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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) 123 |
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管理番号 | 1015264 |
審判番号 | 審判1997-17392 |
総通号数 | 11 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2000-11-24 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1997-10-15 |
確定日 | 2000-06-06 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2716038号商標の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第2716038号商標の指定商品中「時計並にその各部及び附属品」についての登録を無効とする。その余の指定商品についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第2716038号商標(以下、「本件商標」という。)は、「Submarine」の文字を書してなり、平成2年9月4日登録出願、第23類「時計、その他本類に属する商品」を指定商品として、同8年9月30日に設定登録されたものである。 2 請求人の引用する商標 請求人が、本件商標の登録無効の理由に引用する登録第462952号商標(以下、「引用商標」という。)は、「SUBMARINER」の文字を書してなり、昭和29年6月22日登録出願、旧々第21類「時計並にその各部及び附属品」を指定商品として、同30年3月23日に設定登録され、その後3回にわたり商標権存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。 3 請求人の主張 請求人は、「商標登録第2716038号商標の登録はこれを無効とする。審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求める。」と申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を概略次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第22号証を提出している。 (1)請求人は、1905(明治38)年の創業以来、同人商号の略称兼代表的出所標識たる「ROLEX」のブランドのもと主として腕時計を製造販売し、その商品は精密な技術と優れたデザインを以て世界的に著名となっている。 その間、たゆまぬ研究開発の成果として、1926(昭和元)年に完全防水技術を発明し、1953(昭和28)年に世界初のダイバーズウォッチとして発売された「SUBMARINER」は、そのシンプルなデザインと優れた防水機能により、スキンダイバー・ヨット・水上スキーなど海洋スポーツ愛好家を始めとし、日常用としても幅広い人気を得ている。そして、日本における請求人製腕時計の取引活動は全国主要都市に営業所を有する日本ロレックス株式会社(本社東京都千代田区所在)を通じ組織的に行われ、同社の活発な宣伝活動と請求人製高級腕時計の優れた品質・デザイン・宝飾性等と相俟って、絶大な人気を博し今日に至っている。 (2)以上の事実を念頭に、本件商標と引用商標とを比較検討する。 ▲1▼外観について 本件商標「Submarine」と引用商標「SUBMARINER」とを比較した場合前者が9文字、後者が10文字と1文字の多少の差異を有するも、共に同書体を以て横書きしたアルファベット文字構成であり、9文字を共通にし、相違部分は、ただ単に看者の視覚的注意力が比較的届きにくい語尾における「R」の有無にすぎず、全体として互いを錯覚しやすい視覚的な紛らわしさが生じ得る。 ちなみに、アルファベットの大文字、小文字間の差異は、実際の使用に当たっては特許庁においても同一文字と解せられている。 ▲2▼称呼について 本件商標「Submarine」からは、「サブマリ(ー)ン」[sa-bu-ma-ri(:)-n]の称呼が、他方引用商標「SUBMARINER」からは、「サブマリ(ー)ナ(ー)」[sa-bu-ma-ri(:)-na:]の称呼が取引上普通に生ずるからである。 すなわち、本件、引用の両称呼はその構成音も、音質上強く発音聴取され印象に残りやすい「サブマ(ー)」が同一、語頭音「ン」及び「ナー」は子音[n]を共通にし、かつ語頭音「サ」にアクセントがおかれ尻上がりの語調となるため弱音となりあまり印象に残らず、聴覚的注意力の劣る語尾音であることも相俟って、極めて誤聴可能性の高い音構成であると謂え、両者の称呼を取引の実際に則し一気一連に発音した場合、全体として似通った音印象が感取され、迅速繁忙かつ時と処を異にした実際の取引場裡においては、後者の著名性及び個人の比較的曖昧な発音もあって聞き誤り互いの出所を誤認混同されるおそれが充分である。 ▲3▼観念について 両者が指定商品の時計に使用された場合、本件商標「Submarine」からは「潜水艦」、引用商標「SUBMARINER」からも「潜水艦」の観念が普通に生じ得るに等しく、両者は観念上同一と言っても過言ではないものである。(甲第5号証、9頁) けだし、英和辞書によれば「Submariner」には「潜水艦の乗組員」の意味も記載されてはいるものの、ドライヤー、カッター、ヒーター、クリーナー、ミキサー等々、機能を表わす言葉に接尾語「-er」をつけ名詞化された和製英語は日常生活に溢れており、日本国内での英語教育レベルと照らし合わせてみれば、「サブマリ(ー)ナー」から一般の需要者が「潜水艦の乗組員」などというまわりくどい観念を思いつくのは適当ではなく、一般的に「潜るもの」即ち、「潜水艦」と直感すると考える方が自然である。 さらに、両商標は「海に潜る(潜水)」という最も重要な点で観念を共通にし、後者はこの観念をもとにダイバーズウォッチに長年使用され、本件商標が前記商品に使用された場合、ダイバーズウォッチの元祖であり、本家本元である高級腕時計「SUBMARINER」と観念においても、同一又は類似するといわざるを得ない。 (3)不正目的の使用について 本件商標権者は、昭和60年7月設立され、仕入先にシチズン時計、服部セイコーそして得意先に栄光時計等々、精密機械、医療用機械器具卸売業を既に10年以上営んでおり(甲第22号証)、それを生業としている本件商標権者が本願の出願時に、その王冠マークが示すがごとく時計の王様ともいえる「ロレックス」の代表的商標のひとつである「SUBMARINER」を認識していなかったとは到底考えられないものであり、請求人会社製高級腕時計が一流人のステイタス・シンボル化していることをあえて知りながら、その信用にあやかろうとして本件商標をフリーライド的に出願したとは推察に難くない。 (4)以上の理由により、本件商標は、その出願時には世界的に著名な引用商標に外観、称呼、観念のいずれの点においても類似し、かつ指定商品にも抵触すること明らかであるから、本件商標が市場に出現した場合、請求人の業務に係る引用商標の商品と混同を生ずるおそれがあるので、商標法第4条第1項第10号及び同第11号、或いは同第19号の規定に該当し、その登録は断じて許されないものと思料する。 4 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を概略次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第3号証を提出している。 請求人が無効理由の根拠とする商標法第4条第1項第10号、第11号、第19号はいずれも、本件商標が引用商標と同一又は類似の商標であることが要件であるところ、論点は、本登録商標「Submarine」と引用商標「SUBMARINER」との類否判断にある。一般に対比される商標の類否を判断するには、外観、称呼、観念について比較検討することが相当であり、これらについてそれぞれ説明する。 (1)両商標の外観の比較について 本登録商標は、大文字の「S」と小文字の「ubmarine」から構成される「Submarine」であるのに対して、引用商標は大文字を連続してなる「SUBMARINER」であり、両者が構成において互いに区別され得るものであることは明らかである(乙第1号証)。請求人は、両商標の相違部分は、ただ単に、看者の視覚的注意力が比較的届きにくい語尾における「R」の文字の有無にすぎないと言うが、両商標を全体観察した際に、両商標が視覚的に紛らわしいものではないことは明白である。 商標の登録性に係る類否判断は、出願時に商標見本に記載された構成態様に基づいて行うものであり、「ちなみに、アルファベットの大文字、小文字間の差異は、実際の使用に当たっては特許庁においても同一文字と解せられている。」とする請求人の主張は失当である。 さらに、本審判における引用商標「SUBMARINER」はロレックス社が保有するブランドの一つに過ぎない。 (2)両商標の称呼の比較について 本登録商標「Submarine」からは「サブマリーン」あるいは「サブマリン」という称呼が発生し、引用商標「SUBMARINER」からは「サブマリーナ」あるいは「サブマリーナー」(請求人が添付した証拠においてサブマリーナーという記載が多く見受けられる。甲第5〜11号証、同13号証)という称呼が発生し、両者は、「サブマリー」あるいは「サブマリ」の音を共通するものであるが、語尾の「ン」と「ナ」あるいは「ナー」において差異を有する。 ここで、両商標のアクセントの位置について考えると、両商標を外来語に準じて通常の日本人が発音した場合には、本登録商標は、語頭音「サ」に若干アクセントがあるか、あるいは全体的に均一にモノトーンに発音されるものと考えられる。 これに対して、引用商標(「サブマリーナ」と発音する場合)を通常の日本人が自然に発音した場合には、「リー」、に若干アクセントがあるものと考えられる。 また、両者を英語読みした場合には、本登録商標の場合には語頭音「サ」にアクセントがあり、引用商標の場合には「マ」あるいは「リー」にアクセントがある(乙第2号証)。したがって、両商標が比較的長い単語であること、及び、アクセントの位置が明らかに異なることに鑑みれば、両者の称呼は相紛れるおそれのない商標であると考えられる。 なお、請求人は、引用商標についても語頭「サ」にアクセントが置かれていると主張しているが、それで発音するならば日本語として極めて不自然であるだけでなく、英語読みした場合においても語頭にはアクセントはない。 すなわち、両者は語尾において「ン」と「ナ」あるいは「ナー」の音にその差異を有するものであり、差異音である本登録商標の「ン」は弱く響く鼻音であり、しかも語尾に位置することから明瞭に聴取され難いのに対して、引用商標の「ナ」、「ナー」の音は語尾に位置するとしても、前者が長音であることから明確に聴取されるものであるから、この差異が称呼の全体に及ぼす影響は大きく、両者を一連に称呼しても、その語調、語感が相違し互いに紛れるおそれはないものである(乙第1号証)。 (3)両商標の観念の比較について 本登録商標「Submarine」は「潜水艦」の観念を生ずるのに対し、引用商標「SUBMARINER」は「潜水艦乗組員」の観念を生ずるものであり、観念において両者は相紛れるおそれはない(乙第1、2号証)。したがって、「SUBMARINER」から「潜るもの」即ち「潜水艦」を直感するという請求人の主張は受け入れられないものである。 とりわけ引用商標「SUBMARINER」を付したした時計のターゲットがダイバー、ヨットマン、その他水上スポーツ愛好家であり、また、引用商標「SUBMARINER」が付される時計が高価なものであることに鑑みれば、引用商標に関わる需要者はいわゆる洗練された者であると考えられ、これらの者をして「Submarine」と「「SUBMARINER」の観念が相紛れることはない。 (4)以上これを要するに、本登録商標と引用商標とは、指定商品については同一であるものの、外観、称呼、観念のいずれの点においても互いに相紛れることはなく、両者は非類似の商標である。したがって、本登録商標は商標法第4条第1項第10号、第11号、第19号に該当するものではなく、本登録商標に無効理由は存在しない。 (5)引用商標の著名性及び不正の目的について 引用商標である「SUBMARINER」(商標登録第462952号)は昭和29年6月22日に出願され、昭和30年3月23日に登録され、その後数回の更新を経て現在に至っている。請求人は、引用商標が著名商標である旨主張しているが、長年にわたって使用されていることのみをもってその商標が著名であるとすることはできない。甲第7号証によると、引用商標「SUBMARINER」を付した時計は、年間約1000個程度販売されているが、年間に1000個程度販売された事実をもって、全国的に広く知られているとは言えない。また、請求人は引用商標に係る広告掲載リストを添付しているが(甲第8号証)、1年に雑誌に10〜20回程度掲載したことのみをもって、その商標が著名であるとは言えない。この程度の広告掲載は、商品の販売戦略として通常あたりまえに行われていることであり、甲第8号証をもって引用商標が著名であるとするならば、現在取引界において使用されている商標のかなりのものが著名商標ということになってしまう。 商標権者が、昭和60年7月に設立され、仕入先にシチズン時計、服部セイコーそして得意先に栄光時計等々、精密機械、医療用機械器具卸売業を既に10年以上営んでいることのみをもって、商標権者がロレックス社のブランドのひとつである「SUBMARINER」を知っていたものと断言することはできない。 また、仮に商標権者が「SUBMARINER」を認識していたとしても、単にその事実のみをもって不正の目的があったとは言えない。 ちなみに、商標権者は、クロックラジオについて「Submarine」を使用しており(乙第3号証)、腕時計、特にダイバーズウオッチに用いるものではなく、引用商標にフリーライドするものではない。 5 当審の判断 (1)引用商標の著名性について 本件商標と引用商標との出所の混同について、請求人が提出した甲第5号証ないし同第14号証によれば、請求人は腕時計の製造販売会社として世界的に著名であり、我が国の全国主要都市に営業所を置く日本ロレックス株式会社を通じて腕時計を販売するとともに、活発な宣伝活動を行ってきたものと認められ、1953(昭和28)年に世界初のダイバーズウオッチを発売して以来現在に至るまで「SUBMARINER」の商標を使用してきており、その結果、同商標は本件商標の商標登録出願前に我が国においても、すでに需要者間に周知・著名になっていた事実が認められる。 (2)無効理由(商標法第4条第1項第11号)について まず、本件商標と引用商標の外観についてみるに、本件商標は「Submarine」の文字を、引用商標は「SUBMARINER」の文字を書してなるものであり、その差異は大文字と小文字から構成されたものと、全て大文字構成されたものとの違いと、語尾に「R」の1字を有するか否かの点にあるといえるが、一般的に宣伝広告などで実際に使用される商標の態様は、その構成文字を大文字のみあるいは小文字のみで統一したものなど、その時々に応じた使い方をしているのを見かけることから、ある程度柔軟に使用していることが窺い知れる。また、両者は9文字あるいは10文字からなり、全体としてその綴りが長く看者の視覚的注意力が比較的届きにくい語尾における「R」の文字の有無による印象の違いも大きいとはいえず、これらについて考慮すると、両商標は外観上極めて紛らわしい商標といわざるを得ない。 次に、両商標の称呼についてみるに、その構成は、それぞれ前記したとおりであるから該各構成文字に相応して、本件商標からは「サブマリーン」もしくは「サブマリン」の称呼を生じ、引用商標からは「サブマリーナ」あるいは「サブマリーナー」の称呼を生ずるものであり、「サブマリ」の4音までを共通にし、その異なるところは、語尾における「ン」と「ナ」の音と、これらの前後に長音を伴うか否かの差にあるものといえる。そして、これらの「ン(n)」と「ナ(na)」は、ともに子音「n」から成る弱音であって、比較的印象の薄い語尾に位置し、明確に聴別しがたい微差にすぎない。してみると、両者を一連に称呼するときは、その語調・語感が近似し、互いに相紛れるおそれが充分にある。 そして、両商標の観念についてみるに、本件商標からは「潜水艦」の観念を生ずるのに対し、引用商標からは「潜水艦の乗組員」の観念を生ずるものであり、観念に異なるところがあるものといえる。 したがって、本件商標と引用商標は、前記したとおりその外観、称呼において紛らわしいものであり、引用商標の著名性を考え合わせれば、本件商標をその指定商品中「時計並びにその各部及び附属品」に使用した場合には、これに接する需要者は、本件商標が付された商品が請求人又は請求人と何らかの関連を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生じさせるおそれがある類似する商標とみるのが相当である。 また、本件商標の指定商品中には、引用の指定商品「時計並びにその各部及び附属品」が含まれているものである。 (3)したがって、本件商標の登録は、請求人の主張する他の無効理由について判断するまでもなく、その指定商品中「時計並びにその各部及び附属品」については、商標法第4条第1項第10号及び同第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により、その登録を無効とすべきである。 しかしながら、本件商標の指定商品中「時計並びにその各部及び附属品以外の商品」については、引用商標の指定商品と非類似の商品と認められるものであり、また、本件商標が不正の目的をもって登録出願されたものと認めるに足りる証拠はない。 したがって、本件商標は、「時計並びにその各部及び附属品以外の商品」については、商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第19号に違反して登録されたものでなく、その登録を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1999-08-19 |
結審通知日 | 1999-09-07 |
審決日 | 1999-12-14 |
出願番号 | 商願平2-100409 |
審決分類 |
T
1
11・
26-
ZC
(123 )
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最終処分 | 一部成立 |
前審関与審査官 | 中嶋 容伸、小松 裕 |
特許庁審判長 |
板垣 健輔 |
特許庁審判官 |
上村 勉 神田 忠雄 |
登録日 | 1996-09-30 |
登録番号 | 商標登録第2716038号(T2716038) |
商標の称呼 | 1=サブマリン |
代理人 | 加藤 義明 |
代理人 | 稲葉 滋 |
代理人 | 清水 三郎 |
代理人 | 稲葉 昭治 |