来し、公益上も問題のある状態である。被請求人は同じ介護用品を取り扱っており、被請求人の商品が、請求人の引用商標を付した商品を掲載する同一のカタログに掲載されていることからも、請求人の「ささえ」を知らないことはありえない(甲第38号証及び甲第39号証)。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ(第2回めの答弁を含む)、証拠方法として乙第1号証を提出した。 1 請求の理由に対する反論 商標法第4条第1項第10号の適用要件は、引用商標が本件商標の登録出願時である平成8年1月11日時点において、「需要者の間に広く認識されている商標」に該当していたことが必要であるところ、請求人の提出した証拠は次の理由により、引用商標の周知性を立証するものでない。 ・甲第3号証ないし甲第5号証のカタログは作成年月日がいずれも不明であって、本件商標の登録出願時に使用されていたことを示すものではない。 ・甲第6号証の「読売新聞」及び甲第7号証の「国際ジャーナル」は発行日がそれぞれ平成10年または平成11年であって、本件商標の登録出願時に使用されていたことの証明とならない。また、読売新聞の記事「木製ベッド用の手すりとしては3年前に発売した「ささえ」(同1万3800円)があり、年間2,3千台と好調な売れ行き」の部分を裏付ける資料はなく、信憑性があるとはいえない。 ・甲第8号証の売上伝票によっては、「ささえ(具体的商品は不明)」を単価6210円で数量150を販売したとの記載が推測されるものの、請求人の主張する周知を直ちに立証するものとは言い得ない。 ・甲第9号証は誰が納品したのか不明であるから、請求人が「ささえ」を販売した事実を示す書類とならない。 ・甲第10号証のアンケート回答葉書は6枚にすぎず、引用商標の周知であることの立証とはならない。 ・甲第11号証ないし甲第16号証の通信販売のカタログは、「ベッド用手すり」の掲載の事実は認められるものの、これら通信販売カタログの配布先、配布数量、これらの通販による商品の販売台数や売上等が不明であるため、請求人の主張を裏付ける証拠とは認められない。 ・甲第16号証は発行年月日が特定できず、甲第17号証ないし甲第25号証の発行年月及び甲第28号証ないし甲第30号証の請求書の日付は本件商標の登録出願日以降であるため、証明とならない。 ・甲第27号証は作成者名の記載がなく、証拠能力がないと認められるとともに、本件商標の登録出願前のカタログは134000枚である。 ・甲第31号証ないし甲第34号証の請求書からは、カタログ82000枚を作成したことが窺えるのみである。 ・甲第37号証のアンケート回答葉書のうち、本件商標の登録出願日前のものの枚数は不明である。 ・甲第38号証、甲第39号証及び甲第42号証ないし甲第44号証は被請求人においても介護用品を販売していることを示すものであり、このような状況においても実際に需要者・取引者において出所の混同を生じないことの立証である。 ・甲第46号証ないし甲第49号証の展示依頼についても最近のものであり、本件商標の登録出願時においてはかかる状況でなかったことを認めるものである。 ・本件商標の登録出願前に引用商標を使用した商品の販売数は、合計210台である(甲第8号証、甲第9号証、甲第35号証及び甲第36号証)。 ・通信販売カタログの掲載も甲第11号証ないし甲第16号証の6冊のみである。 ・同種商品のシェアについては証拠の提出もなく明らかにされていない。また、本件商標出願時までの広告宣伝費や販売台数も明らかにされていないところから、請求人の主張については信憑性がないものといわざるを得ない。甲第40号証及び甲第41号証においても写真のみであって、販売台数が不明である。 ・「ベッド用手すり」は相当以前から製造されていたものであり(甲第13号証及び甲第16号証参照)、請求人の商品が最初であるとは認められない。 以上、請求人の提出した証拠をつぶさに検討しても、請求人は製造のみであって販売を行っておらず、介護用品全般において行われている営業ルートのうち単に通信販売のみでしか商品を販売していない。また、本件商標の登録出願日前に発行されたカタログの作成枚数も少量にすぎず、通信販売用のカタログも数冊にすぎないことから、引用商標を積極的に使用していたとは判断し得ず、引用商標が商品ベッド用手すり」について周知であるとは到底言い得ない状況にあることが窺える。 2 出所の混同について 「ポータブルトイレ用フレーム」に商標「ささえ」を使用している件に関し、被請求人は商標登録第4172174号商標(乙第1号証)の権利者であり、前記商標権の正当な使用であって、本件商標とは何ら関係がない。また、前記商標の使用によって請求人との間に問題は生じていない。 また、被請求人は請求人製品「ささえ」が周知であるとの認識は皆無であり、請求人の営業全体についても、介護用品を営業しているとの認識にとどまり、不正の目的を有するものではない。 3 まとめ 引用商標は、本件商標の登録出願日である平成8年1月11日の時点において需要者に広く認識されている商標であることは到底認め得ないため、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当しないことは明白である。 してみれば、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当するとの請求人の主張は失当であると言わざるを得ない。 第4 当審の判断 1 本件商標と引用商標について 本件商標は、前記構成のとおりであり、請求人主張のとおり、「ささえ」のかな文字を横書きした引用商標と実質的に同一の商標である。 また、請求人が引用商標を使用している「ベッド用手すり」は、本件商標の指定商品「家具」に含まれる商品である。 2 請求人について 請求の理由および甲各号証を総合すれば、請求人は、創業34年(平成10年当時)の介護用品メーカーであり、製造を始めとして地方公共関連の福祉機器用品展示会への展示、福祉関連施設、各種通信販売カタログを通じての販売を行っていることが認められる。また、請求人と被請求人は、介護用品メーカーとして「両社はアイデアを競っている」(甲第6号証)ことや、同一通信販売カタログへの掲載(甲第13号証、甲第16号証、甲第38号証及び甲第39号証)からも互いの商品を知り得ているものと認められる。 3 引用商標について (1)使用開始時期について 平成6年に引用商標の使用を開始したとの請求人の主張について、引用商標を付した商品「ベッド用手すり」の販売開始時期は平成6年4月との記載(甲第45号証)や訴外者である山口医療器株式会社開催の商談会(平成6年4月20,21日)のカタログへの記載(甲第52号証)及び前記商品「ささえ」の売上伝票(甲第8号証)によれば、遅くても平成6年4月には引用商標が「ベッド用手すり」に使用されていたことが認められる。 (2)引用商標の使用状況について 引用商標が、本件商標の登録出願時である平成8年1月11日以前に「ベッド用手すり」に使用されていたことは、甲第11号証ないし甲第17号証の通信販売カタログによって、さらにその後も現在に至るまで使用されていることが、甲第18号証ないし甲第25号証、甲第42号証ないし甲第44号証及び甲第53号証ないし甲第56号証によって認められる。 また、アンケート回答葉書(甲第10号証)は平成7年10月、11月に寄せられたものであるが、これらから、前記商品が福祉関連施設等を通じて販売されていることが認められる。 (3)引用商標の宣伝について 引用商標を付した商品の宣伝カタログ(甲第31号証及び甲第33号証)が本件商標の登録出願時前の約1年間に132000枚印刷されていたことは、訴外者山喜包装株式会社の作成した納入実績リスト(甲第27号証)及び請求書(甲第32号証の2及び甲第34号証の2)から認められる。また、これらカタログは福祉関連施設に配布されたことが、アンケート回答葉書(甲第10号証)の設問「ささえを何で知りましたか」の設問の回答(土屋ヘルスケアサービス(株)松本店、社会福祉協議会、在宅看護センター)から窺うことができる。 (4)引用商標の周知性について 引用商標を使用した「ベッド用手すり」が、本件商標の登録出願時2年前より7種類の通信販売カタログを通じて販売されていたことは前記(1)(2)に述べたとおりであるが、前記カタログ中、甲第14号証の「ディノス」は、株式会社フジサンケイリビングサービスが年3回発行している全国的に有名なものであってその発行部数は380万部(1998年雑誌新聞総カタログより)と膨大なものであり、また、本件商標の登録出願時より若干あとではあるが、著名なデパートである株式会社高島屋の通信販売カタログ(平成8年夏号及び平成9年新年号)を通じても販売している(甲第19号証及び甲第21号証)。 また、平成10年9月11日付けの読売新聞に「進化する介護用品(9)」として、請求人の販売する和室用手すり「ささえ」が取り上げられ、記事中において「引用商標を付した『木製ベッド用手すり』がその3年前に発売され、年間2〜3千台と好調な売れ行き」との記載がある(甲第6号証)ことに加え、甲第8号証及び甲第9号証の売上伝票において各1社への売上が各々150台又は60台と示されており、甲第40号証の写真(販売伝票の写真)とあわせて勘案すると相当数の販売がされたと推測できる。 以上の事項を総合すると、引用商標は「ベッド用手すり」に使用して、本件商標の登録出願時である平成8年1月11日において、全国各地の福祉関連施設への宣伝や各種通信販売カタログを通じての販売を約2年間行うことによって、福祉関連施設や需要者間において周知であったと認めるのが相当である。 4 被請求人の主張について 被請求人は、請求人の提出した甲各号証について、作成年月日が本件商標の登録出願日より以降のものについては周知性立証の証明とならないことや「ベッド用手すり」に関してシェア100%との請求人主張の証拠がないこと及び販売台数や通信販売カタログの配布部数が記載されていないことを挙げ、ゆえに甲各号証から把握できる販売台数210台とカタログ6冊では周知性があったとは認められない旨を主張しているが、甲第8号証及び甲第9号証の売上伝票は、各1社への売上が各々150台又は60台であり、甲第40号証とあわせて勘案すると相当の販売がされたと推測できるし、周知性を勘案するにあたり必ずしもシェア100%である必要もない。 5 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号により無効とする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2000-06-20 |
結審通知日 | 2000-06-30 |
審決日 | 2000-07-12 |
出願番号 | 商願平8-1929 |
審決分類 |
T
1
11・
25-
Z
(020)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 内山 進 |
特許庁審判長 |
佐藤 敏樹 |
特許庁審判官 |
村上 照美 上村 勉 |
登録日 | 1998-12-11 |
登録番号 | 商標登録第4220652号(T4220652) |
商標の称呼 | ササエ |
代理人 | 幸田 全弘 |
代理人 | 齋藤 理絵 |
代理人 | 寺田 正美 |
代理人 | 寺田 正 |