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審決分類 審判 全部取消 商53条使用権者の不正使用による取消し 無効としない 030
管理番号 1009315 
審判番号 審判1998-30474 
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2000-08-25 
種別 商標取消の決定 
審判請求日 1998-05-18 
確定日 1999-08-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第3318261号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第3318261号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成6年2月25日に登録出願され、別紙(1)に示すとおりの構成よりなり、第30類「すし」を指定商品として、平成9年6月6日に設定登録されたものである。
2 請求人の引用に係る商標
請求人が本件商標の登録の取消の理由に引用する登録第1763473号商標は、昭和56年2月6日に登録出願、第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同60年4月23日に設定登録されたものである。同じく、登録第847485号商標は、昭和42年11月27日に登録出願、第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同45年3月3日に設定登録されたものである。同じく、登録第1730431号商標は、昭和54年1月17日に登録出願、第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同59年11月27日に設定登録されたものである。同じく、登録第1860194号商標は、昭和56年1月27日に登録出願、第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同61年5月30日に設定登録されたものである。同じく、登録第3116175号商標は、平成4年9月10日に登録出願、第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同8年1月31日に設定登録されたものである。同じく、登録第4017942号商標は、平成4年9月10日に登録出願、第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同9年6月27日に設定登録されたものである。同じく、登録第4080267号商標は、平成4年9月10日に登録出願、第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同9年11月7日に設定登録されたものである。同じく、登録第4080268号商標は、平成4年9月10日に登録出願、第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同9年11月7日に設定登録されたものである。そして、これらの引用各商標は、それぞれ別紙(2)に示すとおりの構成よりなるものである。
3 請求人の主張
請求人は、商標法第53条の規定により本件商標は、その登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第27号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)本件審判の請求に係る本件商標の商標権者は、商標登録原簿に記載に徴し、被請求人である「石川県金沢市菊川2丁目17番11号松井正治」であるものと認められる(甲第1号証の1)。
しかして、本件商標は「廻るじんずし」の文字を書してなり第30類「すし」を指定商品とするものであるところ、これを商標として使用している者は、石川県金沢市窪5丁目588番地所在の株式会社巨蜂(以下「(株)巨蜂」という。)の経営に係る寿司店「廻るじんずし」であるものと認められる(甲第2号証の1ないし6)。
そこで、(株)巨蜂の商号登記簿によって確認したところ、該会社の代表取締役は、被請求人であることが判明した(甲第1号証の3)。
そうとすれば、本件商標の使用者(株)巨蜂は、被請求人(本件商標権者)より本件商標の使用につき許諾を得ている者、即ち、通常使用権者の地位にあるものと推認される。よって、本件審判の請求は、本件商標の通常使用権者と推認される(株)巨蜂が本件商標に類似する商標(甲第2号証の1ないし6)をその指定商品に使用し、もって、他人(請求人)の業務に係る商品(寿司)、役務(寿司の提供)と混同を生ずるおそれを招来させる登録商標の不当使用に対して、その是正(本件商標の取消)を求めるものである。以下、その理由について分説する。
▲1▼本件商標は、「廻るじんずし」の文字を同書、同大、同間隔に書してなり、第30類「すし」を指定商品とするものである。したがって、本件商標は、かかる一連の構成において自他商品の出所識別機能を果たすものであって、その形態を変更して使用される場合には指定商品の出所識別機能に重大な影響を及ぼすものである。
▲2▼これに対し、請求人は、その取り扱い商品「寿司」について、「まわる」、「MAWARL・まわる(上下二段)」、「廻る 元禄」、「廻る 元禄寿司」の各文字よりなる登録商標を取得し、更にその後、サービスマーク登録制度の発足に伴い、指定役務を「すしの提供」とする登録商標「廻る 元禄寿司」及び「回転台方式によるすしの提供」を指定役務とする「廻る」の登録商標を獲得し、盛大に使用しているものである。
したがって、請求人は、回転寿司(該名称が元々、請求人の商標であることは後述する)業界のパイオニアとして、その名声は関西地方を基盤として広く認識されるに至ったものである。
ここで、「まわる(回る、廻る)」の文字が採択されるに至った経緯を説明するに、請求人は、寿司を客に提供するにあたって、能率よく、簡便に提供するための方法を種々研究した結果、「コンベヤ附き調理台」の名称からなる寿司の調理に関する考案(甲第2号証の11)を創出し、実用新案権を獲得したものである。
そこで、請求人は、該方式に基づく寿司及び寿司の提供について「回る寿司」、「廻る寿司」、「廻る寿司(二段)」の各商標を昭和33年の1号店のオープン以来使用し、当時の万博にも出品したものである(甲第11ないし第20号証)。
したがって、「まわる(回る、廻る)」及び「回る寿司」、「廻る寿司」の文字よりなる商標は、請求人が独占して使用を継続してきた名称である。また、「回転」の文字についても請求人が商標権(登録第1919352号)を保有していたものであることは、登録原簿の記載(甲第2号証の9)及び広辞苑の記載(甲第2号証の8)に徴して明らかである。
しかしながら、回転台方式の寿司が請求人のチェーン店以外でも一般に普及してきたという事情並びに、その一般的用語がなかったという事情をも考慮した結果、請求人は、上記「回転」の文字に限って、一般の使用に解放したものである(甲第2号証の10)。
以上のとおり、回転台方式で提供される寿司を表す語として、一般に使用されている名称は「回転寿司」のみであって(甲第2号証の12)、「廻る」、「廻る寿司」の名称はあくまでも、請求人が永年使用してきた登録商標であるから、これを請求人の許可なく使用することは商標権の侵害となるものである。
▲3▼被請求人は、(株)巨蜂が本件商標の構成文字中の「廻る」の文字を全体の構成文字より分離して使用している(甲第2号証の1ないし7)ところ、かかる不当な使用行為を商標権者として、或いは該会社の代表取締役として監督する立場にあり、それにもかかわらず、このような使用形態をいわば、放置されていたといわざるを得ないものである。
しかるところ、(株)巨蜂による上記使用行為は、取引者、需要者に対して、請求人の登録商標「廻る」、「廻る寿司」等の商標を容易に想起させ、請求人の業務に係る役務及び商品と経済的、組織的に何等かの関係があるかのごとく、出所の混同のおそれを生ずるおそれのあるものである。
▲4▼ここで、上記の本件商標の不当使用行為を具体的に検証する。
(a)「高柳店」(石川県金沢市高柳2-9-1)の広告看板(甲第2号証の1)においては、「廻る」の文字が「じんずし」の文字の先端部分に縦書されており、明らかな構成態様の変更にあたるばかりか、上記両文字は、「じんずし」の文字部分が赤色(ネオン)であるのに対し、「廻る」の文字部分が青色(ネオン)であって、色彩の差異により、両文字は分離していることが明確に認識できる構成、配置からなるものである。
(b)「七尾店」(石川県七尾市古府745)の広告看板(甲第2号証の2)及びそのメニュー記載のちらし(甲第2号証の3)においては、「廻る」の文字が「じんすし」の文字上部に二段に配置されているため両文字は分離して把握される。
(c)「加賀店」(石川県加賀市小菅波町2-10)の広告看板(甲第2号証の4)においては、「廻る」の文字が赤地に白抜きの文字で上下二段に配置されているため、両文字は分離して把握される。
(d)「小松店」(石川県小松市城南町29番地)の広告看板(甲第2号証の5)においては、「廻る」の文字が「じんずし」の文字上部に配置され、また、その「ちらし」においては、「廻る」の文字が「じんずし」の文字の先頭部分に配置されているため、両文字は分離して把握される。
以上の登録商標の使用行為は、請求人の登録商標、使用商標の一部「廻る」を包含する形態での登録商標に類似する使用行為であって、請求人の業務に係る商品、役務とその出所について誤認混同を生じさせるおそれが多分にあるといわなければならない。特に広告使用時に「廻る」と「じんすし」の各構成文字の色彩を異にして使用されれば、なおさら「廻る」の文字が「じんずし」の部分から分離して看取されるものといわなければならない。
▲5▼商標法第53条の要件としての「混同を生ずるものをしたとき」とは、「客観的に他人の業務に係る商品又は役務と混同のおそれのある商標を使用する行為」がこれに該当し、現実に混同を生じたことを要しないものと解されている(昭和54年10月16日判決:52行ケ158号事件)。
しかるところ、前述のとおり、請求人が回転寿司のメカニズムを可能にした実用新案の権利者であり、創業者ともいえること並びに請求人が「廻る」を基本商標とする登録商標をその指定商品及び役務に使用していることは甲第2号証の11及び甲第11ないし第25号証の掲載内容(新聞、雑誌の掲載記事等)により明らかといえるから、かかる事実について、被請求人は、商標権者として、また、その使用権者たる(株)巨蜂の代表取締役としてこれを充分に知り得たものであり、かつ、このような事態を回避すべき努力がなされ、相当の注意が払われたという事実を見いだせないものである。
そうとすれば、上記登録商標の使用行為は、上記法条に合致する不当な使用行為であって、他人の業務に係る指定商品若しくは役務と混同を生ずるおそれが多分にある。
(2)以上のとおり、本件商標は、その通常使用権者がその指定商品「すし」についての登録商標に類似する商標の使用であって、他人の商品もしくは役務と混同を生ずるものをしたときに該当し、当該商標権者は、当業者として充分にその事実を知り得た立場にいたというべきである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第53条の規定により取り消されるべきである。
(3)答弁に対する弁駁
▲1▼被請求人は、本件商標の使用権者が(株)巨蜂ではないこと、また、請求人の指摘する類似商標(請求人の商標と商品の出所において混同を生ずるおそれのある類似商標)の使用が本件商標の使用なのか、(別件の)登録第4003341号商標(本件商標と同一態様の商標であって第42類「すしの提供」を指定役務とする商標)の使用なのか不明であるから商標法第53条に該当しない旨を述べている。
そこで、請求人が本件商標の使用者を明らかにするものとして提出した乙第1号証の1ないし7(「じんずしフランチャイズ契約書」)中の第1条第2条又は第5条(乙第2号証の1のみ)を併せ読むならば、該フランチャイズ契約におけるフランチャイザーは「じんずしフランチャイズ本部株式会社巨峰」(「本部」と略されている)がこれに相当し、各加盟店は共に、「じんずしフランチャイズ企業体」の一員であること、使用される「じんずし」の商標は、「本部」が資産として保有し、加盟店は、「本部」より該商標の提供を受けて事業を行うものであることが該契約内容の記載によって了解されるところである。
しかして、商標法第53条に定める「使用権者」の解釈については、商標権の使用権者による登録商標の不当使用によって生ずる商品又は役務の出所の混同のおそれを防止し、商標権の使用許諾に伴う濫用行為から、需要者を保護するという規定の目的に対応して柔軟に解釈すべきものである。
また、需要者の立場から、ある商標の商標権者、専用使用権者、通常使用権者が誰であるかを特定する手段は、これらの者を登録した商標登録原簿により判断せざるをえないものである。特に通常使用権者については、一般に、商標権者との契約により生じ、当事者以外にその存在を知ることが困難なものであるから、商標登録原簿に記載されていない者については、商標法第18条第1項及び第30条第4項、同法第31条第4項で準用する特許法第98条第1項・第2項及び同法第99条第1項・第3項の規定に鑑み、これを厳格に扱うべきものではない。
以上の観点に即して本件商標の使用権者をみると、上記フランチャイズ契約におけるフランチャイザーである(株)巨峰が本件商標の通常使用権者でないとしても、商標権者でないこともその登録原簿上明らかであり、かつ、上記契約の当事者たる(株)巨峰と各加盟店、例えば、「廻るじんずし七尾店」とは、共に「じん寿司フランチャイズ企業体」であることが、上記契約書第1条に定められているものである(乙第1号証の4)ことからみても、(株)巨峰を本件商標の使用権者と推認されるとした審判の請求を、該契約書の記載によって、(株)巨峰が本件商標の使用権者ではないという理由のみにより、本件審判の請求を斥けるべきではない。
▲2▼被請求人の言及する登録第4003341号商標は第42類「すしの提供」を指定役務とするものであるところ、本件審判請求とは、類別及び商標権者も異なるものであるから、その存在が本件審判請求の審理上、影響を及ぼすものではなく、別々にその理由の有無が審議されるべきものである。むしろ、類別を異にするとはいえ、商品「すし」と役務「すしの提供」はその経営主体が同一の場合が一般的である(テイクアウト専門店は未だ一般的とはいえない)から、かかる同一形態の商標を別々の商標権者とすることは取引上不自然であって混乱を招く源といわなければならない。
回転台形式の寿司店においてもテイクアウト用の寿司が販売されていることは、甲第2号証の6のちらし中に示されている「テイクアウト!ポーチプレゼント!」の表示があるので、「テイクアウト用の寿司」についても本件商標の使用が推認できる。
▲3▼請求人は、商品「寿司」及び役務「すしの提供」について回転台方式を発明した業界のパイオニアであり、「人工衛星回るすし」の名称の使用開始以来、「回るすし」として新聞に何度も掲載された(甲第15号証、甲第19号証)ものであり、かつ、「まわる」の文字よりなる商標は、商品「すし」について登録されており(甲第3号証の2)、また、「すしの提供」をその指定役務中に含む第42類「飲食物の提供」についても「まわる」の文字よりなる商標が最近登録されている(第4137383号商標・甲第26号証)。
▲4▼「廻る」の文字については、請求人経営に係る寿司店「元禄寿司]及び、その略称「元禄」の文字とは構成上分離した形態で表示され、使用されてきたものである。例えば、上記両文字を行違いに表した「廻る寿司元禄」(甲第13号証、甲第14号証)、三段に表した「廻る 寿司 元禄」(甲第12号証)であり、これらの文字は商標として登録されている。例えば、「廻る」の文字が「元禄」とは行違いに顕著に書されているもの(甲第5号証の2、甲第6号証の2)或いは、「廻る」の文字が横書きされているのに対し、「元禄寿司」の文字部分が縦書きとされているもの(甲第7号証の2・最下段、甲第8号証の2・上段)等である。
▲5▼被請求人は、請求人の使用商標について「廻る」の文字が他の語と結合されているとか、小さい文字で付随させた使用である旨を主張する。しかしながら、商標の構成部分の大小によって、識別力に差異を生ずるものでないことは、商標の類否判断において、識別力ある部分が著しく小さく表示されている場合でも、該部分より称呼、観念を生ずるものであることは実務上の判断基準とされている(商標審査基準九。5)ことからみても問題のないところであり、また、「廻る」の文字のみがたとえ、単独の商標として使用されていなくても、これが継続して使用され、その特徴のある書体によって市場に流通しているものであるから、当該業界において如何なる者の使用する標識であるか、容易に判別し得るものであって、商標法の目的である商品の流通秩序の維持という観点からみてもこれを第三者の自由使用に委ねるべきではない。既に良識ある寿司店においては、「廻る寿司」の語によらず、前記「回転寿司」又は「チェーン寿司」の名称を使用しているものである(甲第2号証の12)。
また、上記「まわる」及び「廻る」の文字(特に、「廻」の文字については、肉太で丸みのある勘亭流風の独特の印象を看取させるものである)よりなる商標は、寿司業界で広く知られるに至っている(甲第27号証)。
回転台方式の寿司店においては、店内提供に較べて持ち帰り用寿司の扱いが極めて少ないとしても、商品「寿司」の取引者、需要者が上記双方に共通することが一般的である以上、認識の度合いも共通するから、商品「すし」の取引の大小のみを論ずべきものではない。
▲6▼被請求人は、「廻る」の文字について、他の登録商標の例があるとして、乙第2号証の1ないし11を提出している。しかし、乙第2号証の7ないし9については無効審判若しくは取消審判を請求中であり、その他の登録商標についてはその観念上不可分一体であり、かつ、その外観構成上も不可分一体の商標については審判請求を要しないものといえる。
甲第4号証の判定については、「まわる」の文字が商品「すし」について自他商品識別の機能を果たし得ることが特許庁の公式見解として示されているものとみるべきである。
▲7▼「廻る」の文字を他の文字と分離し、行換え若しくは二段に分けた形態の使用は請求人所有商標と共通するため、商品の出所について、あたかも、請求人のチェーン店であるかのごとき誤認混同を生じるおそれがある。
▲8▼被請求人は、持ち帰り専門のすし店について、乙第3ないし第5号証を提出しているが、これらの証拠中で使用されている商標は、本件商標を使用するものではなく、別件商標「じんずし」の使用にかかるものであるから、本件審判事件とは関係のない主張及び立証である。
▲9▼本件商標の使用は、商標権者(松井正治)による使用ではなく、使用権者による使用であることは商標登録原簿上の記載内容によって明らかである。
しかして、請求人提出のフランチャイズ契約書によれば、商標権者が代表取締役であるフランチャイザー(株)巨峰は、フランチャイジー(七尾店等の各加盟店)と同一のフランチャイズ企業体としての立場を共有することが窺えるので、各加盟店の使用は自己の使用にも該当するものと解され、その結果、本件商標の使用は、通常使用権者による使用として、指定商品「すし」についての登録商標に類似する商標の使用(変更使用)があるものとみられる。
したがって、該商品の取引者、需要者は、上記使用によって請求人の登録商標を容易に想起させ、あたかも、請求人の業務に係る商品及び役務と経済的、組織的に何等かの関係(例えば、同じ系列に属するチェーン店であるかのごとき関係)を有するものとして、商品の出所についての誤認、混同を生ずるおそれが多分に存するものといわなければならない。
4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第7号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)請求人は本件商標の商標権者は被請求人である松井正治であり、被請求人が代表者である(株)巨蜂へ本件商標の使用許諾を与えていることが推認され、(株)巨蜂の経営にかかる寿し店「廻るじんずし」が本件商標に関して、登録商標に類似する商標をその指定商品に使用した結果、他人(請求人)の業務に係る商品(寿司)、役務(寿司の提供)と混同を生ずるおそれを招来させたものであり、商標法第53条の規定により本件商標は取り消されるべきものであると主張する。
そこで、先ず本件商標の権利者(被請求人)と(株)巨蜂及び寿し店「廻るじんずし」との関係を説明する。
本件商標の権利者である松井正治は、請求人の指摘のとおり(株)巨蜂の代表者である。
しかし、寿し店「廻るじんずし」は(株)巨蜂が経営するものに非ず、フランチャイズ契約(乙第1号証の1ないし7)による各加盟店の契約者が経営しているものである。
(2)本件商標に類似する商標を指定商品「すし」について使用していると請求人は指摘する。
しかし、(株)巨蜂は、本件商標と同一の商標である「廻るじんずし」を役務「すしの提供」について登録第4003341号(乙第7号証)として所有している。
したがって、請求人の指摘する類似商標は、本件商標の使用権者が使用するものでなく、本件商標に関する使用であるか、登録第4003341号商標に関する使用であるのか不明であり、商標法第53条の規定に該当するものでない。
(3)請求人は回転台方式で提供される寿司のパイオニアであり、「廻る」や「廻る寿司」を構成中に有する「すし」及び「すしの提供」に関する商標はすべて出所の混同を生ずるが如く主張する。
しかし、飲食物の提供の役務においては、回転する台に載ってくる提供物を任意に選択して食する方式がなかったため、その提供方式が「回転」、「廻る」又は「まわる」のイメージと一致して需要者に認識されたこと、請求人の直営第1号店は昭和33年4月にオープンしているが、請求人代表者が権利取得した実用新案は昭和35年2月20日の出願であり、当該権利に制約を受けない回転台方式の営業が可能であったこと、請求人代表者の実用新案登録が昭和47年7月24日に存続期間満了となった後は当該方式の同業すし店がさらに全国各地に多数現れ、従来のすし店と形態の異なる店として一層広く一般に認識されたこと、役務「すしの提供」に使用されるものであるから商標の使用が店舗、店内設一備と密接に関係し、回転台方式が需要者に強く印象づけられたこと、一方、請求人の現実の商標の使用態様は「廻る」と共に「元禄寿司」の文字が常に結合して使用され、しかも「廻る」は「元禄寿司」より小さい文字で附随させた使用が多く見られること、更に、当該同一方式の他の業者も商標中に「廻る」「まわる」「回転」の語を用いたこと、当該方式のすし店は店内飲食が主であって、持ち帰りは極めて微小で、それも顧客が店へ直接買いに来るもので、商品が市場を転々とするものでないこと等の事実より、「回転」、「廻る」又は「まわる」等の商標中の表示は、需要者間においてすしの提供方式の一形態として強く認識し理解され、「廻る」の文字を有するのみで特定の業者の取り扱いにかかるとの認識はないものである。
このことは、例えば、商品「すし」について商標「まわるぽけっと」、「廻る江戸前」、「まわるがってん」、「まわるすしぶたい」等が登録され、また、役務「すしの提供]について商標[まわるお寿司の国マリンポリス」、「廻るすし道楽」、「まわる寿し花館」、「廻る大長寿し舟」、「まわるすしべえ」、「まわるがってん」、「まわるすしぶたい」等の登録(乙第2号証の1ないし11)があり、特に役務「すしの提供」では「廻る」、「まわる」と他の文字との態様が異なり、商標も登録されていることとも符合するものである。
そして、甲第4号証で示す判定結果は、商品の用途向きを表示したものと認識する語の「ファミリー」が「まわる」と結合した特殊な例であり、これをもって事案の異なる本件を判断する資料となり得ないと共に、「廻る」が申請人の出所表示として周知である事の立証にもならない。
また、他の証拠方法も、商品「すし」について商標「廻る」等が周知である旨の資料は皆無である。
更に、甲第2号証の10の新聞への公表は、請求人の一方的な宣言であり、その背景には斯る公表をせざる得ないほど需要者と生産者(商標使用者)が直結した営業形態での多業者の多様な商標の使用の結果、「回転」の表示は既に需要者間においてはすしの提供形態を表すものと認識されている事を物語るものであって、「廻る」、「まわる」及び「回る」も「回転」と同意語であり、かつ多くの同業者が使用していたことも立証するまでもない事実であるから、回転台方式のすしの提供における商標中に有する「廻る」の文字から独立した自他識別力を発揮する格別の意味合いを抽出できず、「廻る」の文字が単独で請求人の業務に係る商標として全国的に広く知られるに至っているとは認められないものである。
(4) これに対し、請求人が不正使用であるとする甲第2号証の1ないし6の商標使用者は、被請求人とフランチャイズ契約(乙第1号証の1ないし7)に基づく加盟店である。そして、店舗の形態は回転台方式のすしの提供を主営業とするものであり、例えば、甲第2号証中の写真には「一皿100円(えん)」の表示看板が確認できる。この点からも、本件商標に関する使用に該当せず、(株)巨蜂が所有する登録第4003341号商標に関する使用であることが認められる。
(5)看板における具体的商標の使用については、「廻る」と「じんずし」の文字が大小に違えて縦横に、又は二段に表示されてはいるけれど、いずれも「じんずし」を大きく顕著に表示し、「廻る」は小さく「じんずし」の半分以下の大きさで付随させて表示されている。
したがって、一見して「じんずし」が目に入り、「廻る」は「じんずし」と共に認識されると同時に、回転台形式のすし店を直感させるものである。
すなわち、「廻る」と「じんずし」はいずれの使用態様も互いに関連した一体となった表示態様であって、別個独立のものと認識できないが、「じんずし」が際立って目立ち、「廻る」は付随したものと看取される結果、上記の需要者意識と相俟って「回転台方式のじんずしチェーン店」と自然に理解することができるものである。
(6) メニュー(甲第2号証の3)及び「ちらし」(甲第2号証の5)は、商品「すし」についてのもので、営業主体である店名(フルネーム)を表示したにすぎず、このことは電話番号及び住所と共に記載されていることより理解できる。
これらは、商標の使用に該当するとしても、回転台方式のすし店での建物内(甲第2号証の各写真からも判るように、建物外から取引できる窓口は存在しない。)で直接需要者(消費者)と取引される持ち帰り用商品「すし」についての使用であり、すし店自体に混同を生じないのであるから、回転台方式のじんずしチェーン店のすしと理解し、商品「すし」についての混同も当然発生しないものである。
(7)「高柳店」は昭和54年10月16日契約(乙第1号証の1及び2)以来、「七尾店」は昭和63年1月23日契約(乙第1号証の3及び4)以来、「小松店」は昭和62年5月27日契約(乙第1号証の5及び6)以来、そして「加賀店」は平成6年11月22日契約(乙第1号証の1)以来、本件商標の登録前より継続して、その間請求人の指摘する看板及び店舗外装の変更はなく、平穏に営業を行っている。
更に、(株)巨蜂は持ち帰り専門のすし店のフランチャイズ店を昭和51年11月1日より開始し、現在石川県、富山県を中心に、新潟県、鳥取県、島根県及び岐阜県に計60店舗を擁し(乙第3号証)、各店舗には「じんずし」の統一された店名表示及び立て看板表示が為され(乙第4号証の1ないし6)、かつ、「じんずし」の表示態様は上記高柳店、七尾店、小松店及び加賀店の表示態様とも統一されているのである。
そして、持ち帰り専門店で使用する容器、掛け紙、箸袋、手下げ袋、風呂敷等(乙第5号証の1ないし5)に「じんずし」と「御陣乗太鼓の図柄」との表示があるものを全店で統一して使用すると共に、高柳店等の回転台方式の店舗でも持ち帰り用すしには同一の資材を使用しているのである。
このように、「じんずし」(登録商標でもある。乙第6号証の1及び2)はすしのチェーン店として永年の実績と需要者の信用を獲得し、充分に顧客吸引力を発揮しているものである。
(8)特に、役務である「すしの提供」においては、「廻る」を含む商標は、需要者に「回転台方式のすしの提供」を直感させるものであり、「廻る」の他の構成文字等が強く印象付けられて識別力を発揮するものである。
本件の商標の使用態様は、「じんずし」を顕著に「廻る」を附随させて一体に表示したものであり、「廻る」は「回転台方式のすしの提供」を意味することを一層鮮明に需要者に印象付けることはあれ、この表示から「廻る」のみを独立した別個の商標として印象付けられるものでない。
しかも、請求人の登録商標「廻る」の現実の使用態様は「元禄」又は「元禄寿司」と常に結合させての使用で、「廻る」のみを単独で使用した実績は皆無であるから、「元禄」及び「元禄寿司」が周知性を得ているのであって、商標「廻る」のみが単独で請求人の商標として周知となっているとは認められない。
加えて、(株)巨蜂は持ち帰りすし専門のチェーン店の展開実績によって商標「じんずし」の周知性を得たものであって、「廻る」を小さく、「じんずし」を大きく表示した態様からは「じんずしのチェーン店」であることを需要者は知得し、同時に持ち帰り専門店と異なる回転台方式のすしの提供店であることを察知させるもので、本件商標の営業主体や出所に影響を与えるどころか、一層明確となるものである。
したがって、本件の商標の使用が請求人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれが発生する余地はいささかも考えられないものである。
5 当審の判断
(1)本件商標は別紙(1)に、引用各商標は別紙(2)にそれぞれ示すとおりの構成よりなるものである。
そして、請求人が本件商標の変更使用にあたるとして甲第2号証の1ないし6に掲げる商標(以下、「使用各商標」という。)は、別紙(3)に示すとおりの構成よりなるものである。
(2)商標法第53条第1項に規定する審判を請求するためには、▲1▼専用使用権者又は通常使用権者が、▲2▼登録商標又はそれに類似する商標を、▲3▼指定商品・役務又はこれらに類似する商品・役務に使用して、▲4▼商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるか、▲5▼他人の業務に係る商品・役務と混同を生ずるかが明らかにされなければならないことは、同条項の規定から明らかである。
(3)そこでまず、使用各商標の使用が本件商標に関する通常使用権者によるものであるかについてみるに、被請求人の提出に係る乙第1号証の1ないし7(「じんずしフランチャイズ契約書」)及び請求人の提出に係る甲第2号証の1ないし7によれば、使用各商標の使用は、被請求人が代表者である(株)巨蜂とフランチャイズ契約を締結している曲師屋商事株式会社、株式会社セントラル美装、有限会社さかした等(以下、「加盟店」という。)が行っているものと認められる。そして、上記契約の当事者たる(株)巨蜂が本件商標に係る通常使用権者であることを示すものはなく、被請求人と(株)巨蜂とは法律上は人格を異にする別人であることが明らかであるとしても、被請求人が(株)巨蜂の代表者であること及び上記契約書から(株)巨蜂と各加盟店は共に「じん寿司フランチャイズ企業体」の一員であることが認められることからすれば、これら加盟店は、本件商標に係る通常使用権者でないとはいい切れず、むしろ、通常使用権者とみて差し支えないというべきである。
(4)次に、使用各商標の使用が請求人の業務に係る商品又は役務と出所の混同を生ずるものであるかどうかについて検討する。
被請求人の提出に係る各乙号証及び職権により調査したところによれば、役務「寿司の提供」又は商品「すし」の分野においては、回転台方式による役務の提供又は商品の販売が一般的に行われており、その場合に、すしの提供方法若しくは販売方法又は店名等を表示するものとして「回転」、「廻る」、「回る」又は「まわる」の文字に他の文字を付加して「回転寿司」、「回転寿司○○」、「まわるすし○○」、「まわる○○すし」等の表現が用いられていることが認められる。
しかして、使用各商標についてみるに、使用各商標は、「廻る」、「じんずし」の各文字が大小、縦横あるいは二段に表示されているとしても、「じんずし」の文字部分が大きく顕著に表されていることに加え、上記実情を併せ考慮すれば、使用各商標に接する取引者、需要者は使用各商標全体として回転台方式によるすしの提供をする店の名称ないし商標を表したものと理解し認識するとみるのが自然であるから、殊更「廻る」の文字部分のみが分離・抽出され独立して認識されるというべきではない。
そうすると、使用各商標は全体として「マワルジンズシ」の称呼を生ずるほか、「じんずし」の文字部分を要部として「ジンズシ」の称呼を生ずるとしても、単に「マワル」の称呼は生じないというのが相当である。
他方、引用各商標はそれぞれの構成文字に相応して「マワル」、「マワルゲンロク」、「マワルゲンロクズシ」、「ゲンロク」又は「ゲンロクズシ」の各称呼を生ずるというのが自然である。
そして、使用各商標と引用各商標とは上記称呼において明瞭に区別できるのみならず、それぞれの構成に照らし、外観においても別異のものであって区別し得るものであり、それぞれの観念については比較すべくもない。
してみれば、使用各商標と引用各商標とは外観、称呼及び観念のいずれからみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
また、引用各商標の著名性についてみるに、請求人は、引用各商標を取得し、盛大に使用しているとして甲第2号証の11、甲第11ないし第25号証及び甲第27号証を提出しているが、これらは主として「廻る 元禄」及び「廻る 元禄寿司」等の文字が一体となって使用されていることを示す証拠であって、「廻る」の文字のみが単独で現実に使用されていることを示す証拠は見当たらないから、上記証拠をもって、引用各商標中の「廻る」の文字のみよりなる商標が請求人の業務に係る商品「すし」及び役務「すしの提供」の商標として取引者、需要者の間に広く認識されていたものとは認められない。
以上を総合すると、使用各商標を商品「すし」について使用しても、これに接する取引者、需要者が引用各商標ないしは請求人を想起するようなことはなく、請求人の業務に係る商品又は役務であるかの如くその出所の混同を生ずることはないと判断するのが相当である。
(5)してみれば、使用各商標が本件商標と類似するものであるとしても、上記のとおり、使用各商標の使用が請求人の業務に係るものであるかの如く混同を生ずるものでない以上、本件審判の請求について理由があるものとすることはできない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第53条の規定により取り消すべき限りでない。
よって結論のとおり審決する。
別掲 別記



審理終結日 1999-05-20 
結審通知日 1999-06-04 
審決日 1999-06-16 
出願番号 商願平6-19000 
審決分類 T 1 31・ 5- Y (030 )
最終処分 不成立 
前審関与審査官 椎名 実内山 進 
特許庁審判長 小松 裕
特許庁審判官 茂木 静代
大橋 良三
登録日 1997-06-06 
登録番号 商標登録第3318261号(T3318261) 
商標の称呼 1=マワルジンズシ 2=ジンズシ 3=マワルジン 4=ジン 
代理人 石川 義雄 
代理人 小出 俊實 
代理人 宮田 正道 
代理人 鈴江 武彦 
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