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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 101
管理番号 1015522 
審判番号 審判1998-30799 
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2000-11-24 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 1998-08-12 
確定日 2000-04-26 
事件の表示 上記当事者間の登録第2608562号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第2608562号商標の指定商品「薬剤」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第2608562号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成3年3月4日に登録出願され、「SKK」の欧文字を横書きしてなり、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)、薬剤、医療補助品」を指定商品として、平成5年12月24日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品中「薬剤」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べている。
(1)本件商標は、指定商品中の「薬剤」について継続して3年以上、日本国内において、商標権者、専用使用権者または通常使用権者のいずれも使用していないものであり、その不使用状態は現在も存在している。また、本件商標を使用していないことについて正当な理由もないものと思われる。したがって、本件商標の登録は商標法第50条第1項の規定により取消を免れないものである。
(2) 答弁に対する弁駁
請求人は、被請求人の提出にかかる各号証中、次の三点について争うものである。
(イ)「カビ除去剤」が「殺菌剤」であるとの主張について
被請求人は、答弁書において「カビ除去剤」が薬剤中の「殺菌剤」に属すると主張する。しかしながら、「カビ除去剤」は薬剤中の「殺菌剤」の範疇には属しないものである。即ち、「殺菌剤」はあくまで菌を殺す薬剤であるに対し、「カビ除去剤」は「カビ」を取り除くためのものであって、以下述べるように「殺菌剤」の範疇に属さないものである。
平成5年11月19日の厚生省薬務局監視指導課の実務連絡(甲第2号証)によれば、殺菌・消毒剤の件について、これが医薬品に該当する場合の中で公衆衛生のために供されるものとして、例えば「飲料水の殺菌」「プール水の殺菌」等のごときものを挙げている。更に、医薬品に該当しない場合として、「家庭の床・手すり・家具」等に使用されるも抗菌・除菌効果のみを標榜するもの(なお、殺菌・消毒の効果を標榜しないよう指導すること)との記載がある。そうすれば、被請求人の主張する商品は乙第14号証によれば、微生物例えば「カビ・藻」等に汚染された住居、工場、ホ一ル、病院等の建物を殺菌する商品であると述べており、これは明らかに「カビ除去剤」が薬剤ではないことを明確にしているものである。なお、因みに薬事法上の「医薬品」と商標法上の「薬剤」とはほほ同様の範囲のもので特許庁商標課編「商品区分解説」(甲第5号証)には、「薬剤」とは薬事法の規定に基づく医薬品」の大部分、「医薬部外品」の一部、すべての農薬であると説明されている。これらはすべて薬事法により規定されているものである。
以上の点よりしても上記の如く、被請求人の使用しているとする「カビ除去剤」は微生物、例えば、住居、ホール、病院等の建物を汚染したカビ・藻等を除去するために使用される商品であり、「薬剤」中の「殺菌剤」に属しない商品であることは明らかである。因みに、「カビ除去剤」はその材料、構造、用途からして化学剤に属するものと思考する。
(ロ) 厚生省あるいは都道府県の製造、販売許可書について
「カビ除去剤」が仮に「薬剤」に属するとしても、それを製造、販売するには、厚生省あるいは都道府県の許認可が必要である(甲第1,3,4号証)。また、「カビ除去剤」が「医薬部外品」に相当するとしても上記と同様である。しかるに、被請求人からはその書類の提出がない。そうとすれば、「カビ除去剤」が例えば「薬剤」に属するとしてもそれを製造、販売することは不可能であり、それを行うことは薬事法の違反と云わざるを得ない。
(ハ)争いの各号証の内容について、
被請求人提出の乙各号証によれば、その使用しているという商品は、すべて「カビ除去剤」である。したがって、上記乙第各号証は、「カビ除去剤」が商品「薬剤」中の「殺菌剤」の範疇に属するという証明にはならず、又その中に殺菌・消毒の効果を標榜するものは、先の厚生省通達により薬事法違反である。
以上のとおり、本件商標は被請求人により商品「薬剤」につて使用しているとは云えず、本件審判は請求の趣旨のとおりの審決を求めるものである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求めると答弁し、証拠方法として乙第1号証ないし同第29号証を提出した。
(1) 答弁第1
(a) 被請求人は、本件審判の請求にかかる指定商品「薬剤」について本件商標「SKK」を審判請求の登録の日前3年の間に使用している。よって、本件商標の登録は、請求にかかるその指定商品である「薬剤」について取り消されるべきでない。以下に、本件商標の使用事実を証明する。
被請求人である本件商標「SKK」の商標権者エスケー化研株式会社は、本件商標を「SKKカビ除去剤#5」および「SKK除去剤#50」との商品名のもとに殺菌漂白剤および殺菌剤について使用している。被請求人は、殺菌漂白剤を入れた24キログラムポリ缶および4キログラムポリ容器の正面の位置に「SKKカビ除去剤#5」との文字を付したラベルを貼ってこれを販売している。殺菌剤を入れた16リットルの石油缶および4リットル缶には「SKKカビ除去剤#50」との文字を印刷したラベルを貼って販売している(乙第2号証、乙第3号証)。被請求人は、平成10年4月21日には、大阪府摂津市南別府町6ー2所在の中村産業株式会社に前述のラベルを貼付した容器に入れた「SKKカビ除去#5」(4キログラム容器)および「SKKカビ除去剤#50」(16リットル缶)を1缶づつ納品している(乙第4号証)。平成10年5月27日には、大阪府市野村中町2一8所在の沢村産業株式会社に「SKKカビ除去剤#5」(24キログラム容器)を1缶、および「SKKカビ除去剤#50」(16リットル缶)を2缶納品している(乙第5号証)。被請求人は、自己の登録商標「SKK」を付した商品を本件審判請求の登録の日、即ち平成10年8月12日(第6号証)より前3年の間に使用している。また、被請求人の製品設定価格表の表紙の最上段には、本件商標「SKK」との文字を付している(乙第7号証)。設定価格表7頁には、防かび・防藻機能を有する耐微生物バイオ塗料「バイオタイト」を使用する際の洗浄工程に使用される殺菌漂白、除菌剤として「SKKカビ除去剤#5」および「SKKカビ除去剤#50」が掲載されている。この設定価格表は、1998年および1999年に亘って、製品の種類およびその各々の価格を示すために取引者、需要者に配布するために作成されたものである。被請求人の本社から取引者、需要者に直接郵送したり手渡ししたりすることによって配布する他、訪れた取引者等が自由に持ち帰ることができるように、被請求人の出張所、営業所の店頭に置ている。問屋や需要者から問い合わせがあれば、個別に郵送で配布することも行っている。更に被請求人は、「SKKカビ除去剤#5」を塩素系の「殺菌漂白剤」として掲載し、「SKKカビ除去剤#50」はアルコール系の「殺菌剤」として掲載している製品パンフレットを作成し、取引者、需要者に配布している(乙第8号証)。これら商品の販売開始時期は、1987年9月である。月刊「リフォーム」には、新製品NEWSとして、「バイオタイト」が紹介され、その中に「カビ除去剤として水性・塩素系殺菌剤やアルコール形殺菌剤も製品群に加えている。」と掲載されている(乙第9号証)。なお、「四国工業株式会社」は、エスケー化研株式会社の旧名称であり、平成3年に改称したものである。(乙第10号証)。被請求人が、本件商標を付した商品「SKKカビ除去剤#5」および「SKKカビ除去剤#50」を販売しているのは、全国各地に亘っている(乙第11号証)。
以上の事実から、被請求人が自己の所有にかかる本件商標を「SKKカビ除去剤#5」および「SKKカビ除去剤#50」との商品名のもとに「殺菌漂白剤」および「殺菌剤」について使用していることが明らかである。
(b)そこで、被請求人が製造、販売する商品「SKKカビ除去剤#5」および「SKKカビ除去剤#50」が本件商標の指定商品中の「薬剤」に該当することを証明する。商標法施行規則の旧商品区分においては、旧第1類「薬剤」の中に「農業用または公衆衛生用薬剤」が含まれている(乙第12号証)。商品区分解説には、「農業用または公衆衛生用薬剤」には、「水道殺菌、衣料殺菌、器具殺菌等公衆衛生を目的として用いられる殺菌剤」が含まれるとある(乙13号証)。「SKKカビ除去剤#5」および「SKKカビ除去剤#50」は、この「器具殺菌等公衆衛生を目的として用いられる殺菌剤」に該当する商品である。即ち、これら被請求人の商品は、微生物、例えばカビ、藻等に汚染された住居、工場、ホール、病院等の建物を殺菌するために使用される商品である(乙第14号証)。建物に付着した微生物は、建物を劣化させその寿命を縮めるのみならず、アレルギー性疾患(アレルギー性鼻炎、気管支端息等)、真菌症(水虫、肺アスペルギンス症等)、肝臓疾患、腎ネフローゼ、肝臓ガン、神経症、食中毒等の病原菌でもあり、人体に影響を与える。被請求人であるエスケー化研株式会社は、微生物による建物の汚染の人体への影響に着目し、公衆衛生的観点から環境と人々の生活を守るためこれらの商品を開発したものである。したがって、商品のこのような用途から、商品の使用場所も丸愛納豆店、友田水産、北国醤油、トリカフーズ、寿城(菓子製造販売所)等の食品製造・販売所や、展示場、養命酒駒ヶ根工場等の製酒工場、多良町宮団地等の住居、病院等と公衆衛生を保つことが必要とされる場所も多い(乙第15号証)。また、これら商品を扱うにあたり、購入先における資格(危険物取扱い等)を要せず、特に法規制等もないため、吉見邸等の一般家庭に対して販売されている(乙第15証)。一般家庭の室内において使用する際は、商品を雑巾等に含ませて使用できる。更に、「殺菌剤」という薬剤として販売される関係上、薬局に対しても販売されている(乙第15号証)。また、「金属部位等」にも使用することができ、商品区分解説がいう「薬剤」としての「器具殺菌」をすることができることがわかる(乙第16号証)。ここに「殺菌剤」とは、「広義には、微生物を死滅させたり、あるいはその繁殖を防止したりする化学薬品の総称」である(乙第17号証)。「微生物」とは、植物および動物以外の生物をいう(乙第18号証)。微生物の中でもカビ類のみに効力を示すものは抗カビ剤といわれる(乙第18号証)。被請求人の商品「SKKカビ除去剤#5」および「SKKカビ除去剤#50」は、カビ類のみならず藻類にも効果があるため、「広く微生物を死滅させる効果を持つ薬物」(乙第18号証)の範疇に入る。また、「微生物の繁殖を防止するだけの目的のものは、防腐剤あるいは防かび剤と呼ばれる」(乙第18号証)とあるが、本商品は、「既に生えているかびに対して優れた殺菌効果を有する」(乙第19号証)ものであり、カビの繁殖を防止する商品ではない。本商品は、「防かび剤」ではなく、よって、第1類の「化学剤」に属しない。被請求人においては、「SKKカビ除去剤#5」および「SKKカビ除去剤50」を購入しようとする取引者、需要者にわかりやすく商品を説明し、また理解させるために、商品の主たる用途が殺菌であることを積極的に表現しているのである(乙第20号証)。商品内容を簡潔に示した製品一覧表には、商品名である「SKKカビ除去剤#5」が使われている商品の一般名を「殺菌漂白剤」と説明し、その用途は「微生物に対する強力な殺菌効果と汚染に対する漂白効果を持つ。」としている。商品名である「SKKカビ除去剤#50」が使われている商品の一般名を「殺菌剤」と説明し、その用途は、「下地に浸透し、より優れた殺菌効果を発揮。水の使用できないところ(金属部位等)にも使用可。」と説明しているのである。また、商品の主成分からみても、「SKKカビ除去剤#5」および「SKKビ除去剤#50」は、商品「殺菌剤」の範疇に含まれるものであることがわかる。「SKKカビ除去剤#5」の主成分は「次亜塩素酸ソーダ(水性)」であるところ、化学用語辞典には、液体殺菌剤として「次亜塩素酸塩水溶液」が挙げられている(乙第21号証)。「SKKカビ除去剤#50」の主成分は「イソプロピルアルコール」であるところ、「殺菌薬」としてのアルコール類の欄に「近年イソプロピルアルコールが用いられる」とある(乙第22号証)。因みに、「SKKカビ除去剤#5」および「SKKカビ除去剤#50」は、防かび・防藻形バイオ塗料「バイオタイト」とセットで販売される商品の一つでもある(乙第7号証および乙第14号証)。 しかし、これら商品を納入した事実を証明する発送案内書からわかるように、必ずしも「バイオタイト」とともに販売されているものではない(乙第4号証、乙第5号証)。「SKK力去剤#5」および「SKKカビ除去剤#50」は、セット商品として「バイオタイト」の製品パンフレットに掲載されているが、個別の商品として流通過程に乗せられることもある。塗料「バイオタイト」とともに「殺菌剤」として使用されるときの使用方法は、具体的に以下の通りである。
建物が新築の場合であっても、改装の場合であっても、まず環境調査(汚染調査)を行う(乙第23号証)。環境調査は、現場での菌種の採取、現場を含めた周辺環境の調査(例えば、付近に森があるか、等)を被請求人が独自に作成した微生物診断チェックシートに従い、確認するものである(乙第24号証)。次に、汚染物質のサンプリングを行い、汚染物質の培養、特定の後、塗料「バイオタイト」の効果の確認をする。一連の汚染調査を踏まえて、対象の建物の汚染度別に「SKKカビ除去剤#5」および「SKKカビ除去剤#50」を使用する殺菌工程(乙第25号証)を決定する。部位によっては「SKKカビ除去剤#5」および「SKK除去剤#50」を組み合わせることにより完全な殺菌効果を得ることが必要か否かについても決定する。つまり、それぞれ対象となる建物に応じて汚染原因を追及し、最も有効な殺菌工程を決定するのである。
以上の考察より、「SKKカビ除去剤#5」および「SKKカビ除去剤#50」は、公衆衛生を保つための薬剤として、被請求人であるエスケー化研株式会社によって生産され、販売されているものである。そしてこれらの商品は、第1類「薬剤」に含まれるものである。また、これら商品は、カビの繁殖を防ぐという用途はなく、広く微生物を死滅させる効果のある「薬剤」ゆえに、第1類の「化学品」には、含まれないことは明らかである。
(2) 答弁第2
(a) 弁駁書における争点の第一点について
請求人が提出する厚生省の実務連絡と商標法上の商品の区分とは、何らの関係もない。よって甲第2号証は、被請求人の商品「SKKカビ除去剤#5」および「SKKカビ除去剤#50」が「薬剤」に属するか否かを判断する証拠資料となり得ない。仮に甲第2号証を採用するとしても、厚生省の薬務局監視指導課が「病院又は各種施設で使用される殺菌、消毒液の取り扱いについて」「医薬品該当性」を連絡するものである。しかしながら被請求人の商品は「病院又は各種施設」以外にも、一般家庭、団地、工場など、また、屋内においても使用されている(乙第8,14、15号証)。請求人は、「SKKカビ除去剤#5」および「SKKカビ除去剤#50」が「医薬品」に該当するかどうかの判断資料となり得ない実務連絡を甲第2号証として提出するばかりでなく、屋内外を問わず使用される被請求人の商品(乙第8号証)を、家庭内において使用される場合についてのみあてはめを行い、よって「医薬品でない」と結論づけようとするものである。請求人の甲第2号証についての主張はすべて、自己の提出した資料を精査せず、独自の解釈を行ったものであり、「SKKカビ除去剤#5」および「SKKカビ除去剤#50」の商品区分を考察するために参考にできない。更に請求人は、甲第5号証を提出し、「薬剤」について、「これらはすべて薬事法により規定されているものである。」と述べるが、誤りである。特許庁商標課編「商品区分解説」においては、「『薬剤』とは、次のものが含まれる。(1)薬事法の規定に基づく”医薬品”の大部分(2)法にいう”医薬部外品”の一部(3)すべての農薬(薬事法にいう”医薬品”には含まれない。)」とされている(乙第28号証)。すなわち、薬事法の規定に基づく”医薬品””医薬部外品”のすべてが商標法上の「薬剤」の概念に含まれるものではなく、被請求人の商品のように薬事法の規定に基づく”医薬品””医薬部外品”でなくても、商標法上の「薬剤」に該当する場合があるのである。この点請求人は、商標法上の「薬剤」は「すべて薬事法により規定されているものである。」とするが、すべて薬事法により規定されているとは限らず、失当である。
(b)争点の第二点として、
請求人は、被請求人の提出にかかる各号証中、「厚生省あるいは都道府県の製造、販売許可書」について争点の第二点として争う、としている。すなわち、「SKKカビ除去剤#5」および「SKKカビ除去剤#50」が「薬剤」または「医薬部外品」に属するとき、「それを製造、販売するには、厚生省あるいは都道府県の許認可が必要である」と主張する。しかしながら、請求人の主張は、薬事法および商標法の理解を誤り、また、両者を混同して請求人独特の解釈をしたものである。被請求人の商品「SKKカビ除去剤#5」および「SKKカビ除去剤#50」は、商標法上の「薬剤」に該当し、かつ、薬事法にいう「医薬品」「医薬部外品」に該当する必要がないので、厚生省あるいは都道府県の許認可と関係はないからである。請求人が被請求人の商品「SKKカビ除去剤#5」および「SKKカビ除去剤#50」について、「『薬剤』に属するとしてもそれを製造、販売することは不可能であり、それを行うことは薬事法の違反」とする点は、商標法上の「薬剤」と薬事法上の「医薬品」等との関係の基本的理解をせずに独自の論理を展開するものであり、これを認めることはできない。因みに、請求人が薬事法の違反を主張することは、争点である被請求人の商品の商品区分を判断するにあたり何らの基準を示すものではない。
(c) 請求人の争点の第三点について
被請求人の商品が「SKKカビ除去剤#5」および「SKKカビ除去剤#50」であるため、商品「薬剤」中の「殺菌剤」の範疇に属するという証明にはならないと主張する。しかしながら、被請求人が製造、販売する商品「SKKカビ除去剤#5」および「SKKカビ除去剤#50」が本件商標の指定商品の「薬剤」中「殺菌剤」に該当することは明らかである。商品区分解説には、「殺菌剤」とは、「〜水道殺菌、医療殺菌、器具殺菌など公衆衛生を目的として用いられる殺菌剤」と定義されている(乙第13号証)。「SKKカビ除去剤#5」および「SKKカビ除去剤#50」の用途については、乙第14、19,20号証にも説明されているように、「かびに対して優れた殺菌力を持つ」ものである。商品パンフレットの記載から、該商品を取り扱う需要者、取引者は、「SKKカビ除去剤#5」および「SKKカビ除去剤#50」の用途は、カビという菌類を死滅させる、すなわち殺菌するものであると認識する。また、殺菌の目的は、「微生物により汚染された周辺環境を殺菌することにより取り戻す」というもので、公衆衛生を目的としている(乙第14号証)。「SKKカビ除去剤#5」および「SKKカビ除去剤#50」の材料は、乙第21号証および第22号証から明らかなように、その主成分である次亜塩素酸ナトリウムおよびインプロピルアルコールであり、それぞれ有害微生物の殺菌を効用とする。微生物制御用語辞典を引くと、次亜塩素酸ナトリウムは「環境殺菌剤」とあり、インプロピルアルコールは、エタノールより強い殺菌力を有するものと解説されている(乙第26号証)。防菌防微ハンドブックによれば、次亜塩素酸ナトリウムおよびインプロピルアルコールは、主要な「環境用殺菌剤」および「食品工場用殺菌剤」としてあげられている(乙第27号証)。ここに「環境殺菌剤」は、「一般にサニテーンョンに用いる殺菌剤のこと」で、「『微生物汚染を公衆衛生上の要求により決められた安全な水準まで減少させる薬剤』と定義し、無菌や滅菌を目的として用いる殺菌剤ではないが、定められたレベルまで微生物汚染度を減少させるのに用いる殺菌剤が環境殺菌剤である」としている。被請求人の商品は乙第7,8,14,15,20号証から明らかなように、その目的は、カビという微生物を死滅させ、周辺環境を改善するというものであり、一般にいう「環境殺菌剤」の用途に非常に近いものである。例えば、日本防菌防黴学会誌の環境殺菌剤についての項では、「環境殺菌剤を使用して環境殺菌を行うにあたって、その殺菌作業の標準化を図り、表4に例示するような標準的な作業手順にしたがって、環境殺菌の各作業ごとに標準作業手順書や評価基準を前以て作成しておくと非常に好都合」とあるが(乙第28号証)、被請求人の商品を使用するにあたり、施行フローチャートに則ることとしており、汚染物質調査の手順についても書面をもって明確に規定し、殺菌工程を標準化している(乙第23,24号証)。また、防菌防微剤辞典では、被請求人の商品のように、人体ではなく「環境」を対象とする殺菌剤は、環境殺菌剤であるとされている(乙第29号証)。また、代表的な市販環境殺菌剤に、被請求人の商品の主成分である、塩素系では次亜塩素酸ナトリウムが、アルコール系では、イソプロノベノールが、それぞれ例示されている(乙第27号証)。そして、「市販環境殺菌剤のグループ分類は、特に環境殺菌剤の分類というものではなく、一般的な殺菌剤の分類でもある」(乙第27号証)ことから、少なくとも一般にいう殺菌剤の分類において、被請求人の商品の主成分が殺菌剤として代表的なものであることが明らかである。商品の流通の面からみても、「殺菌剤」という殺菌効果のみを目的とするカビ除去剤として流通する関係上、薬局に対しても販売されている(乙第15号証)。「SKKカビ除去剤#5」および「SKKカビ除去剤#50」は、防菌防微という観点からみれば環境殺菌剤という概念に属し、また、その用途、目的、材料の観点より、更には該商品を取引する需要者などの認識、一般的観念をもあわせて考慮しても、商品区分解説にいう「公衆衛生を目的として用いられる殺菌剤」に属する商品なのである。また請求人は、「SKKカビ除去剤#5」および「SKKカビ除去剤#50」は「その材料、構造用途からして化学剤に属するものと思考する」とするが、これら被請求人の商品が「化学剤」でないことは明らかである。特許庁商標課編の商品区分解説には、「化学剤」について、「この概念に属るすものとしては、(イ)無機及び有機の(工業薬品に属する商品と同じものであっても、それ自体が単独で一定の用途に用いられるものとして取引される場合と、(ロ)無機及び有機の(工業薬品)などに属する数種の物質を混合して一定の用途に適するようにしたものとがある。」としている(甲第5号証および乙第13号証)。ここで「無機工業薬品」とは、「無機の化学的基礎製品であって、工業原料又は実験用として取引されるもの及び未だ用途が限定されないで取引されるものが含まれる。したがって、同物質であっても他の用途に限定される取引段階にあるものは含まれない。
「有機工業薬品」とは、「工業原料又は実験用として使用される有機の化学的基礎製品である。無機工業薬品と同様に、同物質であっても他の用途に限定された取引の段階にあるものは含まれない。」とされている(甲第5号証および乙第13号証)。「SKKカビ除去剤#5」および「SKKカビ除去剤#50」は、工業原料又は実験用ではなく、すなわちカビを死滅させる「殺菌」という一定の用途に限定されて生産、販売されるものである(乙第19,20号証)。よって、”化学剤“の説明中(イ)には属さない。”化学剤”の説明中(ロ)については、この類の他の概念の用途(例えば薬剤)に使用される場合は、この概念に属さないとされている(甲第5号証および乙第13号証)。「SKKカビ除去剤#5」および「SKKカビ除去剤#50」は、殺菌するという一定の用途があり(乙第19,20号証)、「この類の他の概念の用途(例えば薬剤)に使用される場合」にあたるため、(ロ)にいう化学剤には属さない。したがって、「SKKカビ除去剤#5」および「SKKカビ除去剤#50」は、商標法上の商品「化学剤」に属しない。
請求人が「SKKカビ除去剤#5」および「SKKカビ除去剤#50」の材料、構造、用途を精査せずに「化学剤」に属する、とした点は、単に請求人の希望を示したにすぎないと思料する。因みに、請求人は「殺菌・消毒の効果を標榜するものは、先の厚生省通達により薬事法違反である。」と述べるが、自己の提出する甲第2号証の内容を誤って理解しているものと窺える。甲第2号証において、「医薬品に該当しない場合」に、「なお、殺菌、消毒の効果を標榜しないよう指導すること。」と記載されているが、これは厚生省が指導する、という義務を記するものである。被請求人等生産者側に指導義務があるのではない。よってこれに違反する場合とは、厚生省が自らの義務を怠った場合である。この場合に指導を受ける側に違反がある、とするのは論理矛盾である。なお、被請求人は、厚生省からかかる指導を受けたことはない。
(d) 以上の立証および答弁書(乙第1号証乃至乙第25号証)から明らかなとおり、被請求人は、本件審判事件にかかる商品「薬剤」について本件商標を審判請求の登録の日前3年間に使用している事実がある。
よって、請求人目身が公衆衛生をその目的とした「殺菌剤」として実際に生産、流通させている商品に使用する登録商標「SKK」に長年に亘り化体した業務上の信用は、後も、尚保護され続けるべきである。本審判の請求は成り立たない旨の審決を求る次第である。

4 当審の判断
商標法第50条による商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、被請求人において、その請求に係る指定商品について当該商標を使用していることを証明し、または使用していないことについて正当な理由があることを明確にしない限り、その登録の取り消しを免れないものである。
ところで、薬事法に定義する医薬品、医薬部外品を製造・販売する場合には、厚生省あるいは都道府県の許認可が必要とされているところである。また、乙第13号証(昭和55年4月7日発行の特許庁商標課編「商品区分解説」)によれば、商品の区分第1類の「薬剤」の概念には、薬事法に定義する医薬品、医薬部外品、あるいは農薬が属し、そこに例示されている商品も薬事法に定義する医薬品、医薬部外品、あるいは農薬である。
一方、被請求人は、本件商標を使用している商品が公衆衛生をその目的とした「殺菌漂白剤」及び「殺菌剤」にあたる旨主張しているが、薬剤の製造・販売には厚生省あるいは都道府県の許認可が必要とされるところ、被請求人はこれに関する証拠を何ら提出していない。
また、被請求人が提出している乙第2号証(商品の写真)、同第7号証、同第9号証、同第14号証(商品カタログ)、同第23号証等によれば、被請求人が本件商標を使用しているとする商品「SKKカビ除去剤#5」及び「SKKカビ除去剤#50」(以下、「本件商品」という。)は、主にカビ、藻等に汚染された住居、工場、ホール、病院等の建物を殺菌するために使用される商品であるから、品質・用途的には第1類の「化学剤」の概念に属する「殺菌漂白剤」及び「殺菌剤」と判断するのが相当である。
そうとすれば、被請求人が本件商標を使用しているものとして立証しているのは「化学剤」の範疇に属する「殺菌剤」及び「漂白殺菌剤」であって、本件商標の取消請求に係る「薬剤」ではないと判断するのが相当である。
してみれば、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、指定商品中の「薬剤」について使用していたものとは認められず、かつ、使用をしていないことについて正当な理由があったものとは認められない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その指定商品中の「薬剤」についての登録を取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-09-21 
結審通知日 1999-10-05 
審決日 2000-02-28 
出願番号 商願平3-21949 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (101 )
最終処分 成立  
前審関与審査官 中嶋 容伸 
特許庁審判長 寺島 義則
特許庁審判官 沖 亘
江崎 静雄
登録日 1993-12-24 
登録番号 商標登録第2608562号(T2608562) 
商標の称呼 エスケイケイ 
代理人 三枝 英二 
代理人 中川 博司 
代理人 掛樋 悠路 

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