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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 027
管理番号 1025393 
審判番号 審判1999-35414 
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-03-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-08-06 
確定日 2000-09-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第4121079号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4121079号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4121079号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおり「LEONARD FILS」の文字を横書きしてなり、第27類「敷き物,壁掛け(織物製のものを除く。),畳類,洗い場用マット,人工芝,体操用マット,プラスチック製の壁板・タイル及び床板,リノリューム製の壁板・タイル及び床板,壁紙」を指定商品として平成8年4月12日に登録出願され、同10年3月6日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
1 請求の趣旨
請求人は、「本件商標の登録は無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第107号証を提出している。
2 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第11号、同第15号、同第19号に該当し、同法第46条第1項第1号により無効とすべきものである。
(1)商標法第4条第1項第15号該当性について
(ア)請求人レオナールファッションは、世界で最も美しいプリントとして世界中の女性から愛され続けているブランド「LEONARD」-「花のレオナール」のイメージで受けとめられている-のファッションメーカーであるが、平成8年(1996年)4月12日の本件商標の出願当時、請求人の製造、販売、ライセンスに係る商品についての、請求人の略称である「LEONARD」及び請求人の商標「LEONARD」(以下「引用商標」という。)は、日本を含め世界的に現在においても著名である。
すなわち、請求人の商品の展開は、日本においては、昭和44年(1969年)より、三共生興株式会社をディストリビューター及びライセンシーとして展開され、三共生興株式会社は積極的に広告、宣伝等に務め、その取扱商品である被服、かばん類、袋物、傘等の三共生興株式会社による販売高は、本件商標の出願前、出願の年及びその後は、卸売価格ベースで、以下のとおり30億円台から60億円台であり(小売価格のベースではもっと大きくなる)、非常に大きなものである。
平成元年(1989年)1月1日〜12月31日
3,338,456,977円
平成2年(1990年)1月1日〜12月31日
4,254,444,471円
平成3年(1991年)1月1日〜12月31日
4,346,245,898円
平成4年(1992年)1月1日〜12月31日
4,203,807,121円
平成5年(1993年)1月1日〜12月31日
3,288,960,091円
平成6年(1994年)1月1日〜12月31日
3,807,365,871円
平成7年(1995年)1月1日〜12月31日
4,161,288,041円
平成8年(I996年)1月1日〜12月31日
4,746,710,979円
平成9年(1997年)1月1日〜12月31日
5,976,380,279円
平成10年(1998年)1月1日〜12月31日
6,305,051,269円
また、引用商標は、世界の一流品を掲載した雑誌にも必ず取り上げられ、新聞等で広く報じられ、また、「家庭画報」、「ミセス」、「ヴァンサンカン」、「クラッシー」、「ハイファッション」、「ル・クール」等のファッション雑誌等に紹介掲載広告されている。(甲第1号証ないし同第98号証。)
このように、本件商標の出願時である平成8年4月以前から今日に至る迄、引用商標は、衣類を中心として、かばん類、袋物、傘、布地などのブランドとして、また、請求人の略称として、日本において著名である。
(イ) 本件商標は、欧文字「LEONARD FILS」を横一列に配してなり、第27類の敷き物、壁掛け(織物製のものを除く。)、洗い場用マット等の前記指定商品の区分記載の商品を指定商品とする。
(ウ)本件商標は、その構成に照らし、欧文字「LEONARD」及び「FILS」よりなるところ、「FILS」は、本件商標の指定商品の需要者一般になじみのある語でなく、何らの観念も生じない。したがって、「LEONARD」と「FILS」との結びつきには何らの必然性もないから、一連一体にのみ称呼すべき何らの必然性も無い。よって、本件商標において、「LEONARD」及び「FILS」はそれぞれ要部である。
(エ)請求人の著名商標「LEONARD」と本件商標の要部「LEONARD」とを対比すると、両者は、外観において酷似し、称呼において同一であり、観念において同一である。
したがって、本件商標は、請求人の著名商標略称「LEONARD」と類似する。
(オ)敷き物等を含む本件商標の指定商品と、請求人の製造、販売、ライセンスに係る被服、かばん類、袋物、傘等とは、密接に関連する商標である。すなわち、今日、ファッションビジネスは発展し、一つのブランドが例えば婦人服について周知になると、それに関連する商品(服地用織物、靴などの履物、ハンドバッグ等のバッグ類)等についてライセンスをし、同一のブランドの下に婦人服、織物、靴、バッグ類、敷き物等が製造され販売されることが顕著である(甲第99号証)。そうすると、請求人の製造、販売、ライセンスにかかる婦人服等と本件商標の指定商品である敷き物等とは、密接な関連を有する商品である。
(カ)さらに、本件商標を付した商品は、請求人の著名な引用商標を付した商品のラインの別ラインの請求人の製造、販売、ライセンスに係る商品であると誤認させるものである。
すなわち、「LEONARD FILS」と「LEONARD」とを対比すると、両者は「LEONARD」において同一である。加えて、ファッション界においては、あるブランドが著名になると、これと似た標章を当該ブランドの別ラインとして創設することがよく行われる。例えば、「ジョルジオ・アルマー二」と「エンポリオ・アルマー二」、「ソニア・リキエル」と「アンスクリプション.リキエル」、「ミッソーニ」と「ミッソーニ・スポーツ」、「クロエ」と「ミス・クロエ」、「Y’s」と「Y’s bis」、などがある(甲第100号証)。
したがって、本件商標「LEONARDO FILS」は、請求人の著名ブランド「LEONARD」の別ラインと誤認されるものである。
(キ)以上を要約すれば、請求人は、著名なフランスのファッションハウスであり、引用商標は、本件商標の出願時はもとより、今日においても、我国を含む世界の国々において、被服、かばん類、袋物、傘などについて、請求人の著名な商標、略称となっている。そして、本件商標の指定商品である敷き物等は、請求人の製造、販売、ライセンスに係る著名な引用商標を付した被服、かばん類、袋物、傘等と密接に関連する商品であることから、本件商標「LEONARD FILS」は請求人の著名な引用商標の別ラインと誤認されるものであり、請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
(ク)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当することは、「JOHN LEONARD」、「LEONARDO VALENTI」及び「LEONARD PELLINACCI」が同法第4条第1項第15号に該当すると判断した異議決定(甲第102、103、104号証)に照らしても、明白である。
(2)商標法第4条第1項第19号該当性について
本件商標は、引用商標の著名性に只乗りし、著名ブランドのコンセプトをも盗用して、需要者に引用商標のサブブランドと誤認させ、本件商標権者を請求人のライセンシーであるが如く需要者に誤認させて、不当に利益を得、また、請求人やライセンシーであり、輸入元である三共生興株式会社に損害を加える目的のもとに出願登録されたものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標登録は、被請求人において、引用商標の著名性に只乗りして不正の利益を得、請求人や三共生興株式会社に損害を加える目的により出願登録されたものであるから、被請求人が、本件商標を使用することは、商標法の維持発展せんとする健全な商標秩序を害し、国際信義に反するものであるから、本件商標は、公序良俗に反し、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第11号該当性について
(ア)請求人所有に係る登録第1476683号商標(以下「引用A商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、第20類「家具、畳類、建具、屋内装置品(書画及び彫刻を除く)屋外装置品(他の類に属するものを除く)記念カツプ類、葬祭用具」を指定商品として、昭和52年12月27日登録出願、同56年8月31日設定登録され、その後平成3年12月24日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。
同じく登録第3187635号商標(以下「引用B商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、第27類「敷き物,壁掛け(織物製のものを除く。),洗い場用マット,人工芝,体操用マット,プラスチック製の壁板・タイル及び床板,リノリュ―ム製の壁板・タイル及び床板,壁紙」を指定商品として、平成5年7月5日登録出願、同8年8月30日設定登録されたものである。
(イ)本件商標の指定商品は、上記引用各商標の指定商品と類似する。
(ウ)引用A商標は、「LEONARD」と「FASHION」を横一列に配してなるところ、「LEONARD」は請求人の略称として、また、請求人の商標として著名であるから、引用A商標において「LEONARD」は要部であり、引用A商標からは「レオナール」の称呼及び「請求人、請求人の商品」の観念が生ずる。
また、引用B商標は、「LE MAISON DE LEONARD」からなるが、「MAISON」はフランス語で「家、店、会社」などを意味する語であるから、「LE MAISON DE LEONARD」が「LEONARDの店」を意味する熟語であることは、我国におけるフランス語の普及度合、とりわけ、ファッション関連の業界においては生産者、流通業者、消費者及び広告、テレビ、雑誌等の媒体のいずれにおいてもフランス語の言葉を使用する傾向が顕著であることに鑑みれば、一般に理解されるところである。
そして、「LEONARDの店」という観念を生ずる熟語において「LEONARD」が要部であることは明らかである。したがって、引用B商標からは、要部「LEONARD」に対応して、「レオナール」の称呼及び「請求人、請求人の商品」の観念が生ずる。
(エ)本件商標は、その構成に照らし、欧文字「LEONARD」及び欧文字「FILS」のそれぞれを要部とする。
本件商標中、「FILS」は、本件商標の指定商品の需要者一般になじみのある語でなく、何らの観念も生じない。したがって、「LEONARD」と「FILS」との結びつきには何らの必然性もないから、「LEONARD」と「FILS」とを一連一体にのみ称呼すべき何らの必然性も無い。よって、本件商標において、「LEONARD」及び「FILS」はそれぞれ要部である。
(オ)本件商標は引用A商標及び引用B商標と外観、称呼及び観念において類似し、指定商品も類似するから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、答弁をしない。

第4 当審の判断
1 「LEONARD」及び「レオナール」の商標の周知性について
甲第10号証、同第12号証、同第84号証によれば、以下の事実が認められる。
1943年に実業家のジャック・レオナールが、パリで婦人服ブランド「レオナール」を創業。58年にプリント技法を学んだダニエル・トリビュアールをチーフデザイナー兼社長として招いた。
60年に独自のプリント技術を開発、69年に発表したシルク生地への花の多色プリントが評判となり「花のレオナール」の声価を高める。その後、香水、スカーフ、革製品、時計、陶磁器、家具とアイテムを広げ、92年にはメンズに進出しトータルブランドの体裁を整えた。日本へは69年から三共生興株式会社が輸入、84年にライセンス生産を始めた。
そして、甲第1号証、同第8号証ないし同第13号証によれば、「LEONARD」、「レオナール」の商標については、わが国において、「婦人服」を始め、「タオル、靴、スリッパ、傘、紳士服、スカーフ、時計」について使用され、周知なものとなっており、その状態は、本件商標の出願の時から現在まで継続しているものと認められる。
2 商品の出所の混同のおそれについて
(1)本件商標は、別掲のとおり「LEONARD FILS」の文字よりなるところ、「LEONARD」及び「FILS」の2語が結合して、常に不可分一体の親しまれた意味を形成する事情は認められないものである。
(2)甲第35号証、同第36号証、同第38号証、同第39号証、同第42号証、同第49号証ないし同第53号証によれば、三共生興株式会社は、前記商品について「レオナール」の周知商標を使用してきたほか、インポート(輸入)製品の商標として「レオナールパリ」を、ライセンス製品の商標として「レオナール・ファッション」(または「レオナールファッション」)を、カジュアル製品の商標として「レオナール・スポーツ」(または「レオナールスポーツ」)を、メンズ製品の商標として「レオナール・オム」(または「レオナールオム」)を使用してきたことが認められる。
さらに、甲第100号証によれば、1990年頃には、「ジョルジョ・アルマーニ」の商標の若者向けブランドとして「エンポリオ・アルマーニ」(または「EMPORIO ARMANI」)の商標が「婦人服」等に使用され、同様に「ソニア・リキエル」の商標の若者向けブランドとして「アンスクリプション・リキエル」(または「INSCRIPTION RYKIEL」)が「スカーフ、スニーカー、バッグ、ブルゾン」等に使用され、「ミッソーニ」の商標は「ミッソーニ・スポーツ」(または「MISSONI SPORT」)として「セーター、パンツ、シャツ」等に、「ジャンフランコ・フェレ」の商標は「オークス by フェレ」(または「OAKS by FERRE」)として「ジャケット、ブルゾン」等に使用されていることが認められる。
以上によれば、周知商標は、「ブリッジブランド」(「デフュージョンブランド」ともいう。)と称して、周知商標に他の文字を付加して、あるいは周知商標の一部に他の文字を付加するなどして種々の商品に使用されている実例が認められる。
(3)そして、前記2(1)(2)を総合すれば、本件商標は、これをその指定商品について使用した場合、需要者がその語頭における「LEONARD」の文字部分より、請求人が使用し周知となっている引用商標を想起して、その商品が請求人もしくは同人と何らかの関係を有するものの業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものと判断することができる。

第5 結論
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、その余の請求理由について判断するまでもなく、商標法第46条第1項第1号の規定によりその登録は無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 本件商標

引用A商標

引用B商標

審理終結日 2000-06-15 
結審通知日 2000-06-27 
審決日 2000-07-10 
出願番号 商願平8-39863 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (027)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田中 亨子 
特許庁審判長 佐藤 敏樹
特許庁審判官 上村 勉
村上 照美
登録日 1998-03-06 
登録番号 商標登録第4121079号(T4121079) 
商標の称呼 レオナードフィルス、レオナルドフィルス 
代理人 佐藤 睦美 
代理人 佐藤 雅巳 

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