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審決分類 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない 025
審判 全部無効 その他 無効としない 025
管理番号 1013115 
審判番号 審判1998-35119 
総通号数 10 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2000-10-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-03-26 
確定日 2000-02-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第4013435号商標の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4013435号商標(以下「本件商標」という。)は、「EL CANELO」の欧文字を横書きしてなり、平成7年8月24日に登録出願、第25類「靴類(「靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具」を除く。),運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品として同9年6月20日に設定登録されたものである。
2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録は無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第一ないし第六号証(枝番を含む。)を提出している。
(1) 本件商標は、商標法第4条第1項第10号及びパリ条約第6条の7の規定に違反して登録されたものであるから、商標法第46条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきものである。以下にその理由を述べる。
(2) 本件審判請求の利害関係について
請求人は、パリ条約の同盟国であるメキシコにおいて、商品「靴類」について、甲第三号証の一に示すとおりの「EL CANELO」の欧文字及び馬の頭部の図形からなる商標(以下「引用商標」という。)を使用している者で、当該商品を我が国にも輸出していることは甲第四号証(インボイス写)によって明らかなところである。すなわち、請求人はパリ条約に規定された同盟国において引用商標に係る権利を有する者であり、また、請求人は我が国において登録を受けるために甲第三号証として示すとおりの商標登録出願(商願平8-13192号)をしている者である。
しかして、本件商標と引用商標は「EL CANELO」の文字を共通にする類似する商標であり、この両商標の指定商品が「靴類」を共通にするものであるから、請求人は本件審判を請求するについて、いわゆる利害関係を有する者である。
(3) 本件商標が商標法第4条第1項の規定に違反して登録された理由について
引用商標を使用した靴類が我が国に輸入されていることは上記のとおりであって、引用商標は本件商標の登録出願の日前より我が国においても需要者の間に広く認識されるに至っていることは、例えば、引用商標と類似する商標であることが明らかな「EL CANELO」の文字からなり、靴類をも指定商品とする商標登録出願が本件商標の他、商願平7-104590号として「有限会社 オーヤ アンド カンパニー」によっても、されたこと(甲第五号証)からもいい得るところである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第10号の規定に違反して登録されたものである。
(4) 本件商標はパリ条約第6条の7の規定によりその登録が無効にされるべき理由について
請求人がパリ条約の同盟国であるメキシコにおいて引用商標に係る権利を有する者であることは上記のとおりであって、被請求人の業務に係る商品の我が国における輸入業者であり(甲第四号証)、請求人の許諾を得ずに本件商標の登録を受けたのである。しかして、本件商標と引用商標及び両商標の使用に係る商品の関係は既に上記したとおりである。したがって、本件商標はパリ条約の規定に違反して登録されたものである。
(5) 答弁に対する弁駁
本件商標の出願日たる平成7年(1995年)8月24日以前に引用商標が需要者の間に広く知られていた事実はない旨、被請求人は本件商標の登録出願日より1年以上後になって偶然に自己の出願商標と類似の商標を使用している請求人の存在を知り、その商品を甲第四号証のインボイスに記載のとおり、1996年11月にスポットで輸入したにすぎぎない旨、の被請求人の陳述は真実をねじ曲げた虚偽のものである。
甲第四号証は、たまたま本件の審判請求時点において、古い書類が発見できなかったため、とりあえず手元にあったものを提出したものである。
請求人が提出する甲第六号証の一(1994年11月30日付請求人発行被請求人宛インボイス)、甲第六号証の二(1995年6月20日付請求人発行被請求人宛インボイス)及び甲第六号証の三(1995年8月8日付請求人発行被請求人宛インボイス)に見る限り、そのインボイス左上隅には馬の首の図形と共に「EL CANELO」の商標が明瞭に示されている。また、これらのインボイスは何れも1995年8月24日以前のものである。
したがって、被請求人の答弁の「両者間に何の関係もない。」或いは、「出願日の1年以上後になって偶然に自己の商標を使用している請求人の存在を知り、1996年11月にスポットで輸入した。」とは故意に真実をねじ曲げたものと言わざるを得ない。
少なくともこれらの号証に見る限りにおいても、被請求人は1994年の時点で「EL CANELO」の商標を付した靴類を販売の目的で日本国に輸入しているのである。以上の事実に鑑み、少なくとも本件商標の出願時において、当業者の間で本件商標が良く知られていた事実に相違はなく、かつ、被請求人が輸入を行ったことも事実である。
3 被請求人の答弁
被請求人は、請求人の主張する本件商標に対する無効理由は根拠のないものであり、本件商標は無効とされるべきものではないと答弁し、その理由を次のように述べている。
(1) 商標法第4条第1項第10号に関する主張について
請求人が引用する引用商標が本件商標の出願日前より需要者の間に広く知られていた事実はなく、請求人が提出した甲第五号証は引用商標の周知ないしは著名性を立証するものでないことは勿論、これを推認させるものでもないから、この点に関する請求人の主張が全く根拠のないものであることは多言を要さず明白である。
(2) パリ条約第6条の7に関する主張について
請求人は本件商標の無効理由として、本件商標はパリ条約第6条の7の規定に違反して登録されたものであると主張しているが、同条約第6条の7違反は商標法第46条の無効事由には含まれていない。
我が国商標法はパリ条約第6条の7に基づいて商標法第53条の2第53条の3及び第4条4項を規定しており、同条約違反は登録商標の取消事由としている。すなわち、パリ条約第6条の7に違反する商標は、取消審判の請求があって、その判断をして初めて違法になるものであるから、登録処分自体の客観的瑕疵を問題とする一般の無効理由とは性質を異にするため、同条約第6条の7違反は、商標法第46条第1項の無効理由とされなかったと解釈されている。
いうまでもなく、パリ条約第6条の7は代理人又は代表者が商標登録を受けた場合の本人保護の規定であるから、本件商標の登録出願時に被請求人が請求人の代理人等であった事実がなければならないが、本件商標の登録出願時に被請求人が請求人の代理人等であったという事実がないのは勿論、何の関係もない。
したがって、この点に関する請求人の主張も失当である。
(3) 本件商標について
請求人は、自己がメキシコ国において引用商標に係る権利を有する者であり、被請求人は請求人の業務に係る商品の我が国における輸入業者であるが、請求人の承諾を得ずに引用商標に類似する本件商標の登録を受けたものであると主張し、甲第四号証のインボイスの写しを提出している。
しかしながら、請求人が提出したインボイスは本件商標の出願日の1年以上も後のものである。
被請求人は、本件商標の登録出願日(1995年8月24日)より1年以上後になって偶然に自己の出願商標と類似の商標を使用している請求人の存在を知り、その商品を甲第四号証のインボイスに記載のとおり1996年11月にスポットで輸入したにすぎない。
4 当審の判断
(1) 請求人が本件審判請求をすることの利害関係を有するかどうかについては、当事者間に争いがないばかりでなく、これを認めることができる。
(2) 本案に入り、先ず、本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当するものであるかどうかについて検討する。
請求人は、引用商標を使用した靴類が被請求人によって我が国に輸入されていること、引用商標と類似する商標が靴類を指定商品として他人によって登録出願されていることから、引用商標が本件商標の登録出願の日前より我が国において需要者間に広く認識されるに至っている旨主張し、証拠を提出している。
しかしながら、請求人の提出に係る各証拠によれば、上記輸入の事実及び上記他人による登録出願の事実が認められるとしても、上記輸入は数回に限られ、その数量もわずかなものであるから、この輸入の事実のみによって引用商標が我が国において需要者間に広く認識されるに至っているものとは認められないし、引用商標と類似の商標が他人によって登録出願されたからといって、それのみによって引用商標が需要者間に広く認識されていることの証左となるものでもない。その他、請求人は引用商標が実際に使用されていることを立証する証拠を何ら示していない。
してみれば、引用商標が本件商標の登録出願の日前より我が国において需要者問に広く認識されるに至っているということはできないから、本件商標は、引用商標と類似するところがあるとしても、商標法第4条第1項第10号に該当するものとはいえない。
(3) 次に、本件商標がパリ条約第6条の7の規定に違反して登録されたものであるとする請求人の主張について検討する。
我が国においては、パリ条約第6条の7の規定を受けて商標法第53条の2、同法53条の3及び同法第4条第4項を規定し、同条約違反は登録商標の取消事由としているところ、本件は同法第46条の規定に基づく商標登録の無効の審判であるから、その根拠を異にするものである。
しかも、パリ条約第6条の7は、同盟国において商標に係る権利を有する者の代理人又は代表者による該商標の登録・使用の規制について規定するものであるところ、本件商標の出願人・商標権者である被請求人が請求人の代理人又は代表者であることを認めるに足る証拠はない。
してみれば、本件商標がパリ条約第6条の7の規定に違反して登録されたものであるとする請求人の主張は失当である。
(4) 以上のとおりであって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及びパリ条約第6条の7の規定に違反して登録されたものということはできないから、その登録は、商標法第46条第1項の規定により無効とすべきではない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-08-18 
結審通知日 1999-08-31 
審決日 1999-09-10 
出願番号 商願平7-87755 
審決分類 T 1 11・ 9- Y (025 )
T 1 11・ 25- Y (025 )
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 薫 
特許庁審判長 小松 裕
特許庁審判官 茂木 静代
大橋 良三
登録日 1997-06-20 
登録番号 商標登録第4013435号(T4013435) 
商標の称呼 1=エルカネ-ロ 2=カネ-ロ 
代理人 杉村 純子 
代理人 岸本 守一 
代理人 岸本 瑛之助 
代理人 末野 徳郎 
代理人 清末 康子 
代理人 日比 紀彦 
代理人 杉村 興作 
代理人 杉村 暁秀 
代理人 渡辺 彰 

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