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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 010
管理番号 1025398 
審判番号 審判1998-35245 
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-03-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-05-28 
確定日 2000-09-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第3358210号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第3358210号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第3358210号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成5年5月21日登録出願、「メディケアクラブ」の片仮名文字及び「MEDICARECLUB」の欧文字を上下二段に表してなり(後掲A)、第10類「医療用のサポーター及び腹帯」を指定商品として、同9年11月14日に設定の登録がされたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効を述べる理由に引用する登録第1763196号商標(以下、「引用商標」という。)は、昭和56年12月24日に登録出願され、「メディケア」の片仮名文字を横書きに表してなり(後掲B)、旧第1類(平成3年法律第299号による改正前の商標法施行令第1条所定の商品の区分)「化学品,薬剤,医療補助品」を指定商品として、同60年4月23日に設定の登録、該登録に係る権利は、平成7年9月28日に存続期間の更新登録がされているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求める、と申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証乃至甲第8号証(枝番号を含む。)を提出した。
1.請求の理由
(1)本件商標の指定商品について
本件商標の指定商品中「医療用のサポーター」は、甲第3号証の被請求人のカタログによれば、遠赤外線を放射するセラミックを練りこんだ繊維を素材とし、膝、肘、または腰に巻き付けて使用するもので、被請求人も自認するように、スポーツマンがケガをした関節部を保護したり、湿布薬のサポーターとして、包帯の代わりにも使用されるものである。すなわち、被請求人の製造販売する「医療用のサポーター」なる商品は、たとえ、商品区分第10類「医療用機械器具」の範疇に入るとしても、専ら病院で医師の指導の下に使用されるものとは言い難いものであり、事実、薬局、薬店、スーパーマーケット等でも販売されており、家庭でも使用されるものであるから、旧第1類の「医療補助品」の範疇に入る商品とその販売ルート・用途・需要者において共通するものである。
したがって、本件商標のうち「医療用のサポーター」なる商品と旧第1類に属する「医療補助品」なる商品とは、互いに極めて近い関係にある商品である。
(2)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当する理由
(ア)請求人は、引用商標を一般薬店及び医療機器系販売経路で販売される下記一群の商品a.〜f.について長年にわたって使用してきた結果、引用商標は、これら一群の商品と上記「医療用サポーター」なる商品に共通する取引者・需要者間に広く知られるに至ったものである。
a.衛生マスク:昭和45年9月〜昭和54年11月の期間使用(甲第3号証の1、甲第4号証の1及び資料A参照)。
b.絆創膏(非防水性・防水性の二種):昭和47年3月発売開始、現在に至る(甲第3号証の2、甲第4号証の2乃至9及び資料B1、同B2参照)。
c.清浄綿:昭和48年3月〜平成2年3月の期間使用(甲第3号証の3、甲第4号証の2乃至4及び資料C参照)。
d.救急セット(粘着包帯と非防水性傷当てパッドのセット):昭和59年発売開始、現在に至る(甲第3号証の4第3葉メディケアの欄、甲第4号証の2乃至9及び資料EI〜E3参照)。
e.パッド類(非防水性傷当てパッド、防水性傷当てパッド、滅菌パッド、ワンタッチパッドの4種):昭和59年発売開始、現在に至る(甲第3号証の4第3葉メデイケアの欄、甲第4号証の2乃至9及び資料FI〜F4参照)。
f.ガーゼ類(滅菌ガーゼ、ウェットガーゼ他):平成3年5月発売開始、現在に至る(甲第5号証の42、甲第4号証の6乃至9及び資料GI〜G3参照)。
(イ)換言すると、請求人の上記一群の商品a.〜f.は、例えば甲第3号証の3第2葉第4欄に「3月中旬よりメディケア一連製品の一つとして、メデイケア洗浄綿B(ベビー用)とL(一般用)を薬系・医療器系の両ルートを通じ販売します」とあるように、審判請求人の「医療補助品」(上記a.〜f.)は、病院や医院に販売するルートと薬局・薬店を通じて一般の家庭向けに販売するルートを通じて販売されるものであり、いわば二元性のある商品である。
一方、被請求人の「医療用サポーター」なる商品も、病院・医院で使用され、かつ、一般家庭でも使用されるものであって、請求人の「医療補助品」と同様に二元性のある商品である(甲第1号証の2)。
(ウ)甲第5号証の14(「ドラッグトピックス」平成元年8月28日号)に報じられているように、当業者間で「衛生材料」と称される商品の市場は既に平成元年において「成熟市場」に達しており、「絆創膏」の市場規模は年間150〜160億円(メーカー出荷額)、「ガーゼ」の市場規模は年間110億円(メーカー出荷額)、「包帯(傷当てパッドを含む概念)」の市場規模は年間160億円(メーカー出荷額)、「脱脂綿」の市場規模は年間90億円(メーカー出荷額)といわれている。
また、甲第5号証の51(「ドラッグトピックス」平成4年8月24日号)の記事によれば、「衛生材料」の市場規模は、「絆創膏」が年間180億円(メーカー出荷額)であり、「ガーゼ」が年間190億円前後(メーカー出荷額)、「包帯(傷当てパッドを含む概念)」の市場規模は年間130億円(メーカー出荷額)、「脱脂綿」の市場規模は年間150億円(メーカー出荷額)といわれている。
すなわち、平成元年8月における市場規模と平成4年のそれとの間に大きな伸びはなく、まさに成熟市場といえるが、請求人の上記「メデイケアシリーズ」の商品a.〜f.は、かかる成熟市場の中でも着実にその売上を伸長させてきたものであり、その事実は甲第4号証の4乃至9から明らかである(平成元年度売上額2.1億円、平成2年度売上額2.1億円、平成3年度売上額2.7億円、平成4年度売上額4.8億円、平成5年度売上額6.1億円、平成6年度売上額7.1億円)。
この事実はまた、甲第5号証の51第5段において「森下仁丹の『メディケア』シリーズは、近年着実にその売上を伸ばしている。同社が三年前から実施している、地域の小売店とタイアップした地道なサンプリング活動が功を奏し始めたためだ。」なる報道からも窺えるところであり、引用商標が取引者・需要者間に浸透したことを如実に物語るものである。
また、甲第5号証1乃至57は、同社の『メデイケア』シリーズ製品が再々業界紙で報じられ、かつ、自らも派手さはないがコツコツと絶えず『メデイケア』シリーズ製品の広告・普及に努めてきたことを如実に物語るものである。
この結果、いわゆる「衛生材料」について「メディケア」といえば、それは請求人の商品であると取引者・需要者に認識されるに至っているのである。
(エ)次に、本件商標「メデイケアクラブ/MEDICARECLUB」と引用商標「メデイケア」の混同のおそれについて考察すると、両者間に混同のおそれは無いなどとは何人も言い得ない筈である。けだし、本件商標は、その全体称呼が7音であって冗長の感を否めず、請求人の商標「メディケア」の後に「クラブ」の文字を付加したにすぎず、かつ、「クラブ」の語は既に希釈化され、自他商品識別機能が相対的に弱化した所謂「ウイークマーク(weakmark)」であるからである。
加えて、引用商標「メディケア」がこれまで一群の「医療補助品(衛生材料a.〜f.)」について長年にわたりシリーズマークとして使用されてきた事実に鑑み、本件商標の「メディケアクラブ」なる文字に接する取引者・需要者は、「クラブ」の語が構成員の集合体を意味することと相俟って、彼此混同を生じるおそれは十分あると思料され得る。
(オ)添付の資料A乃至Iは、いずれも単に請求人の「メディケア」シリーズ商品が如何なるものであるかを理解して貰うための参考資料である。
(3)結語
叙上に徴し、本件商標がその指定商品「医療用サポーター」について使用されるときは、引用商標との間に出所の混同を生じるおそれがあるので商標法4条第1項第15号に該当し、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。
2.被請求人の答弁に対する弁駁
(1)本件指定商品と「メディケア」商品の関連性
本件商標の指定商品中の「医療用サポーター」と引用商標が使用されている旧第1類「医療補助品」とは、(審査基準上)互いに非類似であるとしても、需要者・取引者を共通にする互いに極めて近い関係にある商品である。
(2)引用商標の著名性について
(ア)「メディケア」印取扱卸売店及び同小売店について
甲第6号証の1より、平成5年5月31日現在において、北海道から沖縄に至るまで574店に上る卸売店が「メディケア」印商品を取扱っていたことがわかる。そして、これらの卸売店を通じて、「メディケア」印商品は、小規模店のみならず、大型スーパーマーケットのほか、チェーン店展開しているドラッグストアにおいても販売されており、「メディケア」印商品を扱う小売店は、大手量販店だけをみても、その数は少なくとも17,414店に上る(甲第6号証の2)。
(イ)「メディケア」印商品の市場シェア
甲第7号証の1は、請求人業務に係る防水性絆創膏についてCSKネットワークシステムズ株式会社により全国のドラッグストア950店舗を対象に実施した平成10年9月単月における「メディケア」印商品の市場調査の結果に基づき請求人が整理した資料である。
また、甲第7号証の2は、同じく請求人業務に係るワンタッチ絆創膏(パッド、ガーゼ及び粘着シート一体型)についての調査結果を請求人が整理した資料である。
なお、当該調査を実施したCSKネットワークシステムズ株式会社の報告書「販売統計データベース『救急絆創膏類』薬局・薬粧/全国950店舗 CskNet」(甲第7号証の3)及び同報告書「販売統計データベース『包帯・ガーゼ』薬局・薬粧/全国950店舗 CskNet」(甲第7号証の4)を提出する。これら報告書の双方に、防水性絆創膏及びワンタッチ絆創膏に関するデータが含まれているが、これら絆創膏のそれぞれについてのデータを抽出し色分けしたものが甲第7号証の5及び甲第7号証の6である。
そして、「メディケア」全商品についての売上額の推移は、前出甲第4号証に示すとおりである。
上記資料等より、平成5年度から平成9年度の「絆創膏,衛生マスク,清浄綿,救急セット,パッド類,ガーゼ類」の売上額は、ほぼ一定していることが分かる。
一方、「救急絆創膏」の市場に関していえば、株式会社富士経済発行「‘98一般用医薬品データブック(上巻)」207頁下部に「既に市場は成熟しており、・・・(略)・・・市場規模は年々減少傾向となっている。」とあり、また、同頁掲載のデータから、1993年(平成5年)から1998年(平成9年)にかけて、「救急絆創膏」市場の伸長率はほぼ横ばいであることが示されている(甲第8号証)。
(ウ)まとめ
甲第5号証の1〜57、甲第6号証、甲第7号証及び以上の事実から、本件商標の出願前より、「メディケア」印商品の宣伝広告がなされ、また、北海道から沖縄までの地域に所在する卸売業者及び小売業者により取引され、需要者に販売されてきた結果、「メディケア」印商品は、市場において相当のシェアを占めるに至っていたことが明らかであり、引用商標は、本件商標の指定商品「医療用サポーター」と共通する取引者・需要者間に広く知られるに至ったものである。
(3)本件商標「メディケアクラブ/MEDICARECLUB」と引用商標「メディケア」の混同のおそれについて
引用商標「メディケア」は、本件商標の出願前より「医療補助品(衛生材料)」について長年にわたり、相当の市場シェアを保ちつつ、シリーズマークとして使用されてきた結果、著名となったものである。その結果、本件商標の「メディケア/MEDICARE」なる著名な造語と、構成員の集合体を意味する「クラブ/CLUB」なる既成語との間に軽重の差が生じるため、本件商標に接する需要者等は、「メディケア/MEDICARE」なる文字に注意を引かれることとなり、両商標を彼此混同するおそれが十分ある。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として、乙第1号証乃至乙第6号証を提出した。
(1)請求人に係る引用商標の周知性について
請求人が引用する引用商標「メディケア」は、病院や医院に販売するルートと薬局・薬店を通じて販売される二元性のある商品であることは認めるが、上記引用商標の指定商品「医療補助品」中a.衛生マスクとc.清浄綿は現在未使用であり、b.絆創膏、d.救急セット、e.パッド類、f.ガーゼ類が現在使用中であることは認められるが、これらの使用はあくまで旧第1類の指定商品、医療補助品中の絆創膏、救急セット、包帯、パッド類、ガーゼ類の使用によるものであり、被請求人は「メディケア」の商標が存在することすら知らなかったぐらいで、本件商標出願中に請求人会社から使用中止の通告を受けて始めて、上記の商品に使用されていたことが判明した程度であり、しかも今回商標の使用の立証をしている新聞はいづれも同業者聞の業界新聞での広告がほとんどであり、一般向けの広告は2〜3件程度にすぎないこと、また、この広告は平成元年から平成3年頃のものが多く、継続的に一般大衆に広告されているものはないこと、日本医療衛生新聞の広告でも年に2回程度にすぎず、医療関係者向けの業界新聞への広告であること、等を勘案すれば、この程度の範囲における引用商標「メディケア」の広告で取引者・需要者間に広く知られて著名商標になっているとは到底認めることが出来ない。
(2)本件商標に係る商品と引用商標に係る商品との違いについて
本件商標に係る第10類指定商品「医療用サポーター」は、請求人が使用する引用商標に係る旧第1類「医療補助品」中の「絆創膏、救急セット、包帯、パッド類、ガーゼ類」とは商品の性質、用法、用途も全く異なるものである。
このことは特許庁商標課編『商品区分解説』によれば、旧第1類医療補助品の概念には次のものが含まれる。「(1)一般家庭でも使われる衛生用品、この中には薬事法にいう「医薬品」の一部(例えばガーゼ、脱脂綿など)も含まれる。」との記載がある。
また、旧第10類においても、『医療用の補助または矯正器具』は主として医師が処置し又は医師の指導で使用される「器具器械的なもの」に限られる。しかし、医療用の「腹帯」「脱腸帯」などは、この概念に属する。尚、専ら医師が使用するものであっても(例えば「歯科材料」「縫糸(手術用キャットガット)」等)及び主とし薬局、薬店で販売され家庭でも使用される『衛生用品』(例えば「ガーゼ」「脱脂綿」「包帯」など)はこの概念には含まれず第1類「医療補助品」に属する。旨の記載がある(特許庁商標課編『商品区分解説』乙第1号証参照)。
上記の記載から「商品区分解説」において本件商標の指定商品「医療用サポーター」は旧第10類の商品であり、請求人の引用商標の指定商品「医療補助品」中「ガーゼ」「脱脂綿」「包帯」は旧第1類の商品であり、商品区分解説で、すでに商品取扱の区別をしているから、例えこれらの商品が一部販売ルートが二元性があっても、両商品は商品の使用目的、用法、用途、生産者も異なるので、類を異にし商品の出所の混同を生じないものである。
さらに両商標は後述するごとく称呼、観念、外観が類似しない。また、引用商標は未だ著名商標となっていないから、両商標を使用しても何等、出所の混同を生じないないものであることは明白であり、現に出所の混同の事実は存在していないし、そのおそれも全くない。
(3)本件商標と引用商標との相違について
本件商標「メディケアクラブ/MEDICARECLUB」と引用商標「メディケア」の類否について検討するに、本件商標は片仮名で「メディケアクラブ」その下に英文字で「MEDICARECLUB」と同書同大に一連に片仮名と英文字とを二段に併記したものであり、各文字は外観上まとまりよく一体的に構成され、特に軽重の差はなく、構成中の「クラブ」「CLUB」の文字部分は「政治、社会、文芸、娯楽その他共通の目的によって結合した人々の団体」を意味する話として一般によく知られているところから、全体を持って特定の団体の名称を表わしたものと理解されるので、その構成が明らかに一体のものとして看取される。
そのため本件商標は、その文字部分に相応して「メディケアクラブ」の称呼のみ生じ「メディケア」単独の称呼は生じない。
審決例においても「○○○CLUB」「○○○クラブ」と後段に「CLUB」「クラブ」の文字を付した文字は共通の目的で集った人々の組織する団体を表示するものとして古くより使用されており、「CLUB」「クラブ」の文字を付すことによって特定の団体であることを認識せしめるものであり、一般にすべての構成文字が一体のものとして看取されているのが実情である。また、これと同趣旨の審決例も多数存在する。
(4)結論
以上のような次第で、本件商標の指定商品「医療用サポーター及び腹帯」と引用商標の指定商品「医療補助品」とは商品の使用目的、用法、用途、生産者も異なり、出所の混同は生じない。また引用商標「メディケア」と、本件商標「メディケアクラブ/MEDICARECLUB」は音構成の差により明確に称呼は区別できるものであり、外観、観念においても互いに相紛れるおそれがないので、類似しない。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第15号には該当しないものである。

第5 当審の判断
請求人は、本件商標の商標法第4条第1項第15号該当を理由にその登録の無効を主張している。しかして、同法条においていう商品の出所の混同を生ずるか否かの判断は、商標自体とそのほか当該他人に係る商標の著名性、その指定商品の分野における需要者一般の注意力等取引の実情を総合勘案の上、そのおそれの有無を具体的に判断すべきものと解される。
そこで、請求人の主張の当否についてみるに、本件審判における当事者双方の主張の論点は、1.請求人に係る引用商標「メディケア」の周知・著名性の当否、2.本件商標に係る商品「医療用サポーター」と引用商標に係る商品「絆創膏、救急セット、包帯、パッド類、ガーゼ類」との異同及びその関連性の有無、3.本件商標と引用商標との近似性の有無、にあり、また、その結果、4.本件商標をその指定商品に使用した場合、需要者がその出所について混同を生ずるか否かの点にある。以下、検討する。
1.請求人に係る引用商標の周知・著名性の当否について、
被請求人の主張及びその提出に係る甲各号証によれば、以下の各点を認めることができる。
(1)昭和45年9月に引用商標に係る「はっか入りマスク」を発売したのを皮切りに(甲第3号証の1,「日本経済新聞広告記事」)、同47年3月に引用商標に係る救急絆創膏を発売し(甲第3号証の2,「ドラッグトピックス(業界新聞)」)、同48年にかけて引用商標に係る清浄綿を一般用と薬系・医療器系の両ルートにより販売し(甲第3号証の3,「請求人会社月報」)、次いで、昭和59年当時には「滅菌パッド」、「粘着包帯」、「救急セット」、「フリーサイズ絆創膏」へと取り扱い品目を増やし(甲第3号証の4,「製品マニュアル」)、その後も「非防水性絆創膏」、「非防水性傷当てパッド」、「清浄綿」と市場を拡げ(昭和62年次)、さらにその後も「防水性傷当てパッド」、「防水性絆創膏」、「伸縮包帯・ネット包帯」、「ガーゼ」、「防水フィルム」、「かきむしりガード」等へと種類を拡げ(平成5年乃至同6年次)、需要指向に合わせるべく至便性かつ機能性を備えた商品の市場流通を図っていたこと(甲第4号証の1乃至同9,「北山公認会計士事務所作成資料」)。そして、請求人は、これら商品について一貫して引用商標(「メディケア」)を使用していたこと(甲各号証)。
(2)請求人に係るメディケア製品の年間売上高は、昭和60年次ですでに1億円を超え、平成2年次で約2億1千万円、同5年次で約6億1千万円というようにその売り上げを急速に伸ばしていること(甲第4号証の1,「前出公認会計士資料」)。また、平成元年当時から最近の年次に至る間、救急絆創膏を含む衛生用品(材料)の市場規模がほぼ一定していて、すでに成熟市場であることは、(業界紙)1年8月28日発行「ドラッグトピックス」(甲第5号証の14)及び1998年3月株式会社富士経済発行’98一般用医薬品データブック当該解説(甲第8号証)等により認められること。
そして、この市場状況よりして、請求人に係るメディケア製品は、各品目毎に相当程度の市場シェアを確実に維持・増進させてきたことが十分窺われること(甲第4号証2乃至同9)。特に、最近においては、「防水性絆創膏」、「ワンタッチ絆創膏」(パッド、ガーゼ及び粘着シート一体型のもの)が相当割合の市場シェアを確保していること(甲第7号証の1及び同2)。
(3)請求人に係るメディケア製品の広告・喧伝が極めて広範かつ頻繁に行われた状況は、請求人の提出に係る甲第5号証の1乃至同57により認め得るところであって、例えば、「日本医療衛生新聞」、「日本薬業新聞」、「薬業時報」、「薬事ニュース」、「ドラッグトピックス」、「薬局新聞」、「東京医薬品新報」、「DRUGmagazine」、「ストアーエイジ」、「洗剤日用品粧報」、「家庭用品新聞」等の関連業界紙(誌)を始めとして、「奥様新聞」、「主婦と生活」、「TVガイド(関西版)」、「リビング北摂」、「山陽新聞」等の生活関連一般紙(誌)ないしは地方紙(誌)等において屡々広告掲載され、或いは、関西地区を中心とした少年野球、少年サッカー、バレーボール、学生剣道等各種スポーツイベントに係るパンフレットに頻繁に広告掲載されていた状況よりして、その一端を窺うことができる。また、メディケア製品の特長、効用等はその商品説明書、仕様書その他の当該製品のチラシ、包装袋(箱)又は請求人に係る総合カタログ等により、その都度常に需要者向けに詳細な説明が講じられてきたこと、そして、これら頒布に係る印刷物も相当量に上っていたであろうことを十分推認し得ること(資料A乃至同I)。
(4)請求人に係るメディケア製品の取扱卸売店は、平成5年5月現在において、北は北海道から南は沖縄に亘る全国各地の都市部を中心に954店を数えていたこと(甲第6号証の1)。また、メディケア製品はこれら卸売店を経由して全国各地の小売業者により取り扱われていて、大手スーパーマッケット、ドラッグストアチエーン等の大手量販店だけをみても全国で377店あり、それら傘下の店舗数を合算すれば、1万7千店以上を数えられること(甲第6号証の2)。
(5)請求人に係るメディケア製品は、例えば、甲第3号証の3(請求人会社月報)にみられる如く、一般用と薬系・医療器系の両ルートにより販売されてきたものであって、この点は前記広告・喧伝活動の全体を通じて容易に認め得るところであること。そして、特に、各地の小売店とタイアップして実施したサンプリング活動等により次第に一般家庭ないしは一般消費者への需要を増大させてきた状況が窺われること(甲第5号証の30及び同51)。
以上の(1)乃至(5)の各点よりして、請求人がその取扱に係る衛生マスク、清浄綿、絆創膏、救急セット(粘着包帯と滅菌パッドをセット化したもの)、パッド類、ガーゼ類等のいわゆる衛生用品(材料)について一貫して使用してきた引用商標(「メディケア」)は、本件商標の出願時である平成5年5月当時すでに取引者・需要者間において広く認識せられたいわゆる周知・著名な商標と認め得るものであって、その状況は現在もなお同様と認められる。
被請求人は、この点に関し、請求人による引用商標の使用を示すものは同業者間の業界新聞の広告がほとんどで一般向けの広告は2〜3件程度に過ぎず、また、その広告も平成元年から同3年頃のものが主で継続して一般大衆に広告されているものでないから、この程度の範囲の広告活動で取引者・需要者に広く知られた著名商標とはいえない旨述べているが、前記認定の製品販売高、市場占有率、広告・喧伝活動、全国各地に保有する流通・販売網その他の点よりして、引用商標は、本件商標の登録出願時において、国内各地の薬局・薬店、医療関連事業者・同施設、全国各地の卸売店、同小売店及び国内の不特定多数の一般需要者間において広く認識せられた周知・著名商標というべきものであるから、この実情を無視して述べる被請求人の主張は採用の限りでない。また、被請求人の述べる引用商標の存在を知らなかった事情は前記認定及び後述認定判断に影響を及ぼすものでない。その他、この認定を覆すに足りる証拠はない。
2.本件商標に係る商品と引用商標に係る商品との異同及びその関連性について
請求人提出に係る甲第1号証の1(製品パンフレット)によれば、被請求人は、本件商標を「医療用サポーター」について使用していることが認められる。
ところで、「医療用サポーター」は、一般に医療用の補助器具及び矯正器具の概念に包括される商品であって、主として医師が処置し又は医師の指導のもと使用される商品と解される。しかして、この種医療用品は、医療機関においてのみでなく、市中の薬局・薬店においても一般向け、家庭向けに取り扱われ・販売される商品であって、ガーゼ、脱脂綿、包帯等のいわゆる衛生用品とはその販売場所を共通にする場合が多い商品といえるものである。
因みに、前記被請求人商品の仕様説明等をみるに、該サポーターはスポーツマン向けに、又は一般の腰・関節の冷え予防に、或いは湿布薬のサポーターとして、さらには高齢者への贈り物として一般需要者の利用に供し得るものと認められるから、該商品は病院・医院等の医療機関向けに供給されるほか、一般の薬局・薬店においても取り扱われ、一般需要者向けに販売される商品とみて差し支えなく、この点、当事者間に争いはない。
そして、請求人に係る衛生用品、すなわち、絆創膏、救急セット、包帯、パッド類、ガーゼ類等の商品が一般の薬局・薬店において取り扱われ、販売される商品であることは、前記認定のとおりである。
そうすると、被請求人に係る「医療用サポーター」と請求人に係る衛生用品とは、具体的にその販売場所、需要者の範囲を同じくする点で両商品は取引事情を共通にするものといわなければならない。
被請求人は、この点について、「医療用サポーター」と「絆創膏、救急セット、包帯、パッド類、ガーゼ類」とは、商品の性質、用法、用途、生産者を異にする商品である旨述べているが、たとえ両商品がそれ自体は別個のものであるとしても、前記取引事情における関連性を否定し得ないから、該事情は混同惹起判断の有力な拠りどころというべく、両商品の非類似性に固執する被請求人の主張は採用の限りでない。その他、この認定を覆すに足りる証拠はない。
3.本件商標と引用商標との近似性の有無
本件商標は、その構成後掲(A)に示すとおり、「メディケアクラブ」、「MEDICARECLUB」の各文字よりなるところ、構成中、「クラブ」、「CLUB」の各文字部分は、「趣味・娯楽・研究など共通の目的をもつ人々の継続的な集まり、また、そのための集会所」の意味合いで広く一般に親しまれている平易な英語又は外来語であって、老若男女を問わず社会一般に「・・・クラブ(CLUB)」の如く任意のクラブ名称を表示するため、当該目的とする事物・事柄に「クラブ」又は「CLUB」の語を付して表示し又は呼称することは極めて一般的かつ日常的というのが実情である。
そして、本件商標に接する取引者、需要者は、全体として当該クラブの名称として認識する場合のほか、前記事情よりして、「クラブ」(CLUB)の語が任意的・慣用的であることから、それ自体の印象力は前半の「メディケア」、「MEDICARE」の各文字部分から受ける印象に比して弱いといえるものであって、かかる場合、「クラブ」、「CLUB」の各語は、前半の「メディケア」、「MEDICARE」を主とすれば、従たるものとして認識される結果、これら各語の結合の度合いは必ずしも常に強固なものでなく、むしろ、主従・軽重の差を伴って看取されるとみるのが相当である。
これに対して、引用商標は、その構成後掲(B)に示すとおり、「メディケア」の片仮名文字よりなるものであって、本件商標にあって、主要部と目される「メディケア」、「MEDICARE」の各文字部分とその文字綴り及び派生称呼を同じくするものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、商標自体の比較において近似性を有することが明らかであるから、この点は混同惹起判定の有力な拠りどころというべく、両商標の非類似性を根拠に商標法第4条第1項第15号の非該当を述べる被請求人の主張は採用の限りでない。その他、この認定を覆すに足りる証拠はない。
4.結語
以上の1.乃至3.に認定したとおり、本件商標をその指定商品について使用した場合、これに接する取引者・需要者は、請求人又は同人と事業上何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあるとみるのが相当である。
したがって、本件商標の登録は商標法第4条第1項第15号に違反してされたものといわざるを得ないから、同法第46条第1項により、その登録は無効とすべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (A)本件商標



(B)引用商標


審理終結日 2000-06-20 
結審通知日 2000-06-30 
審決日 2000-07-11 
出願番号 商願平5-50648 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (010)
最終処分 成立  
前審関与審査官 寺島 義則高山 勝治 
特許庁審判長 原 隆
特許庁審判官 宮川 久成
野口美代子
登録日 1997-11-14 
登録番号 商標登録第3358210号(T3358210) 
商標の称呼 メディケアクラブ 
代理人 青山 葆 
代理人 石田 定次 
代理人 石田 俊男 
代理人 大西 育子 
代理人 樋口 豊治 

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