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審決分類 審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効としない 009
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 009
管理番号 1025187 
審判番号 審判1998-35168 
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-03-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-04-16 
確定日 2000-08-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第3366100号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第3366100号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成4年10月20日登録出願、「クイズ&心理ゲーム」及び「クイズココロジー」の文字を二段に横書きしてなり、第9類「測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定機,電線及びケーブル,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,電気通信機械器具,録音済み磁気カードその他のレコード,メトロノーム,電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープ・CD-ROMその他の電子応用機械器具及びその部品,業務用ビデオゲーム機・コイン操作式自動娯楽機械その他の遊園地用機械器具,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気式ワックス磨き機,電気掃除機,電気ブザー,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録音済みビデオディスク及びビデオテープ,家庭用テレビゲーム器用のプログラムソフトを記憶させた磁気ディスク,同CD-ROMその他の家庭用テレビゲームおもちゃ」を指定商品として、同9年12月12日に設定の登録がされたものである。

2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録はこれを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第24号証を提出した。
(1)本件商標の要素について
本件商標は、「クイズ&心理ゲーム」と「クイズココロジー」との二段表記によりなるが、上段の「クイズ&心理ゲーム」はその下の「クイズココロジー」を説明することばである。すなわち、本件商標は「クイズココロジー」なる「クイズ&心理ゲーム」を全体として意味していると看取される。
特に、指定商品との関係でみると、本件商標はゲームセンターなどの業務用や家庭用のテレビゲーム機、ビデオゲーム機、そしてこれらのゲームソフトに使用されることは明らかである。そうすると、本件商標中の「クイズ&心理ゲーム」の語は、ゲーム機やゲームソフトのジャンルを表示するに過ぎない語としてのみ理解され、自他商品の識別に機能することができない。
よって、「クイズココロジー」の部分の識別性が問題となるが、「クイズ」ということばもしばしば「〜クイズ」あるいは「クイズ〜」としてありふれて用いられることから(例えば、「クイズl00人に聞きました」や「クイズ日本人の質問」など)、本件商標に接する者は、「クイズココロジー」の「クイズ」が「クイズ&心理ゲーム」と同様、ゲーム機やゲームソフトの中身のジャンルを表示するに過ぎないと理解するに留まり、その結果、後半の「ココロジー」の部分により強い印象を受けるものである。
しかも、この「ココロジー」ということばは、商標中のそのほかの「クイズ」「心理ゲーム」といった既成のことばの中に唯一存在する造語であり、ますます印象深いことばである。本件商標は表記の仕方に特に工夫がみられるものでもなく、普通書体で「クイズ&心理ゲーム」「クイズココロジー」と書されているため、このような冗長な商標のうち印象に残るのは殆ど「ココロジー」の響きのみであるといえる。
よって、本件商標においては「ココロジー」ということばの存在感は非常に大きく、この部分が本件商標の識別性における要素をなすものであり、また接する者に最も強く印象を与える部分である。
(2)テレビ番組「それいけ!!ココロジー」について
この「ココロジー」ということばは、請求人であるアイヴイエステレビ制作株式会社(以下、「IVSテレビ」という。)の制作によるテレビ番組「それいけ!!ココロジー」に由来するものである。
「ココロジー」とは、「心(ココロ)」に「心理学」を意味する「サイコロジー」の語を結合させて案出されたことばであり、テレビ番組名ではIVSテレビがはじめて「それいけ!!ココロジー」として採用した。
この番組は平成3年(1991年)4月より平成4年(1992年)3月までの一年間にわたり、読売テレビ(YTV)をキー局とした全国ネットワークによりテレビ放送され、今でも特別版として、最近では平成10年3月19日に第3弾が放送されている(甲第1号証)。因みに、番組案内のキャッチコピーには「所さんのココロジー」として、「ココロジー」の語が強調されている。この番組の内容は、クイズに心理ゲームをとりいれた従来にはないユニークなもので、あるシチュエーションがクイズとして設定され、その設問に対する回答を臨床心理学の臨床データにより分析することで各回答者の深層心理を探り、心理ゲームとして楽しむというものである。
設問は膨大な資料により作成された本格的なもので、テーマも恋愛、お金など興味深いものであったこと、さらに人気タレントの回答と分析結果の意外性などにより「それいけ!!ココロジー」は、特に若い女性の間で人気番組となった。
甲第2号証及び甲第3号証は番組の放送開始を伝えるよみうりテレビの広告で、毎日新聞及び雑誌「ザ・テレビジョン」に掲載されたものである。甲第4号証ないし甲第6号証は「週刊読売」「DIME」「SAY」などの雑誌の抜粋で、番組の内容が紙上で詳しく再現されている。特に甲第4号証「週刊読売」では、テレビ番組「それいけ!!ココロジー」が心理ゲームのブームに火を付けたこと、また同番組をもとに作られた単行本「それいけ!!ココロジー」(青春出版社)がこのブームに拍車をかけたことが紹介されている。
(3)「それいけ!!ココロジー」の著名性について
テレビ番組「それいけ!!ココロジー」は、最高視聴率で16.2%、平均視聴率では11.7%を記録し、番組終了まで高い人気を誇っていたことが分かる。その後の特別版の放送もこの人気を裏付ける。
この人気はさらに活字媒体として活用することが検討され、平成3年12月15日に青春出版社より新書本として「それいけ!!ココロジー」第1巻が刊行された(甲第9号証)。第1巻は発売後わずか3ヶ月で98万部を記録するベストセラーになり(甲第4号証)、平成4年2月13日までの3ヶ月間に143刷も版が重ねられている(甲第9号証)。新書本版は第3巻までで200万部を超えるミリオンセラーとなっており(甲第10号証)、平成7年発行の文庫判(甲第11号証)の合計も31.7万部に及んでいる(甲第10号証)。書店には現在も「それいけ!!ココロジー」が並べられており、この画期的かつ普遍的な新心理ゲームの人気の高さが分かる。
この他にも、平成4年3月21日にはバップビデオによりビデオ化がなされ(甲第13号証)、平成5年4月には全国のゲームセンターにセガ・エンターブライゼズ開発によるビデオゲーム機が設置され(甲第14・15号証)、さらに、平成9年には家庭用テレビゲームソフトが発売されている(甲第16号証)。
特に、ビデオゲームについては、セガ・エンタープライゼズにより設置開始以来、1995(平成7)年4月当時ですでに2114台が製造、販売されている(甲第17号証)。
(4)出所の混同性について
請求人の制作による心理ゲームの正式名称は「それいけ!!ココロジー」だが、「ココロジー」の語は請求人が、はじめてテレビ番組に使用したものであり、これを扱ったテレビ、書籍、ビデオ、ゲームで「ココロジー」の語を用いたものも請求人によるもの以外にはない。また、「ココロジー」は創作された語であるため、その耳新しさも手伝って、単に「ココロジー」と指称した場合にも、需用者は請求人に係る心理ゲームをまず第一に想起する。
すなわち、請求人が広め、全体として著名となっている「それいけ!!ココロジー」の表示とともに、その略称である「ココロジー」の表示もまた、請求人に係るものとして我が国で著名となっているものである。
このことは、1993年版「現代用語の基礎知識」(甲第18号証)に単に「ココロジー」と指称されていること、また「週刊読売」(甲第4号証)、「DIME」(甲第5号証)に「ココロジー」と指称されていることからも容易に理解できる。また、前述のように甲第1号証の番組案内でも単に「ココロジー」の部分がキャッチコピーとして使用されている。
一方、本件商標は前述のように、その要素たる部分は「ココロジー」であり、これが需用者の印象に最も強く残る部分である。そして、本件商標の指定商品には「業務用ビデオゲーム,家庭用ゲームソフト」をはじめ、「それいけ!!ココロジー」の著作権を基に製造販売することができる様々な商品が含まれている。したがって、本件商標が使用された商品は、あたかも請求人とのライセンス契約によって製造販売されたものであるかのように、その出所につき混同を生じること必至である。
(5)品質の誤認について
本件商標は「クイズ」、「心理ゲーム」の語を含むものであり、これらの内容を有する商品以外の商品について使用された場合には、需要者において商品の品質(内容)の誤認を生じさせる。
需用者は本件商標が使用されたゲーム機、ゲームソフトを素直に「クイズ」、「心理ゲーム」と思って接するのであり、これが前述した「それいけ!!ココロジー」のようなクイズ的、心理分析的な内容であれば問題はないが、クイズ的要素、心理分析的要素のない、例えば「インベーダーゲーム」のようなシューティングゲームや、「電車でGO!」のような乗り物ゲームのような内容であった場合、需用者の期待を裏切るものとなり、品質の誤認を生じさせるのである。
(6)答弁に対する弁駁
これまで述べたところにより「それいけ!!ココロジー」及び「ココロジ」の著名性は十分に明らかにされていると思われるが、ここでさらに補強資料として甲第19号証ないし甲第22号証を提出する。まず、甲第19号証は出版業界について書かれた本であるが、この中では各年のベストセラーが紹介されており、平成4年(1992年)には「それいけココロジー」がベストセラーとなっていることが分かる。甲第20号証は出版業の大手トーハンによる平成4年(1992年)のベストセラーランキングであるが、ノンフィクション部門及び総合において「それいけ×ココロジー」が1位となっており、いかに同書が親しまれ人気を博したかが示されている。具体的な数字はすでに述べたが、甲第21号証の出版社の中吊り広告にあるように、同書は3冊目までで合わせて250万部という驚くべき売り上げを誇っている。また、最近ではデラックス・バージョンとして文庫版が発行されている(甲第22号証)。
(7)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条1項15号及び同第16号に違反し、登録されたものである。

3 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第22号証を提出した。
(1)「ココロジー」の著名性について
請求人は、「それいけ!!ココロジー」が、単に「ココロジー」と略称され、しかも著名であると主張し、その証拠として、甲第4号証、甲第5号証、甲第16号証および甲第18号証を挙げている。
甲第4号証(週刊読売の記事)および甲第5号証(DIMEの記事)は一種の広告記事であり、いずれも頭書に「それいけ!!ココロジー」を明記したTV番組や雑誌の紹介記事中において、以後の略称として常套的に用いられているものにすぎない。
また、甲第1号証の「所さんのココロジー」における「ココロジー」の使用法も上述と同様の使用例である。
次に甲第16号証につしいては、その新聞名、日付について証明がないが、その点を措いて検討しても、一種の広告記事であり、頭書に「それいけ×ココロジー」を明記したTVゲームの紹介記事中において、以後の略称として常套的に用いられているものにすぎない。
更に、甲第18号証(現代用語の基礎知識 1993年版)では「カルトとココロジー」の項目において、「力ルトQ」という番組を「力ルト」と略称し、「それいけ!!ココロジー」を「ココロジー」と略称したもので、説明中の頭書にいずれも「カルトQ」、と「それいけ!!ココロジー」を明記し、それ後の略称として常套的に「カルト」と「ココロジー」が用いられているものにすぎない。このように、請求人の提出した証拠はいずれも、「それいけ!!ココロジー」が明記されており、これを受ける形での略称として常套的に「ココロジー」として使用されたものばかりである。文章中に「ココロジー」だけが使用されていて、それが「それいけ!!ココロジー」の略称として使用されていた例は皆無である。
上記のような証拠だけでは「ココロジー」が著名であるとの客観的な立証にはならない。
なお、請求人は、紹介記事やTV視聴率、書籍の売り上げから「ココロジー」という語が浸透していると主張するが、請求人の提出した証拠からは、略称された「ココロジー」が周知・著名であることは証明されていない。
請求人の提出した証拠は、○と□の図形の中に「そ」「れ」「い」「け」「×」「コ」「コ」「口」「ジ」「ー」の文字が1語ずつ組み合わされた一体不可分の特徴のある形態や「それいけ!!ココロジー」あるいは「それいけ×ココロジー」とした一連の語に限られるのである。
(2)出所の混同性について
請求人は、前述のように「ココロジー」の表示も請求人に係るものとして我が国で著名となっているので出所について混同を生じると主張しているが、「ココロジー」は第三者によって平成4年以降に商標登録出願され、登録や登録査定となっている。
これらの審査例は、「ココロジー」が請求人の業務にかかる商品を表示するものとして広く認識されているものではなく、また需要者間に出所の混同を生じさせる虞れのあるものでもない、とする被請求人の主張を裏付けている。
(3)品質の誤認について
請求人は、本件商標が「クイズ」、「心理ゲーム」の語を含むものであるから、これらの内容を有する商品以外の商品について使用された場合は品質誤認を生じると主張している。しかし、「クイズ」、「心理ゲーム」は商品の品質(内容)を具体的、かつ現実的に表示するものではない。「クイズ」「ゲーム」を商標の構成中に有する商標の過去の審査例も上記主張を裏付けるものであって、「クイズ」や「心理ゲーム」を商標構成中に有していても品質誤認を生ずることはない。
(4)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第16号のいずれにも該当するものではない。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第15号について
請求人の提出した甲各号証によれば、「それいけ!!ココロジー」とするテレビ番組が、クイズに心理ゲームを取り入れたことをその内容とする人気番組であって、IVSテレビにより制作され、読売テレビ(YTV)をキー局とした全国ネットワークによりテレビ放送された人気番組であったこと、また、同番組をもとに作られた単行本「それいけ!!ココロジー」(青春出版社)が、ミリオンセラーとなったこと、さらに、ビデオ化され、或いはビデオゲーム機及び家庭用テレビゲームソフトが発売されていることが認められる。
しかしながら、これらテレビ番組名、書籍の題号は、いずれも単にテレビ番組及び書籍の内容を示すものとして使用されているものであるから、商品又は役務を表す出所表示として機能しているものとは認め難いものである。
また、甲各号証からは、「ココロジー」の文字単独で商品の識別標識として使用され、本件商標の登録出願時すでに、著名性を得ていたものとは認められず、「それいけ!!ココロジー」の構成全体をもってテレビ番組名又は書籍の題号として理解されているものといわざるを得ない。
そのほか、本件商標の構成において、他人取扱いの商品と出所の混同を生じさせる事由を何ら見出せないから、被請求人が本件商標をその指定商品に使用しても、請求人もしくは同人と何らかの関係がある者の取扱いに係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというのが相当である。
(2)商標法第4条第1項第16号について
本件商標の構成中の「クイズ」及び「心理ゲーム」の文字(語)が既成の語であるとしても、これらの文字が附された商品、とりわけ「業務用ビデオゲーム機・家庭用テレビゲーム器用のプログラムソフトを記憶させた磁気ディスク,同CD-ROMその他の家庭用テレビゲームおもちゃ」に接する需要者は、「クイズ」又は「心理ゲーム」の意味合いを漠然と理解して接するというよりは、むしろゲーム内容・機能等を考慮した上でこれに当たり、或いはゲームに興じるというのが相当である。
してみれば、本件商標をその指定商品について使用しても、これら文字から直ちに商品の内容・機能を具体的に表示するものとはいえず、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものとはいえない。
(3)結語
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第16号に該当するものとは認められないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
審理終結日 2000-06-06 
結審通知日 2000-06-16 
審決日 2000-07-04 
出願番号 商願平4-303050 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (009)
T 1 11・ 272- Y (009)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山内 周二寺島 義則 
特許庁審判長 小松 裕
特許庁審判官 芦葉 松美
高野 義三
登録日 1997-12-12 
登録番号 商標登録第3366100号(T3366100) 
商標の称呼 クイズアンドシンリゲーム、クイズココロジー 
代理人 小谷 武 
代理人 西 良久 

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