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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 025 |
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管理番号 | 1004282 |
審判番号 | 審判1998-35342 |
総通号数 | 4 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2000-04-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1998-07-27 |
確定日 | 1999-09-17 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第3286694号商標の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第3286694号商標の登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第3286694号商標(以下「本件商標」という。)は、「ジーショック」の片仮名文字を横書きしてなり、第25類「靴類(「靴合わせくぎ、靴くぎ、靴の引き手、靴びょう、靴保護金具」を除く。)」を指定商品として、平成6年6月22日に登録出願され、同9年4月25日に登録されたものである。 2 請求の理由 請求人は結論同旨の審決を求め、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至同第7号証(枝番号を含む。但し甲第3号証の7は撤回)を提出している。 (1)本件商標は、請求人の商標「G-SHOCK」と「Gショック」との関係で商品の出所の混同を生じさせる虞があり、商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、その登録は無効とされるべきである。 (2)請求人は、昭和58(1983)年4月に「G-SHOCK」「Gショック」(以下「引用商標」という。)の商標を使用した腕時計を発売し、当初年間1万個程度であったものが、米国において人気を得て、これが逆輸入現象となり、また、機能追加等による機種の増加もあって、91年3万、93年50万、96年には100万個と売り上げは急上昇した。 引用商標に係る腕時計は、斬新なデザインと確かな機能とにより、国内外で人気を博し、一種のファッション的なブームを巻き起こす現象となっているところ、その異例な状況は、甲第7号証の1乃至3からも明らかである。 そして、特に、請求人が引用商標を使用して販売している時計は、アウトドアレジャー用として使われ、スポーツウオッチと呼ばれることもある程のものであるから(甲第4号証の2)、本件商標に係る指定商品「靴類」中の「運動靴、釣り用靴等」の利用時に、実用とファッションを兼ねて一緒に使われる言わば必需品的なものであると言ってもよいものである。 (3)本件商標は、請求人の前掲著名な引用商標と同一態様のものであり、前述のように、商品も使用時、使用する場所が一緒である等極めて密接な関係にあるものであるから、本件商標に接する取引者及び需要者は、それが請求人又は請求人と何らかの関係にある者の取扱いに係る商品であるかのように誤認し、商品の出所について混同を生ずる虞がある。 (4) したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。 3答弁の理由 被請求人は以下のように答弁した。 (1)本件審判請求は理由がなく、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。 商標法第4条第1項第15号に該当するか否かの判断時期は商標登録出願時である。したがって、引用商標は、少なくとも本件商標の登録出願時(平成6(1994)年6月22日)に著名となっていなければならない。しかしながら、甲第2号証乃至同第7号証はいずれも、本件商標の登録出願時における引用商標の著名性を裏付けるものではなく、すべて本件商標の登録出願後に発行されたものである。 また、甲第3号証の1乃至10,甲第4号証の1及び2並びに甲第6号証の1及び2の各新聞記事の切り抜きは、すべて請求人が押したスタンプによる日付があるのみで、発行日は証明されていない。 これら甲各号証がたとえ本件商標の登録出願前に発行されたものであるとしても、甲第3号証の1乃至3、第3号証の5乃至10並びに甲第6号証の1及び2は、新聞紙上の極く小さなスペースに掲載された新商品の発売情報又はプレミアム商品情報に関する記事であり、その記事中に引用商標が記載されているにすぎず、これら新聞記事による宣伝、広告効果も通常の広告に較べ極めて小さいと言える。 また、甲第3号証の4及び同第4号証の1は、それぞれ他社商品と共に記載されているにすぎず、引用商標を付した時計については僅かなスペースが割かれているにすぎない。甲第4号証の2の通り、該商標商品の人気が出始めたのは平成3年秋頃からであり、本件商標の登録出願前2年半程である。そして、同号証によれば、その人気も「高校生や大学生を中心に”口コミ”で広まった」とされているから、テレビや新聞、雑誌で大々的に宣伝、広告された場合と異なり、引用商標を知っていた者は学生にほぼ限られていたと判断されるものである。 してみれば、引用商標は、本件商標の登録出願時においては商標法第4条第1項第15号により保護を受ける程に著名な商標であったとは認められない。 (2)更に、引用商標は、「ソニー」、「ナショナル」等の所謂ハウスマーク、商号又はその略称等よりなる商標と異なり、特定商品の商標として、即ち、腕時計の商標として知られているものであるから、「G-SHOCK」と言えば取引者、需要者は「ショックに強い若者向け腕時計」のみを想起するものである。 しかしながら、本件商標に係る指定商品は「腕時計」とは非類似の商品と認められている「靴類」であり、精密機械である時計とは製造、販売、取引ルート等を全く異にする異業種の商品である。また、請求人の取扱い商品はすべて精密機械器具、電子楽器等であり、いかに多角経営傾向下の現今においても、精密機械器具の製造業者が靴類の製造、販売を兼業するような慣例がないのは勿論、これら業種間で子会社又は提携会社等の関係が存在する例も知られておらず、両商品は関連性が希薄な商品である。 したがって、本件商標をその指定商品である「靴類」に使用した場合、仮に、引用商標が本件商標の登録出願時に著名であったとしても、販売店等を同一にしている等の事実がない以上、本件商標が使用された「靴類」が引用商標に係る「腕時計」と同一出所と誤信したり、又は請求人と特別の関係にある者の製造、販売に係るものであると混同することはないと言える。 (3)以上のとおり、本件商標が指定商品「靴類」に使用されても、引用商標を付した腕時計と同一出所に係る商品と誤信させる虞はないものであった。 よって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するとしてその登録を無効とすべきものではない。 3 当審の判断 (1) まず、引用商標が本件商標の登録出願前に需要者間に広く認識されていたか否か、すなわち引用商標の著名性の取得について認定するに、甲第3号証の1乃至同10(甲第3号証の4及び7を除く)によれば、平成4年6月3日付け以降同6年1月12日の間にいずれも全国紙に請求人の製造、販売に係る腕時計「Gショック」が紹介されていることが認められる。そして、甲第3号証の4は平成4年8年31日付け日本経済新聞であるところ、同紙には「『Gショック』シリーズは今年度昨年の三倍にあたる十万個の販売を見込んでいる。・・・米国ファッションのイメージを全面に出した宣伝効果もあって大ヒットしている。」旨、同第4号証の1は平成4年9年3日付け毎日新聞夕刊であるところ、同紙には「『Gショック』シリーズが爆発的な売れ行きとなっている・・・『2年前1万個しか売れなかったが、今年は10万個を超すペースで売れている』という。」旨、また、同第4号証の2は平成4年12年1日付け読売新聞であるところ、同紙には「G-SHOCKの国内販売数は昨年度の三万個に対し、今年度は『五倍の十五万個の見込み』(カシオ広報室)という大変な勢いだ。・・・若い男性向けファッション雑誌が、G-SHOCKのアメリカでのヒットぶりを紹介したのをきっかけに、他の雑誌でも取り上げられるようになった。・・・高校生や大学生を中心に人気が口コミで広がった。」旨それぞれ記事として取り上げられて掲載されている。 そして、上記の事実を受けた形で甲第4号証の3によれば、「98年のイミダス『ヒット商品』」の項に「G-SHOCK(ジーショック)」の欄を設けて「発売当初の売上は年間1万本だったが、91年3万、93年50万、・・・と急上昇。限定モデル発売日には店頭に数千人が並んであっという間に売り切れ、1万〜1万5000円程度のモデルが8万〜10万円で取引きされる。」と掲載されていることが認められる。 これらの各証拠においては、請求人の腕時計に関し「Gショック」、「G-SHOCK」又は「ジーショック」とあるが、甲第5号証以下によれば請求人は当該腕時計に一貫して使用しているのは「G-SHOCK」の商標であり、これを紹介記事において「Gショック」又は「ジーショック」とも表したものと認められる。 以上の事実を総合すれば、引用商標「G-SHOCK」は、少なくとも本件商標の登録出願前に請求人に係る腕時計を表示する商標として若者、特に学生の間で広く認識されるに至っていたと認められるものである 被請求人は、新聞の紹介記事の宣伝効果は極めて低いこと及び引用商標に係る腕時計が人気が出始めたのは本願商標の登録出願前僅か2年半程度であることをもって、引用商標の著名性の取得を否定するが、上記各事実からして採用することはできない。 なお、被請求人は甲各号証の新聞の切り抜きについて成立を否定するところがあるが、平成11年6月15日付け弁駁書により各切り抜きに係る証明の日付が当該新聞の発行日であることを確認した。 (2)次に、本件商標が指定商品「靴類」に使用された場合、該商品が請求人に係る商品と出所の混同の虞があるか否かについて判断するに、本件商標に係る指定商品には若向き用又はアウトドア用の運動靴及び靴類が含まれるところ、引用商標「G-SHOCK」に係る腕時計は若者、特に学生の間で著名なものであることは上記認定の通りであり、両商品は需要者において共通し、また、甲第4号証の1によれば該腕時計はアウトドア用もあり、アウトドア向きという点でも両商品の用途において一致するところがあるということができる。 そして、若者はヒット商品又は流行ブランド商品には敏感であるところ、本件商標は、腕時計において著名な引用商標「G一SHOCK」と称呼を同じくする類似の商標であるから、これを指定商品「若者向き用及びアウトドア用運動靴その他の靴類」に使用した場合には、該商品が請求人又は請求人と組織的若しくは経済的に関係のある者の業務に係る商品の如く、その出所について混同を生ずる虞があるものと判断するのが相当である。 被請求人は、引用商標「G-SHOCK」が腕時計のみに係る商標でありいわゆるハウスマーク等ではないこと及び「靴類」と「腕時計」とが異業種に係る商品であること等を理由に上記出所の混同の虞を否定しているが、引用商標「G-SHOCK」の著名度及び両商品の共通性を考慮し、また、商標法第4条第1項第15号は「出所の混同のおそれ」で足りることからして上記判断を相当とし、請求人の主張は採用できない。 (3) したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものであるから、その登録は無効にすべきである。 よって結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1999-06-25 |
結審通知日 | 1999-07-06 |
審決日 | 1999-07-19 |
出願番号 | 商願平6-62575 |
審決分類 |
T
1
11・
271-
Z
(025 )
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 岩浅 三彦 |
特許庁審判長 |
工藤 莞司 |
特許庁審判官 |
宮下 行雄 滝澤 智夫 |
登録日 | 1997-04-25 |
登録番号 | 商標登録第3286694号(T3286694) |
商標の称呼 | 1=ジ-シ+ヨ+ツク |
代理人 | 岸本 守一 |
代理人 | 石川 義雄 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 渡辺 彰 |
代理人 | 小出 俊實 |
代理人 | 日比 紀彦 |
代理人 | 清末 康子 |
代理人 | 岸本 瑛之助 |